今回はRas Michael & The Sons Of Negus
のアルバム

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「Disarmament」です。

Ras Michael & The Sons Of Negusは
レゲエの中でも特にディープな、ラスタ
ファリアンの集会音楽「ナイヤビンギ」の
グループとして知られています。
レゲエという音楽が誕生する以前の60年
代からすでにThe Sons Of Negusを率いて
活動し、Bob MarleyやBurning Spearなど
のルーツ・レゲエのアーティストにも多大
な影響を与えたのが、このRas Michael
なんですね。
1974年にDadawah名義のアルバム
「Peace And Love」でアルバム・デビュー
して以来、Lee Perryのプロデュースした
「Love Thy Neighbour」など、数々の
印象的なアルバムを残して来たのがこの
Ras Michael & The Sons Of Negusです。

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Dadawah ‎– Peace And Love: Wadadasow (1974)

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Ras Michael & The Sons Of Negus ‎– Love Thy Neighbour (1979)

Ras Michael - Wikipedia

今回のアルバムは1981年にUKの
Trojan Recordsからリリースされた彼らの
10枚目ぐらいにあたるアルバムです。
(Dadawah名義のアルバムを含めると
11枚目。)

プロデュースはRas Michael本人で、
ナイヤビンギらしいパーカッションを中心
とした重厚な演奏で、時に美しさや悲しさ
などを感じさせる、とてもスピリチュアル
な内容のアルバムです。

ちなみに「Disarmament」とは「武装解除」
や「軍備縮小」を意味する言葉で、その
言葉通り今回のアルバムは、核廃絶や軍備
縮小を訴えたかなりメッセージ性の強い
アルバムのようです。
当時はアメリカを中心とした西側諸国と、
ソヴィエト(今のロシア)を中心とした
東側諸国との「冷戦」が続いていて、決定
的な戦争は起きていないものの軍拡競争が
続いていて、かなり危険な状態だったん
ですね。

冷戦 - Wikipedia

手に入れたのはTrojan Recordsから
リリースされたLPでした。
このアルバムは私が初めにレゲエを聴いて
いた20代の頃に購入したアルバムで、
おそらく発売された81年頃に購入した
ものと思います。

Side 1が3曲、Side 2が3曲の全6曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians:
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Bass: Maskil
Rhythm Guitar: Hux
Drums: Carlton 'Santa' Davis
2nd Repeater Drum: Alvin Hewitt
Fundae Drum: I. Marts
Bass Drum: Sidney Wolf
Horns: George Maddon
Organ: Lamey
Lead Repeater Drum, Percussion, Vocals: Ras Michael

Musical arrangements and Production by Ras Michael

Recorded during 1980 and 1981 at Black Ark Studios, Dynamic
Studios and Channel One Studios, Kingston, Jamaica

All titles written by Michael Henry and
published by New Town Sound Ltd
Produced by Ras Michael

Design: Bamber Forsyth

となっています。

ミュージシャンはリード・ギターに
Earl 'Chinna' Smith、ベースにMaskil、
リズム・ギターにHux Brown、ドラムに
Carlton 'Santa' Davis、セカンド・
リピーターにAlvin Hewitt、フンデ・
ドラムにI. Marts、ベース・ドラムに
Sidney Wolf、ホーンにGeorge Maddon、
オルガンにLamey、そしてリード・
リピーターとパーカッション、ヴォーカル
にRas Michaelという布陣です。
ベースのMaskilとなっているのは、
The Light Of SabaやThe Rastafarians
などに参加したHaile Maskel(別名:
Michael Ras Starr)ではないかと思う
のですが、どうなんでしょう?

すべてのアレンジはRas Michaelが担当
しています。

レコーディングは1980年から81年に
かけて、ジャマイカのキングストンにある
Black Ark StudiosとDynamic Studios、
Channel One Studiosで行われています。

すべての曲の作曲はMichael Henry
(Ras Michaelの本名)が行っていて、
プロデュースもRas Michaelとなって
います。

ジャケット・デザインはBamber Forsyth
となっています。

ジャケット写真には日本の落とされた原爆
で被爆した人や、その為に奇形で産まれた
胎児の写真が使われています。
1枚の写真には次のような英文字が書かれ
ています。

The three main destrucutive effects of
nucleare weapons are HEAT, BLAST and RADIATION.

〈核兵器の3つの主要な破壊的効果は、
「熱」、「爆発」、「放射線」で
ある。〉

さらに裏ジャケには「Words Of H.I.M.」
と題されたRas Michaelのメッセージも
載っています。
この初めの数行を自動翻訳で訳してみる
と、次のような事が書かれています。

We must act while the occasion exists.
〈機会があれば行動しなければならない〉
I will mention briefly today two particular issues which are of deep concern to all men.
〈私は今日、すべての人間にとって深い関心事である2つの特定の問題を今日簡単に述べる〉
DESARMAMENT and the establishment of true equality among men.
〈武装解除と人間間の真の平等の確立〉
DESARMAMENT has become the urgent imperative of our time.
〈軍縮は我々の時代の緊急の不可欠となっている〉
DESARMAMENT is vital today quite simply because of the immense destructive capacity which men now possess.
〈軍縮は、今日では非常に単純であり、なぜなら、人々が現在所有している莫大な破壊的能力〉

