今回はThe Wailersのアルバム

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(ビニール・カヴァー付き)
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(ビニール・カヴァー無し)

「Catch A Fire (Deluxe Edition)」です。

The Wailersは60年代のスカの時代に
Bob MarleyとPeter Tosh、Bunny Wailer
の3人で結成されたコーラス・グループ
です。
ジャマイカの名門レーベルStudio Oneから
バック・バンドThe Skatalitesをバックに
「Simmer Down」など多くのヒット曲を
飛ばし、ジャマイカで人気グループと
なった彼らは、その後ロックステディ→
ルーツ・レゲエと時代が進むうちに、
リズム隊のBarrett兄弟なども加えた
バンド形式の5人組グループThe Wailers
へと変化して行き
ます。そしてメジャー・レーベルIsland
と契約し、1973年に「Catch A Fire」
で念願の世界デビューを果たすんですね。
ところが世界デビュー2枚目のアルバム
「Burnin'」をリリースしたところで、
Bunny WailerとPeter Toshがグループを
脱退してしまうんですね。

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The Wailers ‎– Burnin' (1973)

その理由は世界を回るツアーの辛さの為
だとも、IslandのChris Blackwellが
「白人にも解る音楽を」という要求をし、
2人がそれに反発した為だとも言われて
います。
残されたBob Marleyはその後Bob Marley
& The Wailersと名乗ってバンド活動を
続け、レゲエを世界に広め、自身も世界的
なスターへとなって行くんですね。

そうした活躍をしたBob Marleyでしたが、
1981年にガンの為に亡くなって
います。

アーティスト特集 Bob Marley (ボブ・マーリー)

今回のアルバムは1973年にUKの
Island Recordsレーベルからリリースされ
たThe Wailersのメジャー・デビュー・
アルバムです。

付いていた解説文などによるとジャマイカ
ではすでに人気バンドだったThe Wailers
ですが、なかなかメジャー進出が出来な
かったようです。
そうした彼に声をかけたのが歌手の
Johnny Nashで、彼は彼らThe Wailersに
UKのツアーの前座を頼んだんだそう
です。
そうしてツアーを回った彼らですが、
Johnny Nash達は彼らを置き去りにして
ジャマイカに帰るチケットさえ渡さずに
アメリカに帰ってしまったんだとか。
お金がなくて困ったBob Marley達は、
Island RecordsレーベルのChris
Blackwellを訪ね、話を聴いたBlackwell
はレコーディング契約を申し入れ、
8000ドルを出資してくれたんだそう
です。

そうしてジャマイカに帰国して録音した
のが今回のアルバム「Catch A Fire」
だったんですね。
ただその音源を聴いたChris Blackwell
はそのサウンドに納得せず、さらに
キーボードのジョン”ラビット”
バンドリックとギターのウェイン・
パーキンスのサウンドをオーヴァー・ダブ
し、さらに録音の回転数を上げてスローな
テンポを速くするなどの処理をしたという
事です。
そうして完成したのが今回の「Catch A
Fire」というアルバムだったんですね。

キャッチ・ア・ファイア - Wikipedia

レゲエ史を変えたボブ・マーリー(Bob Marley)のアルバム「Catch A Fire」

このアルバムなどをきっかけにジャマイカ
の音楽レゲエは徐々に人気を博すように
なり、ついには世界的に愛されるメジャー
な音楽へとなって行くんですね。

手に入れたのは2001年に日本の
ユニバーサル(Tuff Gong)からリリース
された「(Deluxe Edition)」で、
ジャマイカで作られたもののリリースされ
なかった「Original Jamaican Versions」
と、73年に正規にリリースされた
「The Released Album」の2種類の音源
を、2枚のCDに分けて収録したアルバム
です。
中には英文の小冊子と、8つ折りの
大鷹俊一さんという人の解説文と、
リチャード・ウィリアムズという方の解説
文の対訳(訳:山本安見)、山本安見さん
の歌詞の対訳が書かれたライナー・ノーツ
が入っていました。

