今回はJackie Mittoo And The Soul Vendors
のアルバム

jackie_mittoo_02a

「Evening Time」です。

Jackie Mittooは60年代のスカの時代に
伝説のスカ・バンドThe Skatalitesの
キーボード奏者として活躍し、さらにレゲエ
の前身のロックステディの時代になると
Studio Oneのバック・バンドSoul Defenders
→Soul Vendors→Sound Dimensionなどを
率いて、このロックステディの時代をけん引
し、70年代のルーツ・レゲエの時代に
なっても、ソロやスタジオ・ミュージシャン
として活躍した人です。

1990年に癌の為40代前半という若さで
亡くなっています。

アーティスト特集 Jackie Mittoo (ジャッキー・ミットゥ)

ジャッキー・ミットゥ - Wikipedia

The Soul VendorsはそのJackie Mittooを
リーダーとする、ロックステディの時代に
活躍したStudio Oneのバック・バンドです。
キーボードのJackie Mittooをはじめ、
トランペットのJohnny Mooreや、ベースの
Lloyd Brevett、サックスのRoland Alphonso
などがメンバーだったようです。

今回のアルバムはジャマイカがまだロック
ステディの時代だった1968年に
Studio OneからリリースされたJackie Mittoo
のソロ・アルバムです。
Jackie Mittooはその前年の67年に
ファースト・ソロ・アルバム「In London」
をリリースしていて、それに続くセカンド・
ソロ・アルバムが今回のアルバムなんです
ね。

Jackie Mittooのハモンド・オルガンを中心
とした演奏のインスト・アルバムで、バック
はThe Soul Vendorsが務めています。
表題曲の1曲目「Evening Time」から
始まり、当時テレビで放送されていた
スパイ・ドラマ「ナポレオン・ソロ」を題材
にした「Napoleon Solo」や、イージー・
リスニングのPaul Mauriat(ポール・
モーリア)の有名曲「Love Is Blue(邦題:
恋は水色)」のカヴァーや、ウエディング・
ソングの「Rock Steady Wedding」、彼の
代表曲になる「Hot Milk」や「Drum Song」
など、ヴァラエティのある楽曲が盛り
だくさんのアルバムになっています。

手に入れたのはStudio Oneからリリース
されたCDでした。
オリジナルに加えて、2曲のCDボーナス・
トラックが収められたアルバムでした。

全14曲で収録時間は約43分。
オリジナルは12曲で、残りの2曲はCD
ボーナス・トラックです。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by Clement 'Sir Coxson' Dodd
Recorded at Jamaica Recording & Publishing Studios Ltd.

という記述があります。

さて今回のアルバムですが、ロックステディ
の時代に大活躍したJackie Mittooという人
のソング・ライティングの才能がとてもよく
解るアルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

やはり注目点はこのアルバムがレゲエの前身
である、1966年から68年という一時期
だけ流行した音楽ロックステディの時代の
アルバムであるという事です。

ロックステディ - Wikipedia

このロックステディの時代をけん引したのが
Studio Oneを中心としたJackie Mittooで
あり、Treasure Isleレーベルを中心とした
Tommy McCookであり、様々なレーベルで活動
したトニダード・トバコ出身のギタリスト
Lynn Taittだったんですね。
この時代はまだジャマイカの音楽は世界的な
音楽ではなく、UKで少し認められている
ぐらいの音楽だったんですね。
ただこのロックステディの時代の音楽の発展
が、その後のレゲエの大ブレイクに繋がった
事は間違いありません。

今回のアルバムはそのロックステディの時代
をけん引したJackie Mittooの才能がよく
解るアルバムで、内容は悪くないんですね。
面白いのは自身の曲だけではなく、当時の
イージー・リスニングの大ヒット曲Paul
Mauriat(ポール・モーリア)「Love Is
Blue(邦題:恋は水色)」や、人気の
スパイ・ドラマ「ナポレオン・ソロ」を
テーマにした曲なども演奏している事です。

0011ナポレオン・ソロ - Wikipedia

今聴くとJackie Mittooの才能が発揮された
曲の方が魅力的に感じられますが、当時の
ヒット曲を入れる事で何とか世界的に成功
したいという、Jackie Mittooの渇望が感じ
られます。
昔のヒット曲のオールディーなイメージと、
今聴いても新鮮な彼の楽曲の対比から感じ
られるアンバランスさがちょっと面白い
です。
古くて新しい不思議な感覚のアルバムなん
ですね。

