今回はPrince Far I & The Arabsのアルバム

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「Cry Tuff Dub Encounter Chapter Ⅳ」です。

Prince Far I(本名:Michael James
Williams)はルーツ・レゲエの時代から
活躍したディージェイで、プロデューサー
でもあった人です。
自ら「チャンティング」と称した、独特の
朗読するようなトースティング・スタイル
で知られています。
そうしたチャンティング・スタイルの
ディージェイ・アルバムのほか、
「Cry Tuff Dub Encounter」シリーズなど
のダブ・アルバムもリリースしています。

またUKのパンクとレゲエを融合した
ようなレーベルOn U Soundsレーベルの
白人の主催者Adrian Sherwoodとも交流が
深く、On U SoundsのユニットSingers &
Playersなどにも参加しています。

1983年に銃により殺害されています。

A href="https://en.wikipedia.org/wiki/Prince_Far_I">Prince Far I - Wikipedia

ジャマイカでは多くのミュージシャンが
銃によって殺害されているんですね。

ジャマイカ・レゲエ音楽史における銃事件に迫る…

今回のアルバムは1981年にUKの
Trojan Recordsからリリースされた
Prince Far I & The Arabs名義のダブ・
アルバムです。

この「Cry Tuff Dub Encounter」シリーズ
は今回の4作目まで制作されていて、
78年にAdrian Sherwood のレーベル
Hitrunから「Chapter 1」が当時は単に
The Arabs名義でリリースされ、79年に
UKのVirgin傘下のレーベルFront Line
から「Part 2」がPrince Far I名義で
リリースされ、80年にUKのDaddy Kool
というレーベルから「Chapter Ⅲ」が
Prince Far-I And The Arabs名義で
リリースされています。

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Prince Far I & The Arabs ‎– Crytuff Dub Encounter Chapter 1 (1978)

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Prince Far-I And The Arabs ‎– Cry Tuff Dub Encounter Chapter Ⅲ (1980)

レーベルや名義の表記などが微妙に
変わっていますが、78年から81年まで
毎年1枚ずつ作られたシリーズなんです
ね。

今回のアルバムの元になったアルバムは
同じ81年に作られた、Prince Far Iの
アルバム「Voice Of Thunder」です。

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Prince Far I ‎– Voice Of Thunder (1981)

プロデュースとアレンジはMichael Williams
で、バックはPrince Far Iのバック・
バンドThe Arabsが担当したアルバムで、
Prince Far Iのトースティング
(チャンティング)が抜けた分、より
Deadly Headlyのサックスが魅力を放った
アルバムとなっています。

手に入れたのは私がレゲエを聴き始めた、
まだ20代だった頃、おそらく発売された
当時にLPで購入したTrojan Recordsの
アルバムです。

Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Recorded at Channel One Recording Studio 1981
Engineer: Barnabas, Maxie

Musicians:
Drums: Eric 'Fish' Clarke
Bass: Professor Larry Silvera
Rhythm Guitar, Lead Guitar: Andy, Little Dee
Keyboards: Steely from Roots Radics, Tarzan, Tony Asher
Melodica: Tony Asher
Horns: Deadly Headly
Percussions: Jah Lloyd, Scully
Congo Drums: Scully

Musical Arrangements by Michael Williams

となっています。

レコーディングは1981年にジャマイカ
のChannel One Recording Studioで行わ
れ、エンジニアはBarnabasとMaxieが担当
しています。

ミュージシャンはドラムにEric 'Fish'
Clarke、ベースにProfessor Larry
Silvera、リズム・ギターとリード・
ギターにAndyとLittle Dee、キーボードに
Steely(Roots Radics)とTarzan、
Tony Asher、メロディカにTony Asher、
ホーン(アルト・サックス)にDeadly
Headly、パーカッションにJah Lloydと
Scully、コンゴ・ドラムにScullyという
布陣です。

アレンジ(おそらくプロデュースも)は
Michael Williamsとなっています。

さて今回のアルバムですが、全体の印象
としてはいかにもPrince Far Iらしい
クール・ダブで、それにDeadly Headly
の濃厚なアルト・サックスが乗った演奏は
最高の聴き心地で、なかなか魅力的な
ダブ・アルバムだと思います。

パンクとレゲエの中間的なレーベル
On-U Sounds(その前身はHitrun)の
白人プロデューサーAdrian Sherwood と
仲の良かったPrince Far Iですが、その
サウンドは濃いダミ声とは裏腹に割と
スッキリとまとまったちょっとロック寄り
のサウンドを得意としていたんですね。
そのあたりが白人のAdrian Sherwood と
うまくコラボできた要因のひとつなのかも
しれません。

今回のアルバムの元のアルバム「Voice
Of Thunder」などを聴くと、やはり彼の
濃いチャンティングが印象に強く残ります
が、バックの音だけ聴いていると意外と
スッキリと聴き易いサウンドなんですね。
この人は基本的にダブ・アルバムには自分
のトースティング(チャンティング)は
入れない人なので、その為彼の
ディージェイ・アルバムとダブ・アルバム
では、彼の声が入っているいないで、
ずいぶん印象が違います。
ディージェイ・アルバムでは濃い印象が
残りますが、ダブ・アルバムでは比較的
スッキリとしたクール・ダブという印象
なんですね。
レゲエのセンターではなく、ちょっと
ロック寄りというのがこの人の魅力です。

