今回はBunny Wailerのアルバム

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「Protest」です。

Bunny Wailerはスカの時代からThe Wailers
の一人として活躍したのちに、ソロとしても
活躍したシンガーです。

スカの時代にBob MarleyとPeter Toshと
3人組コーラス・グループThe Wailersを
結成した彼は、名門レーベルStudio One
から「Simmer Down」など多くのヒット曲を
飛ばし、ジャマイカで人気コーラス・
グループになって行くんですね。
このスカの時代のThe Wailersは
The Skatalitesなどをバックにした
コーラス・グループとして活躍するんです
が、ロックステディ→ルーツ・レゲエと時代
が進むうちにリズム隊のBarrett兄弟なども
加えたバンド形式の5人組グループ
The Wailersへと変化して行きます。
そしてメジャー・レーベルIslandと契約し、
1973年に「Catch A Fire」で念願の
世界デビューを果たすんですね。

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The Wailers - Catch A Fire (1973)

ところが2枚目のアルバム「Burnin'」を
リリースしたところで、このBunny Wailer
とPeter Toshがグループを脱退してしまう
んですね。
その理由は世界を回るツアーの辛さの為だ
とも、Islandが「白人にも解る音楽を」と
いう要求をし、二人がそれに反発した為だ
とも言われています。

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The Wailers ‎– Burnin' (1973)

残されたBob Marleyはその後Bob Marley
& The Wailersと名乗って世界を相手に
バンド活動を続け、Peter Toshはソロと
してやはり世界を相手に活動を続けました。
そしてこのBunny Wailerはジャマイカ国内に
とどまり、時々ソロ・アルバムを出したり
ライヴを行ったりしながら時に農業を
行ったりと、独自の道を歩むんですね。

そうした自由な音楽活動を続け、Bob Marley
やPeter Toshが亡くなった後も唯一存命の
「オリジナル・ウェイラー」として活動を
続けたのが、このBunny Wailerという人
です。

アーティスト特集 Bunny Wailer (バニー・ウェイラー)

今回のアルバムは1977年にUKの
Island Recordsからリリースされた
Bunny Wailerのセカンド・アルバムです。

Bunny WailerはThe Wailers脱退後の
1976年に彼自身の初のソロ・アルバム
「Blackheart Man」をIsland Recordsより
リリースしています。

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Bunny Wailer ‎– Blackheart Man (1976)

こちらはバックにBarrett兄弟やPeter
Tosh、Robbie Shakespeare、Chinna Smith
などが参加した華やかなメンバーの
アルバムでした。
それに較べると今回のアルバムはPeter
Toshが参加しているものの、ベースに
Robbie Shakespeare、ギターにChinna
Smith、ドラムにLeroy 'Horsemouth'
Wallaceといくぶん落ち着いた布陣なん
ですね。
ただそのバックがとても良くて、全体に上質
なグルーヴ感が溢れているようなアルバム
なんですね。
演奏も長めで、全8曲のアルバムです。

The Wailers時代の「Get Up, Stand Up」
や「Johnny Too Bad」といったヒット曲も
交えながら、彼らしい黒いグルーヴが満載
のアルバムに仕上げています。

手に入れたのはIsland傘下のMangoレーベル
からリリースされたCDでした。

全8曲で収録時間は約42分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Drums: Horse Mouth, M. Richards
Bass: Robbie Shakespeare
Keyboards: Earl 'Wire' Lindo, Touter, K. Sterling
Guitar: P. Tosh, Chinna
Hornes: T. McCook, Dirty Harry, Marquis, B. Ellis
Backing Vocals: The Solomonic Enchanters

All Tracks Recorded and Mixed at Harry J's Studio

Tepe operated, Track arangements, Recorded and Mixed
by S. Morris accompanied by Bunny Wailer

Produced, Parformed, Arranged and Directed by
Bunny Wailer and Solomonic Production

