今回はThe Clarendoniansのアルバム

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「The Best Of The Clarendonians」です。

The ClarendoniansはErnest Wilsonと
Peter Austinから成るヴォーカル・デュオ
で、60年代半ばのスカの時代からロック
ステディの時代に多くのヒットを飛ばした
グループです。
その後も活躍を続けていて、ネットの
Discogsをみると2枚のアルバムと80枚
ぐらいのシングルをリリースしています。

The Clarendonians - Wikipedia

クラレンドニアンズ(Clarendonians) - World Reggae News

今回のアルバムは1972年にジャマイカ
のStudio Oneからリリースされた、彼らの
ファースト・アルバムです。

タイトルが「The Best Of…」となっている
ように、彼らのデビューした60年代半ば
のスカの時代から60年代後半のロック
ステディの時代の彼らのヒット曲が収め
られたベスト盤ともいえる内容のアルバム
になっています。

手に入れたのはStudio Oneからリリース
されたCDの中古盤でした。

全16曲で収録時間は約45分。
オリジナルは14曲で、残りの2曲は
CDボーナス・トラックです。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by: C.S. Dodd
Distributed by: Coxsone's Music CIty

という記述があります。

またネットのDiscogsにはバック・バンド
としてThe Skatalites、The Soul Brothers、
The Soul Vendorsの名前が書かれていま
した。
The Skatalitesはスカの時代にStudio One
で活躍したバック・バンドで、残りの
The Soul BrothersとThe Soul Vendorsは
ロックステディの時代にキーボード奏者の
Jackie Mittooを中心にStudio Oneで活躍
したバック・バンドです。
これらを見ても今回の録音が、スカと
ロックステディの時代の、60年代半ば
から後半に行われたことが解ります。
72年とリリースはレゲエの時代に入って
からですが、この当時のジャマイカの
音楽界はシングル盤中心の世界で、アルバム
はかなり遅れて発売されることが多かった
んですね。
特にこのStudio Oneレーベルは、アルバム
の発売がかなり遅い傾向が見られます。

さて今回のアルバムですが、さすがスカや
ロックステディの時代のStudio Oneの
音源だけあって、内容はとても良いです。
「レゲエのモータウン」と称されたStudio
Oneですが、やはりその特徴は心の行き
届いた丁寧な音作りにあります。
細かいところまで神経の行き届いたその
楽曲は、アメリカのソウル・ミュージック
に負けない濃厚な味わいがあるんですね。

そうしたStudio Oneの、スカの時代には
The Skatalites、ロックステディの時代
にはThe Soul BrothersやThe Soul Vendors
をバックに、The Clarendoniansはとても
心地良いボーカル・ワークを聴かせてくれ
ています。
このThe Clarendoniansのジャケット写真
を見ると、片方は長身で片方はチビ(笑)
という凸凹コンビの組み合わせで、裏ジャケ
の写真などを見ても小さい方はかなり若く、
もしかしたら10代ぐらいだったのかも…。

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裏ジャケ

今回のアルバムのスカの時代の曲などを
聴くと、声変わり前なのか女性のように
通る声で歌っているんですね。
それでも歌のウマさやコーラス・ワーク
のウマさは、さすがといえるものがあり
ます。

ちなみにスカとは50年代にアメリカの
R&Bなど影響を受けてジャマイカで
誕生した音楽で、それが徐々にジャズの
ビッグ・バンドのような形式に発展して
いった音楽です。

スカ - Wikipedia

ジャマイカの音楽はそれまでは民族音楽の
メント、50年代から60年代の中頃まで
はこのスカが流行していたんですね。

そしてスカの後に66年から68年までの
わずか3年間だけ流行した音楽がロック
ステディです。

ロックステディ - Wikipedia

スカの性急なリズムに対して、こちらは
ゆったりとしたテンポと甘いメロディが
特徴的な音楽です。
このロックステディの時代ぐらいまでは、
ジャマイカの音楽には濃厚なアメリカ音楽
への憧れが感じられます。
そしてこの後の60年代後半に、ついに
世界的にブレイクするレゲエ(ルーツ・
レゲエ)が登場するんですね。

今回のアルバムはまだイギリスなど一部の
国でしか認められていなかった時代の、
スカやロックステディの時代のStudio One
やThe Clarendoniansの活躍ぶりが解る
アルバムなんですね。

