今回はPrince Far Iのアルバム

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「Voice Of Thunder」です。

Prince Far I(本名:Michael James
Williams)はルーツ・レゲエの時代から
活躍したディージェイで、プロデューサー
でもあった人です。
自ら「チャンティング」と称した、独特の
朗読するようなトースティング・スタイル
で知られています。
そうしたチャンティング・スタイルの
ディージェイ・アルバムのほか、
「Cry Tuff Dub Encounter」シリーズなど
のダブ・アルバムもリリースしています。

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Prince Far I ‎– Cry Tuff Dub Encounter Chapter 3 (1980)

またUKのパンクとレゲエを融合した
ようなレーベルOn U Soundsレーベルの
白人の主催者Adrian Sherwoodとも交流が
深く、On U SoundsのユニットSingers &
Playersなどにも参加しています。

1983年に銃により殺害されています。

A href="https://en.wikipedia.org/wiki/Prince_Far_I">Prince Far I - Wikipedia

ジャマイカでは多くのミュージシャンが
銃によって殺害されているんですね。

ジャマイカ・レゲエ音楽史における銃事件に迫る…

今回のアルバムは1981年にUKの
Trojan Recordsからリリースされた
彼のソロ・アルバムです。

タイトル通りに「Voice Of Thunder」と
評される彼独特のダミ声による、
チャンチング・スタイルのトースティング
が印象的なアルバムです。
バックはPrince Far Iのバック・バンド
The Arabsと思われ、重いベースの
サウンドを軸に、Deadly Headlyの自在な
サックスが魅力的な演奏。
この年に亡くなったBob Marleyに哀悼を
捧げた「Tribute To Bob Marley」ほか、
「Drum Song」リディムの「Every Time
I Hear The Word」など、彼のディージェイ
としての魅力が存分に収められたアルバム
になっています。

手に入れたのはTrojan Recordsから
リリースされたCDの中古盤でした。

全10曲で収録時間は約39分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Drums: Eric 'Fish' Clarke
Bass: Professor Larry Silvera
Rhythm Guitar: Andy, Little Dee
Keyboards: Steely From Roots Radics, Tarzan, Tony Asher
Melodica: Tony Asher
Hornes: Deadly Headly
Percussion: Jah Lloyd, Scully
Congo Drums: Scully

All titles written by Michael Williams
Produced by Michael Williams

Design: Bamber Forsyth
Photo: Dave Hendley

となっています。

バックはPrince Far Iのバック・バンド
The Arabsと思われます。
メンバーはドラムにEric 'Fish' Clarke、
ベースにProfessor Larry Silvera、
リズム・ギターにAndyとLittle Dee、
キーボードにRoots RadicsのSteely
JohnsonとTarzan、Tony Asher、
メロディカはTony Asher、ホーン
(アルト・サックス)はDeadly Headly、
パーカッションはJah LloydとScully、
コンゴはScullyという布陣です。

全ての曲の作曲とプロデュースは
Michael Williams(Prince Far Iの本名)。

ジャケット・デザインはBamber Forsyth、
フォトはDave Hendleyとなっています。

またアルバムには記述がありませんが、
レコーディングはChannel One Studiosで、
エンジニアはBarnabasとMaxieという記述
が、Discogsをはじめとして多くの販売
サイトにありました。

さて今回のアルバムですが、ダブ・ポエット
に近いような彼独自のチャンティング・
スタイルのトースティングが展開する
アルバムで、唯一無二ともいえる彼の
トースティングはやはり魅力的で、内容は
悪くないと思います。

このPrince Far IはUKのAdrian Sherwood
のレーベルOn U Soundsなどでも活躍した
人で、その個性的なトースティングで
レゲエを世界に広めた人なんですね。
ある意味ルーツ・レゲエのセンターに居た
人ではありませんが、一度聴いたら忘れ
られないそのダミ声と、詩を朗読するよう
な自身が「チャンティング」と名付けた
独特のトースティングはきわめて個性的
で、レゲエの歴史に名前を留めている
ディージェイなんですね。

今回のアルバムではその独特のトース
ティングに、バックのThe Arabsの演奏が
うまく彩りを添えています。
特に際立っているのがサックスの
Deadly Headlyの演奏で、これがうまく
独特の世界観を作り上げています。

Deadly Headlyはこの時期にThe Arabsの
演奏のほか、On U SoundsのSingers &
Playersなど数多くのOn U Soundsの
アルバムでPrince Far Iと共演している
んですね。
この時代にUKでPrince Far Iと共に
On U Soundsで活躍した仲間のひとりなん
ですね。
彼Deadly HeadlyはこのOn U Soundsに、
82年に「35 Years From Alpha」と
いう素晴らしいソロ・アルバムも残して
います。

