今回はBob Marley And The Wailersの
アルバム

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「Live!」です。

Bob Marley & The Wailersはもともとは
The Wailersという名前で、60年代のス
カの時代にBob MarleyとPeter Tosh、
Bunny Wailerの3人組コーラス・グループ
として結成されたグループです。
名門レーベルStudio OneからThe Skatalites
をバックにした「Simmer Down」など多く
のヒット曲を飛ばし、スカの時代に
ジャマイカで人気グループになった彼ら
は、その後ロックステディ→ルーツ・レゲエ
と時代が進むうちに、リズム隊のBarrett
兄弟なども加えたバンド形式の5人組
グループThe Wailersへと変化して行き
ます。
そしてメジャー・レーベルIslandと契約し、
1973年に「Catch A Fire」で念願の
世界デビューを果たすんですね。

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The Wailers - Catch A Fire (1973)

ところが世界デビュー2枚目のアルバム
「Burnin'」をリリースしたところで、
Bunny WailerとPeter Toshがグループを
脱退してしまうんですね。

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The Wailers ‎– Burnin' (1973)

その理由は世界を回るツアーの辛さの為
だとも、Islandが「白人にも解る音楽を」
という要求をし、二人がそれに反発した
為だとも言われています。

残されたBob Marleyはその後Bob Marley &
The Wailersと名乗ってバンド活動を続け、
レゲエを世界に広め、自身も世界的なスター
へとなって行くんですね。

そうした活躍をしたBob Marleyでしたが、
1981年にガンの為に亡くなっています。

アーティスト特集 Bob Marley (ボブ・マーリー)

今回のアルバムは1975年にUKの
Island Recordsからリリースされた、彼ら
Bob Marley & The Wailersのライヴ・
アルバムです。

Bunny WailerとPeter Toshが脱退した後は
バンド名はBob Marley & The Wailersと
なり、実質Bob Marleyのワン・マン・バンド
となり、The Wailersという名前は彼を
支えるバック・バンドの名前となるんです
ね。
さらにBunny WailerとPeter Toshの抜けた
コーラスの穴埋めとして、Bobの奥さんの
Rita Marleyと、実力派女性シンガーの
Marcia Griffiths、当時は新人だった
Judy Mowattの3人組女性コーラス・
グループI Threesがバック・コーラスを
担当するようになります。
その編成で74年にメジャー・デビューして
から3枚目のアルバム「Natty Dread」を
出しているんですね

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Bob Marley & The Wailers ‎– Natty Dread (1974)

そして次に出したのがこのライヴ・アルバム
で、メジャー・デビュー後4枚目のこの
アルバムでBob Marley & The Wailersは、
ついに世界的なブレイクを果たす事になるん
ですね。

オープニングの「Trenchtown Rock」から
始まり、セカンド「Burnin'」の中で印象的
な「Burnin' & Lootin'」、「元気を出せよ」
と歌う「Lively Up Yourself」、女性との
別れを歌うメローな名曲「No Woman, No
Cry」、ロック歌手Eric Claptonのカヴァー
でも知られる「I Shot The Sheriff」、
そして「オリジナル・ウェイラーズ」の
代表曲「Get Up, Stand Up」へと徐々に
ヒート・アップして行く様は、聴く者を圧倒
する内容です。

手に入れたのはTuff Gongからリリース
されたCDでした。

ちなみにこのアルバムは私がまだ若かった
20代の頃に、LPでも購入していた
アルバムでした。

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Bob Marley And The Wailers - Live! (LP)

LPの発売元は東芝EMIで、中には見開き
のライナー・ノーツが付いていて、そこには
小倉エージさんの解説文と山本安見さんの
訳詩が付いていました。
これらのアルバムから私がBob Marleyが
好きになり、さらにはレゲエという音楽に
惹かれて行ったのは間違いがありません。