表題曲になっているDerrick Harriottの
「Solomon」のリディムの1曲目「Evening
Time」から始まり、のちにFreddie McGregor
の「Bobby Babylon」としてヒットした
リディムの2曲目「One Step Beyond」、
当時テレビで放送されていたスパイ・ドラマ
「ナポレオン・ソロ」を題材にした
3曲目「Napoleon Solo」、いかにもロック
ステディらしいギターにハモンド・オルガン
の浮遊感のあるサウンドが印象的な4曲目
「Best By Request」、イージー・
リスニングのPaul Mauriat(ポール・
モーリア)の有名曲「Love Is Blue
(邦題:恋は水色)」のカヴァー5曲目
「Love Is Blue」、ソウル・ミュージック
を意識したクールなオルガン・プレイの
6曲目「Hip Hug」、彼の代表曲のひとつ
として知られる浮遊感のあるオルガンの
7曲目「Hot Milk」、ホーンと浮遊感の
あるオルガンの8曲目「Autumn Sounds」、
ロックステディらしい刻むようなギターに
ピアノのメロディが絡む9曲目「Full
Charge」、ホーンとオルガン、ギターの
メロディが絶妙に混ざり合う10曲目
「Hot Shot」、いかにもウエディング・
ソングといったメロディに彼らしいアレンジ
の効いた11曲目「Rock Steady Wedding」、
そして独特のムーディーな世界観が印象的な
代表曲12曲目「Drum Song」と、彼の
煌めくようなソング・ライティングと
アレンジの才能がよく解るアルバムになって
います。

さらにCDボーナス・トラックとして、
Dawn Pennのヒット曲「No No No」の
インスト・ヴァージョン13曲目
「Loving You」と、Delroy Wilsonの
ヒット曲「Dancing Mood」のインスト・
ヴァージョン「Dancing Groove」の2曲
がプラスされたアルバムになっています。

1曲目は表題曲の「Evening Time」です。
リディムはDerrick Harriottのヒット曲
「Solomon」です。
ピアノのメロディがちょっと違うので、
言われないと「Solomon」だとは気が付か
ない、彼のアレンジ力の高さがよく解る曲
です。
リリカルなピアノのメロディが魅力。

Jackie Mittoo - Evening Time ( STUDIO 1 )


2曲目は「One Step Beyond」です。
77年にFreddie McGregorが「Bobby
Babylon」としてヒットさせた曲ですが、
もちろんこちらの方が先です。
(いくつかの販売サイトでは、「Bobby
Babylon」のカヴァーと書かれていました。)
「Bobby Babylon」はこの10年後ぐらい
に、人が集まらなくなったStudio Oneで
昔のロックステディの楽曲を、当時まだ新人
だったFreddie McGregorに歌わせてヒット
した曲なんですね。
10年後ぐらいの話で、時系列が逆なんです
ね。
ホーンとロックステディらしいギター、
Jackie Mittooのオルガンが、心地良い
グルーヴ感のあるサウンドを作り出して
います。

Jackie Mittoo And The Soul Vendors - One Step Beyond - (Evening Time)


リズム特集 Bobby Babylon/Hi Fashion (ボビー・バビロン/ハイファッション)

3曲目は「Napoleon Solo」です。
書いたように「ナポレオン・ソロ」は当時
人気のテレビで放映されたスパイ・ドラマ
です。
この曲がそのドラマで使われた曲なのか、
それともそれを題材にしたJackie Mittooの
オリジナルなのかはよく解りません。
楽し気なホーン・セクションに、ギターや
オルガンなどが絡む曲です。

4曲目は「Best By Request」です。
ロックステディらしい刻むようなギター・
ワークに、浮遊感のあるハモンド・オルガン
が印象的な曲です。

5曲目は「Love Is Blue」です。
当時のイージー・リスニングの大ヒット曲
Paul Mauriat(ポール・モーリア)の
「Love Is Blue(邦題:恋は水色)」の
カヴァーです。
今聴くとやっぱりイージー・リスニングなの
でちょっと単調な曲に聴こえますが、有名曲
を入れる事で少しでも多くの人に聴いて
もらいたいという、Jackie Mittooの切なる
思いが垣間見えます。

