今回はKen Bootheのアルバム

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「Got To Get Away Showcase」です。

Ken Bootheは60年代のスカ、ロック
ステディの時代から70年代のルーツ・
レゲエの時代にかけて活躍した名シンガー
です。
スカ→ロックステディ→ルーツ・レゲエと
活躍した彼ですが、特にロックステディ期
の活躍は目覚ましく「Mr. Rock Steady」
と称されるほど人気だったそうです。

アーティスト特集 Ken Boothe (ケン・ブース)

プロデューサーのPhil Prattについても
紹介しておきます。

Phill Pratt(本名George Phillips)は
ロックステディの時代にシンガーとして
活躍し、その後Studio Oneレーベルで
働いたのちに、Caltoneレーベルの傘下で
自身のレーベルSunshotを開設し、プ
ロデューサーとして活躍した人です。
70年代に若き日のHorace Andyや、
Al Campbell、Dennis Brownなどの歌手、
Dennis AlcaponeやJah Wooshといった
ディージェイをプロデュースした事で
知られるプロデューサーです。

Phil Pratt - Wikipedia

今回のアルバムは1978年にUKの
Phill PrattのレーベルPhill Prattより
リリースされたKen Bootheのソロ・
アルバムです。
「Got To Get Away Showcase」という
タイトルが付いているように、それぞれの
曲の歌とディージェイ、ダブが順番に並べ
られている「ショーケース・スタイル」の
アルバムで、1曲目Ken Bootheの
「Got To Get Away」に続いて、2曲目
「Long Time」は、Jah Waltonによる
「Got To Get Away」のディージェイ、
3曲目「Red Hot」は「Got To Get Away」
のダブ、4曲目Ken Bootheの歌の
「This Love」に続いて、5曲目「Dub
Style」は「This Love」のダブ、Ken
Bootheの歌の6曲目「Who Gets Your
Love」に続いて7曲目「From Jamaica
To Nigeria」はJah Waltonによる「From
Jamaica To Nigeria」のディージェイ、
8曲目「Disco Fashion」は「From
Jamaica To Nigeria」のダブという構成
のアルバムです。
要するに元のKen Bootheの曲は3曲で、
Jah Waltonによるディージェイが2曲、
ダブが3曲、元歌の後に並べられた
アルバムなんですね。

ちなみにDiscogsでこのアルバムを調べて
みたところ、元のLPの品番が「PP 01」
となっていましたので、もしかしたら
このPhill Prattレーベルの1枚目
(初めて)のアルバムなのかもしれま
せん。

手に入れたのはUKのBurning Sounds
から2017年にリイシューされたCD
(新盤)でした。

全8曲で収録時間は約32分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

* Vocals by Jah Walton
Produced by Phill Pratt
Original sleeve design by Anthony Nero

という記述があります。

*マークがついているのは2曲目「Long
Time」と、7曲目「From Jamaica To
Nigeria」の2曲で、この曲はJah Walton
によるディージェイ・ヴァージョンです。
Jah Waltonは70年代半ば頃から活躍して
いるディージェイで、80年代半ば頃に
Joseph Cottonと名前を改名している
ディージェイです。
おそらくこのJoseph Cottonという名前の
方が、よく知られていると思います。

プロデュースはPhill Pratt。
残念ながらミュージシャンに関する記述は
ありません。
おそらくPhill Prattの録音なので、バック
は彼のバック・バンドSunshot All Stars
かSunshot Bandという事になると思うの
ですが、実質はChannnel Oneのバック・
バンドThe Revolutionariesと同じような
ミュージシャンがバックを務めているもの
と思われます。
当時のバック・バンドはその時に集まれる
ミュージシャンで録音する、
「プラスティック・バンド」の形式が
当たり前だったので、バンド名が違っても
どのバンドにもSly & RobbieやChinna Smith
などが居たりと、同じようなミュージシャン
が当時のレゲエ・サウンドを作っていたん
ですね。

真っ赤なバックにカバンを持って飛行機で
逃げようとしている独特のジャケット・
デザインは、Anthony Neroという人の作品
のようです。

さて今回のアルバムですが、Ken Boothe
のソウルフルなヴォーカルに、さらには
Jah Waltonによるディージェイ、ダブまで
付いたショーケース・スタイルはなかなか
強烈で聴き応え満点。
とても良い内容のアルバムだと思います。

