今回はPeter Metro Also Featuring Tonto Metroのアルバム

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「No Problem」です。

Peter Metro(本名Peter Clarke)は、Discogs
やWikipediaの彼の解説文によると、初めは
Peter Rankingの名前でディージェイを始めた
ものの、同名のディジェイがいる事が解り
Peter Metroに改名。
Metromedia sound systemの看板ディージェイ
として活躍した人なんだそうです。
1982~85年の間に共演盤を含めて、
7枚ぐらいのアルバムをリリースして
いて、80年代のアーリー・ダンスホール
からデジタルのダンスホールの時代に多く
のシングルをリリースしています。

Peter Metro - Wikipedia

もう一人のTonto Metroについても書いて
おきます。

Tonto Metro(本名Mark Anthony Wolf)は、
サウンド・システムMetromedia sound system
で活躍したディージェイで、名前の由来は
オーナーのPeter Metroにちなんで付けられた
名前なんだとか。
後にシンガーのDevonteとのコンビTanto Metro
& Devonteで出した曲「Everyone Falls In
Love」が世界的に大ヒットし、ヒップ・
ホップ・シーンでも活躍したディージェイと
して知られています。

ちなみにTonto Metroという名前でよりも、
Tanto Metroという名前で知られている
アーティストなんですね。

アーティスト特集 Tanto Metro (タント・メトロ)

Tanto Metro and Devonte - Wikipedia

今回のアルバムは1985年にジャマイカの
George PhangのレーベルPower Houseから
リリースされたPeter Metroのソロ・アルバム
です。
「Featuring Tonto Metro」となっているよう
に、全編Tonto Metroとの掛け合いの
「ラバ・ダブ・スタイル」のトースティング
のアルバムになっています。

Don Drummondのロックステディのヒット曲
「Heavenless」のリディムを使った表題曲の
「No Problem」をはじめ、Alton Ellisの
「Mad Mad」リディムの「Green Card」や、
Screwdriverの「No Mama」リディムの
「Yes Daddy」、「Answer」リディムの
「Gi Wi De Koole」など、この時代らしい
ノリノリのダンスホール・リディムが楽し
めるアルバムです。

手に入れたのはPower Houseからリリース
されたLPの中古盤でした。

Sid 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All tracks played by Sly, Robbie & The Gang
except "Yes Daddy" played by The Now Team
All songs recorded & Mixed by Michael Riley
Recorded & Mixed at Dynamic Sounds
All songs written by Peter Clarke alias "Peter Metro"

Produced by: George Phang

Edited by: Michael Rankine

となっています。

1曲を除いてすべてのトラックの演奏は
Sly, Robbie & The Gangで、Side 1の3曲目
「Yes Daddy」のみThe Now Teamが演奏を
担当しています。
The Now Teamというのは確かBunny Leeの
バック・バンドだった気がします。
おそらくこの「Yes Daddy」のみ、Bunny Lee
の元での録音か?
レコーディングとミックスはDynamic Sounds
で行われ、エンジニアはMichael Rileyが担当
しています。

すべての曲の作曲は本名Peter Clarkeの
Peter Metroが担当しています。

プロデュースはGeorge Phangで、編集は
Michael Rankineが行っています。

さて今回のアルバムですが、この85年は
あのWayne Smithの「Unde Me Sleng Teng」
が大ヒットして、デジタルのダンスホール・
レゲエいわゆる「コンピューター・
ライズド」の大旋風が吹き荒れた年ですが、
バックの演奏は一見デジタルですが、
シンセなどに生演奏を組み合わせた「疑似
デジタル」という印象です。
なんとかKing Jammyの起こした大旋風
「コンピューター・ライズド」に対抗しよう
というプロダクションの苦労の跡が見えて、
そこがこのバックの「疑似デジタル」の
面白いところです。

同じ「疑似デジタル」でもKing Tubby'sの
疑似デジタルが「Tempo」などでヴォイス・
チェンジをしたり必死に表情を付けようと
しているのに対して、こちらのPower House
の方はJammysに近い無表情の音を作ろうと
しているのが面白いところ。
「デジタル」の解釈が違うんですね。

そうしたバックのサウンドに較べると、
ディージェイのPeter Metroは明らかにこの
新しい流れに対応していて、アーリー・
ダンスホールから続く「ラバ・ダブ・
スタイル」を保ちながらも、この時代らしい
能天気ともいえるちょっとイカレた感じの
トースティングを披露しています。
時代の風を感じとったこの対応は、現場で
経験を積み上げてきたものらしい見事さが
あります。

多少好き嫌いが分かれるところがあるかも
しれませんが、この85年というアナログと
デジタルの狭間で生まれた、この時代なら
ではのアルバムなんですね。

Side 1の1曲目Don Drummondの「Heavenless」
リディムを使った表題曲の「No Problem」
から始まり、Alton Ellisの「Mad Mad」
リディムの2曲目「Green Card」、
Screwdriverの「No Mama」リディムの3曲目
「Yes Daddy」、陽気なラバ・ダブ・スタイル
が楽しい4曲目「Rock Yu Buddy」、息の
合ったTonto Metroの合いの手が見事なSide 2
の1曲目「Can Tan Ya So」、「Answer」
リディムの2曲目「Gi Wi De Koole」、
Delroy Wilsonの「Won't You Come Home」
リディムの3曲「Better She Gwan」、
滑らかな早口トースティングの4曲目
「Mock Selassie」まで、時代の空気を感じ
させるトースティングが楽しめるアルバムに
仕上がっています。

