今回はPablo Mosesのアルバム

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「Pave The Way」です。

Pablo Moses(本名:Pableto Henry)は
70年代半ば頃から活躍するルーツ・
シンガーです。
80年代に入るとジャマイカのレゲエも
ダンスホール・レゲエが主流になり、ラスタ
ファリズムに基づいたルーツ・レゲエは下火
になりますが、時代に流されずにあくまで
ルーツ・レゲエを貫いたのがこのPablo
Mosesという人なんですね。
ネットのDiscogsによると、75年から現在
に至るまでに共演盤を含めて15枚ぐらい
のアルバムをリリースしています。

Pablo Moses - Wikipedia

今回のアルバムはジャマイカのレゲエが
ルーツ・レゲエからダンスホール・レゲエが
人気となった1981年に、ジャマイカの
Penetrateというレーベルからリリース
されたPablo Mosesのサード・アルバム
です。

75年のファースト「Revolutionary Dream」
と80年のセカンド「A Song」に続く
アルバムで、プロデュースやアレンジを担当
しているGeoffrey Chungの影響力が感じ
られるアルバムで、そのGeoffrey Chungの
実弟のをMikey 'Mao' Chung中心とした
バック・バンドのちょっとモダン楽曲に、
Pablo Mosesのちょっと武骨に感じられて
しまうヴォーカルが乗ったアルバムです。

手に入れたのは日本のユニバーサル・
ミュージックからリリースされたIsland
RecordsのCDの中古盤でした。
中には鈴木孝弥さんという方の解説文が
付いていました。

ちなみにこのアルバムのダブ・アルバムが、
このアルバムの制作からだいぶ経った
1998年にフランスのTabou 1という
レーベルからリリースされています。

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Pablo Moses ‎– Pave The Way Dub (1998)

全9曲で収録時間は約41分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Prodused, Arranged, Engineered & Mixed by Geoffrey Chung for Penetrate Productions Ltd.
Hornes Arranged by Clive 'Azul' Hunt

Bass: Val Douglas
Drums: Mikey 'Boo' Richards
Guitar: Mikey 'Mao' Chung, Willie Lindo, Don Prendes
Keyboards: Robbie Lyn, Earl 'Wai' Lindo
Synthesizer & Programming: Peter Ashbourne
Percussion: 'Sticky' Thompson
Akete: 'Scully', Sydney
Sax & Solos: Dean Frazer
Trombone: Nambo Robinson
Trumpet: David Madden, Nathan Brackenridge, Arnold Brackenridge
Background Vocals: Home-T4

Recording & Mixed at Dynamic Sounds, Kingston, Jamaica
Assistant Engineers: Noel Hearne, Michael Riley
Mastered at Sterling Sound, New York, N.Y. by Jose Rodriquez
Sleeve Concept and Direction: Geoffrey Chung
Graphics & Illustrations: Orville 'Bagga' Case
Illustrations from Photographs Taken by: Paulette Robinson

となっています。

プロデュースとアレンジ、エンジニア、
ミックスをGeoffrey Chungが担当して
います。
ホーン・アレンジをClive 'Azul' Huntが
担当。

ミュージシャンはベースにVal Douglas、
ドラムにMikey 'Boo' Richards、ギターに
Mikey 'Mao' ChungとWillie Lindo、Don
Prendes、キーボードにRobbie LynとEarl
'Wai' Lindo、シンセとプログラミングに
Peter Ashbourne、パーカッションに
'Sticky' Thompson、「Akete」という
パーカッションの1種と思われる楽器に
'Scully'とSydney、サックスにDean Frazer、
トロンボーンにNambo Robinson、
トランペットにDavid MaddenとNathan
Brackenridge、Arnold Brackenridge、
バッキング・ヴォーカルにHome-T4という
布陣です。

レコーディングとミックスはジャマイカの
キングストンにあるDynamic Soundsで、
アシスタント・エンジニアにNoel Hearneと
Michael Rileyが担当しています。
(エンジニアとミックスはGeoffrey Chung。)

ジャケット・デザインのコンセプトは
Geoffrey Chungで、グラフィックとイラスト
はOrville 'Bagga' Caseが担当しています。

さて今回のアルバムですが、販売サイトなど
のアルバム評を見ると「名盤」や「傑作!」
などの評価が踊るのですが、ちょっと評価に
迷うアルバムなんですね(苦笑)。

初めて聴いた時からこのアルバムはどうも
リズム感が変な感じがして、この違和感は
いったい何なんだろうとずっと考えていたん
ですが、どうも正体がつかめないアルバム
なんですね。
バックのサウンドはシンセやホーン・
セクションも入ったモダンでおしゃれな
サウンドで、Pablo Mosesのヴォーカルも
そのサウンドに合わせるようにファルセット
気味のヴォーカルなども駆使して歌っている
んですが、何故かどこかギクシャクとした
サウンドなんですね。
それがどうしてなのか?ずいぶん考え
ました。
初めはもしかしたらバックのサウンドと
ヴォーカルが微妙にズレて録音された為なの
か?とも思って、いろいろ聴き返してみたん
ですが、どうも違う…。

結論から言うと、どうもこのPablo Mosesの
ヴォーカルに問題があるようです。
ジャマイカの音楽界はすごく音感の良い歌の
ウマい人が多いのですが、どうもこの
Pablo Mosesの歌はリズム感があまり良く
ないのかも…。
聴いていてブレーキとアクセルを同時に
踏んでいるような、カックンカックンして
乗り切れない感じがあるんですね。
その為レゲエらしいグルーヴ感が、損なわれ
ているような気がします。