全8曲で収録時間は約46分。
オリジナルは7曲で、最後の1曲
「Kinky Reggae」はCDボーナス・トラック
です。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Guitar, Vocals: Bob Marley
Drums: Carlton 'Carly' Barrett
Bass: Aston 'Familyman' Barrett
Keyboards: Tyrone Downie
Lead Guitar: Al Anderson
Percussion: Alvin 'Seeco' Patterson
Backing Vocals: I Threes

Recorded at the Lyceum, London, 19th July 1975
Live sounds mixing: Dave Harper
Live recording by Rolling Stones Mobile
Recording engineer: Steve Smith
Mixed at Basing Street Studios
Mixing engineer: Phill Brown

Bob Marley & The Wailers produced the music
Steve Smith & Chris Blackwell produced the record

Photography: Dennis Morris, Adrian Boot, Bob Ellis
Design: Eckford/Stimpson

となっています。

ギターとヴォーカルはBob Marley、ドラム
はCarlton 'Carly' Barrett、ベースは
Aston 'Familyman' Barrett、キーボードは
Tyrone Downie、リード・ギターは
Al Anderson、パーカッションはAlvin
'Seeco' Patterson、バック・コーラスは
I Threesという布陣です。

録音は1975年7月19日に、ロンドンに
あるthe Lyceumという会場で行われたよう
です。
ライヴ音源のミキシングはDave Harper。
ライヴの録音はRolling Stones Mobileという
ところが担当。
レコーディング・エンジニアはSteve Smith。
ミックスはBasing Street Studiosという
スタジオで行われ、ミキシング・エンジニア
はPhill Brown。

プロデュースはSteve SmithとIslandレーベル
のChris Blackwell。

写真はDennis MorrisとAdrian Boot、Bob
Ellisの3人で、デザインはEckford/Stimpson
となっています。

さて今回のアルバムですが、私がBob Marley
やレゲエという音楽が好きになったきっかけ
のようなアルバムで、とても思い出深い
アルバムなんですね。

このアルバムをきっかけにBob Marleyは
ブレイクしたと書きましたが、おそらくこの
「Live!」と77年の「Exodus」が当時の
Bob Marleyのアルバムの中で日本で一番よく
売れたアルバムで、音楽好きの友達の家に
行くとどちらかのアルバムをだいたいの人
が持っていました。

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Bob Marley & The Wailers ‎– Exodus (1977)

今聴くとよく解りますが、Bob Marleyはこの
あたりからだいぶロック色が強くなるんです
ね。
それは「白人にも解る音楽を」というIsland
レーベルのChris Blackwellの求めに応じた
結果だったのかもしれません。
今聴くと「オリジナル・ウェイラーズ」の
BunnyとPeterが居た時代のアルバムが
コーラス・ワークが最高でレゲエらしさも
あり悪くなんですが、やはりロック色が強く
なった事で聴き易くなったのか、この頃から
Bob Marley & The Wailersの人気は上がるん
ですね。

また彼らのライヴ・パフォーマンスの
素晴らしさも、彼らが評価された要因の
ひとつで、シッカリとしたBarrett兄弟を中心
としたリズム隊に、I Threesによる美しい
コーラス・ワーク、Bob Marleyの力強い歌声
が一体になったその激しい歌詞を持った音楽
は、多くの人々の心を掴んだ事は間違いあり
ません。
今回のアルバムも、随所にそのライヴ・
パフォーマンスの素晴らしさが感じられ
ます。
このアルバムから人気に火が付いたという
のが頷ける内容なんですね。

Bob Marleyがロック色を強めた事には様々
な批判もありますが、結果的に見ると多くの
人にレゲエという音楽を知らしめた効果が
あり、それによってレゲエという音楽が
世界の音楽になって行ったんですね。

アルバムは司会の男性のコールから始まり
ます。
東芝EMIからリリースされたLPの対訳
によると、次のようなコールがなされて
います。

「さあ、みんな、トレンチタウンの雰囲気を
体中で感じとろうじゃないか!ジャマイカの
トレンチタウンからはるばるやって来た
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ!
カモン!!」
(東芝EMIのLPより)

