今回はU Royのアルバム

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「I Am The Originator」です。

U Roy(U-Roy 本名:Ewart Beckford)は
レゲエのトースティング・スタイルを確立
したディージェイとしてよく知られて
います。
それまでもCount MachukiやKing Stitt
など、サウンド・システムで曲と曲の間
や間奏部分で「掛け声係」として観客を
盛り上げるディージェイという職業は
ジャマイカにあったのですが、曲の中で
しゃべる「トースティング」を始めたのは
彼が最初だと言われています。
そのトースティングでU Royは70年代
初めのルーツ期にディージェイの大ブーム
を起こし、一躍人気者となるんですね。
ファースト・アルバム「Version Galore」
は、世界初のディージェイ・アルバムと
して知られています。

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U Roy ‎– Version Galore (1971)

このディージェイ・スタイルは70年代に
ジャマイカで大流行し、すぐにI Royや
Big Youthなど多くの追随者を生み、
やがてそのスタイルはアメリカのラップと
いう音楽も生み出す事になるんですね。
そのため彼U Royは「元祖ラッパー」と言わ
れる事があります。

アーティスト特集 U Roy (U ・ロイ)

今回のアルバムは2009年にUKの
Jamaican Recordings傘下のレーベル
Kingston Soundsからリリースされた、U Roy
の代表曲を集めたコンピュレーション・
アルバムです。

このKingston SoundsらしくBunny Leeが
プロデュースしたいわゆる「Bunny Lee
音源」が収められたアルバムで、Cornell
Campbellの「The Gorgon」のリディムを
使った「Gorgon Wise」や、Johnny Clarke
の「Hold On」のリディムを使った同名曲、
Linval Thompsonの「Don't Cut Off Your
Dreadlocks」のリディムを使った「Joyful
Locks」、Max Romeoの「Wet Dream」の
リディムを使った同名曲など、U Roy
らしいウィキッドで楽しいトースティング
が楽しめるアルバムに仕上がっています。

手に入れたのはKingston Soundsから
リリースされたCDでした。

全16曲で収録時間は約51分。
同時にリリースされたLPは全14曲で、
最後の2曲はCDのみのボーナス・
トラックとなっています。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians Include:
Drums: Carlton 'Santa' Davis, Sly Dunbar, Carlton Barrett
Bass: Robbie Shakespeare, Aston 'Family Man' Barrett
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Tony Chin
Organ: Winston Wright
Trumpet: Bobby Ellis
Trombone: Vin Gordon
Tenor Saxophone: Tommy McCook
Alto Saxophone: Lennox Brown

Recorded at: Harry J's, Randy's Studio 17 & Channel 1
All Tracks Produced by: Bunny Lee
Except Tracks 1 & 2 Bunny Lee & Ainley Foller
Track 12 Bunny Lee & Keith Hudson
Track 11 Bunny Lee & Lee Perry
Photography: Bunny Lee / Jah Floyd Archive
Design by Gary @ Voodoo London
Manufactored under licence from E.Lee

となっています。

Bunny Leeの録音なので、バックはBunny Lee
のハウス・バンドThe Aggrovatorsという事
になると思います。
メンバーはドラムにCarlton 'Santa' Davis
とSly Dunbar、Carlton Barrett、ベースに
Robbie ShakespeareとAston 'Family Man'
Barrett、リード・ギターにEarl 'Chinna'
Smith、リズム・ギターにTony Chin、
オルガンにWinston Wright、トランペットに
Bobby Ellis、トロンボーンにVin Gordon、
テナー・サックスにTommy McCook、アルト・
サックスにLennox Brownという布陣です。

レコーディングはHarry J'sやRandy's
Studio 17、Channel 1などで行われ、すべて
のプロデュースは、ただし12曲目「Riot」
はKeith Hudson、11曲目「Stick Together」
はLee Perryとの共同名義になっています。

写真はBunny Lee / Jah Floyd Archive、
デザインはGary @ Voodoo London。

さて今回のアルバムですが、これを聴けば
ルーツ期のU Royの活躍ぶりがよく解ると
いうコンピュレーションで、内容は悪く
ないと思います。

歌の中でしゃべるというU Royのトース
ティングという技法は、当時としては大変
な発明だったんですね。
曲に乗せて喋るという事はそれまで
行なった人が居なくて、世紀の大発明
だったんですね。
このように60年後半から70年前半の
当時のジャマイカはエネルギーがパンパン
に詰まった風船のような状態で、こうした
アヴァンギャルドなディージェイや、
ダブのような実験的な音楽が次々と誕生
したんですね。
ある意味プログレッシブ・ロックという
名前でも全然プログレッシブでない、ただ
のスタイリッシュな音楽よりも、よっぽど
プログレッシブだったのが、この時代の
レゲエという音楽だったんですね(笑)。
その溜まりに溜まったエネルギーが、
レゲエを世界の音楽に押し上げたといえ
ます。

今回のアルバムではレゲエで初めてトース
ティングを披露したU Royのディージェイ
が、充分に楽しめるアルバムになって
います。
彼の入門アルバムとしては、なかなか良い
内容のアルバムだと思います。

