今回はCultureのアルバム

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「Africa Stand Alone」です。

Cultureは1976年にJoe Gibbs
プロデュースの曲「Two Sevens Clash」
で衝撃的なデビューを飾った3人組の
コーラス・グループです。

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Culture ‎– Two Sevens Clash (1977)

リード・ヴォーカルのJoseph Hill、
コーラスのAlbert WalkerとKenneth
Paleyからなる3人組のグループとして
活躍し、ルーツ・レゲエの時代には
Joe Gibbsや女性プロデューサーの
Sonia Pottingerの元に多くの素晴らしい
アルバムを残しています。

82年に二人のバック・コーラスが離れ、
以後はJoseph HillがCultureを名乗る
ようになります。
その後も一人で活躍を続けましたが、
2006年に亡くなっています。

ネットのDiscogsによると、今までに共演
盤を含めて31枚ぐらいのアルバムと、
99枚ぐらいのシングル盤を残していま
す。

アーティスト特集 Culture (カルチャー)

Culture (band) - Wikipedia

今回のアルバムは1978年にUSの
April Recordsからリリースされた
Cultureのセカンド・アルバムです。

今回のアルバムはちょっと曰く付きの
アルバムで、金払いの悪いJoe Gibbs
の元を離れたCultureが契約したのが
このApril Recordsなんだそうです。
ところがこのApril Recordsの
セイモア・カミングス(Seymour
Cummings)という男はお金を支払わず、
録音中のCultureのテープを持ち去って
しまって、勝手にUSとUKでレコードを
販売してしまったんだとか。
Cultureのメンバーが全く報酬を受け
取っていないと主張するアルバムなんです
ね。

ただアルバム自体の音楽の出来は素晴ら
しく、Joseph Hillとコーラス・ワーク
担当の2人のヴォーカルのバランスが
うまく取れた内容で、とても聴き心地の
良いアルバムに仕上がっています。

手に入れたのは日本のVivid Soundという
レーベルからリリースされたLPでした。
中には1979年4月3日付の遠藤斗志也
さんという方の解説文と、英文の歌詞が
書かれたライナー・ノーツが入っていま
した。
おそらく日本では79年にリリースされた
ものと思われます。

このアルバムは私が初めにレゲエを集めて
いた20代の頃に購入したもので、
おそらくその79年頃に購入したのでは
ないかと思われます。

Side 1が5曲、Side 2が4曲の全9曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Special thanks to these musicians:
Percussion: Bernard Shaw, George Subratie
Guitar: Merrick Dyer
Bass: Clynton Rowe
Drums: Glen Washington
Keyboards: Phillip Williams

Recorded and mixed at Harry J's Recording Studio, Kingston, Jamaica
Engineer: Sylvan Morris
Peace and Love to all my friends and enemies
Produced by SC and Jaime Hatcher for Dragon Productions

となっています。

ミュージシャンはパーカッションに
Bernard ShawとGeorge Subratie、ギター
にMerrick Dyer、ベースにClynton Rowe、
ドラムにGlen Washington、キーボード
にPhillip Williamsという布陣です。

レコーディングとミックスはジャマイカの
キングストンにあるHarry J's Recording
Studioで行われ、エンジニアは
Sylvan Morris、プロデュースは
SC(Seymour Cummings)とDragon
ProductionsのJaime Hatcherとなって
います。

Sylvan MorrisはStudio Oneのダブを
作ったDub Specialistとしても知られる
エンジニアで、たぶんこの頃もHarry J's
と掛け持ちでStudio Oneののエンジニアも
していたのではないかと思われます。

アルバムに付いていたライナー・ノーツ
にはVivid Soundの「発売にあたって」と
いう、次のようなメッセージが書かれて
います。

「『入手困難』というファンにとって
大きな障害は、音楽の価値観・聞き方を
変えてしまい、本来、音楽のもつ素晴らし
さを埋もれさせてしまう危険性が生ずる
のです。こうした中にあって国内大手
メーカーだけにこの解決を期待することは
現状として無理な点があります。
ヴィヴィド・サウンドは一人のファンと
して熱意をもってレコードの制作に取り
組み、多くのファンの方に喜んでもらえる
提供が音楽の提供に役立つと信じていま
す。」

その制作の経緯からこの79年の時点で、
このアルバムの『入手困難』という状況が
あったのかもしれません。
またそうした怪しげなプロダクションの
アルバムは大手メーカーとしては提供し
づらく、こうしたアルバムを提供する事の
批判もあったのかもしれません。

