今回はKeith & Texのアルバム

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「Stop That Train」です。

Keith & Texはロックステディの時代から
活躍するコーラス・デュオ・グループの
です。
ジャマイカの音楽界の中でもアメリカの
ソウルやR&Bの影響を強く受けた音楽
を作るDerrick Harriottのレーベル
Crystal Recordsで、ロックステディの
時代に活躍したコーラス・デュオで、
「Tonight」や「Stop That Train」、
「Don't Look Back」などのロック
ステディのヒット曲があります。
特に「Stop That Train」は、後の80年
代にClint Eastwood & General Saintの
楽曲で世界的にヒットした事でも知られ
ています。

Keith & Tex - Wikipedia

今回のアルバムは1991年にジャマイカ
のDerrick HarriottのレーベルCrystal
RecordsからリリースされたKeith & Tex
のロックステディのヒット曲を中心とした
コンピュレーション・アルバムです。

レーベル特集 Crystal (クリスタル)

「Tonight」や「Stop That Train」、
「Don't Look Back」などの彼らのロック
ステディのヒット曲が収められている
ほか、ジャケットに「Special Guest:
Noel 'Bunny' Brown」と書かれているよう
に、シンガーのNoel 'Bunny' Brownの楽曲
が「Mans' Temptation」や「Fat Boy」
など4曲収められています。

手に入れたのはCrystal Recordsから
リリースされたLPの中古盤でした。

なお裏ジャケに「MONO / STEREO」という
表記があるので、モノラル録音も混じって
いるようです。

Side 1が8曲、Side 2が8曲の全16曲。

詳細なミュージシャンの表記はないのかな
と思ったのですが、裏ジャケの解説文の
ところにバックのアーティスト名がありま
した。
それをまとめると

Guitar: Lyn Tate, Hux Brown
Drums: Joe Isaacs
Bass: Bobby Aitkin
Piano: Gladstone 'Gladdy' Anderson

また次のような事も裏ジャケに書かれて
いました。

Songs featuring Noel 'Bunny' Brown
* Mans' Temptation * Phoenix * Heartbreak Girl * Fat Boy

Produced and arranged by: Derrick Harriott
Executive Producer: Derrick Harriott
Mixed by: Derrick Harriott
Mastered by K.K. Mastering, Jamaica
Recorded at Dynamic and Federal Studios, Kingston, Jamaica
Art Concept: Derrick Harriott
Art: Michael Robinson

バックはこのロックステディの時代に活躍
したバック・バンドLyn Tate & The Jatsと
思われます。
メンバーはギターにLyn TateとHux Brown、
ドラムにJoe Isaacs、ベースにBobby Aitkin、
ピアノにGladstone 'Gladdy' Andersonと
いう布陣です。

シンガーNoel 'Bunny' Brownの楽曲が
Side 1の7曲目「Mans' Temptation」、
8曲目「Phoenix」、Side 2の6曲目
「Heartbreak Girl」、7曲目「Fat Boy」
と、合計4曲収められています。

プロデュースとアレンジ、エグゼクティヴ・
プロデューサー、ミックスはDerrick
Harriott、レコーディングはジャマイカの
キングストンにあるDynamicとFederal
Studiosで行われています。

ジャケット・コンセプトはDerrick Harriott
で、アート・ワークはMichael Robinsonが
担当しています。

さて今回のアルバムですが、このロック
ステディの時代のKeith & Texの活躍は
なかなか素晴らしく、ロックステディが
好きな人なら「Tonight」や「Stop That
Train」はぜひ聴いておきたい曲なん
ですね。
そういう意味では今回のコンピは、ロック
ステディ好きには悪くないアルバムだと
思います。

たびたび書いていますが、このロック
ステディという音楽はレゲエの前身の音楽
で、その前にジャマイカで流行していた
スカの後に誕生した音楽で、1966年
から68年までのわずか3年だけ流行した
音楽なんですね。

ロックステディ - Wikipedia

そのロックステディの流行を支えたのが、
Stuio OneをベースにSoul Vendorsなどで
活躍したキーボード奏者のJackie Mittoo
と、Treasure Isleをベースに
The Supersonicsを率いて活躍した
Tommy McCook、そして今回のアルバムにも
参加しているトリニダード・トバゴ出身の
ギタリストLyn Tateを中心としたLyn Tate
& The Jatsだったんですね。

