今回はAl Campbellのアルバム

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「Gee Baby / No More Running」です。

Al Campbell(本名Alphonso Campbell)は
70年代のルーツ・レゲエの時代から
80年代のダンスホール・レゲエの時代に
活躍したシンガーです。
ネットのDiscogsには彼のプロフィールと
して、次のような事が書かれています。

Born 1954 in Kingston, Jamaica. Was part of
the first generations of dancehall artists.
《1954年、キングストン生まれ。
ダンスホール・アーティストの最初の世代
のひとりとして知られています。》

Discogsの彼の履歴を見ると、70年代から
活動を始め、共演盤を含め30枚を超える
アルバムと数多くのシングル盤を残している
のが、このAl Campbellというシンガーなん
ですね。
特に77年から85年までは1年に1枚以上
のアルバムを常に出しており、彼が
ジャマイカでいかに人気シンガーであったか
がうかがえます。

Al Campbell - Wikipedia

今回のアルバムは1977年にUKの
Phill PrattのレーベルPhill Prattから
リリースされた彼のファースト・アルバム
「Gee Baby」と、翌78年にUKの
やはりPhill PrattのレーベルTerminal
からリリースされた「No More Running」
の2枚のアルバムを1枚にカップリング
した2in1仕様のアルバムです。

プロデュースは2枚ともPhill Prattで
バックにはSly & RobbieやChinna Smith、
Ansell Collinsなど、当時ジャマイカで
活躍していたバック・ミュージシャンが
わきを固めたアルバムになっています。

ちなみに78年はAl Campbellの人気が
ブレイクした年だったらしく、この
「No More Running」の他に「Rainy
Days」や「Ain't That Loving You」、
「Loving Moods Of Al Campbell」など、
6枚のソロ・アルバムをリリースして
います。

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Al Campbell ‎– Rainy Days (1978)

この時代はまだ思想的なルーツ・レゲエ
がレゲエとして流行っていた時代ですが、
彼の曲のタイトルなどを見ると明らかに
ラヴ・ソングと思われるタイトルの曲が
多いんですね。
おそらく彼のソフトな歌声で歌われる
ラヴ・ソングが、多くの人々の心を捉え
て人気を博したものと思われます。
そのあたりがこの人がダンスホール・
レゲエの初めの世代と言われる所以かと
思われます。

全20曲で収録時間は約58分。
1~10曲目までは77年のファースト・
アルバム「Gee Baby」の10曲が、残りの
11~20曲目までは78年のアルバム
「No More Running」の10曲が収められ
ています。

「Gee Baby」のミュージシャンについては
以下の記述があります。

Produced & Arranged by: Phill Pratt
Bass: Aston 'Family Man' Barrett
Drums: Leroy Wallace
Piano: Lloyd Willis, Bobby Kalphat
Guitar: Earl Smith, Rad Bryan
Organ: Oswald Hibbert, Ansel Collins

「No More Running」のミュージシャンに
ついては以下の記述があります。

Produced & Arranged by: Phill Pratt
Engineer: Earnest Hookim

Musicians:
Drums: Banabas, Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespear
Lead Guitar: Bo-Pe, Doggie
Rhythm Guitar: Ranchie
Keyboards: Ansell Collins, Bobby Kalphat
Percussion: Skullie, Stickey
Tenor Saxophone: Tommy McCook
Alto Saxophone: Herman Marques
Backing Vocals: Phill Pratt
Trombone: Vin Gordon

となっています。

77年のファースト・アルバム「Gee Baby」
は、プロデュースとアレンジはPhill Pratt、
ミュージシャンはベースにAston 'Family
Man' Barrett、ドラムにLeroy Wallace、
ピアノにLloyd WillisとBobby Kalphat、
ギターにEarl SmithとRad Bryan、オルガン
にOswald HibbertとAnsel Collinsという
布陣です。

78年のアルバム「No More Running」は、
プロデュースとアレンジはPhill Pratt、
エンジニアはEarnest Hookim、おそらく
録音はChannel Oneで行われたものと思わ
れます。
ミュージシャンはドラムにBanabasと
Sly Dunbar、ベースにRobbie Shakespear、
リード・ギターにBo-PeとDoggie、リズム・
ギターにRanchie、キーボードにAnsell
CollinsとBobby Kalphat、パーカッション
にSkullieとStickey、テナー・サックスに
Tommy McCook、アルト・サックスにHerman
Marques、バック・ヴォーカルにPhill Pratt、
トロンボーンにVin Gordonという布陣
です。