ちなみに当時はレアなアルバムだったの
かもしれませんが、ネットで調べてみた
ところレゲエレコード・コムでも売られて
いたので、今ではそれほどレア度は高く
なさそうです。

さて今回のアルバムですが、いろいろ問題
のあるアルバムである事は間違いありま
せんが、内容的にはJoseph Hillと
コーラスとのバランスも良く、内容的には
見るべきものが多い、なかなか悪くない
アルバムなんですね。

このCultureというグループはやはり何と
いってもリード・ヴォーカルのJoseph
Hillの個性が強烈なグループで、その
独特の歌いぶりは「Culture節」とでも
言いたくなるような、独特の個性を持った
歌い方なんですね。
その分2人のハーモニーが抑え気味で、
コーラス・グループとしてはいく分魅力に
欠ける部分があるんですね。
ただ今回のアルバムではもう少しコーラス
が前に出ていて、聴き心地がすごく良いん
ですね。

解説文などを読むとこのCultureは
Joe Gibbsでのデビュー曲「Two Sevens
Clash」がヒットして衝撃的なデビューを
飾ったものの、金銭的には恵まれない状態
でJoe Gibbsを離脱し、April Recordsに
移ったもののこちらも金銭が支払われず、
女性プロデューサーのSonia Pottingerの
元にで移籍するという事になったんです
ね。
プロデューサーもJoe Gibbs→Seymour
Cummings→Sonia Pottingerと変わった訳
ですが、同時にエンジニアもJoe Gibbsの
元ではErrol Thompson、今回のアルバム
ではSylvan Morris、そしてSonia
Pottingerの元ではErrol Brownと、3人
の優秀なミキサーと仕事をする事になるん
ですね。
このミキサーの違いがこの個性の強い
コーラス・グループCultureの場合には
如実に表れていて、とても面白いところ
です。

例えばJoe Gibbsからリリースされた
「Two Sevens Clash」の場合はミキサー
のErrol Thompsonのポップな感覚が生き
たミックスで、The Professionalsの
ホーンを交えた華やかなバックのサウンド
に、Joseph Hillの個性的なヴォーカルを
前面に押し立ててコーラスはちょっと
控えめな印象。

そして女性プロデューサーSonia
Pottingerの元でのErrol Brownのミックス
は、Joe Gibbsの頃よりももう少し
ルーツ・レゲエらしいサウンドながら、
Joseph Hillの個性的なヴォーカルを
前面に押し立てた楽曲が多く、それに
応える為かJoseph Hillもまるで泣き叫ぶ
ような個性的な歌声を披露している、
いかにも「Culture節」といった曲が多い
んですね。
そうしたアルバムをこのSonia Pottinger
とErrol Brownのコンビで、78年に3枚目
「Harder Than The Rest」、そのあとに
ダブ・アルバムを挟み、79年に
「International Herb」と「Cumbolo」と
いう2作のアルバムを作っています。

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Culture ‎– Harder Than The Rest (1978)

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Culture ‎– International Herb (1979)

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Culture ‎– Cumbolo (1979)

それに対する今回のSylvan Morrisが
ミックスしたアルバムですが、バックの
演奏にホーンもあまり使われておらず、
キーボードを中心とした演奏は全体に少し
地味目な印象です。
ただその分Joseph Hillとハーモニーの
バランスがとても良く、コーラス・
グループとしてのCultureの魅力がうまく
表現されているんですね。

そのあたりはミックスなどを担当した
Sylvan Morrisの手腕が発揮されているの
ではないかと思います。
解説文を読むとSeymour Cummingsが録音
途中のテープを持ち帰ってアメリカで
ミックスしたと書かれていますが、最後の
曲「Behold The Land」などは前半が歌、
後半がダブのディスコ・ミックス曲で、
こういうミックスをアメリカでしたとは
とても思えないんですね。
おそらくSylvan Morrisのミックスで、
彼の名仕事のひとつではないかと思い
ます。

この70年代後半から80年代前半の
Sylvan Morrisは、Dub Specialist名で
Studio Oneのダブを作ったり、Studio
Oneの古い音源を使ってSugar Minottや
Freddie McGregorといった若手の
シンガーをプロデュースしたり、あの
Bunny Wailerのダブ・アルバム
「Dubd'sco Vol. 1」を制作したりと、
レゲエの歴史に残る名仕事を数多く
行っているんですね。

