今回はThe Mystic Revelation Of Rastafari
のアルバム

count_ossie_02a

「The Spiritual Roots Of Reggae:
The Original Complete Grounation」です。

まずは今回のThe Mystic Revelation Of
Rastafariの中心人物Count Ossieと
Cedric 'Im' Brooksについて説明しておき
ます。

Count Ossieはラスタファリズムの集会音楽
「ナイヤビンギ」のラスタ・ドラミングの
第一人者として知られる人で、自らのバンド
Count Ossie & Mystic Revelation Of
Rastafariなどを率いて活躍した人です。

1976年に不慮の事故で亡くなって
います。

アーティスト特集 Count Ossie (カウント・オジー)

Cedric 'Im' Brooksはルーツ期から活躍した
サックス・プレイヤーです。
Count Ossie & Mystic Revelation Of
Rastafariの「Grounation」や
「Tales Of Mozanbique」などのアルバムに
参加した他、自身のバンドThe Light Of
Sabaを率いて活躍した事でもよく知られて
います。
他にも数々のセッションや自身のソロ・
アルバムに名演を残しています。

2013年にニューヨークの病院で、
闘病の末亡くなっています。

アーティスト特集 Cedric 'Im' Brooks(セドリック・イム・ブルックス)

今回のアルバムは1973年にジャマイカの
New Dimensionというレーベルから、
「Grounation」という名前でリリースされた
Count Ossie & Mystic Revelation Of
Rastafariのファースト・アルバムです。

レゲエの中でも特にディープなラスタの集会
音楽ナイヤビンギを演奏するCount Ossie &
Mystic Revelation Of Rastafariですが、
そのディープな集会の様子をそのまま録音
したようなアルバムで、パーカッションを
中心ととした奥深い音楽は他のレゲエとは
一線を画しています。
73年というまだレゲエが世界的に認め
られ始めた時期に、よくぞこうした音楽
を、しかも当時は3枚組のLPで、リリース
したものだと感心させられるアルバムです。

手に入れたのは2007年にEUのRetro
というレーベルからリイシューされたCD
の中古盤でした。
なおこのアルバムはたびたびリイシュー
されていて、最近の2016年にも、日本の
Dub Store Recordsから「Grounation」と
いう名前でリイシューされています。

Side 1が全9曲で収録時間は約43分。
Side 2が全4曲で収録時間は約43分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Producer: Arnold Wedderburn
Musical Director: 'IM' Cedric Brooks

という記述があります。

プロデューサーはArnold Wedderburnで、
音楽ディレクターとして'IM' Cedric Brooks
の名前があります。

さて今回のアルバムですが、よくぞこの
レゲエが認められ始めた時代に、これだけ
ディープなアルバムをリリースしたものだと
感心させられるアルバムです。

この73年頃というとあのThe Wailersが
Island Recordレーベルとメジャー契約
して、初のメジャー・デビュー・アルバム
「Catch A Fire」をリリースした年なん
ですね。

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The Wailers - Catch A Fire (1973)

その後しばらくしてThe WailersはPeterと
Bunnyが離脱してBob Marley & The Wailers
となる訳ですが、彼らが人気が出てレゲエ
という音楽が世界的な音楽になるのは、その
離脱後なんですね。
要するに今回のアルバムはレゲエが世界の
市場で人気が出る以前にLP3枚組という
かなり当時としては豪勢な仕様で発売された
アルバムなんですね。

内容的にも「Oh Carolina」のような多少
ポピュラリティーのありそうな曲が入って
いるものの、全体としてはナイヤビンギの
非常にアフリカ色の強い音楽にCedric 'Im'
Brooksのジャズ的なサックスが乗った
アルバムで、かなり支持層が限定されそうな
アルバムなんですね。
こうしたアルバムを好の当時に、よくぞ
リリースしたものだと感心してしまう
アルバムなんですね。
Dub Store Recordsなどのレーベルで
たびたびリイシューされているのは、
こうした時代を先読みした希少性によるもの
と思われます。