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Deadly Headley ‎– 35 Years From Alpha (1982)

私事になりますが、このアルバムは私が
もっとも好きなレゲエのアルバムで、この
アルバムのCDを手に入れた事で、私が
再びレゲエを聴き始めたという思い出深い
アルバムです(笑)。
(LPは若い頃に持っていました。)

話を戻しますが、今回のアルバムもDeadly
Headleyのインスピレーション溢れる
プレイが随所に見られ、それがPrince
Far Iのトースティング(チャンティング)
をうまく引き立てています。
息の合った仲間と作り上げたPrince Far I
のトースティングが冴えるアルバムで、
この時期の彼の充実ぶりがうかがえる
アルバムになっています。

1曲目の語るようなトースティングの
「Ten Commandments」から始まり、この年
に亡くなったBob Marleyにささげた2曲目
「Tribute To Bob Marley」、Jackie Mittoo
の名曲「Drum Song」のリディムを使用した
Dave Hendleyのサックスが冴える4曲目
「Every Time I Hear The Word」、サックス
のメロディにダブワイズしたトースティング
が印象的な7曲目「Give I Strength」、
ギターとシンセに乗せたトースティングの
9曲目「Coming In From The Rock」
など、Prince Far Iらしい世界が楽しめる
アルバムに仕上がっています。

1曲目は「Ten Commandments」です。
サックスとベースを中心としたメロディ
に、Prince Far Iの語るような
チャンティングが冴える曲です。

Prince Far I - Ten Commandments (Voice Of Thunder Lp 1981)


2曲目は「Tribute To Bob Marley」です。
この年に亡くなったBob Marleyに捧げた曲
です。
力強いドラミングからピアノのメロディに
乗せた、ちょっと脱力したようなPrince
Far Iのダミ声のトースティング。

Prince Far I - Tribute To Bob Marley


3曲目は「Hold The Fort」です。
シンセとズシっとしたベースのメロディに
パーカッション、Prince Far Iの語る
ようなチャンティング。

Hold the Fort - Prince Far I


4曲目は「Every Time I Hear The Word」
です。
リディムはJackie Mittoo & Sound
Dimensionの「Drum Song」。
ドラムとパーカッションが叩き出すリズム
に、Dave Hendleyらしいなんとも魅力的な
サックスのメロディ、淡々と語るような
Prince Far Iのチャンティング…。
このアルバムの中でも特に白眉の1曲。

Prince Far I - Every Time I Hear The Word

↑初めに入る「レゲエ!」という変な
掛け声は、原曲には入っていません。

リズム特集 Drum Song (ドラム・ソング)

5曲目は「Head Of The Buccaneer」です。
浮遊感のあるシンセとピアノのメロディ
に、ドスの効いたベース、Prince Far I
のダミ声が印象的なチャンティング。

6曲目は「Shall Not Dwell In Wickedness」
です。
明るいサックスとベースのメロディに、
Prince Far Iの語るようなチャンティング。
ズシっとしたベースが効いた曲です。

7曲目は「Give I Strength」です。
エコーがかかったサックスからベースを
軸とした演奏に、こちらもエコーの
かかったPrince Far Iのダブワイズした
チャンティング。

8曲目は「Kingdom Of God」です。
ギターとベースのメロディを中心とした
演奏に、Prince Far Iの表情豊かな
チャンティング。

9曲目は「Coming In From The Rock」
です。
ギターとシンセを中心としたメロディに、
流れるように言葉が溢れ出すPrince Far I
のチャンティング。

Prince Far I-Coming In From The Rock


10曲目は「Skinhead」です。
ベースとギターを中心とした演奏に、
Prince Far Iのダミ声のチャンティング。
ベースの効いた渋い曲です。

Prince Far I - Skinhead



ざっと追いかけてきましたが、やはりこの
Prince Far Iのチャンティングという
スタイルは他に無い個性で、唯一無二の
独特なものがあります。
この独特な個性とリリックで彼は、レゲエ
の新しい世界を切り開いていったのかも
しれません。
そんな独特な個性を持つ彼には、新しい
サウンドを作ろうとしていたOn U Soundsの
Adrian Sherwoodは適任の相棒だったのかも
しれません。

こうした個性的な人が、この2年後に銃殺
されてしまったのはとても残念に思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Prince Far I
○アルバム: Voice Of Thunder
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Prince Far I「Voice Of Thunder」曲目
1. Ten Commandments
2. Tribute To Bob Marley
3. Hold The Fort
4. Every Time I Hear The Word
5. Head Of The Buccaneer
6. Shall Not Dwell In Wickedness
7. Give I Strength
8. Kingdom Of God
9. Coming In From The Rock
10. Skinhead