となっています。

ミュージシャンはドラムにLeroy 'Horsemouth'
WallaceとMichael Richards、ベースにRobbie
Shakespeare、キーボードにEarl 'Wire' Lindo
とBernard 'Touter' Harvey、Kieth Sterling、
ギターにPeter ToshとEarl 'Chinna' Smith、
ホーンにTommy McCookとRichard 'Dirty Harry'
Hall、Herman Marquis、Bobby Ellis、バック・
コーラスにThe Solomonic Enchantersという
布陣です。

レコーディングとミックスはHarry J's Studio
で行われています。
エンジニアはSylvan Morrisが担当しています。
プロデュースとアレンジはBunny Wailer。

さて今回のアルバムですが、彼Bunny Wailer
の持つ黒いグルーヴが満載のアルバムで、
内容は悪くないと思います。

ただ正直なところそれまでこのアルバムを、
それほど良いアルバムと感じていなかったん
ですね。
私にとってこのBunny Wailerという人は、
The Wailersの中でもっとも捉えどころの
ない人で、どうしてそこまで評価されるの
か?ちょっとピンと来ないところのある人
でした。
そんな苦手意識を感じていたBunny Wailer
でしたが、久しぶりにこのアルバムを引っ
張り出して聴いてみると、これが意外と
良いんですね(笑)。

ユッタリとした大きなグルーヴ感に包まれて
いるような音楽は、とても魅力的です。
特に素晴らしいと思ったのは、Leroy
'Horsemouth' Wallaceのドラミングで、
よく「いなたい」などと表現されるちょっと
ボソボソっとしたドラミングは、この
アルバムに一味添えている印象です。
あのBurning Spearのアルバム「Marcus
Garvey」や映画「Rockers」の主演で知ら
れる彼ですが、この時代の名ドラマーの
ひとりなんですね。
その個性的なドラミングは、クレジットを
見ずに聴いていても「あれ?!これはもしか
してHorsemouth?!」と解ったほどです。
このHorsemouthですが、Burning Spearの
「Marcus Garvey」の他にもJustin Hinds
& The Dominoesのアルバム「Jezebel」や
「Just In Time」でも名演を残しています
が、今回のアルバムも彼の名演奏のひとつ
と言えるかもしれません。

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Justin Hinds & The Dominoes ‎– Jezebel + Just In Time (1976 / 1978)

シンコー・ミュージック刊行の本「Roots
Rock Reggae」ではRobbie Shakespeareの
ベースを誉めていましたが、ベースと
ドラムの作り出す大きなグルーヴに乗せた
Bunny Wailerの黒い魂のヴォーカルは
とても魅力的です。
ファーストよりはバックの布陣が少し地味
になりましたが、Bunny Wailerの作りたい
音楽はセカンドでより明確になった感があり
ます。

一度このノリが理解できればとても素晴ら
しいアルバムなんですが、あえて言えば
Bunny Wailerの癖っぽい歌い方が多少この
アルバムを取っ付きにくくしているところが
あります。
そこが理解出来ればけっこうハマるアルバム
なんですけどね…(笑)。

このジャマイカのレゲエという音楽自体が、
グルーヴという捉えどころの無いものを重視
した音楽で、曲の新しい古いという事は重要
ではなく、その時に生まれるノリがどれほど
のものか、そこを重要視した音楽なんです
ね。
このBunny Wailerという人もかなりそうした
グルーヴを重視した人で、彼のアルバムには
必ずと言って良いほど「昔の曲」が入って
いますが、彼にとっては新しい古いは問題
ではなく、そこに音楽としての何かがある
か?という事を重要視している傾向が見え
ます。
ある意味ではそれがこのBunny Wailerと
いう人を、読みづらくしている要因でもあり
ます(苦笑)。

