今回はImpact All Starsのアルバム

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「Java Java Java Java」です。

Impact All StarsはVincent Chinの
レーベルRandy's傘下のレーベルImpact
のオールスター・メンバーという意味
です。

Randy'sは60年代からジャマイカで活動
する老舗のレーベルで、キングストンで
レコード店Randy's Record Martを経営
するVincent Chinが立ち上げたレーベル
なんですね。
スカの時代にはThe SkatalitesやLord
Creatorなどの楽曲を残し、レゲエの時代
にも今回のImpact All Stars「Java Java
Java Java」などの初期ダブの名作を
残したほか、多くの楽曲やアルバムを
残した事で知られています。

70年代の後半にChin一家がアメリカに
移住したためにRandy's Studioが閉鎖
されてRandy'sレーベルそのものは無く
なってしまいますが、レーベルはアメリカ
で新しくVP Recordsとなり、今もレゲエの
大レーベルとして活動しています。

レーベル特集:Randys (ランディーズ)/17 North Parade

今回のアルバムは1973年にジャマイカ
のImpact!レーベルからリリースされた
Impact All Starsのダブ・アルバムです。

このアルバムはLee Perryの「Black Board
Jungle Dub」やHerman Chin Royの
「Aquarius Dub」などと並ぶ初期のダブの
名作として知られるアルバムで、この
73年頃にそうしたダブ・アルバムが一斉
に発売された事で、ダブという音楽は
レゲエの1ジャンルとして人気になって
行くんですね。

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Herman Chin Loy ‎– Aquarius Dub (1973)

ダブのミックスはのちにJoe Gibbsでも
活躍するErrol Thompsonで、彼はこうした
実績からLee PerryやKing Tubby、
Keith Hudsonなどと並んで「初期ダブ
四天王」と評される事もあります。
またこのダブ・アルバムはもっとも初期の
Augustus Pabloのメロディカが聴ける
アルバムとしても知られ、タイトルとも
なった「Java Dub」はのちに彼Pabloが自分
のアルバムで「Java」として再演している
彼の代表曲のひとつです。

ちなみにダブとはリミックスの元祖とも
言われる音楽で、ルーツ・レゲエが誕生
した70年代初め頃から徐々に作られる
ようになった音楽で、エコーやリバーヴ
などのエフェクトなどを施して原曲を
まったく別の曲に作り変えてしまう手法を
指します。

ダブ - Wikipedia

手に入れたのはNorth Paradeからリリース
されたCDでした。

全10曲で収録時間は約31分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Producer & Arranged by Clive Chin
Engineers: Clive Chin, Errol Thompson
Recording Studio: Randy's Recording Studio 17, Kingston, Jamaica

Musicians: Impact All Stars ‎
Drums: E. 'Santa' Davis
Bass: Fully Fullwood, Lloyd Parks
Guitars: V. 'Tony' Chin, T. Valentine, Rad Bryan, E. 'Chinna' Smith
Piano: Horace 'Augustus Pablo' Swaby, A. 'Family Man' Barrett
Organ: Tyrone 'Organ D' Downie
Horns: Tommy McCook
Percussions: Tony King, Clive Chin
Melodica: Horace 'Augustus Pablo' Swaby
Clavinet: Winston Wright

Artwork & design by Supercinq

となっています。

プロデュースとアレンジはClive Chin、
エンジニアはClive ChinとErrol Thompson、
レコーディングはジャマイカのキング
ストンにあるRandy's Recording Studio 17
で行われています。

バックはImpact All Starsで、メンバーは
ドラムにE. 'Santa' Davis、ベースにFully
FullwoodとLloyd Parks、ギターに
V. 'Tony' ChinとT. Valentine、Rad Bryan、
Earl 'Chinna' Smith、ピアノにHorace
'Augustus Pablo' SwabyとAston 'Family
Man' Barrett、オルガンにTyrone 'Organ D'
Downie、ホーンにTommy McCook、
パーカッションにTony KingとClive Chin、
メロディカにHorace 'Augustus Pablo'
Swaby、クラヴィネットにWinston Wright
という布陣です。
ドラムがE. 'Santa' Davisとなっています
が、Carlton 'Santa' Davisなので
C. 'Santa' Davisの誤りか?
またギターにV. 'Tony' ChinとT. Valentine
という「2人」の名前がありますが、
どちらもValentine 'Tony' Chinの事では
ないかと思われます。

ジャケット・デザインはSupercinqと
なっています。

さて今回のアルバムですが、初期ダブの
もっとも有名なアルバムの1枚で、ダブや
ルーツ・レゲエが好きな人ならぜひとも
聴いておいた方が良いダブ・アルバムの
ひとつだと思います。

やはり注目はErrol Thompsonのミックス
で、このアルバムで聴かせる彼のミックス
はひとつひとつの音が際立っていて、音楽
の面白さをよく理解している彼らしい
ミックスで、とても素晴らしいです。
初期のダブという事もあってかエフェクト
はけっこう控えめですが、それでも元の音
の魅力をうまく生かしたミックスなんです
ね。
普通にインストとしても聴いてみても、
とても出来の良いインスト・アルバムだと
思います。