オリジナルのジャマイカン・ヴァージョン
の方には、正規のリリースでは削除された
「High Tide Or Low Tide」と「All Day
All Night」の2曲も収められていて、
Bob MarleyやThe Wailersを愛する人には
聴き逃せないアルバムとなっています。

ちなみにこのアルバムは私がまだ若かった
20代の頃に、東芝EMIのLPでも購入
しています。
Bob Marleyのアルバムで一番初めに購入
したのが「Rastaman Vibration」だった
ので、76年以降に購入したものと思い
ます。

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The Wailers ‎– Catch A Fire (LP)

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Bob Marley & The Wailers ‎– Rastaman Vibration (1976)

中にはラーナー・ノーツが入っていて、
片面には岡部良雄さんという方の解説文
と、もう片面には英文の歌詞が書かれて
いました。

Disc 1は全11曲で収録時間は約45分。
正規のリリースでは削除された
「High Tide Or Low Tide」と「All Day
All Night」の2曲も収められていて、
さらには収録されている曲順も変わって
います。
Disc 2は全9曲で収録時間は約37分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Disc One
Catch A Fire The Unreleased Versions

Lead Vocals, Acoustic Guitar: Bob Marley
Piano, Organ, Guitar, Vocals: Peter McIntosh
Congos, Bongos, Vocals: Bunny Livingston
Bass: Aston 'Family Man' Barrett
Drums: Carlton 'Carly' Barrett

with
Backing Vocals: Rita Marley, Marcia Griffiths

All arrangements by Bob Marley and The Wailers
Recorded and mixed at Dynamic Sounds Studios,
Harry J's Studios & Randy's Studios, Kingston, Jamaica
Engineers: Carlton Lee, Stu Barrett
Mixed by Errol Brown at Universal Studios East, January 2001,
Assisted by Suha Gur
Produced by Bob Marley and The Wailers

Disc Two
Catch A Fire The Released Album (island ILPS 9241)

Lead Vocals, Acoustic Guitar: Bob Marley
Piano, Organ, Guitar, Vocals: Peter McIntosh
Congos, Bongos, Vocals: Bunny Livingston
Bass: Aston 'Family Man' Barrett
Drums: Carlton 'Carly' Barrett

Guest musicians:
Synthesizer, Clavinet, Organ: John Bundrick
Lead Guitar on Concrete Jungle, Stir It Up,
Baby We've Got A Date (Rock It Baby): Wayne Perkins
Bass on Concrete Jungle, Stir It Up: Robbie Shakespeare
Organ on Concrete Jungle, Stir It Up: Tyron Downie
Percussion: Chris Karen, Franscisco Willie Pep, Winston Wright
Backing Vocals: Rita Marley, Marcia Griffiths

All arrangements by Bob Marley and The Wailers
Recorded and mixed at Dynamic Sounds Studios, Harry J's Studios &
Randy's Studios, Kingston, Jamaica and Island Studios, London, England
Mixed at Island Studios, London, England
Engineers: Carlton Lee, Stu Barrett, Tony Platt
Produced by Bob Marley and Chris Blackwell

Catch A Fire, island ILPS 9241, was released April, 13, 1973

Original Catch A Fire Zippo Lighter Cover:
Art direction: John Hoernie
Design: Rod Dyer / Bob Weiner
Photography by Cookie Kinkead

Original Catch A Fire Photo Cover:
Artwork by John Bonis of CCS.
Photography by Esther Anderson

となっています。

Disc 1「Catch A Fire」のリリースされて
いないヴァージョンの録音は、The Wailers
のメンバーとして、リード・ヴォーカルと
アコースティック・ギターにBob Marley、
ピアノとオルガン、ギター、ヴォーカルに
Peter McIntosh(Peter Tosh)、コンゴと
ボンゴ、ヴォーカルにBunny Livingston
(Bunny Wailer)、ベースにAston
'Family Man' Barrett、ドラムにCarlton
'Carly' Barrettという布陣です。
さらにバック・ヴォーカルとして、Bob
Marleyの奥さんRita Marleyと女性シンガー
のMarcia Griffithsが参加しています。