やはり「Mr. Rock Steady」とまで呼ばれた
Ken Bootheのソウルフルなヴォーカルは、
それから10年ぐらい経ったこのルーツ・
レゲエの後半の時代でも、とても素晴ら
しいものがあります。
近年でもあのアフリカン・レゲエの英雄
Tiken Jah Fakolyとソウルの楽曲「Is It
Because I'm Black?」で共演して健在ぶり
を証明した彼ですが、いくら時代が変わ
ろうが、常に全力で魂を込めて歌うその
スタイルは、やはり人の心を強く打つもの
があります。
実質的に彼が中心になっているのは、
1曲目の「Got To Get Away」と4曲目の
「This Love」、6曲目「Who Gets Your
Love」の3曲だけなんですが、魂を込めて
歌われた楽曲はどれも圧倒的で、とても
魅力的です。

またディージェイのJah Walton(Joseph
Cotton)の曲が2曲収められている事も、
今の時代になるととても貴重な事なんです
ね。
このJah Waltonは70年代半ばごろから
活躍している人ですが、いかにもルーツ・
ディージェイというスタイルのトース
ティングで、魅力的ではあるけれど
ジャマイカのローカル・ディージェイと
して活躍していた人なんですね。
アルバムもこのJah Walton名義では、
1枚のみ残しています。
(のちのJoseph Cotton名義のアルバムの
中にも、このJah Walton時代の音源を
収めたアルバムもあります。)

この人は80年代半ばにJoseph Cotton
に改名してからの方が人気が出たのか、
アルバムを多く出しているんですね。
そうしたJah Walton時代のトースティング
が聴けるのはむしろ貴重で、ルーツ色の
ある滑らかなトースティングはとても
魅力的です。
2曲目「Long Time」と7曲目「From
Jamaica To Nigeria」で聴かれる
ズシっとしたベースをバックにした
Jah Waltonの滑らかなトースティングは、
このアルバムのひとつの目玉になって
います。

またPhill Prattのプロデュースも見事
で、Ken Bootheのたった3曲の楽曲を、
Jah Waltonのディージェイ・ヴァージョン
2曲と3曲のダブをプラスして、うまく
ヴァラエティのあるショーケース・
スタイルにしているのはさすがの手腕
です。
これにより単に歌手のアルバムというより
は、聴き易く楽しいエンターテインメント
性のある、アルバムにしているんですね。

もともとダブやディージェイという音楽
が誕生したのは、弱小のプロデューサーが
一度録音した音源を「再利用」しようと
いう、かなり経済的な裏事情があるんです
ね。
ただそうした音源をまったく別の音源に
変えてしまうというのはかなり「知的な
遊び」であり、そこにこのジャマイカ人
特有のインテリジェンスがあります。
このPhill Prattという人もそういう知性
を感じさせる、素晴らしいプロデューサー
なんですね。

ちょっと贅沢を言えば、あとKen Boothe
の楽曲とダブか何か2曲入って、全10曲
入りのアルバムだったらなお良かったかな
と思います。
ネットのDiscogsの元のLPの仕様を見る
と、A面に5曲、B面に3曲入りの
アルバムなんですね。
A面に2曲分の歌→ディージェイ→ダブ、
歌→ダブと入って、B面に1曲分の歌→
ディージェイ→ダブと入っているんです
ね。
その為B面は10分ちょっとの長さしか
ありません。
おそらくあと2曲分(歌→ダブ)ぐらい
は、充分に入れられたと思います。
まあ約32分の長さがあるので合格点の
アルバムですが、欲を言えば…。

ついでに言えばアルバムの長さは30~
40分台ぐらいの長さが、一番聴き易い
アルバムの長さなんじゃないかと個人的
には思っています。
いろいろなアルバムを聴いていて、やはり
50分を超えると集中力が切れてきて、
ちょっと長いなと感じることが多いんです
ね。
最近は盛りだくさん感を出そうとしてか、
60分を超えるアルバムなどもあります
が、ちょっと長すぎると個人的には思って
います。