ちなみにジャケット・デザインについては
記述がありませんが、ネットのDiscogsで
調べてみると「No More Running」の方は
Tony Neroという人が行っているようです。
(「Gee Baby」の方は不明。)
表ジャケに載っていたジャケット写真を
疑似的にジャケット風にしてみると、
こんな感じです。

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Gee Baby 表ジャケ

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No More Running 表ジャケ

さて今回のアルバムですが、ダンス
ホール・レゲエの第一世代と言われる
Al Campbellのアルバムだけあって、
どちらのアルバムも彼のソフトな歌声が
とても魅力的なアルバムに仕上がって
います。

70年代に世界的にブレイクしたレゲエと
いう音楽ですが、当時は黒人差別などを
訴えるプロテスト・ソング色の強い思想的
な「ルーツ・レゲエ」が主流だったんです
ね。
ところが80年代に入るとルーツ・レゲエ
の象徴的なアイコンだったBob Marleyが
亡くなった事などもあって、ラヴ・ソング
などを中心とした快楽的な現場主義の
レゲエ「ダンスホール・レゲエ」が主流と
なって行くんですね。
今回の2枚のアルバムはまだ70年代後半
のアルバムですが、そうしたダンスホール
の「気配」がこのアルバムからも感じられ
ます。

この70年代後半あたりからこのAl
CampbellやLinval Thompsonなどの新しい
感性を持ったシンガーが登場してきて、
時代は徐々に踊りの現場で聴かれるダンス
ホール・レゲエへと、レゲエの質自体が
変わって来るんですね。
今回のアルバムもバックの演奏はまだこの
70年代の後半に流行ったミリタント・
ビート(別名:ロッカーズ)の演奏なんです
が、ルーツ・レゲエの持つ重い空気感は
あまりなく、時にファルセットなども使用
したAl Campbellの明るく爽やかな
ヴォーカルが際立つ楽曲が収められて
います。

今回の2枚のアルバムを比較すると、
1~10曲目の「Gee Baby」はドラマーの
Leroy 'Horsemouse' Wallaceの特徴的な
コツコツとしたゆとりのあるドラミングに
乗せた演奏で、Al Campbellのヴォーカルを
生かしながらも、Bobby Kalphatの
メロディカやAnsel Collinsのキーボード
など、プレイヤーの個性を生かした作りが
印象的。
対する11~20曲目の「No More
Running」は、Sly Dunbarを中心とした
攻撃的なミリタント・ビートの疾走感の
ある演奏で、Al Campbellの落ち着いた
ヴォーカルに、Tommy McCookを中心と
したホーン・セクションがうまく彩りを
添えています。
そのあたりのサウンドの違いは、
プロデューサーのPhill Prattの手腕の
光るところなんですね。

1~10曲目まではAl Campbellの77年の
ファースト「Gee Baby」の曲が収められて
います。

1曲目は表題曲の「Gee Baby」です。
ピアノのリリカルなメロディに
ファルセットのコーラス、Al Campbellの
ソフトなヴォーカルが夢見心地に素晴ら
しい曲です。

Al Campbell - Gee Baby


2曲目は「Hide And Seek」です。
リディムはKen Parkerの「I Can't Hide」。
ちょっとこもったようなキーボードの
メロディにズシっとしたベース、よく通る
Al Campbellのヴォーカルにファルセット
のコーラスが心地良い曲です。

Al Campbell - Hide And Seek


3曲目は「Going The Wrong Way」です。
こちらもリリカルなピアノにドスの効いた
ベース、高音を生かしたAl Campbellの
ちょっとアンニュイなヴォーカルという
組み合わせ。

4曲目は「Call Me」です。
リリカルなピアノにズシっとしたベース、
表情豊かなAl Campbellのヴォーカル。

Al Campbell-call me


5曲目は「It's True」です。
こちらはギターとベース、ピアノを中心
とした演奏に、表現力豊かなAl Campbell
のヴォーカルが素晴らしい曲です。

6曲目は「Where Were You」です。
軽快なドラミングに表情豊かなメロディカ
の奏でるメロディ、ノビのあるAl Campbell
のソフトなヴォーカルがとても魅力的な曲
です。
メロディカを演奏しているのは、この楽器
の奏者としても知られるBobby Kalphatと
思われます。