すべてのアレンジはBob Marley and The
Wailers、レコーディングとミックスは
ジャマイカのキングストンにあるDynamic
Sounds Studiosと Harry J's Studios、
Randy's Studiosで行われ、エンジニアは
Carlton LeeとStu Barrett、プロデュース
はBob Marley and The Wailersとなって
います。

それに対してDisc 2の73年にリリース
されたヴァージョンは、The Wailersの
メンバーとバック・コーラスのRita
MarleyとMarcia Griffithsは同じですが、
「Guest musicians」としてシンセサイザー
とクラヴィネット(電気オルガン)、
オルガンにJohn Bundrick、1曲目
「Concrete Jungle」と6曲目「Stir It
Up」、5曲目「Baby We've Got A Date
(Rock It Baby)」のリード・ギターに
Wayne Perkins、「Concrete Jungle」と
「Stir It Up」のベースにRobbie
Shakespeare、「Concrete Jungle」と
「Stir It Up」のオルガンにTyron
Downie、パーカッションにChris Karen
とFranscisco Willie Pep、Winston
Wrightがオーヴァー・ダブで追加されて
います。

ちなみに解説文によるとキーボードの
John Bundrickは、「Fire And Water」
などで知られるロック・バンドThe Free
に在籍した事のある人だそうで、この
アルバムに自分のクレジットが無かった
事にひどくガッカリしたんだとか(笑)。
The Freeは当時日本でも人気のあった
ロック・バンドで、日本人ベーシストの
山内哲さんが、Rod StewartやRon Wood
の居たThe Facesに在籍する前に、一時
在籍したグループだったんじゃないかと
思います。

追加分の録音とミックスはイギリスの
ロンドンにあるIsland Studiosで行われ、
エンジニアはTony Platt、プロデュース
もBob MarleyとChris Blackwellとなって
います。

「Catch A Fire」のリリースは、1973
年の4月13日です。

「Catch A Fire」の当初に発売された
「Zippo Lighter Cover」のアート・
ディレクションはJohn Hoernie、デザイン
はRod DyerとBob Weiner、写真はCookie
Kinkeadとなっています。

このオリジナルのZippoのライターの
デザインは、レゲエの有名なジャケットの
ひとつで、当初のジャケットは横にハトメ
が付いていて、斜め上に開けるジャケット
だった模様です。
日本の東芝EMIからリリースされたもの
はそれが改良されたもので、上開きは同じ
ですが前垂れが付いたスタイルで、開ける
と火の付いたライターが現れるというもの
でした。

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東芝EMIジャケット

写真とあるのは裏ジャケの写真で、Bob
Marleyを中心に5人のメンバーが写って
います。

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裏ジャケ

ただこうしたジャケットは生産が大変
だったようで、のちにBob Marleyが
マリファナを吸っているジャケットに
差し替えられたようです。
それが「Photo Cover」と呼ばれるもの
で、今回のアルバムに収められた英文の
小冊子にその写真が使われています。
ジャケ風に加工するとこんな感じです。

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小冊子

こちらのジャケットはアート・ワークが
John Bonis of CCS.で、写真がEsther
Andersonとなっています。
グループ名が「Bob Marley & The Wailers」
となっている事からも解るように、Peter
ToshとBunny Wailerの脱退後に差し替え
られたジャケットのようです。

さて今回のアルバムですが、内容的にも
素晴らしいアルバムですが、レゲエという
音楽の歴史の中でもとても貴重なアルバム
で、レゲエを語る上で欠かせないアルバム
です。