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Bunny Wailer ‎– Dubd'sco Vol. 1 (1978)

このアルバムもそうしたSylvan Morris
の、才能が発揮されたアルバムのひとつ
なのかもしれません。
特にSide 2の4曲目「Behold The Land」
は書いたようにディスコ・ミックス曲で、
あの「Dubd'sco Vol. 1」を彷彿とさせる
ような、溶け込んでいくようなミックス
にヤラレちゃう曲です。

ちなみにこの「Behold The Land」は、
Joseph Hillが初めてStudio Oneで録音
した同名曲のセルフ・カヴァーなんだ
とか。

Cultureのアルバムの中では少し地味目
なアルバムですが、聴けば聴くほどその
魅力が滲み出て来るような、なかなか
侮れないアルバムなんですね。
名前を挙げた「Behold The Land」以外
にも、Bunny Wailerのカヴァー曲
「This Train」など、ここでしか聴け
ない曲が収められたアルバムで、良い
時期のCultureを知る上ではぜひ聴いて
おきたいアルバムだと思います。

Side 1の1曲目は「Love Shine Brighter」
です。
ギターのメロディにJoseph Hillの比較的
ソフトで丁寧なヴォーカル、良い
タイミングで入って来るコーラスがイイ
感じの曲です。

CULTURE : Love Shines Brighters (1978)


2曲目は「This Train」です。
書いたようにBunny Wailerのカヴァー曲
のようです。
ギターとキーボードのメロディに、Joseph
Hillのシッカリと歌い込もうという意思
の感じられるヴォーカルが、グッと来る曲
です。

3曲目は「Dog Ago Nyam Dog」です。
ギターとサックス、パーカッションの
メロディに、Joseph Hillの表情豊かな
ヴォーカルとコーラスが印象的。
このアルバムの中でも「Culture節」が
感じられる1曲。

4曲目は「Tell Me Where You Get It」
です。
浮遊感のあるキーボードのメロディ、
コーラスをバックにしたJoseph Hillの
ノビノビとしたヴォーカルにコーラスが
魅力的。

culture tell me where you get it


5曲目は「More Vacancy」です。
心地良いドラムのビートにギターを中心と
したメロディ、コーラス・ワークに乗せた
Joseph Hillの表情豊かなヴォーカルが
とても魅力的な曲です。

Side 2の1曲目は「Iron Sharpen Iron」
です。
独特の浮遊感のあるキーボードのメロディ
に、Joseph Hillの個性的なヴォーカルに
被るように入って来るコーラス・
ワーク…。

2曲目は「Garvey Rock」です。
ミリタント・ビートに乗せたギターと
キーボード、ピアノのメロディに、
Joseph Hillのヴォーカルと合間良く入る
コーラス・ワークが魅力的な曲です。

Culture - Garvey Rock


3曲目は「Innocent Blood」です。
浮遊感のあるキーボードとギターの
メロディに、表情豊かなJoseph Hillの
ヴォーカルとコーラス・ワークがとても
魅力的な曲です。

Culture - Innocent Blood


4曲目は「Behold The Land」です。
書いたように前半は歌、後半はダブの
ディスコ・ミックスの曲です。
ミリタントなビートに乗せたギターと
キーボードのメロディに、Joseph Hill
らしい独特なヴォーカル、心地良い
コーラス・ワーク…。
後半の滲んで行くようなダブワイズも
秀逸な1曲です。

Culture - Behold The Land


ざっと追いかけてきましたが、事の経緯は
いろいろあるアルバムですが、ちょっと
地味ながら聴けば聴くほど味の出て来る
スルメのようなアルバムで、この時代の
ルーツ・レゲエが好きな人には特に
おススメしたいアルバムです。

特に最後の「Behold The Land」は、ダブ
好きにも必聴の1曲。
Sylvan Morrisというミキサーの素晴ら
しさが凝縮した曲です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Culture
○アルバム: Africa Stand Alone
○レーベル: April Records (Vivid Sound)
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Culture「Africa Stand Alone」曲目
Side 1
1. Love Shine Brighter
2. This Train
3. Dog Ago Nyam Dog
4. Tell Me Where You Get It
5. More Vacancy
Side 2
1. Iron Sharpen Iron
2. Garvey Rock
3. Innocent Blood
4. Behold The Land