このロックステディの時代にジャマイカの
音楽は、UKに輸出されるなどして飛躍的
に進歩して、そしてついには70年代半ば
には世界の音楽「レゲエ」へと発展するん
ですね。
そうした世界に飛躍するための下地を
作ったのが、このロックステディの時代
だったんですね。

そのロックステディの特徴はスローな
リズムと甘いメロディで、それまでのスカ
のアップ・テンポなリズムからこの時代に
なるとユッタリとした甘い曲が人気を博し
たんですね。
このブームは中心人物だったJackie Mittoo
やLyn Tateがカナダ移住を決めてしまった
事でわずか3年という短い期間で終わって
しまいますが、このロックステディの時代
に作られたヒット曲はその後何度も何度も
リメイクされて、「ファウンデーション・
リディム」として永く永く愛される続ける
事になるんですね。

そうしたロックステディの時代に活躍した
Keith & Texですが、今回のアルバムに
収められた彼らのヒット曲「Tonight」や
「Stop That Train」もファウンデーション・
リディムとして知られている曲なんです
ね。
この2曲はのちに多くのアーティストが、
リディムとして使っている曲なんですね。

特に「Stop That Train」は、後の80年
代にClint Eastwood & General Saintの
コミカルな演出の楽曲で世界的にヒット
した事でも知られています。
またあのThe Wailersが73年にIsland
Recordsからメジャー・デビューした
アルバム「Catch A Fire」で、Peter Tosh
がリード・ヴォーカルをとっている曲の
ひとつがこの曲なんですね。

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The Wailers ‎– Catch A Fire (1973)

このPeter Toshのヴァージョンは、サビ
の部分は同じですが、他はかなり編曲
されたヴァージョンです。

またPeter ToshはこのKeith & Texが
好きなのか、彼がソロとなったのちも
The Rolling StonesのレーベルRolling
Stones Recordsからリリースした3枚目
のソロ・アルバム「Bush Doctor」で、
今回のアルバムに入っている
「Don't Look Back」を歌っているん
ですね。

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Peter Tosh ‎– Bush Doctor (1978)

こちらはなんとあのThe Rolling Stones
のリード・ヴォーカリストMick Jagger
とのデュエット曲です。
この「Don't Look Back」も2曲よりは
知名度が少し落ちますが、ロックステディ
の時代のファウンデーション・リディムの
ひとつなんですね。

「Tonight」の説明が後になりましたが、
こちらは彼らKeith & Texの名曲中の名曲
で、のちの80年代にTenor Sawが
「Lots Of Sign」というタイトルで
カヴァーした事でも知られている曲です。
ロックステディ特有のギターの刻むような
メロディに乗せた、哀愁を秘めた彼らの
ヴォーカルが絶品な1曲です。

あと4曲のヴォーカルをとっているNoel
'Bunny' Brownですが、Derrick Harriott
のレーベルCrystal Recordsで活躍した、
ソウル色の強いコーラス・グループ
The Chosen Few のヴォーカリストのひとり
です。
ネットのDiscogsによると、1枚のアルバム
と今回の4曲を含めた24枚ぐらいの
シングル盤をリリースしています。

ちなみにこの4曲の中の1曲、Side 1の
8曲目「Phoenix」は、67年の
ポピュラーのヒット曲Glen Campbellの
「By The Time I Get To Phoenix(邦題:
恋はフェニックス)」のカヴァーです。
日本でもヒットした曲なので、年配の人
なら覚えている曲なんですね(笑)。

恋はフェニックス - Wikipedia

今回のアルバムはこうした楽曲を中心に、
ロックステディの時代に活躍したKeith &
TexとNoel 'Bunny' Brownの楽曲が楽しめる
アルバムで、このロックステディの時代の
好きな人なら楽しめるアルバムではないか
と思います。

Side 1の1曲目は「Tonight」です。
ギターの刻むようなメロディに乗せた、
Keith & Texの哀愁を秘めた甘いヴォーカル
が絶品な曲です。
これぞロックステディ!という1曲。

Keith & Tex - Tonight


リズム特集 Tonight/Lots Of Sign (トゥナイト/ロッツ・オブ・サイン)

2曲目は「Hypnotizing Eyes」です。
キーボードとギターの哀愁を秘めた
メロディに、伸びやかなKeith & Texの
ヴォーカル・ワークがグッとくる曲です。