やはりレゲエという歴史を考える上で、
もしもこのアルバムの成功が無ければ、
その後のレゲエの音楽史は今とはだいぶ
違っていた可能性があります。
今回はそのアルバムの未発表だった
ジャマイカン・ヴァージョンが収められて
いますが、確かにこの未発表のアルバムは
実際に発表されたものよりも大きな
グルーヴ感がありとても素晴らしいです。
ただ当時のレゲエという音楽はまだ一部の
人にしか知られていない音楽で、当時の人
が好んで聴いていたのはロックやソウル、
カントリーなどのポピュラー音楽だったん
ですね。
そうした聴衆にこの時代のレゲエ独特の
「イナタい(田舎臭い)」サウンドが、
素直に受け入れられたかはよく解りま
せん。
むしろそうしたサウンドに慣れる、「学習
期間」が必要だった気がします。
そう考えると元のレゲエ・サウンドを
よりロック色の強いサウンドに変えた、
Chris Blackwellの判断はあながち間違って
いなかったと思われます。

このアルバムはそうしたレゲエという音楽
を世界に知らしめたアルバムとして知られ
ており、むしろその事の方が貴重なんです
ね。

ただやはり今聴くと未発表だった
ジャマイカン・ヴァージョンの方が
ちょっと魅力的に思える部分があります
が、振り返って考えてみると当時はこの
発表されたヴァージョンでも十分に刺激的
なサウンドだった事を今でもハッキリと
覚えています。
このアルバムはそうした改変された
アルバムでも、やはり音楽史に残る素晴ら
しいアルバムなんですね。
実際に改変された「Concrete Jungle」の
ヴァージョンを聴いて、Bob Marley自身
も大喜びをしたという話も伝わって
います。
彼自身にとっても自分と違った発想が
入った事が、すごく刺激になったのでは
ないでしょうか。

アルバムに付いていたリチャード・
ウィリアムズさんという方の解説文でも、
Jimi Hendrixの「Are You Experienced」
やStevie Wonderの「Talking Book」、
Marvin Gayeの「What's Going On」と並ぶ
「音楽の発展にとって重要な役割をになう
最高品質のアルバム」という賛辞が送られ
ています。
他のアルバムも音楽史にとってとても貴重
なアルバムですが、この「Catch A Fire」
もその後のレゲエという音楽をメジャーな
音楽と認知させたアルバムで、とても重要
なアルバムであることは間違いがありま
せん。

ただ30年近くの月日が経ってようやく
この未発表のジャマイカン・ヴァージョン
が日の目を見た事はけっして悪い事では
なく、このアルバムにシビレた人には
ぜひとも聴いてみたい音源であったのは
間違いないでしょう。
実際に聴いてみるとロック色が薄められた
分だけ、本来のThe Wailersらしい
レゲエ・サウンドで、この当時の彼ら
らしいコーラス・ワークが大きなグルーヴ
感を生み出していて、発表された
ヴァージョン以上に魅力的なところがあり
ます。

特に録音されていたのに抜けてしまった
2曲が収められているのは大きな魅力で、
なぜこの「High Tide Or Low Tide」を
抜いてしまったのか?疑問に思うところも
あります。
この曲などはもしも入っていれば、名曲と
してもっと名前の残っていた曲かもしれま
せん。
やはりこの時代のThe Wailersは3人組
コーラス・グループとしての魅力が強い
グループで、Peter ToshとBunny Wailerの
ハーモニーの生み出す大きなグルーヴ感が
このグループの大きな特徴であり、強み
でもあったんですね。
このコーラスの生み出す大きなグルーヴ感
を重視したレゲエ・サウンドと、Chris
Blackwellの考えるBob Marleyを中心と
したロック色の強いレゲエ・サウンドに
大きな隔たりがあるのは事実で、結果と
して次のアルバム「Burnin'」をもって
大きなグルーヴ感を持ったコーラス・
ワークは失われてしまうんですね。

その後はカリスマBob Marleyを中心と
したグループになり、The Wailersという
名前はBob Marleyを支えるバンド名と
なってしまうんですね。
それはそれで当時としては仕方の無かった
事なのかもしれません。
ただThe Wailers名義で出された2枚の
アルバム「Catch A Fire」と「Burnin'」
は、Bob Marleyを含めた彼らThe Wailers
のもっとも重要なアルバムであり、ひとつ
の到達点として永遠に語り継がれる事に
なるんですね。