そうして1曲目「Trenchtown Rock」が
始まるんですね。
そうしてセカンド「Burnin'」に収められた
名曲2曲目「Burnin' & Lootin'」、「奴ら
は満腹なのに俺たちは腹ペコだ」と世の不正
を訴える3曲目「Them Belly Full (But We
Hungry)」、「元気を出せよ!」と仲間を
励ます4曲目「Lively Up Yourself」、
自分の旅立ちに泣く女性を慰めるメローな
名曲5曲目「No Woman, No Cry」、ロック
歌手Eric Claptonのカヴァーでも知られる
「I Shot The Sheriff」、「正義のために
立ちあがれ」と訴える「オリジナル・
ウェイラーズ」の時代の名曲「Get Up,
Stand Up」と、会場が徐々にヒート・アップ
して行く様がリアルに伝わる熱いライヴ・
アルバムとなっています。

ちなみにこのアルバムはシンコー・
ミュージック刊行の本「Roots Rock Reggae」
にも紹介されているアルバムで、そこには
「智」さんという方の文章で「過渡期なら
ではのぎくしゃく感、硬さ、を残すものの、
それが却って”何かが生まれる瞬間”の
緊張感を伝えてくる。」と書かれています。

このアルバムのもうひとつの価値は、これが
Bob Marleyの生前にリリースされたライヴ・
アルバムというところもあるんですね。
Bob Marleyは生前にこのアルバムと、
78年に「Babylon By Bus」という2枚組
LPのライヴ・アルバムをリリースして
います。

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Bob Marley & The Wailers ‎– Babylon By Bus (1978)

「Babylon By Bus」はその後人気が高まった
Bob Marley & The Wailersの堂々とした
ライヴが楽しめるアルバムで、今回の
アルバムの初々しい緊張感とはまた一味
違った魅力を持ったアルバムなんですね。
Bob Marleyの死後多くのライヴ・アルバム
がリリースされていますが、このアルバムは
生前のオリジナル・アルバムであり、価値が
違うんですね。

1曲目は「Trenchtown Rock」です。
書いたように司会の男性のコールから始まる
1曲です。
ギターのイントロからBob Marleyの
ヴォーカル、I Threesによるコーラスと
曲がボリューム・アップして行く様は見事。
観客のざわめきもライヴらしさをうまく演出
しています。

Bob Marley and The Wailers - Trenchtown Rock (LIVE!)


2曲目は「Burnin' & Lootin'」です。
ちょっと陰のあるオルガンとギターの
メロディに野太いベース、表情のある
Bob Marleyのヴォーカルに女性コーラス…。
セカンド・アルバム「Burnin'」に収め
られた名曲を、うまくロック色の強い、
女性コーラス・ヴァージョンに編曲して
います。

Bob Marley and The Wailers - Burnin' And Lootin' (LIVE!)


3曲目は「Them Belly Full (But We
Hungry)」です。
「奴ら(白人の金持ち)は満腹だけど、俺達
(黒人の貧乏人)は腹ペコだ」と訴える曲
です。
重いビートにI Threesのコーラス・ワーク、
ライヴらしい鳴くギターにBob Marleyの
男らしいヴォーカルという曲です。

4曲目は「Lively Up Yourself」です。
同志に「元気を出せよ、レゲエで踊ろうぜ」
と歌う曲です。
イントロから観客がヒート・アップしている
様子がうかがえる曲です。

5曲目は「No Woman, No Cry」です。
この曲でBob Marleyの魅力にはまった人も
多い、メローな名曲です。
ラヴ・ソングと思っている人も多いようです
が、実は旅立つ自分を想って泣いている恋人
に「泣かないで」と慰めている曲。
「官邸前でコーン・ミル粥を食べた」という
歌詞もあり、どうも舞台設定がジャマイカの
独立した日(1962年8月6日)の出来事のよう
です。
メローなオルガンのイントロから美しい
コーラス、静かに語りかけるようなBob
Marleyのヴォーカルと、メローな魅力のある
曲です。
ライヴらしくサビの「Everything's be all
right(すべてうまく行くさ)」のコーラス
は、観客もコーラスで答えています。