Keith and Tex- Hypnotic eyes


3曲目は「Stop That Train」です。
おそらく彼らの楽曲の中でももっとも知ら
れている曲だと思います。
列車で町を出て行こうとする彼女に、出て
行かないでと訴える1曲。
ギターの哀愁のあるメロディに乗せた、
Keith and Texらしいヴォーカルが冴える
名曲です。
ちなみにこの当時はジャマイカで列車が
運行されていましたが、90年代に嵐で
鉄道が壊れてから現在まで復旧されて
いないようです。
ジャマイカはその当時より豊かになって、
完全に車社会になってしまったんです
ね(笑)。

KEITH & TEX - Stop That Train [1967]


リズム特集 Stop That Train (ストップ・ザット・トレイン)

ケイス&テックス(Keith & Tex) - Stop That Train - リリック

4曲目は「Lonely Man」です。
明るいギターの刻むようなリズムに、
ハイ・トーンなヴォーカルとコーラス・
ワークが冴える曲です。

5曲目は「Let Me Be The One」です。
哀愁を秘めたギターとキーボードの
メロディに、表情豊かなヴォーカルと
コーラスといった曲です。

6曲目は「Run To The Rocks」です。
こちらもちょっと「Stop That Train」
に似たメロディの曲です。
哀愁を帯びたヴォーカルとコーラスが
魅力。

7~8曲目はNoel 'Bunny' Brownの楽曲が
収められています。

7曲目は「Mans' Temptation」です。
ちょっと「Don't Look Back」に似た
キーボードのメロディに、心地良い甘い
ファルセット気味のヴォーカルがとても
魅力的な曲です。
コーラスはKeith & Texか?

Keith & Tex - Man's Temptation


8曲目は「Phoenix」です。
書いたように67年のポピュラーのヒット
曲Glen Campbellの「By The Time I Get
To Phoenix(邦題:恋はフェニックス)」
のカヴァーです。
Noel 'Bunny' Brownのファルセット気味の
ヴォーカルが魅力的。

Keith & Tex Stop That Train 67 78 08 Phoenix


Side 2の1曲目は「Don't Look Back」
です。
漂うようなキーボードのメロディに刻む
ようなギター、伸びのあるヴォーカルに
コーラス・ワーク…。
彼らKeith & Texの魅力の詰まった1曲
です。

DON'T LOOK BACK - KEITH & TEX


2曲目は「Leaving On The Train」です。
こちらも刻むようなギターのメロディに
乗せた、Keith & Texの息の合った
ヴォーカルが魅力の曲です。

3曲目は「What Kind A Fool」です。
ロックステディらしい刻むようなギターを
中心としたメロディに、息の合った楽し気
なヴォーカルが魅力的な曲です。

Keith & Tex - What Kind A Fool


4曲目は「Cool It」です。
アップ・テンポなキーボードのメロディの
インスト・ナンバーです。

5曲目は「Yah Yah Festival」です。
キーボードのメロディに、Keith & Texの
ヴォーカルとコーラス・ワーク。
ちょっとこもったような音質で、LPでも
録音状態が悪いのか確認できるのが、
ちょっと残念な曲です。

6~7曲目はまたNoel 'Bunny' Brownの
楽曲が収められています。

6曲目は「Heartbreak Girl」です。
ピアノとギターのメロディにホーン、
ノビのあるファルセットな歌声が魅力的。

7曲目は「Fat Boy」です。
ギターのメロディに乗せたNoel 'Bunny'
Brownのスウィートな歌声が魅力的な曲
です。

8曲目は「Down The Street」です。
勢いのあるホーンとギターのメロディに、
スウィートなKeith & Texのヴォーカル
が魅力的な曲です。

Keith and Tex - Down The Street


ざっと追いかけてきましたが、LPで
聴いても明らかに音質の悪い楽曲がある
のはちょっと不満が残るものの、この
ロックステディの時代のKeith & Texの
ヒット曲「Tonight」や「Stop That Train」、
「Don't Look Back」、さらにはNoel Brown
の「Mans' Temptation」まで聴けるのは、
なかなか魅力的です。
この時代のロックステディのいう音楽の
匂いがギュッと凝縮して詰め込まれた
アルバムで、内容は悪くないと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Keith & Tex
○アルバム: Stop That Train
○レーベル: Crystal Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1991

○Keith & Tex「Stop That Train」曲目
Side 1
1. Tonight
2. Hypnotizing Eyes
3. Stop That Train
4. Lonely Man
5. Let Me Be The One
6. Run To The Rocks
7. Mans' Temptation
8. Phoenix
Side 2
1. Don't Look Back
2. Leaving On The Train
3. What Kind A Fool
4. Cool It
5. Yah Yah Festival
6. Heartbreak Girl
7. Fat Boy
8. Down The Street

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