ちなみに2006年Tokyo FM出版刊行の本
「Dancehall Reggae Standards」にもこの
アルバムが紹介されていて、そこには
「柏崎」さんという方の文章で、「曲中突然
切り替わる惚けた声や、合間合間に挟み込ま
れるコミカルな節回しは、まさに彼ならでは
の職人芸といった趣き。」といった評価が
書かれています。

Side 1の1曲目は表題曲の「No Problem」
です。
リディムはDon Drummond & Skatalitesの
ヒット曲「Heavenless」です。
軽快なデジタルらしいドラミングから、
ユーモラスささえ感じるラバ・ダブ・
スタイルの掛け合いが楽しい曲です。
アーリー・ダンスホールの掛け合いの楽しさ
も残しながら、あえて無表情なピアノなど、
バックの演奏の工夫も見える曲です。

Peter Metro - No Problem


リズム特集 Heavenless (ヘブンレス)

2曲目は「Green Card」です。
リディムはAlton Ellisの「Mad Mad」。
デジタルを意識してか淡々と弾かれるピアノ
のメロディに、Peter Metroの表情豊かな
トースティングに、あえて入れた賑やかな
歓声という曲です。
賑やかで楽しい曲です。

Peter Metro - Green Card


リズム特集 Mad Mad/Diseases (マッド・マッド/ディジーゼズ)

3曲目は「Yes Daddy」です。
リディムはScrewdriverの「No Mama」。
この曲のみバックをThe Now Teamとが務めて
います。
明るくコロコロ転がるようなメロディに、
Peter Metroのコミカルなトースティングに
少年の声の合いの手。
YouTubeなどを見ると、合いの手を入れて
いるのはJackie Statementという人になって
います。
さらにDiscogsで調べると、Jackie Statement
は83~87年にかけてシングルを7枚出し
ている人(少年ディージェイ?)のようです。
表情豊かなPeter Metroのトースティングが
際立つ曲です。

Yes daddy! - Peter metro & Jackie statement


4曲目は「Rock Yu Buddy」です。
楽しいキーボードのメロディに、表情のある
ラバ・ダブ・スタイルの掛け合いが楽しい曲
です。

Side 2の1曲目は「Can Tan Ya So」です。
こちらもキーボードの刻むリズムに、ラバ・
ダブ・スタイルの息の合った掛け合いが
楽しい曲です。

Peter Metro & Tonto Metro-Cah Tan So


2曲目は「Gi Wi De Koole」です。
リディムはLone Rangerの「Answer」
リディムとして知られている曲で、原曲は
ロックステディの時代のSlim Smithのヒット
曲「Never Let Go」です。
セクシーだったり早口だったりコミカル
だったりと、Peter MetroとTonto Metroの
遊び心たっぷりの息の合ったトースティング
が楽しい曲です。
まさに彼らならではの「芸」を感じる曲
です。

Peter Metro - Gi We Di Koole ( feat. Tanto Metro )


リズム特集 Answer (アンサー)

3曲目は「Better She Gwan」です。
リディムはDelroy Wilsonのロックステディ
のヒット曲「Won't You Come Home」です。
リリカルなピアノのメロディに、Peter
Metroのシッカリと歌い込むようなトース
ティング。
途中にポピュラー曲の「Mr. Lonely」の
レーズを入れ込むなど、遊び心も忘れて
いないのが、いかにもこの人らしいところ
です。

リズム特集 Come Home (カム・ホーム)

4曲目は「Mock Selassie」です。
淡々としたピアノのメロディに、楽し気な
Peter Metroのトースティング。
彼らしい表情豊かなトースティングが魅力。

ざっと追いかけて来ましたが、時にコミカル
だったり早口だったりとサービス精神溢れる
トースティングは、ちょっと好き嫌いが分か
れるところですが、この人の武器であり、
個性なんですね。
この80年代半ばから時代は熱狂的な
デジタルのダンスホールの時代に移って
いきますが、この強い個性のトースティング
で乗り切って行ったのが、このPeter Metro
だったんですね。

ある意味この時代らしい個性的なアルバム
だと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Peter Metro Also Featuring Tonto Metro
○アルバム: No Problem
○レーベル: Power House
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Peter Metro Also Featuring Tonto Metro「No Problem」曲目
Side 1
1. No Problem
2. Green Card
3. Yes Daddy
4. Rock Yu Buddy
Side 2
1. Can Tan Ya So
2. Gi Wi De Koole
3. Better She Gwan
4. Mock Selassie

●今までアップしたTanto Metro & Devonte関連の記事
〇Tanto Metro & Devonte「Everyone Falls In Love」