今回はYabby U (Yabby You)のアルバム

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「King Tubby's Prophesy Of Dub」です。

Yabby U (Yabby You:本名Vivian Jackson)
はルーツ・レゲエの時代から活躍した
シンガーであり、プロデューサーでもある人
です。
70年代のルーツ・レゲエの時代はラスタ
ファリズムが信仰として流行していた時代
ですが、体に障害を持っていた彼は他の
ラスタファリアンが神とするエチオピア皇帝
ハイレ・セラシエを神とせず、イエス・
キリストを神とする独特の信仰の姿勢を
とっていました。
そのため彼は「ジーザス・ドレッド」と呼ば
れています。
ルーツ・レゲエの時代にシンガーとして
ディープな楽曲で人気を博したほか、
プロデューサーとしてWayne Wadeや
Michael Prophetなど多くのシンガーを育て
たのが、彼Yabby Youなんですね。

そうした活躍をしたYabby Youですが、
2010年に動脈瘤が原因で亡くなって
います。

Yabby You - Wikipedia

レーベル特集 Vivian Jackson (ヴィヴィアン・ジャクソン)

今回のアルバムのもう一人の主役
King Tubbyについても説明しておきます。

King Tubbyはルーツの時代から活躍するダブ
のミキサーであり、プロデューサーである人
です。
もともと電気技師だった彼は、ルーツ・
レゲエの時代からミキサーとして活躍し、
ダブの創成期からダブを作った人として知ら
れています。

ダブはルーツ・レゲエが誕生した70年代
初め頃から徐々に作られるようになるのです
が、1973年に一斉にダブのアルバムが
桜リリースされた事から一気にひとつの
ジャンルとして確立した音楽で、エコーや
リバーヴなどのエフェクトなどを使用して
原曲を全く別の曲に作り変えてしまう手法
を指します。

ダブ - Wikipedia

リミックスの元祖とも言われる音楽で、誰が
初めのダブを考案したかかはハッキリとは
解っていないのですが、このKing Tubbyが
ダブという音楽を完成させたと言われてい
ます。

自身のスタジオKing Tubby'sで、助手の
Prince JammyやScientistなどとともに
70年代から80年代にかけて多くのダブの
ミックスを手掛けたのが、このKing Tubby
という人なんですね。
その後も活躍を続けたKing Tubbyでしたが、
1989年に自宅前で何者かに射殺されて
亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムは1976年にUKの
Yabby YouのレーベルProphetsからリリース
された彼のダブ・アルバムです。

75年にThe Prophets名義でリリースされた
アルバム「Conquering Lion」のダブが収め
られたアルバムで、実質的に彼Yabby Youの
セカンド・アルバムに当たるアルバムのよう
です。
そのダブ・アルバムが1995年にUKの
レゲエ・リイシュー・レーベルBlood & Fire
からリイシューされたのが今回のアルバム
で、オリジナル12曲にプラスしてCD
ボーナス・トラック2曲が追加された、
全14曲入りのアルバムです。

手に入れたのはBlood & Fireからリリース
されたCDの中古盤でした。

全14曲で収録時間は約47分。
オリジナルは12曲で、残りの2曲は
CDボーナス・トラック。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Players of Instruments include:
Bass: Aston 'Family Man' Barrett, Robbie Shakespeare, Clinton Fearon
Drums: Leroy 'Horsemouth' Wallace, Benbow Creary, Carlton 'Santa' Davis
Guitar: Earl 'Chinna' Smith, Albert Griffiths, Ranchie McClean
Organ: Aston 'Family Man' Barrett, Bagga Walker, Bernard 'Touta' Harvey
Horns: Tommy McCook, Bobby 'Willow' Ellis, Vincent 'Trommie' Gordon

All tracks composed by Vivian Jackson
Produced by Vivian Jackson
Mixed by King Tubby
Published by Westbury Music / Yabby U Music
Digitally remastered by Kevin Metcalfe at the Town House, London
Digital sound restoration by Ian Silvester
Photographs of Yabby U supplied by David Katz
Additional Jamaican photography by Piers Merlino
Photograph of cover by Phil 'S.90' Hale
Design and build by Mat Cook at Intro
A+R Direction: Steve Barrow

となっています。

ミュージシャンはベースにAston 'Family
Man' BarrettとRobbie Shakespeare、
Clinton Fearon、ドラムにLeroy
'Horsemouth' WallaceとBenbow Creary、
Carlton 'Santa' Davis、ギターに
Earl 'Chinna' SmithとAlbert Griffiths、
Ranchie McClean、オルガンにAston 'Family
Man' BarrettとBagga Walker、Bernard
'Touta' Harvey、ホーンにTommy McCookと
Bobby 'Willow' Ellis、Vincent 'Trommie'
Gordonという布陣です。
ベースのClinton Fearonとギターの
Albert GriffithsはStudio Oneなどでも
活躍したグループThe Gladiatorsの
メンバーです。

すべての作曲とプロデュースはVivian
Jackson(Yabby You)で、ミックスは
King Tubbyが担当しています。

さて今回のアルバムですが、Yabby Youの
音源としては比較的初期の音源で、内容は
とても良いです。

このYabby Youですがルーツ・レゲエの中
でも最もディープなサウンドを得意とした
シンガー&プロデューサーで、独特の演歌
のような節回しを得意としたシンガーなん
ですね。
もともとアフリカにはそうした演歌の
ような節回しを持った音楽があったよう
で、そのYabby Youの作り出す楽曲は多く
のコアなジャマイカンに支持されたよう
です。