今回のアルバムはそうした東西冷戦状態に
おける軍拡競争に歯止めをかけるべきと
いう、メッセージが込められた内容の
アルバムのようです。

さて今回のアルバムですが、「軍縮」と
いう重いテーマのアルバムですが、その
テーマで書かれた曲は重いけれどすごく
美しい一面もあり、このナイヤビンギの
グループならではも魅力があって、なか
なか面白いアルバムだと思います。

このRas Michael & The Sons Of Negus
ですが、74年からこのアルバムの出た
翌年の82年のアルバム「Revelation」
ぐらいまでは、毎年コンスタントに
アルバムをリリースしているんですね。

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Ras Michael & The Sons Of Negus ‎– Revelation (1982)

ところがそれ以降になると、パッタリと
リリースが減ってしまうんですね。
おそらくいろいろな事情で、グループ活動
が困難になってしまったのかも…。
少なくともこのグループの旬だった時代
は、デビューした70年代半ばから
80年代前半だったと考えて良さそう
です。

そのグループの旬の最後の方に発表された
今回のアルバムですが、「軍縮」という
重いテーマに真っ向から向き合ったこの
グループならではのサウンドは、なかなか
重厚でさらに美しく、そのオリジナリティ
はやはり一聴の価値があると思います。

まるで鎮魂歌を連想させる美しい
キーボードのメロディの「Jah Jah Power
Endure」から始まり、聖と俗が入り
混じったような楽しいチャント曲
「International Year Of The Child」、
Side 1の最後を飾る、Ras Michaelの
感情を抑えたヴォーカル素晴らしい大曲
「Where Is Your Goldmine」、2曲目の
ダブ「International Children Dub」、
Chinna Smithのギターが冴えるほぼ
インスト曲の「Stop Paying The Price
For Sin」、そして最後はナイヤビンギ
特有の瞑想空間に誘うような楽曲
「Unity」で〆ています。
あらためてこうして聴き直してみると、
Side 1はRas Michaelのヴォーカルを中心
とした歌ものが集められていて、それに
対してSide 2の方はダブやインスト曲など
の、よりレゲエ特有なディープな世界観の
楽曲が収められている事が解ります。

このディープで幽玄なほどの美しさが、
このRas Michael & The Sons Of Negusの
唯一無二の個性である事は間違いがあり
ません。

Side 1の1曲目は「Jah Jah Power
Endure」です。
キーボードのメロディに乗せたコーラス
から、Ras Michaelの感情を乗せた
ヴォーカル、心地良いパーカッション、
淡々と美しく流れるキーボードの
メロディ…。
鎮魂歌を連想させられる、とても
スピリチュアルな美しい曲です。

Ras Michael & The Sons Of Negus - Jah Jah Power Endure


2曲目は「International Year Of The
Child」です。
ギターのメロディにRas Michaelの
ヴォーカルとコーラス、チャントらしく
スローなキーボードのメロディから、
一気にリズミカルなドラミングを中心と
した演奏へと展開していく曲です。
聖と俗が入り混じったような曲作りも、
いかにもRas Michaelらしいところ。

3曲目は「Where Is Your Goldmine」
です。
Side 1の最後を飾る大曲です。
ホーンの華やかなメロディにフルート、
Ras Michaelの感情を抑えたヴォーカルと
パーカッションの連打がジワっと迫って
来る曲です。

RAS MICHAEL & THE SONS OF NEGUS - Where Is Your Goldmine


Side 2の1曲目は「International
Children Dub」です。
Side 1の2曲目「International Year
Of The Child」のダブ・ヴァージョン
です。
ダブワイズは控えめで、キーボードと
ギターのメロディを中心とした、インスト
に近いダブです。

2曲目は「Stop Paying The Price For
Sin」です。
Chinna Smithのギターとパーカッション
のリズムが心地良い曲です。
ある意味ガチッと作り込まず、その場の
空気をうまくアドリヴで入れて来るのが
彼らのやり方で、その臨場感も魅力です。

STOP PAY THE PRICE OF SIN ⬥Ras Michael & The Sons Of Negus⬥


3曲目は「Unity」です。
ギターのメロディにドラミング、遠くで
聴こえるようなRas Michaelの
ヴォーカル、心地良いパーカッションの
リズム…。
まるで瞑想空間を漂っているような曲
です。

Ras Michael & The Sons of Negus--UNITY


ざっと追いかけてきましたが、やはり
良くも悪くも「深いなぁ…」というのが
実感です(笑)。
この70年代から80年代に、これほど
深く、ある意味呪術的で、美しく、重厚
で…という独特のレゲエの世界を作り上げ
たというのは、やはり驚異的な事なんです
ね。

Ras Michael & The Sons Of Negusという
グループは、ルーツ・レゲエ、特に
ナイヤビンギを語る上で忘れる事の出来
ないアイコンのひとつなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Ras Michael & The Sons Of Negus
○アルバム: Disarmament
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Ras Michael & The Sons Of Negus「Disarmament」曲目
Side 1
1. Jah Jah Power Endure
2. International Year Of The Child
3. Where Is Your Goldmine
Side 2
1. International Children Dub
2. Stop Paying The Price For Sin
3. Unity