今回はJunior Keattingのアルバム

junior_keatting_01a

「Weekend Lover」です。

Junior Keattingについてはあまり情報が
ありません。
ネットのDiscogsを見ると、彼が1980年
に今回のアルバム「Weekend Lover」を
リリースしている事と、1980年から
2013年にかけて14枚くらいのシングル
盤をリリースしている事が解ります。
非常に寡作なシンガーなんですね。
それ以外の情報は解りませんでした。

今回のアルバムは1980年にUSの
Tad's Recordというレーベルからリリース
された、彼Junior Keattingの唯一のソロ・
アルバムです。

寡作なJunior Keattingですが、この
アルバムに関してはスタッフが素晴らしく、
プロデュースはJah Thomas、バックの演奏
はRoots Radics、ミックスはScientistと
いう布陣です。
80年というと時代がルーツ・レゲエから
アーリー・ダンスホールへと切り替わった
ぐらいの時代で、まだルーツの香りを残し
ながらも新しいダンスホールの匂いも感じ
させるサウンドが新鮮です。

手に入れたのはUKのRoots Recordsという
レーベルからリリースされたCDの中古盤
でした。

全10曲で収録時間は約37分。
オリジナルは10曲で、オリジナルでは
9曲目「Coming Of A Storm / Dubbing Of
A Storm」が別々に表記されています。
CDではこれがディスコ・ミックス・
スタイルの曲となっていて、最後にCD
ボーナス・トラックとして「Money Man
Skank」が1曲追加されています。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All songs by Nkrumah Thomas / Roy George Keatting / Rufus Music Publishing

Produced by Jah Thomas

Rythm track recorded at Channel One Studio
Voiced and mixed at King Tubby Studio by Scientist the Dub Specialist at the Controls
All rythm tracks laid by The Roots Radics Band
Drums Style: Rodigon
Bass Style: Earl Flabba Holt
Organ Style: Winston Wright
Rhythm and Lead Style: Bingy Bunny
Piano Style: Gladstone Anderson
Percussion Style: Sky Juice Blake
Saxophone Style: Headly Bennet
Trombone Style: Val Bennet
Trumpet Style: Bobby Ellis

Edited at Bulwackies Studios by D. Levy and L. Barnes

となっています。

「All songs」としてNkrumah Thomasと
Roy George Keattingという名前があります
が、Jah ThomasとJunior Keattingの本名の
ようです。

プロデュースはJah Thomasで、バックの
レコーディングはChannel One Studioで
行われ、声入れとミックスはKing Tubby's
Studioで行われ、Scientistがミックスを
担当しています。
Scientistの後にDub Specialistと書かれて
いるので、あのChannel Oneでミックスを
行ったDub Specialist(Sylvan Morris)
か?と思ったんですが、文章から推察すると
「ダブをコントロールするスペシャリスト
(専門家)のScientist」という意味のよう
です。

すべてのリズム・トラックの演奏はThe Roots
Radics Bandが担当。
ドラムにRodigon、ベースにEarl Flabba Holt、
オルガンにWinston Wright、リズム・ギター
とリード・ギターにBingy Bunny、ピアノに
Gladstone Anderson、パーカッションに
Sky Juice Blake、サックスにHeadly Bennet、
トロンボーンにVal Bennet、トランペットに
Bobby Ellisという布陣です。

ドラマーのRodigonという人は、あまり
耳馴染みのない名前です。
この80年頃のRoots Radicsはメインの
ドラマーがよく知られているSyle Scott
ではなく、Carlton 'Santa' Davisなん
ですね。
それが81年になるとSantaとSyle Scott
になり、82年にはSyle Scottがほぼ
メインに定着しているんですね。
今回のRodigonという人はあまり聴き覚えの
無い人なんですが、もしかしてUSで
オーヴァー・ダビングでもしているのか?
聴き慣れたRoots Radicsのスローなワン・
ドロップのサウンドとはいくぶん違うのが、
今回のアルバムの特徴です。

編集はUSのBulwackies Studiosで行われ、
D. Levy and L. Barnesが編集を担当して
います。

さて今回のアルバムですが、80年という
ルーツとダンスホールの「端境期」の音楽
らしい、まだ完全に成熟していないちょっと
荒さの残るサウンドが魅力のアルバムです。

この80年頃から時代はルーツからダンス
ホール・レゲエへと移り変わって行くのです
が、バック・バンドもそれまで活動していた
The Revolutionariesが中心人物だったSly
& RobbieがBlack Uhuruなどの海外公演で
ジャマイカを空ける事が多くなり、事実上の
解散状態になってしまうんですね。
そのThe Revolutionariesに代わって80年
代のダンスホール・レゲエのバックを務めた
のが、このRoots Radicsなんですね。
Roots Radicsといえば、Syle Scottが叩き
出す独特なスローなワン・ドロップのビート
で知られるバンドです。
ただ書いたように初期のメイン・ドラマーは
Carlton 'Santa' Davisで、それが81年
ぐらいになるとSyle Scottが参加するように
なり、82年にはメインがSyle Scottに
なっているんですね。
今回のアルバムはドラムがRodigonとなって
おり、彼がその前のドラマーなのか、一時的
にメンバーだった人なのか、あるいはUSで
売りだしたアルバムなのでUSのドラマー
なのか、その辺はよく解りません。
ただRoots Radicsのまだ初期の録音と思わ
れ、まだ完全にスタイルが固まっていない、
少し荒さの残る演奏がかえって魅力になって
います。