そのひとりが今回ミックスを担当している
King Tubbyで、Yabby Youの話によると彼
はYabby Youの音楽がすごくお気に入りで、
いつも彼のためにスペシャルなミックスを
用意してくれたんだとか。
そこまでKing TubbyがYabby Youの音楽を
気に入っていた理由として考えられるの
が、使用音楽にない彼独特の節回しが効い
たサウンドなんですね。
一見俗っぽくも聴こえるYabby Youの音楽
ですが、そのディープな感性が他になく
面白いところなんですね。
Yabby Youの作り出す音楽に、King Tubbyは
何を見ていたんでしょうか?
まだ見ぬアフリカの大地だったのか…?

本当のところは解りませんが、このYabby
YouとKing Tubbyはすごく相性が良く、
素晴らしい音楽のパートナーだった事は
間違いがありません。
今回のアルバムを聴いてみても、他には
無い独創的な世界を作り上げているんです
ね。
そうしたYabby Youの音楽に普段はクール
なKing Tubbyもよく反応していて、熱量を
感じる素晴らしいミックスを作り上げて
います。

1曲目は「Version Dub」です。
ギターとホーン・セクションのイントロ
から、ダブワイズ下ホーンの彼方から
聴こえるようなYabby Youのヴォーカル、
ズシっとしたベースにパーカッションも
良い感じに効いた曲です。

2曲目は「Conquering Dub」です。
アルバム「Conquering Lion」の表題曲の
ダブ。
ギターの印象的なイントロから、分厚い
ホーン・セクションのダブワイズ、刻む
ようなギターとオルガンのメロディと、
次々に畳みかけて来るダブです。

yabby u - conquering dub.wmv


3曲目は「Jah Love Dub」です。
漂うような浮遊感のあるオルガンに、
ズシっとしたベースとピアノのメロディ…。

4曲目は「Anti-Christ Rock」です。
キーボードとピアノのメロディに、ズシっ
としたベースが効いたダブ。

Yabby U - King Tubby's Prophesy Of Dub - Anti Christ Rock


5曲目は「Beware Of God」です。
ギターのイントロから、ホーンとズシっと
したベースが効いた渋いダブです。

6曲目は「Robber Rock」です。
まるで演歌のようなギターの悲しげな
メロディを中心としたダブ。
ある意味Yabby Youらしい個性が一番よく
出たダブです。

Yabby You & King Tubby - Robber Rock


7曲目は「Rock Vibration」です。
浮遊感のあるシンセのイントロから、この
時代に流行った「フライング・シンバル」
のドラミングが強く印象に残るダブです。
こちらも悲し気なメロディが印象的。

Yabby U - Rock Vibration [King Tubby's Prophesy Of Dub]


8曲目は「Zion Is Here」です。
ギターとベースを中心とした渋いダブ
です。

9曲目は「Hungering Dub」です。
こちらもYabby Youらしいメロディの、
フルートを中心とした寂寥感のあるダブ。

Yabby You - Hungering Dub


10曲目は「Love And Peace」です。
ベースを中心とした渋めのダブ。

11曲目は「Homelessness」です。
ギターとホーン・セクション、ピアノに
よる、ユッタリとした空気感のダブ。

12曲目は「Creations And Versions」
です。
ギターを中心としたダブ。
こちらもフライング・シンバルのビート
か?

ここまでがオリジナルで残りの2曲は
CDボーナス・トラックですが、ここでは
割愛します。

ざっと追いかけてきましたが、編集盤と
違ってまとまりもあり、なかなか良い内容
の聴き心地の良いダブ・アルバムだと思い
ます。

King Tubbyはこのルーツ・レゲエの時代
に数多くのダブ・アルバムを残しています
が、その中でもこのYabby Youとの作品は
特に相性が良く、今回のアルバムもすごく
聴き心地の良いこのルーツの時代ならでは
の作品に仕上がっています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Yabby U (Yabby You)
○アルバム: King Tubby's Prophesy Of Dub
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1976

○Yabby U (Yabby You)「King Tubby's Prophesy Of Dub」曲目
1. Version Dub
2. Conquering Dub
3. Jah Love Dub
4. Anti-Christ Rock
5. Beware Of God
6. Robber Rock
7. Rock Vibration
8. Zion Is Here
9. Hungering Dub
10. Love And Peace
11. Homelessness
12. Creations And Versions
(CD Bonus Tracks)
13. Living Style
14. Greetings

●今までアップしたYabby You (Vivian Jackson)関連の記事
〇Vivian Jackson (Yabby You) & Prophets「Chant Down Babylon Kingdom」
〇Willi Williams「Unification: From Channel One To King Tubby's: With Willi Williams & Yabby You」
〇Yabby You & Brethren「Deeper Roots: Dub Plates And Rarities 1976-1978」
〇Yabby You & Prophets「Beware」
〇Yabby You & The Prophets「Deeper Roots Part 2: More Dubs And Rarities」
〇Yabby You, Mad Professor, Black Steel「Yabby You Meets Mad Professor & Black Steel In Ariwa Studios」
〇Yabby You「Deliver Me From My Enemies」
〇Yabby You「Dub It To The Top 1976-1979」
〇Yabby You & The Prophets「Conquering Lion (Expanded Edition)」