今回はHarry MudieとKing Tubbyのアルバム

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「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub
Conference Vol.2」です。

Harry Mudieはジャマイカの音楽がラスタ
ファリズムに基づいたプロテスト・ソング
一色の70年代のルーツ・レゲエの時代
に、ラヴ・ソング中心の独自路線をとった
Moodiscレーベルの主催者として知られて
います。
彼はその優れた作曲の才能を生かして、
Dennis Walksの「The Drifter」やThe
Ebony Sistersの「Let Me Tell You Boy」
など、独自路線のヒットを飛ばし異色の
レーベルとして人気を博すんですね。
またストリングスの導入など、他の
レーベルとは違った音作りにもチャレンジ
しています。
一見すると硬派でなく軟派なレーベルの
ように見えますが、実は人になびかない
頑固一徹なところのある個性的なレーベル
なんですね。

レーベル特集 Moodisc (ムーディスク)

King Tubbyはルーツの時代から活躍するダブ
のミキサーであり、プロデューサーである人
です。
もともと電気技師だった彼は、ルーツ・
レゲエの時代からミキサーとして活躍し、
ダブの創成期からダブを作った人として知ら
れています。

ダブはルーツ・レゲエが誕生した70年代
初め頃から徐々に作られるようになるの
ですが、1973年に一斉にダブの
アルバムが作られた事から一気にひとつの
ジャンルとして確立した音楽で、エコーや
リバーヴなどのエフェクトなどを使用して
原曲を全く別の曲に作り変えてしまう手法
を指します。

ダブ - Wikipedia

リミックスの元祖とも言われる音楽で、誰
が初めのダブを考案したかかはハッキリと
は解っていないのですが、このKing Tubby
がダブという音楽を完成させたと言われて
います。
自身のスタジオKing Tubby'sで、助手の
Prince JammyやScientistなどとともに
70年代から80年代にかけて多くのダブ
のミックスを手掛けたのが、この
King Tubbyという人なんですね。

その後も活躍を続けたKing Tubbyでした
が、1989年に自宅前で何者かに射殺
されて亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムは1977年にジャマイカ
のMoodisc Recordsからリリースされた
Harry MudieがプロデュースしKing Tubby
がダブのミックスを行った「In Dub
Conference」シリーズの第2作目の
アルバムです。

この「In Dub Conference」シリーズは
1976年に第1作目の「In Dub
Conference Volume One」がリリースされ
ており、翌77年に今回のアルバム、
さらに79年に第3作目の「In Dub
Conference Vol.3」がリリースされて
いる全3作からなるシリーズです。

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Harry Mudie Meets King Tubby's ‎– In Dub Conference Volume One (1976)

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Harry Mudie Meet King Tubby ‎– In Dub Conference Vol.3 (1978)

前作の「Volume One」がストリングスなど
も使用したHarry Mudieならではのダブ
でしたが、今回のアルバムではそうした
ストリングスなどを使用した曲は少ない
ですが、ルーツ期の音源らしさとMoodisc
らしい洒落た感覚を併せ持った楽曲のダブ
が並んでいて、内容的にもとても魅力的な
ダブに仕上がっています。

ちなみに表ジャケの内側にはこの「In Dub
Conference」シリーズの「Vol.4」が
79年にリリースされているような事が
書かれているのですが、ネットで調べた
限りではその「Vol.4」を見つける事は
出来ませんでした。

手に入れたのはMoodisc Recordsから
リリースされたCDの中古盤でした。

全10曲で収録時間は約32分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced and Arranged by: Harry A. Mudie for Mooodisc Intl. Records

Musicians:
Drums: Michael Richards (Tracks 3-5, 7, 9, 10),
Bunny Rastafari (Tracks 1, 2, 6, 8)
Bass: Val Douglas (Tracks 3-5, 7, 9, 10),
Mike Duran (Tracks 1, 2, 6, 8)
Organ: Winston Wright (Tracks 1, 2, 6, 8),
Robert Lyn (Tracks 3-5, 7, 10), Organ D (Tracks 9)
Piano: Gladstone Anderson
Lead Guitar: Mikey Chung
Rhythm Guitar: Jeffrey Chung
Tenor Sax: Tommy McCook, Glen DaCosta
Trumpet: Bobby Ellis, David Madden
Flugo Horn: Jo Jo Bennett
Trombone: Don D. Junior
Strings: The Englishmen Live In London, England
Arranged by: Tony King
Percussion: Harry Mudie, Skully

Recording Studios:
Decibel Studio, London, England (Tracks 1, 2, 6, 8)
Harry J. Studio, Kingston, Jamaica (Tracks 3-7, 9,10)
King Tubby's Studio, Kingston, Jamaica (Final Mix)

Engineers: Roger Beale (Tracks 1, 2, 6, 8),
Sylvester Morris (Tracks 3-5, 7, 9, 10),
King Tubby, Harry Mudie, Pat Kelly
All Recording and Final Mix Supervision by Harry Mudie