JACKIE AND THE SOUL VENDORS LOVE IS BLUE


6曲目は「Hip Hug」です。
こちらは一転して当時のソウル・
ミュージックを意識したような、浮遊感の
あるオルガンを中心としたクールな楽曲
です。

Jackie Mittoo & Soul Vendors - Hip Hug


7曲目は「Hot Milk」です。
このアルバムの中でも「Drum Song」と
並んでJackie Mittooの代表曲として
有名な曲です。
(その名前はレーベルの名前にもなって
いるほど…。)
ダンスホールの時代にはBarrington Levyが
「Murderer」というタイトルで、この
リディムをヒットさせている事でも有名
です。
浮遊感のあるハモンド・オルガンが、
グッと来る曲なんですね。

Jackie Mitto - Hot Milk (Studio One)


リズム特集 Hot Milk/Murderer (ホット・ミルク/マーダラー)

8曲目は「Autumn Sounds」です。

こちらはホーンのオープニングから、浮遊感
のあるハモンド・オルガンとギターの刻む
ようなメロディが心に残る曲です。

9曲目は「Full Charge」です。
刻むようなギター・ワークにピアノの
シャープなメロディが耳に残る曲です。
Jackie Mittooらしい才能を感じる1曲。

10曲目は「Hot Shot」です。
ホーンと刻むようなギター、ハモンド・
オルガンの一体感のあるメロディが
心地良いグルーヴ感を感じさせる曲です。

11曲目は「Rock Steady Wedding」です。
タイトル通り、ロックステディ調にアレンジ
されたウエディング・ソングです。
硬いドラミングに浮遊感のあるハモンド・
オルガンが良い空気感を生み出しています。

Jackie Mittoo - Rock Steady Wedding


12曲目は「Drum Song」です。
彼の代表曲のひとつで、独特のセクシーで
ムーディーなメロディが特徴的な曲です。
パーカッションの使い方も秀逸な名曲です。

Jackie Mittoo And The Soul Vendors - Drum Song - (Evening Time)


リズム特集 Drum Song (ドラム・ソング)

ここまでがオリジナルで、書いたように最後
の2曲はCDボーナス・トラックが収められ
ています。
Dawn Pennのヒット曲「No No No」の
インスト・ヴァージョン13曲目
「Loving You」と、Delroy Wilsonの
ヒット曲「Dancing Mood」のインスト・
ヴァージョン「Dancing Groove」の2曲
ですが、どちらも当時のStudio Oneの
大ヒット曲なんですね。
こうしたところからも当時のJackie Mittoo
の活躍ぶりがよく解ります。

ざっと追いかけて来ましたが、Jackie Mittoo
のソング・ライティングの才能がよく解る
アルバムで、内容は悪くないと思います。

皮肉な事に当時は少しでも売れる為に入れた
Paul Mauriatの有名曲「Love Is Blue」の
カヴァーの方が、やたら古臭くヤボったい曲
に聴こえるのも面白いところ(笑)。
もちろん音質も当時はチャンネル数が少なく
多少悪いですが、Jackie Mittooの才能は
それを割り引いてもとてもモダンで、今も
魅力的なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Jackie Mittoo And The Soul Vendors
○アルバム: Evening Time
○レーベル: Studio One
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1968

○Jackie Mittoo And The Soul Vendors「Evening Time」曲目
1. Evening Time
2. One Step Beyond
3. Napoleon Solo
4. Best By Request
5. Love Is Blue
6. Hip Hug
7. Hot Milk
8. Autumn Sounds
9. Full Charge
10. Hot Shot
11. Rock Steady Wedding
12. Drum Song
(CD Bonus Tracks)
13. Loving You
14. Dancing Groove

●今までアップしたJackie Mittoo (Sound Dimension, Soul Defenders)関連の記事
〇Jackie Mittoo「Keep On Dancing」
〇Jackie Mittoo「Macka Fat」
〇Jackie Mittoo「Show Case Volume 3」
〇Jackie Mittoo「The Keyboard Legend」
〇Jackie Mittoo「The Money Makers」
〇Sound Dimension「Jamaica Soul Shake Vol 1」
〇Sound Dimension「Mojo Rocksteady Beat」
〇Soul Defenders「Soul Defenders At Studio One」