今回はVarious(オムニバス)ものの
アルバム

studio_one_01a

「A Scorcha From Studio One」です。

まずは今回のアルバムの元になっている
Studio Oneというレーベルについて書いて
おきます。
Studio Oneは主催者のC.S. Doddを中心に、
ジャマイカの音楽界をスカ→ロックステディ
→レゲエとけん引し続けたレーベルです。
質の高い音楽性から「レゲエのモータウン」
という、言い方をされる事があります。

そうしたジャマイカに質の高い音楽を提供し
続けてきたStudio Oneですが、70年代半ば
以降はChannel Oneなどの他のレーベルに
押されて失速し、80年代半ばには閉鎖に
追い込まれています。

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムは1970年にジャマイカ
のStudio Oneレーベルからリリースされた
コンピュレーション・アルバムです。

70年というとまだレゲエの時代が始まった
ばかりの時代ですが、アルバムにはロック
ステディの時代に活躍したStudio Oneの
バック・バンドSound Dimensionの楽曲や
Winston FrancisやWailing Soulsといった
シンガーやグループの楽曲など、ロック
ステディから初期レゲエの時代にかけての
曲が収められています。

ちなみに70年にリリースされた時の
曲目とアーティストの記述が、その後の
リリースとだいぶ変わっているんですね。
Side 1とSide 2が盤面が逆になっている
ほか、Merlene Webberの「Sha La La」と
いう曲がLee Arabの「These Eyes」という
曲に、Errol Dunkleyの「Satisfaction」
という曲がFreedom Singersの「Come
Together」という曲になど、いろいろ細かく
変わっているんですね。
初めは何らかの事情で曲を入れ替えたのかと
思ったんですが、曲を聴いてみるとLee Arab
の「These Eyes」という曲で「シャラ・ラ…」
と歌っていたり、Freedom Singersの「Come
Together」という曲も曲を聴いてみると
Errol Dunkleyの声のようなシンガーが
歌っていたりという感じで、どうもタイトル
やシンガー名を変えているだけのようなん
ですね。
ハッキリした事は違う表記になっている
アルバムを買ってみないと解りませんが、
たぶん表記を変えただけだと思われます。
(最後に元のアルバムの記述ものせておき
ます。)

手に入れたのはStudio Oneからリリース
された、LPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Recorded at Jamaica Recording & Publishing Studio Ltd, Kingston, Jamaica

Produced by: C.S. Dodd
Engineer: Sylvan Morris

Manufactured by Jamaica Recording Mfg. Co. Ltd.

という記述があります。

録音はジャマイカのキングストンにある
Jamaica Recording & Publishing Studio
で行われ、プロデュースはC.S. Dodd、
エンジニアはSylvan Morrisが担当して
います。

ジャケットには当時らしい長いまつ毛の
黒人の女性が、赤と黒のボーダーのミニ
スカ姿の写真が使われています。
実は今回のアルバムを買った理由のひとつ
は、このジャケットがなかなか素晴らし
かったからというのがあります。
壁にピンで留めて飾るのに、とても良い
と思ったんですね(笑)。

収録されているアーティストはSenior Soul、
Sound Dimension、W. Francis(Winston
Francis)、Wailin Souls(Wailing Souls)、
Lee Arab、Tomorrow Generation、Freedom
Singersといった人達です。
Studio Oneのバック・バンドSound Dimension
の曲が4曲と多く、残りは全て1曲ずつの
収録となっています。

さてジャケ買いしてしまった今回のアルバム
ですが、実際に聴いてみると内容もこの時代
のコンピュレーションとしてはとても良い
アルバムなんですね。

4曲収められているSound Dimensionですが、
「Funker Maker」や「Return Of The
Scorcher」、「Wish Bone」、「The Wild
Bunch」と彼らの曲の中でも知名度が低い曲
が収められていて、そこがかえって貴重。
他にもWailin Soulsの「Back Out With It」
や、あのCarlton & The Shoesの名曲
「Love Me Forever」のオケTomorrow
Generationの「Upsetters Dream」など、
キャッチーな曲を適度に配した構成も良い
です。

一番のおススメはSide 1の1曲目の
Senior Soulの「Is It Because I Am Black」
です。
この曲はアメリカのソウル・シンガー
Syl Johnsonの超名曲です。
実はこのアルバムを買ったもうひとつの理由
が、この曲が入っていたからなんですね。
前にレゲエ・リイシュー・レーベルBlood &
Fireのリリースした、ソウルの名曲を
レゲエ・シンガーが歌うコンピュレーション・
アルバム「Darker Than Blue」を聴いて
いて、この曲をKen Bootheが歌っているの
を聴いた事があったんですね。

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Various‎– Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973 - 1980 (2001)

それ以来この曲が暗くシリアスだけれど、
すごく良い曲だという事を知っていました。
今回のアルバムではその名曲をSenior Soul
が熱唱していて、これがなかなか良いん
ですね。

ちなみにこの原曲をSyl Johnsonがヒット
させたのが69年頃らしいです。
意外と速くレゲエ・カヴァーを作っている
んですね。
やはりジャマイカの人々の心も捉えた名曲
という事でしょうか。

このSyl Johnsonの「Is It Because I Am
Black」ですが、ネットのYouTubeでタイトル
名で検索すると、本家のSyl Johnsonを
はじめとしてKen BootheやTiken Jah Fakoly
とKen Bootheが歌っているヴァージョン
など、様々なヴァージョンが出て来ます。
そのどれもが素晴らしい名曲なので、興味
のある人は検索してみて下さい。