話を戻しますが、今回のアルバムはすべて
4分以上の力作の曲で構成されたアルバム
で、1曲目のホーンとピアノのメロディが
印象的な「Moses Children」から、The
Wailersの名曲2曲目「Get Up, Stand Up」、
美しいピアノからユッタリとした
Bunny Wailerのヴォーカルが冴える3曲目
「Scheme Of Things」、ユッタリとした
シンセのワンドロップにBunny Wailerの
個性的なヴォーカルの4曲目「Quit Trying」、
リズミカルなシンセに乗せた5曲目「Follow
Fashion Monkey」、語るようなヴォーカル
が印象的な6曲目「Wanted Children」、
シンセとギターのメロディに乗せた7曲目
「Who Feels It?」、あのThe Slickers
(The Pioneersの別名グループ)が歌って
いる事でも知られる名曲のカヴァー8曲目
「Johnny Too Bad」まで、野太いグルーヴ
感に包まれているようなアルバムで、聴き
心地満点なアルバムに仕上がっています。

1曲目は「Moses Children」です。
緩やかなホーンとピアノのメロディから、
Bunny Wailerの伸びやかなヴォーカルが
良いグルーヴ感を醸し出している曲です。

Bunny Wailer - Moses' Children


2曲目は「Get Up, Stand Up」です。
ご存じThe Wailersの代表曲ですが、ホーン
にピアノ、男性コーラスも入った、ユル目の
グルーヴ感重視の編曲で、うまくこのBunny
Wailerのヴォーカルを盛り上げています。
このアルバムの中で一番長い6分16秒
にも及ぶ曲です。

Bunny Wailer Protest 1977 02 Get Up Stand Up


3曲目は「Scheme Of Things」です。
ギターとピアノのメロディにホーン、女性
コーラス、Bunny Wailerのヴォーカルと、
ヴァージョン・アップして行く曲です。
伸びのあるBunny Wailerのヴォーカルに、
ホーンがうまく絡み合っています。

4曲目は「Quit Trying」です。
シンセとギターのワン・ドロップのメロディ
に、個性的なBunny Wailerのヴォーカル、
コーラス・ワークにホーンなどが絡み合う曲
です。
ユッタリでありながら、力強い1曲。

5曲目は「Follow Fashion Monkey」です。
漂うようなシンセのメロディに、ベースの
力強い音色、Bunny Wailerの表情豊かな
ヴォーカルという組み合わせです。
合間良く入るホーンも魅力。

6曲目は「Wanted Children」です。
寂しげなシンセとギターのメロディに、
ユッタリとして説得力のあるBunny Wailer
のヴォーカルが魅力的な曲です。
ギター・ソロ(Peter?)も良い味を添えて
います。

Bunny Wailer - Wanted Children


7曲目は「Who Feels It?」です。
こちらはスカの時代のThe Wailersで、
Bunny Wailerがリード・ヴォーカルを
とった曲のようです。
ピアノとギターのユッタリとしたメロディ
に、語りかけるようなBunny Wailerの丁寧
なヴォーカルがとても魅力的。

Bunny Wailer Protest 1977 07 Who Feels It


8曲目は「Johnny Too Bad」です。
あのThe Slickers(The Pioneersの変名
グループ)が歌っている事でも知られる
名曲です。
ギターとホーン、シンセ、ピアノによる
心地良いメロディに、Bunny Wailerの表情
豊かなヴォーカルがこの曲をより魅力的な
ものにしています。

Bunny Wailer - Johnny too Bad


ざっと追いかけて来ましたが、Bunny Wailer
というシンガーの持つ黒い魂のグルーヴが
さく裂したようなアルバムで、内容はとても
良いと思います。
またバックのRobbie Shakespeareのベースと
Leroy 'Horsemouth' Wallaceのドラムを中心
とした演奏は、うまくこの歌手の魅力を引き
出してしています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Bunny Wailer
○アルバム: Protest
○レーベル: Mango
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○Bunny Wailer「Protest」曲目
1. Moses Children
2. Get Up, Stand Up
3. Scheme Of Things
4. Quit Trying
5. Follow Fashion Monkey
6. Wanted Children
7. Who Feels It?
8. Johnny Too Bad