1曲目は「You Can't Be Happy」です。
彼らのスカの時代の代表曲のひとつのよう
です。
ホーンの華々しいイントロから、心地良い
ブギのリズムに乗せたヴォーカルが魅力的
な曲です。

The Clarendonians - You Can't Be Happy (1963-66)


2曲目は「Darling Forever」です。
ホーンの印象的なイントロから、ロック
ステディらしい刻むようなギターに乗せた
ソフトなヴォーカルが魅力的。

THE CLARENDONIANS - DARLING FOREVER.wmv


3曲目は「Ten Guitars」です。
ユッタリとしたホーンのメロディから、
刻むようなギターに乗せたユッタリとした
ノビのあるヴォーカル。

4曲目は「Rudie Bam Bam」です。
スカらしい楽しげなホーンのリズムに、
楽しげなデュオのヴォーカル。
イイ感じで入ってくるピアノも魅力。

The Clarendonians - Rudie Bam Bam


5曲目は「Sunshine」です。
いい感じのギターのイントロから、ギター
とピアノのメロディに乗せた心地良い
デュオのヴォーカルが魅力的。
語りが入るのも面白いところ。

6曲目は「He Who Laughs Last」です。
折る館とロックステディらしいギターの
刻むようなフレーズに乗せた、感情を
乗せた歌いぶりが印象的。

The Clarendonians - He Who Laughs Last


7曲目は「Stand By Me」です。
軽快なスカのビートに乗せた、ディオの
息の合ったヴォーカルが心地良い曲です。

8曲目は「Sho Be Do Be」です。
こちらも彼らのスカの時代の代表曲のよう
です。
ノビのある歌声からホーンのメロディ、
コーラス・ワークも魅力の曲です。

The Clarendonians - Sho-Be-Do-Be


9曲目は「Do Good」です。
こちらはロックステディ時代の曲か?
印象的なギターのメロディに、デュオの
息の合ったヴォーカルがイイ感じにマッチ
した曲です。

10曲目は「Rudie Gone A Jail」です。
叩きつけるようなピアノのイントロから、
息の合ったヴォーカル・ワークが冴える曲
です。

Desmond Baker and The Clarendonians - Rude Boy Gone Jail (Island)


11曲目は「I Can't Go On」です。
こちらはムーディーなサックスに乗せた
スロー・バラードです。
感情を乗せた歌いぶりが冴える1曲。

12曲目は「Good Bye Forever」です。
心地良いサックスのイントロから、息の
合ったデュオの歌声が魅力。

13曲目は「You Can't Keep A Good Man
Down」です。
こちらも彼らの代表曲のひとつか?
ノリの良いブギのリズムのサックスに、
感情をうまく乗せたい気の合ったヴォーカル
が魅力。

The Clarendonians - You Can't Keep a Good Man Down


14曲目は「If Only I Knew」です。
心地良いロックステディらしいギターに、
時折入るリリカルなピアノ、心地良いデュオ
のヴォーカル…。

残りの2曲はオリジナルにないCD
ボーナス・トラックのようです。

15曲目は「Hurt By Love」です。
魅力的なサックスが入るバラード・
ナンバー。

16曲目は「How Long」です。
こちらはサックスに乗せたヴォーカルが
冴える、ノリの良いスカ・ナンバーです。

ざっと追いかけてきましたが、特にスカの
時代のThe Clarendoniansの楽曲はとても
魅力的で、このグループの活躍ぶりがよく
解ります。
また彼らを支えるThe Skatalitesをはじめ
とするバック・バンドの演奏の質も高く、
この時代のStudio Oneというレーベルが
いかにジャマイカの音楽界をけん引して
来たかがわかる内容になっています。

今の時代に聞くと多少懐かしさを感じる
ような内容ですが、その奥にある音楽への
情熱は今も私たちを魅了するものがあり
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Clarendonians
○アルバム: The Best Of The Clarendonians
○レーベル: Studio One
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1972

○The Clarendonians「The Best Of The Clarendonians」曲目
1. You Can't Be Happy
2. Darling Forever
3. Ten Guitars
4. Rudie Bam Bam
5. Sunshine
6. He Who Laughs Last
7. Stand By Me
8. Sho Be Do Be
9. Do Good
10. Rudie Gone A Jail
11. I Can't Go On
12. Good Bye Forever
13. You Can't Keep A Good Man Down
14. If Only I Knew
15. Hurt By Love *
16. How Long *
* CD Bonus Tracks