All Titles Written by Harry A. Mudie
Cover Concept by Harry A. Mudie
Design & Art by Duncanson
Re-Master from Original Analog Tapes to DAT by: Harry A. Mudie
At Moods Digital Lab, Maiami, Florida

となっています。

プロデュースとアレンジはMooodisc
レーベルのHarry A. Mudieです。

ミュージシャンはドラムにMichael
Richards (Tracks 3-5, 7, 9, 10)と
Bunny Rastafari (Tracks 1, 2, 6, 8)、
ベースにVal Douglas (Tracks 3-5, 7,
9, 10)とMike Duran (Tracks 1, 2, 6,
8)、オルガンにWinston Wright
(Tracks 1, 2, 6, 8)とRobert Lyn
(Tracks 3-5, 7, 10)、Organ D
(Tracks 9)、ピアノにGladstone
Anderson、リード・ギターにMikey
Chung、リズム・ギターにJeffrey Chung、
テナー・サックスにTommy McCookとGlen
DaCosta、トランペットにBobby Ellisと
David Madden、フリューゲル・ホーンに
Jo Jo Bennett、トロンボーンにDon D.
Junior、ストリングスはThe Englishmen
のイギリスのライヴで、ストリングス・
アレンジはTony King、パーカッション
はHarry MudieとSkullyという布陣です。
ストリングスのThe Englishmen(英国人)
という表現は、おそらく名前を出せない
誰かという事のようです。
何かのレコード盤の音源か何かを勝手に
使っているのか?

レコーディング・スタジオは1,2,6,
8曲目がイギリスのロンドンにある
Decibel Studio、3~7,9,10曲目が
ジャマイカのキングストンにあるHarry J.
Studioで、すべてのミックスを
キングストンのKing Tubby's Studioで
行っています。

レコーディング・エンジニアは1,2,
6,8曲目のロンドン録音がRoger Beale、
3~7,9,10曲目のジャマイカ録音が
Sylvester Morris、ミックス・エンジニア
はKing TubbyとHarry Mudie、Pat Kelly
が担当しています。
すべての録音とミックスの監修はHarry
Mudieが行っています。
Harry J. StudioのエンジニアSylvester
Morrisは、Studio Oneレーベルでも仕事を
していたSylvan Morrisではないかと思わ
れます。

すべての曲の作曲はHarry A. Mudie、
ジャケット・デザインのコンセプトは
Harry A. Mudie、ジャケット・デザイン
はDuncansonという人が行っています。
実はジャケットの絵柄は下に繋がって
いて、見開きにするとこんな感じです。

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アルバム・ジャケット見開き

さて今回のアルバムですが、第1作目の
「Volume One」はストリングスなど大胆に
使った当時としては衝撃的なアルバム
でしたが、今回の第2作目ではそうした
ストリングスの曲は1曲と前回よりも
少なめですが、その分ルーツ期のMooodisc
らしい音源が多く使われていて、内容は
悪くないと思います。

このMooodiscのウリはやっぱり主催者
Harry A. Mudieの優れた作曲センスで、
アフリカ志向の流行ったこのルーツ・
レゲエの時代に、それとはひと味違った
ソフトなラヴ・ソングを多く作った
レーベルなんですね。

ホーンとベースなどを使ったフライング・
シンバルのメロディにフルートがイイ感じ
で入って来る1曲目「World Dub
Conference」から始まり、ベースを軸と
した2曲目「Marijuana Dub」、Dennis
Walksの「Heart Don't Leap」リディムの
3曲目「Heart Leap Dub」、ベースが
効いたユルい感じのダブ4曲目「Dub
Inside Out」、ホーンからベース、ピアノ
と楽器がイイ感じに入って来る5曲目
「Melody In Dub」、ベースと
パーカッションが印象的な6曲目
「Jungle Walk Dub」、ベースとホーンの
絡みが魅力的な7曲目「Maga Back Dub」、
ギターとピアノのメロディの8曲目
「Don't Play With Dub」、このアルバム
唯一のストリングスを使ったダブ9曲目
「Planet Dub」、Dennis Brownの大ヒット
曲「Drifter」のダブ10曲目「Drifting
Dub」まで、Mooodiscらしいデリケイトな
サウンドをKing Tubbyを中心とした
King Tubby'sがうまくダブ・ミックスした
アルバムで、内容はとても良いです。

1曲目は「World Dub Conference」です。
ホーンのとベース、ギターを中心とした
フライング・シンバルのメロディに、
Tommy McCookあたりと思われるフルート
がイイ感じで入って来るJazzyな空気感の
ダブです。

Harry Mudie Meet King Tubby - World Dub Conference


2曲目は「Marijuana Dub」です。
重いベースのメロディに、エコーの
かかったパーカッションなどが入った
ダブです。

King Tubby & Harry Mudie - Marijuana dub


3曲目は「Heart Leap Dub」です。
リディムはDennis Walksの「Heart Don't
Leap」。
ホーン・セクションのメロディにに刻む
ようなギターなどが入った、リズミカルな
ダブです。

