今回はPinchersとSanchezのアルバム

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「Pinchers Meets Sanchez」です。

Pinchers(本名:Delroy Thompson)は
80年代の半ばごろから活躍するダンス
ホール・レゲエのシンガーです。
ネットのDiscogsの彼の履歴を見ると、
86年にアルバム「Can't Take The
Pressure」をリリースしてから現在まで
に、4枚の共演盤を含めて13枚ぐらいの
アルバムと、400枚を超えるシングル盤
をリリースしている人気シンガーです。

アーティスト特集 Pinchers (ピンチャーズ)

Sanchez(本名: Kevin Anthony Jackson)
は、ネットのレゲエレコード・コムの記述
によると「ラブ・ソングのスペシャリスト」
と称されるほどラヴ・ソングを得意とした
シンガーです。
ネットのDiscogsの彼の履歴を見ると、
80年代の後半から現在に至るまでに共演
盤を含めて33枚ぐらいのアルバムと
455枚ぐらいのシングル盤をリリース
している人気シンガーです。

アーティスト特集 Sanchez (サンチェス)

今回のアルバムは1989年にジャマイカ
のExterminatorレーベルからリリース
されたPinchersとSanchezのクラッシュ・
アルバム(対決盤)です。

80年代以降ジャマイカではこうしたLP
の片面ずつに違うアーティストの曲を入れ
るクラッシュ・アルバムがよく作られる
ようになります。
元々は同じ曲で歌のウマさを競い合う
アルバムだったのですが、徐々にその形が
崩れて違う曲を入れたものの多く出るよう
になるんですね。
一度に二度美味しいというこういう華やか
なアルバムがジャマイカの人々は好きな
ようで、この80年以降は本当に多くの
クラッシュ・アルバムが作られているん
ですね。
それもレゲエという音楽の楽しみ方なの
だと思います。

手に入れたのはExterminatorからリリース
されたLPでした。

Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。
Side 1にはPinchersの曲が4曲、Side 2
にはSanchezの曲が4曲と、分かれて収録
されています。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。
曲名以外の表記がなく、それ以上の事は
ネットにも書かれていません。
ただExterminatorからリリースなので、
プロデュースはPhilip 'Fatis' Burrell
で間違いなさそうです。

ジャケットはなかなか素敵なイラストで、
正直なところ半分ぐらいはこのジャケット
が気に入って買いました(笑)。
残り半分はレゲエレコード・コムで、非常
に安価で売られていたこと。
意外とこうしたクラッシュ・アルバムは、
比較的安く売られていることが多いんです
ね。
一応新盤という事でしたが、古いアルバム
なので盤の擦れた後のある、少し汚れた
ジャケットでした。
ただ買いに行った日にレコード用の額を
買ったので、試しにこのアルバムを入れて
みるととても良い感じに収まりました。

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額装

見ようによってはただ大きくて邪魔なLP
ですが、データだと音を聴くだけですが、
こうした「遊び」が出来るのも、LPなら
ではの楽しみ方ではあります。

さて今回のアルバムですが、Pinchersと
Sanchezという2人のアーティストの
ヴォーカルが楽しめるアルバムで、内容は
なかなか悪くありません。

このPinchersはその甘い歌声でこの86年
からの4年間でこの共演盤を含めて9枚の
アルバムをリリースしており、一方の
Sanchezは88年からの2年間でこの
アルバムを含めて6枚のアルバムを
リリースしているんですね。
いわば好調な2人の共演で、どちらも甘い
ラヴ・ソングを得意としているところも
共通しています。

バックのサウンドは80年代半ばから流行
した、デジタルのダンスホール・レゲエ
「コンピューター・ライズド」の名残りを
感じさせるデジタル・サウンドで、その
あたりもこのアルバムの魅力となって
います。
プロデューサーのPhilip 'Fatis' Burrell
は、90年代にこのレーベルExterminator
(Xterminator)でSizzlaやLucianoなどの
アーティストをプロデュースし、ルーツ・
サウンドを復活させて高い評価を得るの
ですが、まだこの89年頃はアーティスト
もサウンドもダンスホールの匂いのする
ものだったんですね。
そこから徐々に新しいルーツ・サウンドを
作り上げて行ったものと思われます。
ただ今聴くとこの時代のサウンドも、
かなりしっかりと作られていて内容は
けっして悪くはないんですね。

