今回はLucianoのアルバム

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「Messenger」です。

Luciano(本名:Jepther McClymont)は
90年代から活躍するラスタ・シンガー
です。
それまで目の出なかった彼が才能を開花
させたのはPhillip 'Fatis' Burrellの
主催するXterminatorで、このレーベルで
数々のヒットを放ちラスタ・シンガーと
しての地位を確立して行くんですね。
ネットのDiscogsによるとこれまでに
共演盤を含めて47枚ぐらいのアルバムと
650枚を超えるシングル盤をリリース
しているのがこのLucianoというシンガー
です。
その素晴らしい歌声から「現代の
Dennis Brown」と評される事があります。

アーティスト特集 Luciano (ルチアーノ)

Luciano (singer) - Wikipedia

Xterminatorというレーベルについても
説明しておきます。

XterminatorはPhilip 'Fatis' Burrellが
90年代に設立したレーベルで、ダンス
ホールの時代になって廃れていたラスタ
ファリズムに傾倒した、ルーツ色の強い
サウンドを特徴とするレーベルです。
このレーベルからはSizzlaやLucianoなど
多くのアーティストが、その才能を開花
させています。
またそれ以前に活躍していたGregory
IsaacsやCocoa Tea、Marcia Griffiths
といったアーティストも、このレーベルに
素晴らしいアルバムを残しています。
その後もTurbulenceやLutan Fyah、
Chezidekなど、現代でも活躍する
アーティストを育てたのがこのXterminator
というレーベルです。

レーベル特集 Xterminator (エクスターミネーター)

今回のアルバムは1995年にジャマイカ
のXterminatorレーベルからリリースされ
たLucianoのソロ・アルバムです。

93年にアルバム・デビューしたLuciano
ですが、なかなか人気に火が付かず、
ようやく人気が出たのは95年のメジャー・
デビューアルバム「Where There Is Life」
の頃なんだそうです。
ネットのDiscogsによるとLucianoはそれ
までに7枚ぐらいのアルバムを出して
いて、「Where There Is Life」は8枚目
ぐらいのアルバムのようです。
そしてメジャー2作目となったのが、今回
の「Messenger」なんですね。

ちょっとポップな曲調のものもある
ヴァラエティのあるアルバムで、Luciano
の人気を決定づけたアルバムです。

手に入れたのはXterminatorからリリース
されたCD(新盤)でした。

全11曲で収録時間は約46分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians: Sly Dunbar, Donald Dennis, Dean Fraser, Robbie Lyn
Recording Engineer: Paul Daley, Robert Murphy
Mixing Engineer: Steven Stanley, Colin 'Bulby' Yorke, Soljie Hamilton
All lyrical content written by Jepther McClymont & Phillip Burrell
Produced and Arranged by Phillip 'Fatis' Burrell for XTerminator Records
Backing Vocals: Leiba Hibbert, Michelle Anderson, Nicola Tucker, Dean Fraser

となっています。

ミュージシャンとしてSly Dunbarと
Donald Dennis、Dean Fraser、Robbie Lyn
の名前があります。
レコーディング・エンジニアはPaul Daley
とRobert Murphy、ミックス・エンジニア
はSteven StanleyとColin 'Bulby' Yorke、
Soljie Hamilton、すべての曲の作曲は
Jepther McClymont(Luciano)とPhillip
Burrell、プロデュースとアレンジは
Phillip 'Fatis' Burrell、バック・
ヴォーカルにLeiba HibbertとMichelle
Anderson、Nicola Tucker、Dean Fraser
が参加しています。

さて今回のアルバムですが、ヴァラエティ
に富んだ曲に乗せた、「ネクスト・
デニス・ブラウン」と評されたLucianoの
ヴォーカルが楽しめるアルバムで、内容は
悪くないと思います。

ただこのアルバム、どうもファースト・
インプレッションが弱いんですね。
2曲目の「Life」の華やかなラテン風の
イントロや11曲目「Guess What's
Happening」の口笛など、ポップな要素も
盛り込まれたけっこう凝った曲が多いん
ですが、なぜかスッと入って来る感じ
ではないんですね。
そのせいかシンコー・ミュージック刊行
の本「Roots Rock Reggae」には、「地味
ながら名曲揃いの好盤」という評価が書か
れています。
地味?ウ~~ン、ちょと「地味」という
のは違うような…、でも言いたい事が解る
ような…。

結論から言うと1曲1曲はすごく丁寧に
作られていて、Lucianoのヴォーカルも
「ネクスト・デニス・ブラウン」という
評価通りちょっとDennis Brownに似た
声質で、その歌声も素晴らしいです。
繰り返し聴いているとその良さが徐々に
解って来て、良いアルバムだなぁと思う
ようになるんですね。
ただその粒がそろい過ぎているためか、
逆にトータルなアルバムとしては印象を
弱くしている感じがあるんですね。
ひとつひとつの色は原色がギラギラとして
いるのに、遠目で見ると灰色に見えるよう
な、ちょっと損をしているアルバムなん
ですね。
そこがちょっと惜しまれます。

ただその辺も彼の個性なのかもしれま
せん。
今回ちょっとどう評価してよいか迷った
ので、もう1枚持っていた彼のアルバム
「Serious Times」の方も聴いてみま
した。

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Luciano ‎– Serious Times (2004)

こちらもなかなかの好内容のアルバムなの
ですが、やはり全体を通した印象が少し
弱いんですね。
そのあたりがこの人がブレイクまで、
ちょっと時間がかかった要因なのかも
しれません。
ただ聴き込んでいくと徐々にその良さが
解って来る人なので、じっくりと聴き込ん
でみる事をおススメします。
1曲1曲のこの人の実力は本物で、歌の力
を感じるシンガーなんですね。

