今回はCarl Meeksのアルバム

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「Weh Dem Fah」です。

Carl Meeksは80年代の半ば頃から独特の
ファルセットの節回しで活躍するダンス
ホール・シンガーです。
ネットのDiscogsによると、88年に今回
のアルバム「Weh Dem Fah」と、89年に
「Jackmandora」の2枚のアルバムを残し
ているほか、72枚ぐらいのシングル盤を
残しています。

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Carl Meeks ‎– Jackmandora (1989)

アーティスト特集 Carl Meeks (カール・ミークス)

今回のアルバムは1988年にジャマイカ
のHugh 'Red Man' Jamesのレーベル
Redman Internationalからリリースされた
彼のファースト・アルバムです。

プロデュースはHugh 'Red Man' Jamesで、
バックはSteely & Clevieなどが務めた
アルバムで、表題曲の「Weh Dem Fah」や
「Hey Bad Boy」、「Johnny」などの、
当時の彼のヒット曲が収められています。
彼独特のアウト・オブ・キーが少し
入った、ハイトーン・ヴォイスの
ヴォーカルが楽しめるアルバムで、この
デジタルのダンスホール・レゲエならでは
の魅力のあるアルバムです。

手に入れたのはRedman Internationalから
リリースされたLPの中古盤でした。

ちなみにこのアルバムのジャケットの表記
はSide 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲と
なっていますが、実はSide 1に書かれて
いない5曲目が存在します。
盤面のシールには5曲目に「Johnny」と
いう曲が、書かれているんですね(笑)。
この曲もCarl Meeksのヒット曲らしいの
ですが、なぜか表記が抜けています。

Side 1が5曲、Side 2が4曲の全9曲。
書いたようにSide 1の5曲目「Johnny」
の表記が、ジャケットでは抜けています。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians:
Drums: Clevie
Bass: Steele
Guitar: Danny Brownie
Synth: Fox, Steele
Produced by: Hugh James (Red Man)

Album Designed by: Limonious

となっています。

バックのミュージシャンはドラムに
Cleveland 'Clevie' Browne、ベースに
Wycliffe 'Steely' Johnson、ギターに
Danny Brownie、シンセにOwen 'Fox'
StewartとSteelyという布陣で、
プロデュースはHugh 'Red Man' James
となっています。

ジャケット・デザインはLimonious。

さて今回のアルバムですが、Carl Meeks
独特のハイトーン・ヴォイスが楽しめる
アルバムで、内容は悪くないと思います。

このCarl Meeksの歌唱法ですが、この
時代にTenor SawやNitty Grittyなどで
大流行したアウト・オブ・キーとは微妙
に違う歌唱法です。

アウト・オブ・キーとは普通に歌う
ルート音より5度上で歌い切るという
歌唱法で、それによって独特の浮遊感が
生まれる歌唱法です。
この80年代後半のデジタルのダンス
ホール・レゲエ、「コンピューター・
ライズド」の時代に大流行した歌唱法で、
Tenor SawやNitty Grittyなどがその
代表的なシンガーとして知られています。

ただこのCarl Meeksの曲を聴いてみると、
すべてをアウト・オブ・キーで歌い切る
訳では無く、サビの部分はさらに高音の
ハイトーン・ヴォイスで歌いこなすという
かなり高度なテクニックを使っています。
「2つの高音の声」を使いこなすという
歌唱法なんですね。
ある意味アウト・オブ・キーの進化系
と言えるような歌唱法なのかもしれま
せん。

同じ時期に活躍したPinchersなども、初め
の頃はTenor Sawばりのアウト・オブ・
キーで歌っていますが、徐々にアウト・
オブ・キーと美声とを使い分けるような
独特の歌い方に進化しています。
こうしたさらに高度な歌い方を発明して
行くのも、いかにもレゲエらしいところ
です。

またこの80年代後半は、King Jammyに
よるデジタルのダンスホール・レゲエ、
通称「コンピューター・ライズド」の嵐が
吹き荒れた時代で、ジャマイカの音楽史の
中でも、もっともユニークな音楽が作られ
た時代だったんですね。
その時代に発案されたアウト・オブ・キー
という歌唱法は、どこかクレイジーで、
イカレた歌い方のようで、多くの聴衆の心
を捉えたんだと思います。
今回のアルバムでもアップ・テンポな
デジタルのリズムに、Carl Meeksのハイ
トーンな歌声が絡む楽曲は、どこか
クレイジーな感覚がありとても魅力的
です。