アルバムとしてはセカンドの「Tales Of
Mozanbique」の方が曲も長くなく、
ポピュラリティーもありだいぶ聴き易いが、
今回のアルバムの方がよりラスタの集会の
ナイヤビンギに近い印象で、そこがこの
アルバムの魅力なんだと思います。

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Count Ossie & Mystic Revelation Of Rastafari - Tales Of Mozanbique (1975)

2002年シンコー・ミュージック刊行の本
「Roots Rock Reggae」にはこのアルバムに
ついて、「智」さんという方の文章で
「ルーツ・レゲエ作品のほとんど全てに
なんらかの影響やインスピレーションを
与えた歴史的録音記録。ルーツ・レゲエの
心臓音。」と書かれています。

その指摘はかなり的を得ていて、ルーツ・
レゲエの根本を流れるアフリカ志向は、
こうした音楽が元になっているものと思われ
ます。
もっともアメリカナイズされていない音楽、
それがこのナイヤビンギなんですね。
もともとはアメリカのブルースやR&Bの
影響を受けたスカがイギリスで認められ
音楽産業が発展したジャマイカの音楽界です
が、そのアイデンティティを確立する為の
最後のピースがこの自分の原点に根ざした
「アフリカの血」だったんですね。
ナイヤビンギという言葉は「抑圧者に死を」
という意味らしいのですが、もともとは奴隷
としてアフリカからジャマイカに連れて
来られた最下層に生きる黒人層に広まった
のがアフリカ回帰を唱えたラスタファリズム
という宗教で、そのラスタの集会で演奏
されたのがこのナイヤビンギだったんです
ね。

ラスタファリズムは60年代のスカの時代
からジャマイカのミュージシャンの間でも
浸透し始め、そうしたミュージシャンが
徐々に自分のルーツに根ざしたアフリカ的な
音楽を作るようになって行ったんですね。
そうして誕生したのがレゲエ(ルーツ・
レゲエ)という音楽だったという訳です。
その背景にはこのナイヤビンギという音楽が
あった事は間違いがありません。

実際に今回のアルバムにはSide 1に「Poem」
と題した2つのポエト・リーディングの曲
がありますが、そのスタイルはのちに
80年代にデビューするMutabarukaのダブ・
ポエットのスタイルとほぼ一緒なんですね。

mutabaruka_01a
Mutabaruka ‎– Check It! (1982)

Mutabarukaのスタイルには、明らかに
こうしたナイヤビンギの影響が感じられる
んですね。
実際にナイヤビンギと呼ばれる
ミュージシャンはRas Michael & The Sons
Of Negusなど少数で限定的ですが、実は多く
のミュージシャンがこのナイヤビンギの
影響を受けている事は想像に難くあり
ません。

そのナイヤビンギの曲を収めた今回の
アルバムですが、録音は1曲1曲が現場の
空気を収めた一発録りのセッションと思わ
れ、その張り詰めた臨場感が魅力です。
一番メインと思われるSide 2の4曲目
表題曲の「Grounation」は、30分にも
及ぶパーカッションを中心とした演奏が
収められています。
そのエンターテインメント性とは無縁の
熱演は、まさにジャマイカの黒人層の
「魂の音楽」であり、この時代の記録と
してとても価値のあるものなんですね。

Side 1の1曲目は「Bongo Man」です。
心に沁みる情感のあるサックスのメロディ
から、パーカッションも入り徐々に盛り
上がって行く、ちょっとJazzyな要素の
入った曲です。
このあたりはジャズの素養のある
Cedric 'Im' Brooksが中心になっている
感じです。

Count Ossie & Mystic Revelation of Rastafari - Bongo Man


2曲目は「Narration」です。
Side 1では一番長い13分05秒の曲です。
パーカッションの心地良いリズムに乗せた
語り、急に入って来るブレイクする
サックスなど、淡々としていながら
セッションの臨場感が盛り込まれた1曲。

