今回はErrol Scorcherのアルバム

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「Roach In A De Corner」です。

Errol Scorcher(本名:Errol Archer)
は、70年代後半から80年代にかけて
活躍したディージェイです。
ネットのDiscogsによると、78年に
Tony Tuffとのクラッシュ・アルバム
「Tony Tuff Meets Erroll Schorder」、
同じ80年にErrol Scorcher &
The Revolutionaries名義のアルバム
「Rasta Fire」、80年に今回の
アルバム「Roach In A De Corner」と、
Horace Andy & Errol Scorcher名義の
コンビネーション・アルバム「Unity
Showcase」の4枚のアルバムをリリース
しているほか、72枚ぐらいのシングル盤
をリリースしています。

そうした活躍をしたErrol Scorcherです
が、2012年に亡くなっています。

Errol Scorcher - Wikipedia

'Roach Inna Di Corner'のヒットで知られたエロール・スコーチャー(Errol Scorcher)

今回のアルバムは1980年にジャマイカ
のScorcherというレーベルからリリース
された彼のソロ・アルバムです。

表題曲の「Roach In A De Corner」は彼の
最大のヒット曲だったようで、ゴキブリ用
の殺虫剤を噴霧しながらのステージが有名
なシンガーだったようです。
そのヒット曲を中心にこのアーリー・
ダンスホールの時代らしいトースティング
が楽しめるのが今回のアルバムです。

手に入れたのはScorcherレーベルから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が4曲、Side 2が5曲の全9曲。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Arrnged by: E. Scorcher
Produced by: E. Scorcher & Tippa
Recorded by: King Tubbys
Distributed: W. Riley

Graphics: D. Lawrence

という記述があります。

アレンジはE. Scorcherで、プロデュース
はE. Scorcher & Tippa、レコーディング
はKing Tubbysで行われています。
おそらくディージェイの声入れがKing
Tubbysで、バックの音源はすでに録音
されたものが使われたのではないかと
思われます。
バックのミュージシャンの記載がないの
は、ちょっと残念なところです。

グラフィックスはD. Lawrenceとなって
います。
アルバムのタイトルが「コーナー(角)に
居るゴキブリ」となっていますが、裏面の
ジャケには「Bim Kill Him」と言いながら
ゴキブリに殺虫剤をかけているErrol
Scorcherと思われる男性のイラストが描か
れています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この
アーリー・ダンスホールの時代らしい
Errol Scorcherのトースティングが楽し
めるディージェイ・アルバムで、内容は
悪くないと思います。

このアルバムですが前にネットのYouTube
でたまたまこのアルバムを見つけて、聴い
てみたら内容が良かったので、それ以来
出来れば手に入れたいと密かに探していた
アルバムでした。
前にネットのレゲエ・コレクター・コムで
中古で3千円ぐらいで売られていたのを
見かけた事があったんですが、お金が
入ったら買おうと思って次に見た時には
すでに売れてしまっていたアルバムでし
た(苦笑)。
それが先日新宿のdisk unionで850円で
売られているのを見つけて、心の中で
ガッツ・ポーズをして購入したアルバム
でした(笑)。

このErrol Scorcherという人はジャマイカ
のローカルで活躍した人のようですが、
近年こうした70年代や80年代に活躍
したレアな人のアルバムが徐々に手に入り
にくくなっている現状は、この時代の
アルバムを集めている人間にとっては
とても悩ましいところです。

実際にネットのレゲエレコード・コムなど
の品揃えを見ても、10年前ぐらいと
較べると、表向きは数があるもののかなり
70年代や80年代のアルバムの品揃えが
減って来ているのを感じます。
実際にこうしてルーツ・レゲエのブログを
書いていても、売られていないアルバムも
多く、そうしたアルバムばかりブログに
書く事になってしまったりするんです
ね(苦笑)。

さて話を戻しますが、今回のアルバムは
ネット上の販売サイトなどを見ても、
あまり情報がありません。
わずかにdisk unionのこのアルバムの紹介
ページに「ゴキブリをテーマにしたいかに
もくだらないコンセプトのアルバムで、
いかにもジャマイカらしく最高です!!」と
書かれていたくらいです(笑)。

確かに「ゴキブリをテーマにした
アルバム」という事になれば、「くだら
ないコンセプトのアルバム」と書かれて
しまうのは仕方の無いのかもしれません
が、この「コーナー(角)に居る
ゴキブリ」とは何を指すのでしょうか?
もしかしたら政治的な比喩なのか?
この曲がヒットしたのは79年ぐらい
らしいのですが、この70年代後半には
Ranking DreadやTappa Zukieなどの
ディージェイがかなり政治的な歌を歌って
いる時代なんですね。
まあ「Frog-In-A-Water」などという歌も
歌っているので、おトボケ・ソングを歌う
ディージェイなのかもしれませんが、
ちょっとその歌詞の内容に興味があり
ます。

ちなみに82年にブラック・ホークという
ところから出版された「Reggae '82」と
いう本には、このアルバムと同年の80年
にリリースされたHorace Andy & Errol
Scorcher名義のコンビネーション・
アルバム「Unity Showcase」がレビュー
で紹介されていて、そこには「Z」さんと
いう方の文章で次のように書かれていま
す。