Side 1にはPinchersの曲が4曲収められて
います。

Side 1の1曲目は「Bodyguard」です。
デジタルらしい刻むようなメロディに、
合間良く入って来るピアノ、ソフトな
ファルセット気味のPinchersの緊張した
ヴォーカルが良い味を出している曲です。
後半の漂うようなファルセットはなかなか
魅力的。

2曲目は「Girls Girls」です。
明るいホーンのメロディに、こちらも
ファルセットなPinchersのヴォーカル。
ミディアム・テンポの曲調で、心地良さ
そうに歌うヴォーカルが魅力。

Pinchers - Girls Girls


3曲目は「Pincher's Prayer」です。
デジタルのリズムにホーンのダブワイズ
したメロディ、Pinchersの浮遊感のある
ヴォーカルがあのTenor Sawを彷彿と
させる曲です。

PINCHERS ~ Pinchers's Prayer


4曲目は「Mr. Dress Good」です。
リディムはThe Carpentersのポップスの
ヒット曲「Top Of The World」。
(作曲はBurt Bacharach。)
デジタルらしい耳に残るアレンジに、
淡々と歌うPinchersのヴォーカル。
サビの部分では得意のファルセットを
聴かせています。

Pinchers - Mr. Dress Good (1989 - Fatis)


Side 2にはSanchezの曲が4曲収められ
ています。

Side 2の1曲目は「Baby Can I Hold You
Tonight」です。
ピアノのメロディにデジタルな
ドラミング、Sanchezの歯切れの良い
ソフトなヴォーカル…。

Sanchez - Baby Can I Hold You Tonight


2曲目は「Close To Me」です。
デジタルの叩き込むようなドラミングから
ピアノのメロディ、Sanchezの説得力の
あるソフトで力強いヴォーカル。
とても上質なラヴ・ソングです。

Sanchez - Close To Me


3曲目は「Stoned (Out Of My Mind)」
です。
リディムはGregory Isaacの「Night
Nurse」か?
ソフトで浮遊感のあるシンセのメロディ
に、「Night Nurse」を思わせるハミング
からのソフトなヴォーカル。
包み込むような優しいヴォーカルが魅力。

Sanchez - Stoned Out Of My Mind


4曲目は「Down The Road」です。
叩きつけるようなデジタル・サウンドに、
Sanchezの激しさとソフトさを使い分けた
表情豊かなヴォーカル。

ざっと追いかけてきましたが、やはり
コンピューター・ライズドの名残りを感じ
させるイントロなどに入るデジタル・
サウンドはこの80年代後半ならではの
ものがあり、この2人のヴォーカルをより
魅力的なものにしています。
それに乗せた2人のソフトで個性的な
ヴォーカルも、この時代を彩った
ヴォーカリストとしての魅力が感じられて
聴くべきものがあります。

けっしてスゴイというアルバムではあり
ませんが、この時代らしいクラッシュ・
アルバムで、すごく好感が持てるアルバム
なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Pinchers, Sanchez
○アルバム: Pinchers Meets Sanchez
○レーベル: Exterminator
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1989

○「Pinchers Meets Sanchez」曲目
Side 1
1. Bodyguard - Pinchers
2. Girls Girls - Pinchers
3. Pincher's Prayer - Pinchers
4. Mr. Dress Good - Pinchers
Side 2
1. Baby Can I Hold You Tonight - Sanchez
2. Close To Me - Sanchez
3. Stoned (Out Of My Mind) - Sanchez
4. Down The Road - Sanchez

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〇Sanchez「In Fine Style」
〇Sanchez「Number One」
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〇Pinchers, Pliers「Pinchers With Pliers」
〇Pinchers「Agony」
〇Pinchers「Bandelero」
〇Pinchers「Lift It Up Again」