3曲目は「Malorat」です。
こちらもCedric 'Im' Brooksの軽快な
サックスのメロディと心地良い
パーカッションが印象的な曲です。

4曲目は「Poem」です。
サックスのメロディから始まり、合間に
ポエト・リーディングが入る曲です。
書いたようにのちのMutabarukaのダブ・
ポエットは、このスタイルの影響が感じ
られます。

Count Ossie and The Mystic Revelation of Rastafari- Poem


5曲目は「Four Hundred Years」です。
低いベースの音からホーンのメロディ、
ノビのある歌声のヴォーカルという曲です。
後半から入って来るサックスが、すごく
抒情的で魅力があります。

Count Ossie & Mystic Revelation of Rastafari - Four Hundred Years ( Song )


6曲目は「Poem」です。
こちらも4曲目と同タイトルの曲です。
こちらは朗読以外は無音で、1分05秒の
朗読です。

7曲目は「Song」です。
フルートのみにヴォーカルといった、2分の
短い曲です。

8曲目は「Lumba」です。
こちらはサックスとパーカッションの
ドラミングを中心とした7分05秒の曲
です。
途中から入って来る奇声に近い叫び声、
フルートなどが面白いところ。

Count Ossie - Lumba


9曲目は「Four Hundred Years」です。
5曲目と同じタイトルですが、こちらは
インスト曲です。
Jazzyなベースからホーン・セクションの
メロディ、パーカッションの心地良い響き。

Side 2の1曲目は「Ethiopian Serenade」
です。
ギターとパーカッションの心地良いリズム
に、ちょっと甲高いサックスが面白い味わい
をプラスしている曲です。

Mystic Revelation Of Rastafari/Ethiopian Serenade-Grounation: The Roots Of Reggae 2


2曲目は「Oh Carolina」です。
ホーンのメロディに乗せた、力の抜けた
ヴォーカルが印象的な曲です。
リラックスした空気感が魅力。

3曲目は「So Long」です。
こちらはパーカッションのリズムに乗せた、
男性コーラスの曲です。
和やかな雰囲気が魅力。

4曲目は表題曲ともいえる「Grounation」
です。
後半に少しサックスも入りますが、全編を
通して心地良いパーカッションのリズムに
よるセッションです。
パーカッションに乗せた男性コーラスも
魅力。

Count Ossie & the Mystic Revelation of Rastafari - Grounation


ざっと追いかけて来ましたが、全編に
Count Ossieを中心としたパーカッションの
心地良いリズムが流れるアルバムで、まさに
これぞナイヤビンギ!といったアルバムなん
ですね。
まだレゲエという音楽が世界的に認められる
以前の73年に、これだけのアルバムが
作られていたという事は、とても驚異的な
事です。
ジャマイカ音楽の底力を感じるアルバム
です。

曲も長く全体にヘヴィーでディープな
アルバムですが、このアルバムについて
書いたブログのひとつに、シュレッダーで
書類を整理しながら流し聴いていたら
とても良かったという事が書かれて
いました。
曲も長く全体に重い印象のアルバムですが、
意外と何も考えずに目を閉じて聴いて
いたら、スッと入って来るものがある
アルバムなのかもしれません。

ジャマイカのミュージシャンの
アイデンティティがここにあります。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Mystic Revelation Of Rastafari
○アルバム: The Spiritual Roots Of Reggae: The Original Complete Grounation
○レーベル: Retro
○フォーマット: CDX2
○オリジナル・アルバム制作年: 1973

○The Mystic Revelation Of Rastafari「The Spiritual Roots
Of Reggae: The Original Complete Grounation」曲目
Side 1
1. Bongo Man
2. Narration
3. Malorat
4. Poem
5. Four Hundred Years
6. Poem
7. Song
8. Lumba
9. Four Hundred Years
Side 2
1. Ethiopian Serenade
2. Oh Carolina
3. So Long
4. Grounation