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Reggae '82

「スコーチャーの『プレイヤー』誌に
載った写真にはブッ飛んだ。ゴキブリ殺虫
スプレーをステージからまき散らすという
のだから。(以下省略)」

今となるとこの文章がErrol Scorcherを
知る上で貴重な手掛かりで、この頃に彼は
ヒット曲の「Roach In A De Corner」を
歌いながら、ステージ上から殺虫スプレー
を吹きまくるというパフォーマンスをして
いたことがうかがえます。
実際に『プレイヤー』誌にその写真が
載っていたんですね。

今回のアルバムはそのErrol Scorcherの
最大のヒット曲Sound Dimensionの
「Real Rock」リディムの「Roach In A
De Corner」を中心に、「Shank I Sheck」
リディムの「African Princess」や、
「Bobby Babylon」リディムの「Face In
De Place」、「My Conversation」リディム
の「Paulette You A Fret」、「Vanity」
リディムの「Owner Fe The Donkey」、
「General」リディムの「Flora Lee」
など、このアーリー・ダンスホールの時代
を彩った名リディムが目白押しのアルバム
で、それに乗せたErrol Scorcherの味わい
深いトースティングが楽しめるアルバムに
仕上がっています。

やはり最大の魅力は何かが始まる予感に
満ちたアーリー・ダンスホールの空気感
で、この時代でなければ作れないアルバム
なんですね。

Side 1の1曲目は「African Princess」
です。
リディムはBaba Brooksの「Shank I
Sheck」。
刻むようなギターのメロディにワン・
ドロップのリズム、ちょっとかすれた
Errol Scorcherのトースティングが
魅力。

Errol Scorcher - African Princess (Roach In A De Corner - 1980)


リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)

2曲目は「Face In De Place」です。
リディムはFreddie McGregorの「Bobby
Babylon」。
重いベースとギターのメロディに、ドスン
と落とすようなワン・ドロップ、Errol
Scorcherの流れるようなトースティング。
遅れて入って来るダブワイズしたホーンも
グッド。

リズム特集 Bobby Babylon/Hi Fashion (ボビー・バビロン/ハイファッション)

3曲目は表題曲の「Roach In De Corner」
です。
リディムはSound Dimensionのロック
ステディのヒット曲「Real Rock」です。
キーボードのメロディにドスの効いた
ベース、滑らかで楽しいErrol Scorcher
のトースティング。
後半はダブのショーケース・スタイルの曲
で、後半はドス効いたベースにギターや
ピアノなどが絡む展開。

Errol Scorcher-Roach in a de corner 1980


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

4曲目は「Ninteen Eighty Style」
です。
浮遊感のあるシンセの演奏に、Errol
Scorcherの表情豊かなトースティング。

Errol Scorcher - Ninteen Eighty Style - 1980


Side 2の1曲目は「Paulette You A
Fret」です。
リディムはSlim Smith & The Uniques
のヒット曲「My Conversation」。
リリカルなピアノのメロディに、Slim
Smithなのか?ファルセットな歌声の
ダブワイズ、Errol Scorcherのちょっと
かすれ声の魅力的なトースティング。

Errol Scorcher - Paulette You A Fret (Roach In A De Corner - 1980)


リズム特集 My Conversation (マイ・カンバセーション)

2曲目は「Owner Fe The Donkey」です。
リディムはSugar Minottの「Vanity」と
して知られる曲で、オリジナルはAlton
Ellisの「I'm Just A Guy」です。
ギターのメロディに乗せたErrol Scorcher
の歌うようなシング・ジェイのトース
ティングが魅力的。

Errol Scorcher - Owner Fe The Donkey


リズム特集 I'm Just A Guy (アイム・ジャスト・ア・ガイ)

3曲目は「Frog-In-A-Water」です。
こちらも彼のヒット曲のようです。
子供たちの会話からブクブクという泡の
音、ホーンのメロディに乗せたErrol
Scorcherの楽し気なトースティング…。

Errol Scorcher - Frog In A Water [Tippa 7'', 1979]


4曲目は「Flora Lee」です。
リディムは「General」として知られる
リディムで、オリジナルはHeptonesの
「Love Me Girl」。
浮遊感のあるキーボードに、楽し気な
Errol Scorcherのトースティング。

リズム特集 General (ジェネラル)

5曲目は「Flat Foot Hustling」です。
Side 1の1曲目「African Princess」
と同じ、Baba Brooksの「Shank I
Sheck」のリディムが使われていて、
こちらはヴォーカルの無いダブになって
います。
ギターとピアノのメロディに、心地良い
ドラミング…。

ざっと追いかけてきましたが、やはりこの
時代ならではのワン・ドロップのサウンド
に乗せた、Errol Scorcherのちょっと
しゃがれたトースティングはとても魅力的
です。

すごく個性が強いという人でもなく、その
あたりがこの人のアルバムが少ない理由の
ひとつかもしれませんが、このアーリー・
ダンスの時代に「水を得たカエル」のよう
に生き生きと泳ぐ姿はやはり一聴の価値が
あると思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Errol Scorcher
○アルバム: Roach In A De Corner
○レーベル: Scorcher
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1980

○Errol Scorcher「Roach In A De Corner」曲目
Side 1
1. African Princess
2. Face In De Place
3. Roach In De Corner
4. Ninteen Eighty Style
Side 2
1. Paulette You A Fret
2. Owner Fe The Donkey
3. Frog-In-A-Water
4. Flora Lee
5. Flat Foot Hustling