Al Campbell - Where were you


7曲目は「Suit Yourself」です。
滑らかなピアノのメロディにベース、
Al Campbellの表情豊かな滑らかな
ヴォーカルが魅力的な曲です。

8曲目は「Saving My Love」です。
ギターの明るいメロディに浮遊感のある
キーボード、ソフトで淡々としたAl
Campbellのヴォーカル。

9曲目は「When And Where」です。
浮遊感のあるキーボードとズシっと重い
ベース、刻むようなギターに乗せた、
Al Campbellの語るように丁寧なヴォーカル
が魅力的。

10曲目は「Over Size Man」です。
叩きつけるような激しくリリカルなピアノ
に、ズシっと重く支えるようなベース、
心地良いHorsemouse Wallaceらしい
ドラミング、ソフトで美しいAl Campbell
らしいヴォーカルも良い味を出している
1曲。

Al Campbell - Oversize Man


11~20曲目までは78年のアルバム
「No More Running」の曲が収められて
います。

11曲目は「Soul Sister」です。
心地良いミリタント・ビートに乗せた
キーボートとピアノメロディを中心にした
演奏に、ファルセットなども駆使した
Al Campbellのノビノビと余裕のある歌い
ぶりがとても印象的。

Al Campbell - Soul Sister


12曲目は「Foot Stool」です。
心地良いミリタントなドラミングに
ロックなキーボード、刻むようなギター
とベース、ノビノビと歌うAl Campbellの
ヴォーカルも魅力。

13曲目は「Can't Get No Peace」です。
ホーン・セクションのメロディと重い
ベース、余裕のある歌いぶりのAl Campbell
のヴォーカル。

14曲目は「Free Man」です。
心地良いビートにギターとベース、ピアノ
のメロディ、Al Campbellの力の抜けた
気持ちの良いヴォーカル。
良い意味のアクの無さが、この人の魅力
です。

15曲目は「When The Grass Is Green」
です。
華やかなホーンのメロディに、刻むような
ギターとベース、Al Campbellのソフトな
ヴォーカルという組み合わせ。

AL CAMPBELL - When the grass is green (1974 Sunshot)


16曲目は表題曲の「No More Running」
です。
心地良いギターのメロディにズシっとドス
の効いたベースを中心とした演奏に、
ファルセットも駆使したAl Campbellの
ノビのあるヴォーカルが素晴らしい1曲。

Al Campbell - No More Running.


17曲目は「Tribal War」です。
心地良いドラミングにロックなギターと
ベースを中心としたメロディ、Al Campbell
の余裕のあるヴォーカルもグッド。

18曲目は「You Must Get A Beaten」
です。
心地良いパーカッションとキーボード、
ベースを中心とした疾走感のあるメロディ
に、Al Campbellらしいノビノビとした
ヴォーカルが魅力。

19曲目は「If You Don't Love Jah」
です。
キーボードとギターを中心とした疾走感の
あるメロディに、Al Campbellのよく通る
爽やかなヴォーカルが魅力。

Al Campbell - If You Don't Love Jah


20曲目は「Hit Me With Music」です。
ギターを中心とした疾走感のある
ミリタント・ビートに、伸びやかな
Al Campbellのヴォーカルが冴える曲
です。

ざっと追いかけてきましたが、意外と2枚
のアルバムはバックのプレイヤーが似て
いるのですが、うまくビートなどを使い
分けて違いを出しています。
そのあたりは天才と呼ばれたプロデューサー
Phill Prattの手腕が見事です。

またAl Campbellのソフトで甘いソウルフル
な歌声はとても魅力的。
彼はどちらかというとジャマイカの
ローカル・タレントという色彩が強い人
ですが、それでも現代に至るまで活躍し、
アルバムも30枚以上リリースしている
人なんですね。
その甘く爽やかな歌声は永くジャマイカの
人々に愛された、そういうシンガーだった
んですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Al Campbell
○アルバム: Gee Baby / No More Running
○レーベル: Burning Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977 / 1978

○Al Campbell「Gee Baby / No More Running」曲目
(Gee Baby)
1. Gee Baby
2. Hide And Seek
3. Going The Wrong Way
4. Call Me
5. It's True
6. Where Were You
7. Suit Yourself
8. Saving My Love
9. When And Where
10. Over Size Man
(No More Running)
11. Soul Sister
12. Foot Stool
13. Can't Get No Peace
14. Free Man
15. When The Grass Is Green
16. No More Running
17. Tribal War
18. You Must Get A Beaten
19. If You Don't Love Jah
20. Hit Me With Music