また歌詞の面にも触れると、当時はまだ
まだ白人優位の世界で黒人層はブルー
カラーなど低い地位に甘んじていたん
ですね。
特にジャマイカでは白人や東洋人が支配
していて、黒人層は貧民街で貧しい暮らし
を強いられていたんですね。
そうした事に「俺たちは奴隷じゃない」と
NOを突き付けたのがレゲエという音楽
で、そのレベル・ミュージック(反抗する
音楽)の最先端に居たのが彼らThe Wailers
だったんですね。
彼らはラスタファリズムに元ずく
プロテストする心で、社会の不正を糾弾
して行きます。
その歌詞はのちの社会の変革に大きな力を
与えるんですね。

Chris Blackwellはサウンドはイジった
けれど歌詞までは変えなかった、そこも
大きなポイントで、このレゲエは当時流行
していたパンクと並んで「反抗する音楽」
として大きな支持を得る事になります。
このアルバムには当時の勢いのあった
The Wailersの、そうしたルーディーな
魅力も秘められているんですね。

またこのアルバムに収められた曲はどの曲
も名曲と呼べるほど出来が良く、とても
粒が揃っているのも特徴のひとつです。
リチャード・ウィリアムズさんという方の
解説文で「最高品質のアルバム」という
評価をされているのも、どの曲にも特徴が
ありとても出来が良いことも影響している
と思います。
基本的にレゲエという音楽」は、今日に
至るまでずっとシングル盤中心の世界
ですが、このThe Wailersのアルバムは
トータル・アルバムとして見ても、とても
クオリティが高いんですね。

どちらのアルバムでも1曲目に収められた
「Concrete Jungle」は、Bob Marleyの
すべての作品の中でも一二を争うほどの
名曲で、「太陽は輝かない 月もなく闇が
支配している 愛はどこにある」という
歌詞には、都会という「コンクリート・
ジャングル」で生きる男のルーディーな
心情が歌われています。
この曲のJohn Bundrickのクラヴネットや
Wayne Perkinsのギター・ワークを入れた
アレンジをBob Marleyはとても喜んだと
言われていますが、確かにグルーヴ感の
あるコーラス・ワークはだいぶ損なわれた
ものの、歌詞にある男の心情はより強調
された面もあり、そのあたりを喜んだの
か…?
そうした事を想像しながら聴き較べてみる
のも、今回のアルバムの楽しみです。

Peter McIntosh(Peter Tosh)がリードを
とった「Stop That Train」と「400 Years」
は、The Wailers時代の彼の代表曲です。
この2曲はこのアルバムの以前にLee Perry
がプロデュースしたアルバムでも、すでに
披露した事がある曲なんですね。
「Stop That Train」はあのロックステディ
の時代に活躍したディオKeith & Texの
同名曲からサビの部分だけ拝借したような
曲です。
原曲が街を出て行こうと汽車に乗る彼女を
止めてくれと歌っているのに対して、
Peter Toshの曲では街を捨てて出て行く
ルーディーな青年の物語に書き換えられて
います。
そうした新しいリリックがどんどん盛り
込まれて行くのが、レゲエという音楽の
面白いところです。
「400 Years」は400年もの間虐げられ
て来た黒人に、立ち上がろうと訴える彼
らしいリリックを持った曲です。
この時代のThe Wailersは多くの曲で
Bob Marleyがリード・ヴォーカルをとって
いますが、たまにこのPeter Toshがリード
をとっており、それがとても良い
アクセントになっているんですね。

他にもラヴ・ソングの「Stir It Up」や
「Baby We've Got A Date (Rock It
Baby)」、プロテスト色の強い「Slave
Driver」や「No More Trouble」、楽しく
やろうぜ!と歌う「Kinky Reggae」など、
当時の彼らの魅力が山盛りに盛り込まれた
アルバムです。

Disc 1には未発表だったジャマイカン・
ヴァージョンの曲が収められています。
やはり目玉は発表されたヴァージョンには
収められなかった3曲目「High Tide Or
Low Tide」と、8曲目「All Day All
Night」の2曲が収められている事で、
それだけでも充分に魅力的です。
また聴き較べると解りますが、この
ヴァージョンの方がコーラス・グループ
らしい大きなグルーヴ感があります。