今回のアルバムもそうしたPrince Far I
らしいクールな空気感が漂うダブが聴ける
アルバムで、そのあたりがとても魅力的
です。
多少好き嫌いの分かれるところがあるかも
しれませんが、このPrince Far Iのダブ・
アルバムは内容の良いアルバムが多いん
ですね。

さらに今回はThe Arabsの一員として参加
したサックス奏者のDeadly Headlyが、
とても素晴らしいサックス・プレイを
聴かせています。
そのアルト・サックスの濃いプレイがこの
アルバムに一華を添えていて、この
アルバムをより魅力的なものにしているん
ですね。

多少個人的な感情も入りますが、この
サックス奏者のFelix 'Deadly Headly'
Benettは、私がもっとも好きなレゲエの
プレイヤーのひとりです。
彼の唯一ともいえる82年のソロ・
アルバム「35 Years From Alpha」は、
私がもっとも好きなレゲエのアルバムなん
ですね。

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Deadly Headley ‎– 35 Years From Alpha (1982)

70年代後半から80年代の前半の時期に
このDeadly Headleyは、UKのOn-U Sounds
で活躍していて、Prince Far Iなどとも
よくコラボしていますが、この時期が彼が
サックス・プレイヤーとしてもっとも輝い
ていた時期なんですね。
今回のアルバムの彼のサックス・プレイ
も、ダブやインスト好きには必聴のプレイ
だと思います。
すべての曲ではありませんが多くの曲で
彼のプレイが聴けて、その内容がとても
良いんですね。
特にSide 1の4曲目「Sound Gesture」と
Side 2の1曲目「Earth Stone Shake
Down」の彼のサックス・プレイはとても
濃厚で、この人が好きな人は間違いなく
聴いた方が良いと思います。

全体にこのDeadly Headleyのサックス・
プレイがイイ感じに効いていて、この
「Cry Tuff Dub Encounter」シリーズの
中でも、破壊力抜群の出色の出来の1枚
だと思います。

Side 1の1曲目は「Foundation Stepper」
です。
元のアルバム「Voice Of Thunder」に
収められた「Ten Commandments」という
曲のダブです。
ちょっとJazzyなホーンとレゲエらしい
パーカッションの演奏に乗せたダブです。
かなりアダルトな空気感が魅力。

Prince Far I & The Arabs - Foundation Stepper


2曲目は「Deadly Command」です。
1曲目と同じ「Foundation Stepper」の
リディムが使われています。
タイトルからも解るように、こちらは
よりDeadly Headleyのサックスを前面に
押し出した印象のダブです。
エフェクトやダブワイズも強烈で、この
時代らしいワン・ドロップが強調されて
います。

DUB LP- CRYTUFF DUB ENCOUNTER CHAPTER IV - PRINCE FARI & THE ARABS - Deadly Command


3曲目は「Time Stone Turning」です。
元のアルバム「Voice Of Thunder」に
収められた「Skinhead」という曲の
ダブです。
渋いベースのメロディと印象的なワン・
ドロップのドラミングを中心としたダブ
です。
イイ感じで入って来る、飛び道具の
エフェクトが秀逸。

Prince Far I - Time Stone Turning & Sound Gesture


4曲目は「Sound Gesture」です。
元のアルバム「Voice Of Thunder」に
収められた「Every Time I Hear The
Word」という曲のダブです。
リディムはJackie Mittoo & Sound
Dimensionの「Drum Song」。
いかにもDeadly Headleyらしい香り立つ
ようなサックスのメロディに、完全に
ヤラレちゃう曲です。
Deadly Headley好きにはタマラない
強烈な1曲です。

リズム特集 Drum Song (ドラム・ソング)

Side 2の1曲目は「Earth Stone Shake
Down」です。
元のアルバム「Voice Of Thunder」に
収められた「Give I Strength」という
曲のダブです。
リディムはBurning Spearの名曲
「Marcus Garvey」か?
オリジナルはミリタント・ビートの代表曲
ですが、こちらはワン・ドロップのリズム
の演奏です。
ホーンとギター、ピアノの強力なワン・
ドロップのメロディが印象的なダブです。

Prince Far I - Earh Stone Shakedown & Stone African Ground


2曲目は「Lion Stone」です。
元のアルバム「Voice Of Thunder」に
収められた「Head Of The Buccaneer」
という曲のダブです。
浮遊感のシンセのメロディに、心地良い
ワン・ドロップのドラミングのダブ。

3曲目は「Stone African Ground」
です。
ギターとキーボードのメロディに乗せた
渋めのダブです。

4曲目は「Destruction Sound Battle」
です。
ドラムを中心とした短めの曲です。

ざっと追いかけてきましたが、70年代
後半から80年代前半にかけてUKと
ジャマイカを股にかけて活躍した
Prince Far Iとその仲間、Deadly Headley
などのThe Arabsの演奏が楽しめるアルバム
で、内容は悪くないと思います。
ある意味レゲエのセンターというサウンド
ではありませんが、新しい音楽への模索が
感じられ1曲1曲の細部まで神経が行き
届いたそのサウンドは、かなりクオリティ
が高くとても魅力的です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Prince Far I & The Arabs
○アルバム: Cry Tuff Dub Encounter Chapter Ⅳ
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Prince Far I & The Arabs「Cry Tuff Dub Encounter Chapter Ⅳ」曲目
Side 1
1. Foundation Stepper
2. Deadly Command
3. Time Stone Turning
4. Sound Gesture
Side 2
1. Earth Stone Shake Down
2. Lion Stone
3. Stone African Ground
4. Destruction Sound Battle