今回はDennis Bovellのアルバム

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「Brain Damage」です。

Dennis Bovellはバルバドス出身のマルチ
プレイヤーであり、音楽プロデューサー
であり、エンジニアである人です。

バルバトスからUKに12歳の時に移住
した彼は、71年にUKレゲエのバンド
Matumbiを結成し、ギタリストとして活躍
します。

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Matumbi ‎– Seven Seals (1978)

またバンド活動の傍らダブ・グループ
The 4th Street Orchestraとしてダブ・
アルバムを作成したり、プロデューサー
としてダブ・ポエットの詩人Linton Kwesi
Johnsonのアルバム制作に関わったり、
UKで誕生したラヴァーズ・ロック・
レゲエの創始者のひとりであったりと、
幅広い音楽活動を展開しています。

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Linton Kwesi Johnson ‎– Bass Culture (1980)

82年にMatumbiが解散したのちも多くの
アーティストをプロデュースし、時に
Blackbeardという名義なども使用して多く
のダブ・アルバムなどを残してUKレゲエ
の発展に貢献したのが、このDennis Bovell
という人です。

デニス・ボーヴェル - Wikipedia

今回のアルバムは1981年にUKの
Fontanaというメーベルからリリースされ
た彼のソロ・アルバムです。

LP2枚組全16曲でリリースされた
アルバムで、1枚目のLP8曲は歌もの、
2枚目のLP8曲はダブという仕様の
アルバムです。
この時期はまだMatumbiというグループも
存在していたようですが、Dennis Bovell
自身はかなりソロ活動に力を入れていた
ようで、彼らしいポップなセンスを生かし
たかなりの力作アルバムとなっています。

手に入れたのはEMIからリリースされた
CDの中古盤でした。

全16曲で収録時間は約51分。
書いたように初めてリリースされた時には
LP2枚組の仕様のアルバムで、LPの
1枚目8曲は歌もの、LPの2枚目8曲は
ダブという仕様だったようです。
今回のCDでは前半8曲が歌もの、後半
8曲がダブという仕様になっています。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All tracks written by Dennis Bovell and
published by Jacob Ladder Music except:
Track 3: written by Dennis Bovell &
E. Pottinger, published by Jacob Ladder
Music/blue Mountain Music
Track 8: written by Dennis Bovell &
W. Williams, published by Jacob Ladder
Music/Trinmusic

Originally released in 1981

Mixing Engineer: Dennis Bovell
Engineer: Seyoum Netfa, Bill Farley
Produced and arranged by Dennis Bovell
Vocals: Marie Pierre, Dennis Bovell
Drums: Mac Pool, Angus Gaye, Dennis Bovell, Errol Melbourne
Bass: Dennis Bovell
Guitar: Brinsley Ford, John Kpiaye, Dennis Bovell
Keyboards: Dennis Bovell
Piano: Frank Marshall, Tony Robinson
Saxophone: Henry Tenyue, Laura Logic, Steve Gregory
Trombone: Henry Tenyue, Rico Rodriguez
Trumpet: Eddie 'Tan Tan' Thornton
Congas: Phil Towner, Seyoum Netfa
Flugo Horn: Patrick Tenyue
Harmonica: Julio Finn
Talking Drum: Webster Johnson
Recording studio: Studio 80, London, UK

Reissue design by Kate Gaughran for The Red Room at EMI

となっています。

作曲は3曲目「After Tonight」がDennis
BovellとE. Pottingerの共作、8曲目
「Bertie」がDennis BovellとW. Williams
の共作で、残りのすべての曲がDennis
Bovellの作曲となっています。

レコーディングはUKのロンドンにある
Studio 80で行われ、ミックス・
エンジニアはDennis Bovell、
レコーディング・エンジニアはSeyoum
NetfaとBill Farley、プロデュースと
アレンジはDennis Bovellが担当して
います。

ミュージシャンはドラムにMac Poolと
Angus Gaye、Dennis Bovell、Errol
Melbourne、ベースにDennis Bovell、
ギターにBrinsley FordとJohn Kpiaye、
Dennis Bovell、キーボードにDennis
Bovell、ピアノにFrank Marshallと
Tony Robinson、サックスにHenry Tenyue
とLaura Logic、Steve Gregory、
トロンボーンにHenry TenyueとRico
Rodriguez、トランペットにEddie
'Tan Tan' Thornton、コンガにPhil
TownerとSeyoum Netfa、フリューゲル
ホーンにPatrick Tenyue、ハーモニカに
Julio Finn、トーキング・ドラムに
Webster Johnsonという布陣です。