4曲目は「Dub Inside Out」です。
ギターとキーボードのメロディのムーディ
な、ユルい感じのダブです。
ズシっとしたベースがイイ感じに効いて
います。

5曲目は「Melody In Dub」です。
心地良いドラミングにホーンのメロディ、
ベースの重低音に、ピアノがイイ感じに
入って来るダブです。

Harry Mudie & King Tubby - melody in dub ('76)


6曲目は「Jungle Walk Dub」です。
キーボードのメロディに、ベースと
パーカッションが絡むダブです。

7曲目は「Maga Back Dub」です。
キーボードとホーンの華やかなメロディ
から、渋いベースを中心としたダブに
展開する明るい曲です。
合間良く入って来るホーンがイイ感じ。

King Tubby & Harry Mudie - Maka back dub


8曲目は「Don't Play With Dub」です。
ギターとピアノのメロディのユラユラと
したダブです。

9曲目は「Planet Dub」です。
このアルバムの中で唯一ストリングスを
使った曲です。
ベースとピアノのメロディに、イイ感じで
入って来るユラユラとしたストリングス…。

10曲目は「Drifting Dub」です。
リディムはDennis Brownの大ヒット曲
「Drifter」です。
勢いのあるホーン・セクションの演奏
から、ド渋なベースで聴かせるダブです。

King Tubby & Harry Mudie - Drifting Dub


リズム特集 Drifter (ドリフター)

ざっと追いかけてきましたが、Harry Mudie
の作る素晴らしい楽曲と、King Tubby's
らしい曲の魅力をさらにアップさせる
ダブ・ミックスがうまく合わさった
アルバムで、内容的にはとても良いダブ・
アルバムだと思います。
内容的には文句はありませんが、欲を
言えばもう少しストリングスを入れた方
が、他のダブとの差異がさらに際立った
ような気がします。
そこが「Volume One」とのわずかな違い
かもしれません。

いずれにしてもこの「In Dub Conference」
シリーズは、King Tubby'sのダブ・
ミックスの中でも特に金字塔的な作品で
あるのは間違いのないところだと思い
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Harry Mudie, King Tubby
○アルバム: Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.2
○レーベル: Moodisc Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet
King Tubby In Dub Conference Vol.2」曲目
1. World Dub Conference
2. Marijuana Dub
3. Heart Leap Dub
4. Dub Inside Out
5. Melody In Dub
6. Jungle Walk Dub
7. Maga Back Dub
8. Don't Play With Dub
9. Planet Dub
10. Drifting Dub

●今までアップしたHarry Mudie (Moodisc)関連の記事
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meets King Tubby's In Dub Conference Volume One」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.3」
〇Various「Harry Mudie & Friends: Let Me Tell You Boy」
●今までアップしたKing Tubby関連の記事
〇King Tubby & Friends「Dub Gone Crazy: The Evolution Of Dub At King Tubby's 1975-1979」
〇King Tubby & Soul Syndicate「Freedom Sounds In Dub」
〇King Tubby & Friends「Dub Like Dirt 1975-1977」
〇King Tubby & Prince Jammy「Dub Gone 2 Crazy: In Fine Style 1975-1979」
〇King Tubby And The Aggrovators「Shalom Dub」
〇King Tubby, Scientist「Ranking Dread In Dub」
〇King Tubby, Errol Thompson「The Black Foundation In Dub」
〇King Tubby「100% Of Dub」
〇King Tubby「Dangerous Dub: King Tubby Meets Roots Radics」
〇King Tubby「Dub From The Roots」
〇King Tubby「Fatman Presents: Unleashed Dub Vol.1」
〇King Tubby「King Of Dub」
〇King Tubby「King Tubby Presents The Roots Of Dub」
〇King Tubby「King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style Part 2」
〇King Tubby「Rocker's Almighty Dub」
〇King Tubby「The Fatman Tapes」
〇King Tubby「The Sound Of Channel One: King Tubby Connection」
〇King Tubby's (Scientist)「King Tubby's Answer The Dub」
〇King Tubby's「African Love Dub 1974-1979」
〇King Tubby's「King Tubby's Present Two Big Bull In A One Pen Dubwise」
〇Augustus Pablo「King Tubbys Meets Rockers Uptown (Deluxe Edition)」
〇Augustus Pablo「Rockers Meets King Tubbys In A Fire House」
〇Prince Jammy VS King Tubbys「His Majestys Dub」
〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
〇African Brothers, King Tubby「The African Brothers Meet King Tubby In Dub」
〇Aggrovators「Dubbing At King Tubby's」
〇Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators「Brass Rockers」
〇Various (King Tubby & Clancy Eceles All Stars)「Sound System International Dub LP」
〇Various「Firehouse Revolution: King Tubby's Productions In The Digital Era 1985-89」
〇Various「King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style」
〇Various「Once Upon A Time At King Tubbys」
〇Augustus Pablo「Ital Dub」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meets King Tubby's In Dub Conference Volume One」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.3」
〇Niney The Observer All Stars At King Tubby's「Dubbing With The Observer」
〇Niney The Observer「At King Tubby's: Dub Plate Special 1973-1975」