Disc 1の1曲目は「Concrete Jungle」
です。
シンプルにギターから始まるヴァージョン
です。
ただそのシンプルにBob Marleyの
ヴォーカルとコーラスで聴かせている
ところが、すごく魅力的ではあります。

Bob Marley - concrete jungle - 1972 - Catch a Fire - Unrelesed Original Jamaican Versions


2曲目は「Stir It Up」です。
刻むようなギター・ワークに、ユッタリと
したコーラスとヴォーカル。
ロックステディの時代の曲ですが、やはり
抜群のコーラス・ワークは魅力。

Bob Marley & The Wailers - Stir It Up (Jamaican Version)


3曲目は「High Tide Or Low Tide」です。
心地良いギターのメロディに美しい
コーラス・ワーク、ユッタリと歌う
Bob Marleyのヴォーカルもとても魅力的。
ロックステディ色の強い曲ですが、むしろ
ジャマイカ出身でロックステディを知って
いるChris Blackwellだからこそ、排除
した曲なのか?
こうした名曲度の高い曲が収められ
なかったのは、とても残念な気がします。

Bob Marley And The Wailers - High Tide Or Low Tide


4曲目は「Stop That Train」です。
Peter McIntosh(Peter Tosh)がリード
をとった曲です。
書いたようにオリジナルはKeith & Tex
のロックステディの名曲で、その曲の
サビの部分だけうまく使った改変された
ヴァージョンです。
コーラスにはRita MarleyとMarcia
Griffithsの女性コーラスも参加して
います。

5曲目は「400 Years」です。
こちらもPeter McIntosh(Peter Tosh)
がリードをとった曲です。
シンプルなギターとベースを中心とした
メロディに、心に響くコーラス・ワーク、
Peter Toshのルーディーなヴォーカルが
魅力。

6曲目は「Baby We've Got A Date
(Rock It Baby)」です。
この曲あたりは比較的どちらも似ているん
ですが、聴き較べるとやはり微妙に違うん
ですね。
こちらの方がコーラス・ワークが強い印象
です。

7曲目は「Midnight Ravers」です。
ギターとオルガンのメロディに乗せた息の
合ったコーラス・ワークに、Bob Marley
のちょっとラフでファンキーなヴォーカル
が心地良い曲です。
深夜に音楽に乗って楽しく踊ろぜ!と
歌っている曲です。

8曲目は「All Day All Night」です。
こちらも発表されたアルバムからは削除
されてしまっている曲です。
刻むようなギターに乗せたBob Marley
のラフな印象のヴォーカルに、コーラス・
ワーク。
シンプルでソリッドなところが魅力的。

Bob Marley & The Wailers - All Day All Night


9曲目は「Slave Driver」です。
美しいコーラス・ワークにBob Marleyの
感情を抑えた淡々としたヴォーカル。
自分を奴隷として扱う「奴隷監督」に
対する怒りを込めた曲です。
アルバム・タイトルの「Catch A Fire」
は、この曲のコーラス部分の歌詞から
とられています。

10曲目は「Kinky Reggae」です。
頭にBob Marleyの笑い声などが入って
います。
リラックス空気の中でギターとキーボード
のメロディに乗せた、Bob Marleyのよく
通るヴォーカルとコーラスが素晴らしい
グルーヴ感を生み出しています。

11曲目は「No More Trouble」です。
分厚いコーラスにに乗せたBob Marleyの
感情を込めたヴォーカルが魅力的。
こちらは女性コーラスも効果的に使われて
います。

Disc 2は73年に発表されたアルバム
です。
1曲目の「Concrete Jungle」のイントロ
や間奏部分にクラヴィネット(電気
オルガン)やギター・ソロが挿入され
たりと、全体にロック色の強いアレンジ
が見受けられます。
ただ当時はかなり土着的なサウンドに
感じられたのも事実で、その独特の
「音の肌触り」に多くの人がシビレ
ました。