1~3曲目まではKen Bootheの「Got To
Get Away」と、Jah Waltonの
ディージェイ・ヴァージョン、ダブが収め
られています。

1曲目は表題曲の「Got To Get Away」
です。
初めからKen Bootheのソウルフルな
ヴォーカルが全開の曲です。
心地良いドラミングにズシっとした
ベース、ギターとキーボードが絡む魅力的
な曲です。

Ken Boothe - Got to get away

↑後半におそらく3曲目と同じダブが
入っています。

2曲目は「Long Time」です。
Jah Waltonによる1曲目「Got To Get
Away」のディージェイ・ヴァージョン
です。
こちらはベースがより強調されている
印象で、おそらくRobbie Shakespeare
あたりの重くズシっとしたベースに、
Jah Waltonの滑らかなトースティングが
すごくカッコいい、ダブワイズの効いた
1曲。

3曲目は「Red Hot」です。
こちらは1曲目「Got To Get Away」の
ダブ・ヴァージョンです。
2曲目のJah Waltonのディージェイ・
ヴァージョンは、この曲にトースティング
を乗せた印象。
ズシっとしたベースがとてもシビレます。

4~5曲目はKen Bootheの歌う「This
Love」と、そのダブが収められています。

4曲目は「This Love」です。
心地良いドラミングとベースを軸に、
パーカッションとギター、キーボードの
乗った演奏。
Ken Bootheらしい感情を載せたソウルフル
なヴォーカル。

5曲目は「Dub Style」です。
4曲目「This Love」のダブ・ヴァージョン
です。
こちらはピアノとキーボード、ベースなど
が強調された、ダブワイズの効いた1曲。

6~8曲目まではLPではB面に収録され
た曲で、Ken Bootheの歌う「Who Gets Your
Love」と、Jah Waltonのディージェイ・
ヴァージョン、ダブが収められています。

6曲目は「Who Gets Your Love」です。
心地良いギターのメロディとドラミング、
キーボード、全体を引き締めるような
重いベース・サウンドに、Ken Bootheの
ソフトで滑らかなヴォーカルが冴える曲
です。

Ken Boothe - Who Gets Your Love - Trojan Reggae - 45 rpm


7曲目は「 From Jamaica To Nigeria」
です。
Jah Waltonによる6曲目「Who Gets Your
Love」のディージェイ・ヴァージョン
です。
軽快なドラミングに乗せたギター、
キーボード、ベースのダブワイズの効いた
楽曲に、Jah Waltonの流れるようなトース
ティングが心地良い曲です。
こちらも8曲目のダブにトースティングを
付けた1曲。

8曲目は「Disco Fashion」です。
6曲目「Who Gets Your Love」のダブ・
ヴァージョンです。
唸るようなギターに、キーボード、
軽快なドラミングが心地良い1曲。

ざっと追いかけてきましたが、Ken Boothe
のソウルフルで滑らかなヴォーカル、
Jah Waltonの流れるようなトース
ティング、バックの軽快なドラミングと
重いベースを軸とした演奏のダブと、
ルーツ好きにはツボの要素が盛りだくさん
のアルバムなんですね。
ルーツ好きなら聴いて損のないアルバム
だと思います。

「Mr. Rock Steady」と呼ばれたKen Boothe
ですが、その後もルーツの時代にはこう
したアルバムを残し、現在に至るまで
活躍を続けているのは、やはり称賛に値
します。
彼の存在はレゲエ界の宝そのものなんです
ね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Ken Boothe - Everything I Own ( TOTP ) 1974



○アーティスト: Ken Boothe
○アルバム: Got To Get Away Showcase
○レーベル: Burning Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Ken Boothe「Got To Get Away Showcase」曲目
1. Got To Get Away
2. Long Time *
3. Red Hot
4. This Love
5. Dub Style
6. Who Gets Your Love
7. From Jamaica To Nigeria *
8. Disco Fashion
* Vocals by Jah Walton

●今までアップしたKen Boothe関連の記事
〇Ken Boothe「Everything I Own」
〇Ken Boothe「Freedom Street」
〇Ken Boothe「I'm Just A Man」
〇Ken Boothe「You're No Good」