Augustus Pablo(本名:Horace Swaby)
についても触れておきます。
販売サイトの情報などによると、72年に
Impact!レーベルからリリースした
シングル曲「Java」は、Impact!レーベル
初のヒット曲だったんだそうです。
アルバム・タイトルからも解るように、
今回のアルバムはその「Java」のダブ
「Java Dub」を目玉曲として乗せた
アルバムで、Augustus Pabloのメロディカ
奏者としての初期の活躍がよく解る
アルバムなんですね。
やはりこの当時のAugustus Pabloの活躍は
インパクトが大きかったのか、この
「Java」という曲はAugustus Pabloの後の
82年のアルバム「Earth's Rightful
Ruler」でも再演されています。

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Augustus Pablo ‎– Earth's Rightful Ruler (1982)

そうしたAugustus Pabloのメロディカが
収められているのも今回のアルバムの魅力
のひとつで、もともとは練習用の楽器と
しか思われていなかったメロディカは、
こうした活躍によりレゲエ特有の楽器と
して認知され人気を博すようになり、
それによってAugustus Pablo自身も
メロディカ奏者として不動の人気を獲得
して行く事になります。
今回のアルバムはそうしたAugustus Pablo
が、自身のキャリアの礎を作ったアルバム
でもあるんですね。
この時代のAugustus Pabloはまだかなり
トンがった感性のメロディカを吹いて
おり、そのあたりも今回のアルバムの
ひとつの聴きどころとなっています。

1曲目は「Guiding Dub」です。
リディムはLeroy Sibbles の「Guiding
Star」です。
ホーンの奏でるロックステディの匂いの
するメロディに乗せて、ソフトな
ヴォーカル、刻むようなピアノとギターの
メロディ、ズシっとしたベースも魅力の曲
です。

Impact All Stars - Guiding Dub


2曲目は「Cheating Dub」です。
緊迫感のあるギターのメロディに
ヴォーカルとコーラス、さらに刻むような
ギターとベースのズシっとしたサウンドが
畳み掛けて来る曲です。

Impact Allstars - Cheating Dub


3曲目は「E.T. Special」です。
ムードのあるホーンとリリカルなピアノの
メロディを中心としたダブです。
タイトルにある「E.T.」は、Errol Thompson
の頭文字と思われます。
Tommy McCookのサックスが冴え渡る、大人
の味わいのダブです。

Tommy McCook & The Impact All-Stars - ET Special


4曲目は「Soulful Dub」です。
リリカルなピアノのメロディと、ズシっと
腹に響くベースを中心としたダブです。

5曲目は「Ordinary Version Dub」です。
リディムはLloyd Parksの「Ordinary
Man」。
会話から一度ブレイクが入り、そのから
ギターとピアノのメロディに印象的な口笛
などが入る、かなりセッション感の強い
ダブです。
Errol Thompsonのセンスが冴える、臨場感
のあるダブです。

Randy's All Stars - Ordinary Version (Impact blank)


6曲目は「Java Dub」です。
Augustus Pabloの「Java」のダブです。
初期のAugustus Pabloはかなりトンがった
感性の演奏をしており、そのあたりも今回
のアルバムの聴きどころです。
そのイケイケのメロディカと、ベースの
ズシっと重いサウンドの対比がとても良い
味わいを作り上げています。

Impact All Stars - Java Dub


7曲目は「Meet Me Dub」です。
ホーンの明るいメロディに、ギターと
ベースの刻む重いメロディのキリっと
した曲です。

8曲目は「Black Man's Dub」です。
ちょっとこもったようなクラヴィネット
と、ベースのメロディを中心としたダブ
です。
クラヴネット特有のちょっと歪んだ
サウンドが魅力。

IMPACT! All Stars - Black Man's DUB


9曲目は「King Babylon Dub」です。
こちらもクラヴィネットか何かのザラザラ
としたサウンドに、ズシっとしたベースが
効いたダブ。

10曲目は「Hide Away Dub」です。
ギターとベース、ピアノのメロディを中心
としたダブ。

ざっと追いかけてきましたが、何か音の
「肌触り」のようなものまで感じるダブ
で、そこにミックスのErrol Thompsonの
傑出した才能を感じます。

この「Java Java Java Java」などのダブ・
アルバムが登場した事で、ダブという音楽
はレゲエの中でも独特な実験的なジャンル
として認知され、70年代のルーツ・
レゲエの時代にとても人気を博すんです
ね。
その後89年に中心人物のひとりだった
King Tubbyが亡くなってしまった事で、
ジャマイカではそれ以降あまり作られなく
なりますが、そのダブの伝統はUKの
Mad ProfessorやJah Shakaなどの
プロデューサーに受け継がれ、今も愛され
続けている音楽なんですね。

このアルバムはその始まりの1枚として、
今も支持され続けているアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Impact All Stars
○アルバム: Java Java Java Java
○レーベル: 17 North Parade
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1973

○Impact All Stars「Java Java Java Java」曲目
1. Guiding Dub
2. Cheating Dub
3. E.T. Special
4. Soulful Dub
5. Ordinary Version Dub
6. Java Dub
7. Meet Me Dub
8. Black Man's Dub
9. King Babylon Dub
10. Hide Away Dub