スタイルとしてはまだどこかにルーツの香り
を残しながらも、アーリー・ダンスホールの
萌芽を感じさせる初々しいサウンドなんです
ね。
内容は悪くないと思います。

1曲目は「Long Long Time」です。
リディムはThe Royalsの「Pick Up The
Pieces」。
頭にJah Thomasのトースティング。
そこからFlabbaのズシッとしたベースを軸に
ギターとオルガンのメロディの演奏に、
Junior Keattingのよく通るヴォーカルが
心地良い曲です。

JUNIOR KEATING...LONG LONG TIME

↑シングルカットのせいか、Jah Thomasの
トースティングがありません。

リズム特集 Pick Up The Pieces (ピック・アップ・ザ・ピーシズ)

2曲目は「Conquering Lion」です。
Junior Keattingのハミングから伸びのある
ヴォーカルで始まる曲です。
ズシッとしたベースとドラミング、ピアノ
のメロディという組み合わせが心地良い曲
です。

conquering lion-junior keatting.wmv


3曲目は「Jah Wrote Me A Letter」です。
ホーンの印象的なメロディとズッシリとした
ベースとドラムのリズム、ピアノのメロディ
に、表情のあるJunior Keattingの
ヴォーカルがとても魅力的な曲です。

4曲目は表題曲の「Weekend Lover」です。
「ボンボギ・ボンボギ・ボン・ボン…」と
いう印象的なフレーズから、Junior
Keattingの感情を込めたヴォーカルが
ナイスな曲です。
ずっとしたベースとワン・ドロップの
ドラミングが、うまく曲を盛り上げて
います。

5曲目は「Watch What You Do」です。
こちらはシンセのメロディに乗せた、ノビの
あるヴォーカルが爽やかな曲です。

6曲目は「Baby Please Be True」です。
リディムはFreddie McGregorの「Bobby
Babylon」。
こちらもB面の1曲目という事で、
Jah Thomasのトースティングから、ホーン
のお馴染みのメロディに、Junior Keatting
のヴォーカルという曲です。

リズム特集 Bobby Babylon/Hi Fashion (ボビー・バビロン/ハイファッション)

7曲目は「Hang Up The Telephone」です。
リディムはLarry Marshallの「Mean Girl」。
華やかなシンセのメロディとハデな
ドラミングに乗せた、Junior Keattingの
ヴォーカルがにぎやかな空気を作っている
曲です。

Junior Keating - Hang Up The Telephone


8曲目は「Something Is Bugging Me」
です。
シンセのもろでぃにピュンピュンとした
トビ音、Junior Keattingのノビのある
ヴォーカルにギターのメロディといった曲
です。
ピュンピュンしたトビ音が、いかにもこの
時代のScientistのミックスという感じが
します。

9曲目は「Coming Of A Storm / Dubbing Of
A Storm」です。
タイトルからも解るように前半はJunior
Keattingのヴォーカルの「Coming Of A
Storm」で、後半はそのダブの「Dubbing Of
A Storm」のディスコ・ミックス・スタイル
の曲です。
オリジナルのLPでは別々の曲として扱われ
ています。
華やかなシンセのメロディからJunior
Keattingのヴォーカルとホーン、ベースが
絡み合う曲です。
こちらもScientistらしいトビ音が入った曲
です。
後半のダブはJah Thomasのトースティング
から、ホーンとギター、ベースを中心とした
ダブに展開していきます。

Junior Keating - Coming Of A Storm + Coming Of A Dub


10曲目にはオリジナルにはない、「Money
Man Skank」という曲が収められています。

10曲目は「Money Man Skank」です。
5曲目「Watch What You Do」と同じリディム
を使った曲のようです。
ちなみに「Money Man Skank」とは、「お金
持ち好きの尻軽女」という事のようです。

ざっと追いかけて来ましたが、ルーツとも
ダンスホールとも言いきれない、「端境期の
サウンド」というのが今回のアルバムの
面白さなんですね。
ある意味ちょっと中途半端なアルバムなん
ですが、それでもすでにダンスホールの
青写真は明確に見えているのが、この
アルバムの面白いところなんですね。
こうしたアルバムを通して、時代は一気に
ダンスホール・レゲエへと加速して行くん
ですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Junior Keatting
○アルバム: Weekend Lover
○レーベル: Roots Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1980

○Junior Keatting「Weekend Lover」曲目
1. Long Long Time
2. Conquering Lion
3. Jah Wrote Me A Letter
4. Weekend Lover
5. Watch What You Do
6. Baby Please Be True
7. Hang Up The Telephone
8. Something Is Bugging Me
9. Coming Of A Storm / Dubbing Of A Storm
(CD Bonus Track)
10. Money Man Skank