ドラムにベース、ギター、キーボード、
ヴォーカルとDennis Bovellのマルチ・
プレイヤーぶりが際立ちます。
UKレゲエのアルバムらしく、Aswadの
メンバーAngus Gaye(ドラム)と
Brinsley Ford(ギター)が参加して
います。
トロンボーンのRico Rodriguezは、この
時代にネオ・スカのThe Specialsなどにも
参加して、UKでよく活躍しています。
トランペットのEddie 'Tan Tan' Thornton
は、The 4th Street Orchestraにも参加
しています。

ジャケット・デザインはKate Gaughran
となっています。

なおこの81年にはフィンランドのArletty
というレーベルからThe Dub Band名義で
Dennis Bovellプロデュースとなっている
「Brain Damage」が発売されており、その
アルバムは今回のアルバムのダブのみ8曲
が収められたLP1枚のアルバムで、
ジャケットも今回のアルバムとは異なって
います。
CDの表ジャケが小冊子になっていて、
そこにそのジャケの写真が載っていました
が、それをジャケット風にしてみると
こんな感じです。

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Arlettyのジャケット

さて今回のアルバムですが、81年に
リリースされた時はLP2枚組という大作
のアルバムで、随所にDennis Bovell
らしいポップなセンスが感じられる
アルバムで、内容は悪くないと思います。

この頃になるとDennis BovellはMatumbi
のバンド活動よりもこうしたソロ活動や
プロデュース業に力を入れていたようで、
このアルバムやBlackbeard名義の
アルバムのリリース、Linton Kwesi
Johnsonのダブ・ポエットのアルバムの
プロデュースなどの活躍が目立つんです
ね。

今回のアルバムはそのDennis Bovellの
ソロ活動の中でもかなり力作のアルバムで、
LPの1枚目はDennis Bovellのヴォーカル
物、2枚目のLPはダブという仕様の
アルバムです。
おそらく2枚目のダブの方は1枚目の曲を
ダブにしたものだと思われますが、そこは
才能ある彼らしくうまくアレンジしている
ので、どの曲がどのダブだかあまり判別
出来ませんでした。
唯一最後の20曲目「Cabbage」が1曲目
「Brain Damage」に別のメロディを乗せて
いるのが解ったくらいです。
そうしたDennis Bovellの才能を感じる
アルバムで、歌ものとダブともによく作ら
れたアルバムだと思います。

ただ個人的にはどうもこのDennis Bovell
という人、ちょっと苦手なところがあり
ます。
もともとはMatumbiのギタリストとして
レゲエ・シーンに登場してきた彼ですが、
Matumbiのファースト「Seven Seals」は
UKレゲエを世界に知らしめた素晴らしい
アルバムだったのに、セカンドの「Point
Of View」はすごくポップな路線に様変わ
りして、ひどくガッカリした記憶があり
ます(苦笑)。

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Matumbi ‎– Point Of View (1979)

それ以来どうもこの人の音楽に対して、
素直に良いと思えない自分が居るんです
ね。
やはり気になるのはこの人のポップな
センスで、この人はバルバドス出身という
事もあるのかもしれませんが、レゲエと
いう音楽であるという事のこだわりよりも
ポップな音楽を作りたいのではないかと
いう風に見えてしまうんですね。
個人的にはその部分が、どうしても引っか
かってしまいます。

これがあのMad Professorの場合だと、
出身もアフリカのガイアナ出身で、同じ
ようにポップな楽曲やラヴァーズなどを
作っていても、どこかにレゲエという音楽
に対するこだわりのようなものを感じるん
ですが…。
その2人の違いは微妙でもあり、かなり
違うようでもあり…、うまく説明出来ない
ものがあります。

ただネットに載っていたDennis Bovellの
インタビューなどを読むと、彼は当時
サウンド・システムのセレクターなども
やっていて、あのKing Tubbyとも親交が
あり、常にジャマイカの最新の音楽を
送ってもらっていて、サウンド・システム
でそうした曲をかけていたんだとか。
ジャマイカの当時の最新のトレンドを
常に熟知していたという事を、彼は語って
います。

そうした彼Dennis Bovellが心血を注いだ
のが今回のアルバムで、推論になりますが
こうした彼のポップなサウンドも
ジャマイカのダンスホール・レゲエの流れ
を意識したものだったのかもしれません。
この80年代前半あたりからUKのレゲエ
も、徐々にポップ色の強いUK独特の
サウンドへと変化して行くんですね。
その典型的な例が、UKで誕生した独特の
音楽ラヴァーズロック・レゲエです。
それはもうルーツ・レゲエとは、一線を
画した世界なんですね。
そうしたUK独特のレゲエの流れの中で、
このDennis Bovellの果たした役割は少な
からずあると思います。