話がちょっとズレましたが、今回のアルバム
はなかなか素晴らしいコンピュレーション
なんですが、あえて言えば曲が全体に短い
のがちょっと惜しまれます。
意外とLP盤の真ん中に、大きな録音
されていないブランクがあるんですね。
これならもっと曲を入れられたのに…と
いう感じです。
まあそのあたりもこの70年という時代の
違いなのかもしれません(笑)。

Side 1の1曲目はSenior Soulの「Is It
Because I Am Black」です。
元のアルバムでは表記がSenior Soulでは
なく、Lloyd Williamsとなっています。
書いたようにソウル・シンガーSyl Johnson
の名曲です。
ギターのブルージーなメロディに乗せた、
Senior Soulの感情を込めたヴォーカルが
魅力的。
ディープな名曲をうまく歌いこなして
います。

Studio One Soul - Senior Soul "Is It Because I'm Black"


2曲目はSound Dimensionの「Funker Maker」
です。
ギターのメロディから、Jackie Mittooと
思われる浮遊感のあるハモンド・オルガン
のメロディへと変わります。

3曲目はW. Francis(Winston Francis)の
「Angie Girl」です。
元のアルバムのタイトルは「Little Angie
Girl」となっています。
Winston Francisはロックステディから初期
レゲエの時代に、Studio Oneなどで活躍した
名シンガーです。
ギターのメロディに乗せた甘い歌声が
魅力的。

W FRANCIS ANGIE GIRL LP STUDIO ONE


4曲目はWailin Souls(Wailing Souls)
の「Back Out With It」です。
ご存知Wailing SoulsのStudio Oneのヒット
曲です。
この初期レゲエの時代からさらには80年
代いっぱいまで、息が長く活躍したのが
彼らなんですね。
特にStudio One時代の楽曲は、他に無い
魅力があります。

5曲目はSound Dimensionの「Return Of
The Scorcher」です。
ギターの刻むようなリズムに、オルガンの
ソフトなメロディがすごく魅力的。

Sound Dimension - Return Of The Scorcher


Side 2の1曲目はLee Arabの「These Eyes」
です。
書いたように元のアルバムでは、Merlene
Webberの「Sha La La」という曲になって
いるんですね。
試しにYouTubeで両タイトルの曲を聴き
較べてみましたが、同じ曲に聴こえます。
ギターの刻むようなメロディに時折入る
オルガンの浮遊音、「シャラ・ラ…」と
いうコーラスの印象的。

Lee Arab - These Eyes


2曲目はSound Dimensionの「Wish Bone」
です。
元のアルバムではSound Dimensionでは
なく、Im & Davidの曲となっています。
浮遊感のあるハモンド・オルガンに、
Im Brooksと思われる心地良いホーンが
印象的な曲です。

Sound Dimension - Wish bone


3曲目はTomorrow Generationの「Upsetters
Dream」です。
元のアルバムではTomorrow Generationでは
なく、Sound Dimensionとなっています。
あのCarlton & The ShoesのStidio Oneの
大ヒット曲「Love Me Forever」のオケです。

4曲目はFreedom Singersの「Come Together」
です。
元のアルバムではErrol Dunkleyの
「Satisfaction」という曲になっています。
こちらもタイトルも曲名も変わっている
けれど、同じ曲のようです。
ピアノとギターのユッタリしたメロディに、
Errol Dunkleyらしいちょっと甘い歌声…。

Freedom Singers - Come together


5曲目はSound Dimensionの「The Wild
Bunch」です。
こちらもアーティスト名がJackie Mittoo
に…。
軽快なハモンド・オルガンのメロディが
心地良い1曲。

ざっと追いかけて来ましたが、アルバム
としては時間が短めという欠点もある
ものの、この70年ごろの
コンピュレーションとしてはとても内容
も良く、聴き心地の良いアルバムなんです
ね。
なによりまだレゲエが認知される以前の
黎明期の空気感が、満ち溢れているのが
とても魅力的です。

機会があればぜひ聴いてみて下さい。


○アーティスト: Various
○アルバム: A Scorcha From Studio One
○レーベル: Studio One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1970

○Various「A Scorcha From Studio One」曲目
Side 1
1. Is It Because I Am Black - Senior Soul
2. Funker Maker - Sound Dimension
3. Angie Girl - W. Francis
4. Back Out With It - Wailin Souls
5. Return Of The Scorcher - Sound Dimension
Side 2
1. These Eyes - Lee Arab
2. Wish Bone - Sound Dimension
3. Upsetters Dream - Tomorrow Generation
4. Come Together - Freedom Singers
5. The Wild Bunch - Sound Dimension

(70年リリース時の歌手と曲目の記述)
Side 1
1. Sha La La - Merlene Webber
2. Wish Bone - Im & David
3. Upsetters Dream - Sound Dimension
4. Satisfaction - Errol Dunkley
5. Wild Bunch - Jackie Mittoo
Side 2
1. Is It Becase I'm Black - Lloyd Williams
2. Funky Maker - Sound Dimension
3. Little Angie Girl - Winston Francis
4. Back Out With It - Wailing Souls
5. Return Of The Scorcher - Sound Dimension