1曲目は「Call On Me」です。
心地良いギターのメロディにヴォーカル、
遅れて入って来るU Royらしい表情豊かな
トースティング…。

2曲目は「You Never Get Away」です。
リディムはDelroy Wilsonの「You'll Never
Get Away」です。
ギターの心地良いメロディにDelroy Wilson
のヴォーカルとそれに合わせるようなU Roy
のトースティング。
ロックステディの匂いのする楽曲も魅力。

You Never Get Away


3曲目は「Every Knee Shall Bow」です。
Johnny Clarkeの曲?と思いましたが、
ちょっと違うような…。
畳み掛けるようなギターとズッシリとした
ベースのメロディに乗せた、U Royの滑らか
なトースティングが魅力的。

U Roy - Every Knee Shall Bow


4曲目は「Gorgon Wise」です。
リディムはCornell Campbellの
「The Gorgon」。
彼らしい滑らかなトースティングに、
ダブワイズして被さって来るCornell
Campbellのヴォーカルが面白い曲です。

Gorgon Wise - U Roy


5曲目は「Hold On」です。
リディムはJohnny Clarkeの同名曲「Hold
On」です。
フライング・シンバルのリズムに乗せた
ベースを中心とした演奏に、Johnny Clarke
のヴォーカルとU Royのトースティングが
良い味を出している曲です。

U-Roy - Hold On


6曲目は「Number 1」です。
ロックステディと思われるギターとキー
ボードに乗せた賑やかなリズムに、エコー
のかかったU-Royのトースティング。

7曲目は「Joyful Locks」です。
リディムはLinval Thompsonの「Don't Cut
Off Your Dreadlocks」。
こちらもフライング・シンバルのビートに
乗せた、Linval Thompsonのヴォーカルと
U-Royのトースティングが魅力的な曲です。

U Roy - Joyful Locks


8曲目は「I Originate」です。
U Royの語りからキーボードのメロディ、
彼らしいウィキッドなトースティング。

U Roy - I Originate


9曲目は「Cool Down You Temper」です。
こちらもLinval Thompsonの同名ヒット曲
です。
ユラユラしたギターのメロディに、濃い
Linval Thompsonのダブワイズして行く
ヴォーカル、U Royのトースティングが
入り込んでさらに複雑に絡み合っていく
曲です。

10曲目は「Creation Rebel」です。
リディムはJohnny Clarkeの同名曲。
フライング・シンバルのビートに乗せた
ホーン・セクションのメロディに、エコー
の効いたU Royの滑らかなトースティング。

U Roy - Creation Rebel


11曲目は「Stick Together」です。
リディムはLeo Grahamの「Want A Wine」と
いう曲です。
明るく陽気なU Royのトースティングに、
ロックステディらしいノリの女性コーラス
とヴォーカルが魅力。

U ROY- STICK TOGETHER


12曲目は「Riot」です。
リディムはSoul Syndicateの同名曲。
印象的なギターとホーンのメロディに、
滑らかなU Royのトースティングが魅力。

U Roy - Riot


13曲目は「King Of The Road」です。
刻むようなギターとサックスの奏でる
ムーディーなメロディに、チョコっと入る
U Royのトースティング。

14曲目は「Wet Dream」です。
リディムはMax Romeoの「Wet Dream」。
スラックネス・ソングのハシリのような曲
です(笑)。
キーボードのメロディに乗せた、U Royの
軽快なトースティングが魅力の曲です。

残りの2曲はLPには収められていない、
CDボーナス・トラックです。

15曲目は「Ain't Too Proud To Beg」
です。
リディムはSlim Smithのロックステディの
ヒット曲の同名曲。
Slim Smithのヴォーカルから、軽快な
U Royのトースティングが魅力の曲です。

16曲目は「I Shall Not Remove」です。
こちらはCornell Campbellの同名ヒット曲
です。
こちらもU Royのトースティングが冴える
1曲。

ざっと追いかけてきましたが、U Royと
いうディージェイの魅力がよく解る選曲
で、内容は悪くないと思います。
ディージェイの入門的なアルバムとして
は、最適の1枚だと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: U Roy
○アルバム: I Am The Originator
○レーベル: Kingston Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2009

○U Roy「I Am The Originator」曲目
1. Call On Me
2. You Never Get Away
3. Every Knee Shall Bow
4. Gorgon Wise
5. Hold On
6. Number 1
7. Joyful Locks
8. I Originate
9. Cool Down You Temper
10. Creation Rebel
11. Stick Together
12. Riot
13. King Of The Road
14. Wet Dream
(CD Bonus Tracks)
15. Ain't Too Proud To Beg
16. I Shall Not Remove

●今までアップしたU-Roy関連の記事
〇U Roy & Friends「With A Flick Of My Musical Wrist: Jamaican Deejay Music 1970-1973」
〇U Roy「30 Massive Shots From Treasure Isle」
〇U Roy「Hold On Rasta」
〇U Roy「Jah Son Of Africa」
〇U Roy「Old School / New Rules」
〇U Roy「Rasta Ambassador」
〇U Roy「Smile A While」
〇U Roy「True Born African」
〇U Roy「Version Galore」
〇U-Roy「Dread In A Babylon」
〇Various「When Jah Shall Come」
〇Niney The Observer「Microphone Attack 1974-78」
〇Various「King Jammy Presents New Sounds Of Freedom」