今回はKing Tubby And The Aggrovatorsの
アルバム

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「Shalom Dub」です。

King Tubbyはルーツの時代から活躍するダブ
のミキサーであり、プロデューサーである人
です。
もともと電気技師だった彼は、ルーツ・
レゲエの時代からミキサーとして活躍し、
ダブの創成期からダブを作った人として知ら
れています。

ダブはルーツ・レゲエが誕生した70年代
初め頃から徐々に作られるようになるのです
が、1973年に一斉にダブのアルバムが
作られた事から一気にひとつのジャンルと
して確立した音楽で、エコーやリバーヴなど
のエフェクトなどを使用して原曲を全く別の
曲に作り変えてしまう手法を指します。

ダブ - Wikipedia

リミックスの元祖とも言われる音楽で、誰が
初めのダブを考案したかかはハッキリとは
解っていないのですが、このKing Tubbyが
ダブという音楽を完成させたと言われてい
ます。
自身のスタジオKing Tubby'sで、助手の
Prince JammyやScientistなどとともに
70年代から80年代にかけて多くのダブの
ミックスを手掛けたのが、このKing Tubby
という人なんですね。

その後も活躍を続けたKing Tubbyでしたが、
1989年に自宅前で何者かに射殺されて
亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

The Aggrovatorsは70年代のルーツ・
レゲエの時代に、プロデューサーのBunny
Leeのハウス・バンドとして活躍した
グループです。
数々の歌手のバック・バンドとして活躍した
ほか、Kingu Tubbyなどのミックスによる
ホーンを中心とした素晴らしいダブアルバム
を多く残しています。

The Aggrovators - Wikipedia

今回のアルバムは1975年にUKのKlik
というレーベルからリリースされた
King Tubby And The Aggrovators名義の
ダブ・アルバムです。

今回のアルバムの特徴は曲のほとんどが
「フライング・シンバル」のビートで作られ
ている事です。
「フライング・シンバル」はドラマーの
Crlton 'Santa' Davisが開発したドラムの
ビートで、「通常はギターやキーボードが
強調する2拍目、4拍目をハイハットの
オープンショットによって強調する奏法」
なんだそうです。

レゲエ音楽の特徴 REGGAE & HEMP & ORGANIC !!!!

1974年から75年の短い間だけ流行した
ビートで、ほぼこのThe Aggrovatorsの専売
特許みたいなビートなんですね。
独特のシャリシャリいうドラムの演奏
(いわゆるドンシャリ)が特徴的なビート
で、短期間で終わったのはちょっと曲調が
似てしまうビートだったからのようです。

今回のアルバムではその「フライング・
シンバル」の代表曲Johnny Clarkeの
「Move Out Of Babylon」のリディムを
使った9曲目「Move Out Of Babylon Dub」
やCornel Campbellの代表曲「Natty Dread
In Greenwich Farm」のリディムを使った
1曲目「Natty Dub」、さらにはソウルの
William DeVaughn のヒット曲「Give The
Little Man A Great Big Hand」のリディム
の10曲目「Give A Little Man A Great
Big Hand Dub」など、この時代らしい
ドンシャリのビートが楽しめるアルバムに
なっています。

手に入れたのはRhino Recordsというレーベル
からリリースされたCDの中古盤でした。

ひとつ残念な事を書いておくと、今回のCD
は音質が悪く、曲によって気になるチリチリ
音がけっこう入ります。
確認していないのではっきりした事は言え
ませんが、今回のアルバムは他にもリイ
シュー・レーベルのJamaican Recordings
からCDが出ているので、そちらの方が
もしかしたら音質が良いかもしれません。

全16曲で収録時間は約43分。
オリジナルのLPも片面8曲ずつの全16曲
だったようです。
したがってボーナス・トラックは無し。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by "The Now Team"
Musicians: The Aggrovators, Sly & Robbie
Engineers: S. Morris, S. Bucknor
Mixing by King Tubby's, Jammy, Professor
Recorded at Channel One & King Tubby's, Jamaica

となっています。

プロデュースは"The Now Team"となっていま
すが、実質的にはBunny Leeのようです。
ミュージシャンはThe AggrovatorsとSly &
Robbieとなっていますが、Sly & Robbieが
本格的にチームとして活動しだすのは80年
頃からなので、これも付け足しか?
ただThe Aggrovatorsのメンバーとして、
Sly DunbarとRobbie Shakespeareも居たもの
と思われます。