また時代背景をちょっと説明しておくと、
80年代はそれまでのコンシャス(真面目)
なルーツ・レゲエに代わってスラックネス
(下ネタ)やラヴ・ソング、ガン・トーク
(暴力ネタ)など中心としたダンスホール・
レゲエが流行した時代なんですね。
ところが90年代に入るとGarnet Silkや
Tony Rebelなどのアーティストが、再び
ルーツ・レゲエに根差したコンシャスな
テーマの曲を作り始めるんですね。
それが「ルーツ・リヴァイバル」と呼ばれ
ています。
その特徴はダンスホール・レゲエの
メロディなどを取り入れながらも、歌詞
がラスタファリズムに根差した非常に
コンシャスな事です。
このLucianoもその「ルーツ・
リヴァイバル」の流れに乗って登場して
来たアーティストなんですね。
またその流れの後押しをしたのが、この
Xterminatorというレーベルで、この
レーベルからはLucianoの他にもレゲエ
の中心人物のひとりとなるSizzlaなども
育っているんですね。

ちなみに近年でもChronixxやJesse Royal、
Protojeなどを中心に、新たな「ルーツ・
リヴァイバル・ムーヴメント」が起こって
います。
この事からも解るように90年以降の
レゲエは、スラックネスやガン・トークを
中心としたレゲエと、コンシャスなルーツ
に根差したレゲエとが、常にせめぎ合う
世界なんですね。

そうしたラスタファリズムに根差した
ルーツ・レゲエに影響を受けたコンシャス
なシンガーがこのLucianoで、今回の
アルバムでも表題曲の「Messenger」を
はじめ、ボサノバ調の「Life」、Dennis
Brownのヴォーカルを彷彿とさせる
「Over The Hills」、伸びやかな
ヴォーカルが魅力の「Never Give Up My
Pride」、Bob Andyの「Unchained」
リディムの「Carry Jah Load」、イントロ
の口笛が印象的な「Guess What's
Happening」など、彼の実力が発揮された
アルバムに仕上がっています。

1曲目は表題曲の「Messenger」です。
独特なデジタルのキーボードのメロディに
ホーン、Lucianoの丁寧なヴォーカルが心
に沁みる曲です。
ちなみにLucianoのあだ名は「Messenger」
や「Jah Messenger」なんだとか。
この曲では彼のあだ名通りMarcus Garvey
など、ラスタファリズムの偉人の名前が
次々に登場します。

Luciano - Messenger


2曲目は「Life」です。
このアルバムのシングル・カット曲の
ようです。
ちょっとボサノバ調の軽快なピアノを中心
としたメロディに、Lucianoの力強い
ヴォーカルが魅力的。
レゲエの枠を超えたポップな1曲です。

Luciano - Life


3曲目は「Mama」です。
元気のあるデジタルなドラミングに、
清涼感のあるシンセのメロディ、ユッタリ
と歌うLucianoの感情を乗せたヴォーカル
に美しい女性コーラス…。

4曲目は「Over The Hills」です。
浮遊感のシンセに乗せたLucianoの
スキャットから、心を込めた彼の
ヴォーカル…。
ちょっとDennis Brownを彷彿とさせる
素晴らしいヴォーカルにヤラレます。

LUCIANO - OVER THE HILLS - VIDEO


5曲目は「Never Give Up My Pride」
です。
ユッタリとしたリズムに、Lucianoの
伸びやかで力強いヴォーカルが冴える曲
です。

Luciano - Never Give Up - ReggaeRiddimBox


6曲目は「Rainy Days」です。
ホーン・セクションの濃いメロディに、
Lucianoの感情を乗せたヴォーカル、
そのヴォーカルに寄り添うように入って
来るシンセ…。

7曲目は「Friend In Need」です。
ドラミングに乗せたシンセのメロディに、
Lucianoの感情を乗せたシリアスな
ヴォーカルにコーラス・ワーク…。

8曲目は「How Can You」です。
ソフトなコーラスにシンセのメロディに
乗せたLucianoのノビのあるバリトン・
ヴォイス。
心地良いグルーヴ感のある曲です。

9曲目は「Feel Like Moving」です。
ギターとシンセのメロディに、女性
コーラスに乗せたLucianoの野太い
ヴォーカル。

10曲目は「Carry Jah Load」です。
リディムはBob Andyの「Unchained」。
ホーンの賑やかなメロディに、コーラスに
乗せたLucianoの表情のあるヴォーカルが
とても魅力的。

Luciano - Carry Jah Load (Unchained Riddim)


11曲目は「Guess What's Happening」
です。
冒頭に口笛のメロディが入りますが、あの
The Beatlesで活躍したGeorge Harrisonの
解散後のソロ曲「My Sweet Lord」の
イントロのメロディなんですね。
そのからLucianoのユッタリと語りかける
ようなヴォーカルがとても魅力的な、
ポピュラリティのある曲です。

Luciano - Guess What's Happening


ざっと追いかけてきましたが、やはり
1曲1曲をじっくりと追いかけてみると、
佳曲揃いでとても魅力的なアルバムなん
ですね。
内容が悪くないだけに、なおさら
ファースト・インプレッションが少し
弱いのがすごく残念です。

このアルバムに関しては、とにかく
1曲1曲をジックリと味わって聴く事を
おススメします。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Luciano
○アルバム: Messenger
○レーベル: Xterminator
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1995

○Luciano「Messenger」曲目
1. Messenger
2. Life
3. Mama
4. Over The Hills
5. Never Give Up My Pride
6. Rainy Days
7. Friend In Need
8. How Can You
9. Feel Like Moving
10. Carry Jah Load
11. Guess What's Happening