このPablo Mosesはファースト・アルバムの
「Revolutionary Dream」リリース後に音楽
理論を学ぶために2年間音楽学校に通ったと
いう事が鈴木孝弥さんという方の解説文に
書かれていますが、もしかしたら自分に
リズム感のない事の自覚があったのでしょう
か?
バックのサウンドなどを聴くとシンセなどを
駆使してなかなかオシャレなサウンドを
作ろうとしているんですが、解説文などを
読むと「武骨」とか「朴訥」と書かれて
しまう…どうもチグハグ感を感じてしまう
アルバムなんですね(苦笑)。

ダブ・アルバムの方も聴き較べてみたのです
が、Pablo Mosesのヴォーカルが少ないせい
なのか、こうした違和感はこちらのアルバム
ほど感じませんでした。
むしろシンセやホーン・セクションがより
強調されていて、もともと作られたバック
のサウンドはこの時代を意識したかなり
オシャレ感のあるモダンなサウンドである
事がよく解ります。
そうなるとやっぱり問題は、Pablo Moses
のヴォーカル…という事になるのでしょう
か…。

まあ、これはあくまで私の私見です。
ネットの販売サイトなどでは「名盤」や
「傑作!」と絶賛されているアルバムである
ことも重ねて書いておきます。
ちなみにこのアルバムはシンコー・
ミュージック刊行の本「Roots Rock Reggae」
にも紹介されているアルバムで、そこには
「林」さんという方の文章で、「独特の語り
調ヴォーカル・スタイルとリフレインを多用
する曲調は、まさにラスタ宣教師。好盤。」
と書かれています。

1曲目は「Proverbs Extractions」です。
独特のシンセのメロディのリフレインが、
すごくアクセントになっている曲です。
ピアノなどバックのメロディだけ聴いている
とすごくオシャレな楽曲なのですが、Pablo
Mosesのヴォーカルもファルセット気味の
すごく丁寧なヴォーカルなのに、聴き
終わった後の感触がすごくザラザラとして
いる不思議な楽曲です。

Pablo Moses - Proverbs Extraction


2曲目は「It's A Trick」です。
シンセとギターを中心としたメロディに、
Pablo Mosesの表情のある語るような
ヴォーカル。

3曲目は表題曲の「Pave The Way」です。
明るいホーン・セクションのメロディに
乗せた、Pablo Mosesのソフトに歌い出す
語るようなヴォーカルが印象的な曲です。

Pablo Moses - Pave The Way


4曲目は「Dig On」です。
華やかなホーン・セクションのイントロ
から、Pablo Mosesの気持ちの入った
ヴォーカルが印象的。
Dean Frazerのサックス・ソロがPablo Moses
のヴォーカルと絡み合う、聴きどころ満点の
曲です。

Pablo Moses - Dig On - Island


5曲目は「Africa Is For Me」です。
ホーン・セクションをバックに、
Pablo Mosesの語るようなヴォーカルが
印象的な曲です。

6曲目は「A Step Before Hell」です。
こちらもホーン・セクションとシンセの
メロディに乗せた、Pablo Mosesの語る
ようなヴォーカルの曲です。

7曲目は「Last Straw」です。
美し女性コーラスとホーン、ボソボソっと
したPablo Mosesの表情を付けたヴォーカル。

8曲目は「I See It Everyday」です。
こちらはピアノのユッタリしたメロディに、
シン・ドラムのビンビン響くドラミング、
Pablo Mosesの語るようなソフトな
ヴォーカルが印象的な曲です。

Pablo Moses - I See It Everyday [Penetrate 1981]


9曲目は「Sister」です。
ユッタリとしたビートにホーン・セクション
のメロディ、Pablo Mosesの語るような
ヴォーカル。
比較的ヴァイブスがあって悪くない曲です。

Pablo Moses - Sister


ざっと追いかけて来ましたが、ひとつひとつ
の楽曲を見た時にはそこそこ悪くない凝った
楽曲が多いアルバムなんですが、トータルの
印象としてはせっかく良い食材を山ほど
使っているのに旨い肉汁がすべて抜けて
しまって、パサパサの肉を食べている
ような、不思議なほど悪い後味の残る
アルバムなんですね。
それが何故なのか?ちょっと解りません。

レゲエをいろいろ聴いていると90年代を
過ぎたあたりからちょっとノリの解らない
アルバムというのがたまにあるのですが、
この80年代前半でこれだけノリの解らない
アルバムというのはあまり記憶があり
ません。
もしかしたら私の勉強不足かも…。
そうだとしたら、ごめんなさい。

あえて自分の感じた事を正直に書きました
が、書いたように多くの販売サイトやあの
「Roots Rock Reggae」という本でも
「名盤」や「傑作」、「好盤」などとホメて
いるアルバムなので、もしかしたらすごく
良いアルバムなのかもしれません。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Pablo Moses
○アルバム: Pave The Way
○レーベル: Island Records(ユニバーサル・ミュージック)
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Pablo Moses「Pave The Way」曲目
1. Proverbs Extractions
2. It's A Trick
3. Pave The Way
4. Dig On
5. Africa Is For Me
6. A Step Before Hell
7. Last Straw
8. I See It Everyday
9. Sister