アルバムリリースも少なくその人気も
短期間だったのかもしれないけれど、
当時大人気だったJammysに対抗して、
Hugh 'Red Man' Jamesが起こしたレーベル
Redman Internationalのエース・シンガー
だったのがこのCarl Meeksだったんです
ね。

その型破りな歌声は、やはり一聴の価値が
あります。

Side 1の1曲目は「Beautiful Woman」
です。
歯切れの良いデジタルなリズムに浮遊感の
あるハイトーン・ヴォイス、そこから普通
の声に戻り、ジックリと歌い込んでいく曲
です。
声の使い分けが見事な曲です。

2曲目は「Granny Say No Worry」です。
キーボードを中心としたデジタルなリズム
に、Carl Meeksの心地良い歌声、サビで
高音のハイトーン・ヴォイスに切り替わる
瞬間に何とも言えない快感があります。

Carl Meeks - Granny Say No Worry


3曲目は「Red Eye Lover」です。
リディムはWayne Smithの大ヒット曲
「Under Me Sleng Teng」。
デジタルらしいドラミングから、
キーボードを中心としたメロディに、
Carl Meeksのソフトな歌声、こちらも
ハイトーンにゾクゾク。

Carl Meeks - Red Eye Lover - Redman LP - 1988


リズム特集 Sleng Teng (スレンテン)

4曲目は「Front Line」です。
ホーンのメロディのイントロから、ワン・
ドロップのデジタルなドラミングに乗せた
キーボードのメロディ、Carl Meeksの浮遊
感のあるヴォーカルが心地良い曲です。
こちらはハイトーン・ヴォイスは使わず、
アウト・オブ・キーだけで歌い切っていま
す。

Carl Meeks - Frontline (1988 - Redman)


5曲目は「Johnny」です。
裏ジャケの表記が抜けている曲です。
リディムはTippa Lee & Rappa Robertsの
「London City」。
ユッタリしたワン・ドロップのデジタル
のリズムに、Carl Meeksのソフトな
ヴォーカルが魅力的な曲です。

Side 2の1曲目は表題曲の「Whey Dem Fa」
(ジャケットの綴りはWeh Dem Fah)です。
彼の大ヒット曲のようです。
いきなりアカペラのハイトーン・ヴォイス
から、ズシっとしたキーボードのベース音
を基調とした演奏に乗せたヴォーカル…。
サビで入るハイトーン・ヴォイスが、
めちゃめちゃカッコいいです。

Carl Meeks - A weh Dem Fah


2曲目は「Without Your Love」です。
サックスはTommy McCookか?
聴き覚えのあるフレーズのサックスの
メロディに、Carl Meeksの高音を生かした
心地良いヴォーカル…。
ヤラレちゃう1曲です。

Carl meeks - Without your love [ By Samroots1980 ]


3曲目は「Hey Bad Boy」です。
歯切れ良いデジタルらしいドラミングに
乗せたメロディに、刻むように歌う
Carl Meeksの滑らかなヴォーカル…。
こちらもサビのハイトーン・ヴォイスに
ヤラレます(笑)。

4曲目は「Evil Eyes」です。
ピアノ音と詰まったようなサックス音の
イントロから、刻むようなギターと
デジタルなドラミング、落ち着いた
Carl Meeksのヴォーカル…。

ざっと追いかけてきましたが、やはり
このデジタルのダンスホール期特有のノリ
と、Carl Meeksの彼独自のハイトーン・
ヴォイスが合わさった楽曲は、この時代
ならではの魅力があります。
この80年代後半のデジタルのダンス
ホール・レゲエが知りたいなら、この
Carl Meeksもぜひ聴いておくべき、
とてもキラーなアーティストのひとり
ではないでしょうか。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Carl Meeks
○アルバム: Weh Dem Fah
○レーベル: Redman International
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1988

○Carl Meeks「Weh Dem Fah」曲目
Side 1
1. Beautiful Woman
2. Granny Say No Worry
3. Red Eye Lover
4. Front Line
5. Johnny
Side 2
1. Whey Dem Fa
2. Without Your Love
3. Hey Bad Boy
4. Evil Eyes