"No Woman No Cry" - Bob Marley & The Wailers | Live! (1975)


6曲目は「I Shot The Sheriff」です。
こちらはBob Marleyの人気に火が付く
きっかけになった、ロック歌手Eric Clapton
のカヴァーでも知られる曲です。
「保安官のジョン・ブラウンはいつも俺を
憎んでいた。俺が町を出て行こうとすると、
奴は俺を撃とうとした。だから俺は奴を
撃ったんだ。」と、やり切れない差別に
苦しむ黒人の心情を歌っています。
重いビートに乗せたクールなオルガンの
メロディから、I Threesのコーラス、
Bob Marleyのの刹那そうな歌声と、表情
豊かなドラマティックな曲です。

"I Shot The Sheriff" - Bob Marley & The Wailers | Live! (1975)


7曲目は「Get Up, Stand Up」です。
最後はBob MarleyとPeter Tosh、Bunny
Wailerの3人ともが歌い、大事にしている
彼ら「オリジナル・ウェイラーズ」の代表曲
でシメています。
ズシッとしたAston 'Familyman' Barrettの
ベース、Carlton 'Carly' Barrettのハード
なドラミング、Tyrone Downieの浮遊感の
あるキーボード、そしてBob Marleyの
ヴォーカルと、圧巻のパフォーマンスを披露
しています。

Bob Marley and The Wailers - Get Up, Stand Up (LIVE!)


ここまでがオリジナル・アルバムの曲で、
8曲目にはCDボーナス・トラックとして
ライヴの「Kinky Reggae」が収められて
いますが、ここでは省略します。

ざっと追いかけて来ましたが、このアルバム
はその聴き易さから多くのロックのリスナー
からも支持されたアルバムだったんですね。
私自身もそうですが、このアルバムが当時の
日本の多くのリスナーを惹きつけ、その後
レゲエという音楽を聴くきっかけを作った
アルバムであった事は間違いありません。

そしてまだまだ人種差別の残る70年代に
「俺たち黒人も人間なんだ。俺たちにも
生きる権利がある。」と訴えたBob Marley
というシンガーは、やはり音楽史に残る英雄
なんですね。
そして彼の言葉は今もレゲエを愛する多くの
ミュージシャンに受け継がれています。

70年代と較べて今の世の中が良くなって
いるのかは解りません。
今も白人至上主義を掲げる人間も多く、
差別はある意味広がっているのかも…。

ただそういう時代になればなるほど彼
Bob Marleyの言葉は我々を鼓舞するのです。

起きあがれ、立ち上がれ
権利の為に立ちあがれ
戦いを最後まで諦めるな
(「Get Up, Stand Up」の歌詞より)

Bob Marley - Get Up Stand Up (Live)



○アーティスト: Bob Marley And The Wailers
○アルバム: Live!
○レーベル: Tuff Gong
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○Bob Marley And The Wailers「Live!」曲目
1. Trenchtown Rock
2. Burnin' & Lootin'
3. Them Belly Full (But We Hungry)
4. Lively Up Yourself
5. No Woman, No Cry
6. I Shot The Sheriff
7. Get Up, Stand Up
(Bonus Track)
8. Kinky Reggae

●今までアップしたBob Marley & The Wailers関連の記事
〇Bob Marley & The Wailers「Babylon By Bus」
〇Bob Marley & The Wailers「Natty Dread」
〇Bob Marley & The Wailers「Rastaman Vibration」
〇Bob Marley & The Wailers「Survival」
〇Bob Marley & The Wailers「Wail'n Soul'm Singles Selecta」
〇Bob Marley & The Wailers「Exodus」
〇Bob Marley & The Wailers「Kaya」
〇Bob Marley And The Wailers「Soul Rebels」
〇Wailers「Burnin'」
〇Wailers「Catch A Fire (Deluxe Edition)」
〇Wailers「The Best Of The Wailers」
〇Glen Dacosta & The Wailers「Serenade Of Love」