Disc 2の1曲目は「Concrete Jungle」
です。
ジャマイカン・ヴァージョンと較べると
クラヴィネットやギター・ソロなど、
かなり改変の跡がうかがえます。
ただその工夫が結果的には多くの聴衆の耳
を捉えた側面も、否定はできません。

Bob Marley and The Wailers - Concrete Jungle


2曲目は「Slave Driver」です。
こちらは多少パーカッションが加えられて
いるのか?
さほど違いは感じませんでした。

Bob Marley - Slave driver


3曲目は「400 Years」です。
ギターとコーラス・ワークに乗せた、
Peter Toshのキレのあるヴォーカルが
魅力的。

Bob Marley & The Wailers - 400 Years


4曲目は「Stop That Train」です。
ギターとシンセの浮遊感のあるメロディ
に、Peter Toshのキレのあるヴォーカルが
魅力。

Bob Marley and The Wailers - Stop That Train


5曲目は「Baby We've Got A Date
(Rock It Baby)」です。
コーラス・ワークが後退して、代わりに
女性コーラスが強調されています。

6曲目は「Stir It Up」です。
こちらもジャマイカン・ヴァージョンに
較べると、シンセなどがプラスられて
浮遊感のある曲になっています。

Bob Marley and The Wailers - Stir It Up


7曲目は「Kinky Reggae」です。
こちらもコーラスが若干抑え気味になって
いるのか?
その分Bob Marleyのヴォーカルが際立つ
印象です。
「レゲエで楽しくやろうぜ!」と歌って
いる曲です。

8曲目は「No More Trouble」です。
「争い事はもうごめんだ」と歌う曲で、
こちらは原曲よりもギターなどが強調
されています。

"No More Trouble" - Bob Marley & The Wailers | Catch A Fire (1973)


9曲目は「Midnight Ravers」です。
元の録音と較べるとパーカッションが
追加されて、よりリズムが強調された印象
です。

ざっと追いかけてきましたが、この
アルバムがかなり改変されていたとしても
レゲエという音楽を世界に知らしめ、認め
させたアルバムであるのは事実で、レゲエ
という音楽の未来を変えた「歴史的な
アルバム」である事は間違いありません。
そしてこの73年にレゲエの未来を切り
開いた事が、一番重要なんですね。

実際に彼らの人気が高まったのはBunnyと
Peterの2人が離脱してBob Marley &
The Wailersと名乗るようになって以降で、
75年のライヴ・アルバム「Live!」で、
その聴き易いロック寄りのサウンドで一気
に火が付いたんですね。

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Bob Marley And The Wailers ‎– Live! (1975)

そして彼の生前のアルバムではこの
「Live!」と77年の「Exodus」が一番
売れたアルバムだと思います。

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Bob Marley & The Wailers ‎– Exodus (1977)

ただそれらも素晴らしいアルバムですが、
Bob Marleyを愛する人たちにとってこの
「Catch A Fire」は、やはり特別な
アルバムなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Bob Marley & The Wailers Concrete Jungle The Grey Old Whistle Test 1973 432Hz



○アーティスト: The Wailers
○アルバム: Catch A Fire (Deluxe Edition)
○レーベル: Tuff Gong
○フォーマット: CDX2
○オリジナル・アルバム制作年: 1973

○The Wailers「Catch A Fire (Deluxe Edition)」曲目
Disc 1: The Unreleased Original Jamaican Versions
1. Concrete Jungle
2. Stir It Up
3. High Tide Or Low Tide
4. Stop That Train
5. 400 Years
6. Baby We've Got A Date (Rock It Baby)
7. Midnight Ravers
8. All Day All Night
9. Slave Driver
10. Kinky Reggae
11. No More Trouble

Disc 2: The Released Album (Island ILPS 9241)
1. Concrete Jungle
2. Slave Driver
3. 400 Years
4. Stop That Train
5. Baby We've Got A Date (Rock It Baby)
6. Stir It Up
7. Kinky Reggae
8. No More Trouble
9. Midnight Ravers