今回のアルバムはそのDennis Bovellの
原点ともいえるアルバムで、そのレゲエと
いう枠を超えた音作りはやはりとても魅力
的なところがあります。
普通に上質なポップとして聴いても、充分
に力のあるアルバムなんですね。
個人的にはレゲエという枠組みで聴くと
ちょっと引っかかる部分もあるのですが、
その自由な「遊び心」がこのアルバムの
一番の魅力なのかもしれません。

1~8曲目まではDennis Bovellの
ヴォーカルをメインにした、歌ものの曲が
集められています。

1曲目は表題曲の「Brain Damage」です。
ギターを中心としたユラユラとした演奏に
「Brain Damage」の繰り返しの語るような
ヴォーカル…。
ダブワイズの効いた曲です。

Dennis Bovell Brain Damage


2曲目は「Bettah」です。
重いベースにサックスやシンセなどの
メロディ、語るようなヴォーカルに
コーラス…。

Dennis Bovell - Bettah


3曲目は「After Tonight」です。
ブイブイなくロックなサックスとピアノに
ドライヴ感のあるベース、こちらもロック
なDennis Bovellのヴォーカル…。

Dennis Brovell-After Tonight (Brain Damage 1981)


4曲目は「Our Tune」です。
ホーンとピアノのメロディに乗せた、
なDennis Bovellのユッタリとした
ヴォーカルの曲です。

5曲目は「Run Away」です。
明るホーン・セクションのポップな
メロディに、Dennis Bovellの表情のある
ヴォーカル…。

6曲目は「Heaven」です。
コーラス・ワークから賑やかなリズムに
乗せたギター・プレイ、流れるような
ヴォーカル…。

Dennis Bovell "Heaven"


7曲目は「Bah Be Lon」です。
サイレン音のエフェクトから重いベースと
ピアノのメロディに乗せたDennis Bovell
の明るいけれどちょっと投げやりな感じの
ヴォーカルが面白い曲です。

Dennis Bovell - Bah Be Lon


8曲目は「Bertie」です。
ホーンのカーニバル風のメロディに、
流れるようなDennis Bovellのヴォーカル
と女性コーラスの陽気な曲です。。

9~16曲目までは、ヴォーカルの無い
ダブが収められています。

9曲目は「Aqua Dub」です。
切り込んでくるようなシンセのメロディ
の、インストに近いダブです。

10曲目は「Frea Stoil」です。
ベースを中心にシンセやホーンのメロディ
などで構成されたダブ。
シンセのポンポンと入る擬音が印象的。

Dennis Bovell - Frea Stoil


11曲目は「Smouche」です。
ギターの印象的なイントロから、シンセの
浮遊感のあるメロディを中心としたダブ。

12曲目は「El Passoah」です。
ピアノとギター、ベースを中心とした演奏
に、時折シンセのエフェクトの入ったダブ
です。

13曲目は「Chief Inspector」です。
パッパッとなる印象的なサックス、
ホーン・セクションとピアノ、ベースを
中心とした演奏のダブ。

DENNIS BOVELL - Chief Inspector [1981]


14曲目は「Ehying」です。
ベースとピアノのメロディを中心とした
ダブです。

Dennis Bovell - Ehying


15曲目は「Dutty」です。
ハーモニカのメロディと、シンセやギター
などを使ったダブです。

16曲目は「Cabbage」です。
書いたように1曲目「Brain Damage」の
ダブです。
ちょっと聴いただけでは音の乗せ方が
ウマいので、同じ曲とは解らないところが
あります。
こちらもハーモニカ(メロディカ?)を
うまく使ったダブ。

Dennis Bovell - Cabbage


ざっと追いかけてきましたが、良くも悪く
もDennis Bovellという人の音楽センスが
詰まったアルバムで、聴き応えのある
アルバムに仕上がっています。

この80年代あたりからUKレゲエは
ジャマイカのレゲエと異なるポップ路線へ
と大きく舵を取り、独自の道を歩みだすん
ですね。
もっとも早くジャマイカ以外でレゲエと
いう音楽を始めたのはこのUKレゲエで
あり、もっとも早くジャマイカのレゲエと
はまた違う独自のレゲエを生み出したのは
このUKだったんですね。
それはレゲエという音楽の初めての国際化
への動きだったのかもしれません。

そうしたUKレゲエの動きの中で、この
Dennis Bovellという人が大きな役割を
果たしたであろう事は想像に難くありま
せん。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Dennis Bovell
○アルバム: Brain Damage
○レーベル: EMI
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Dennis Bovell「Brain Damage」曲目
1. Brain Damage
2. Bettah
3. After Tonight
4. Our Tune
5. Run Away
6. Heaven
7. Bah Be Lon
8. Bertie
9. Aqua Dub
10. Frea Stoil
11. Smouche
12. El Passoah
13. Chief Inspector
14. Ehying
15. Dutty
16. Cabbage