ミックスとしてKing Tubby'sとJammy、
Professorの名前があります。
King Tubby'sという呼び方はKing Tubby本人
というよりはスタジオ名を指す呼び方で、
今回のアルバムは必ずしもKing Tubby本人
がミックスしている訳ではないのかも…。
むしろPrince JammyやProfessorといった、
当時のKing Tubby'sのスタッフが中心で、
ミックスしたものかもしれません。

レコーディングはジャマイカのChannel One
とKing Tubby'sで行われています。
おそらくバックの録音がChannel Oneで、声
入れとミックスがKing Tubby'sという使い方
ではないかと思います。

さて今回のアルバムですが、「Bunny Lee
音源」というと近年でも多くリリースされて
いて、例えばThe Aggrovatorsのアルバム
でも昨年2016年にはそのダブをまとめた
コンピの「Dubbing At King Tubby's」が
リリースされているんですね。

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The Aggrovators ‎– Dubbing At King Tubby's (2016)

そういう意味ではこの「フライング・
シンバル」のアルバムも、ちょっと食傷気味
に感じてしまうところもあります。
ただこれだけThe Aggrovatorsや
「フライング・シンバル」の曲が聴かれて
いるのも、元を正せばこのアルバムや同年に
リリースされたTommy McCook And The
Aggravatorsの「Brass Rockers」などの
アルバムがあったからこそなんですね。

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Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators ‎– Brass Rockers (1975)

そうしたアルバムがこのルーツ・レゲエの
時代の、ダブの歴史を作って行ったんです
ね。
そういう意味では今回のアルバムは、聴いて
おくべきオリジナル・アルバムなんだと思い
ます。

実際に今回のアルバムを聴いてみると、これ
がなかなか聴き心地の良いダブで、魅力的な
アルバムなんですね。
多くの販売サイトではこのサウンドを評して
「メロウ」と表現していましたが、全体に
切れ味よりグルーヴ感を重視したとても
心地が良く、聴き飽きないサウンドなんです
ね。

ミックスにPrince Jammyの名前がありました
が、このグルーヴ重視のサウンドはKing
TubbyよりもPrince Jammyの色が強いかなと
いう気がします。
King TubbyやScientistがメリハリの効いた
曲の輪郭を強調したダブを得意としたのに
対して、Prince Jammyは切れ味よりも
グルーヴ重視のダブを作るのがウマい人なん
ですね。
アーティストはKing Tubby And The
Aggrovatorsという名義になっていますが、
どうもPrince Jammyが中心となって作った
ダブのような気がします。

このルーツ・レゲエの時代のダブとして、
ぜひ聴いてもらいたいサウンドです。

Cornel Campbellの代表曲「Natty Dread
In Greenwich Farm」のリディムを使った
1曲目「Natty Dub」から始まり、Johnny
Clarkeの「Move Out Of Babylon」リディム
の9曲目「Move Out Of Babylon Dub」や、
ソウルのWilliam DeVaughn の「Give The
Little Man A Great Big Hand」リディムの
10曲目「Give A Little Man A Great Big
Hand Dub」、Derrick Morgan & Hortense
Ellisの「Feel So Good」リディムの11曲
目「Feel So Good Dub」、B B Seatonの
「I Feel Lost」リディムの15曲目
「Feel Lost Dub」など、この当時大流行
していたフライング・シンバルのビートを
これでもか!というほど詰め込んだアルバム
に仕上がっています。

全曲を時間を短めに処理したのも効果的で、
トータル・アルバムとしても聴き心地良く
作られています。

1曲目は「Natty Dub」です。
リディムはCornel Campbellの名曲「Natty
Dread In Greenwich Farm」です。
印象的のピアノのメロディから、ドンシャリ
の効いたビートに乗せたCornel Campbellの
ヴォーカルが印象的な曲です。

King Tubby & The Aggrovators - Natty Dub


2曲目は「Lee's Dub」です。
ギターとベースを中心としたの心地良い
メロディに乗せたダブです。
ズシッと響くベースが、うまくこの曲の
グルーヴ感を引き出しています。

3曲目は「Wonder Why Dub」です。
リディムはCornell Campbellの「I Wonder
Why」です。
こちらも重いベースとギターを軸とした
ダブ。

4曲目は「I'm Gone Dub」です。
リディムはDerrick Morgan & Hortense Ellis
の「I'm Gone」です。
ギターとベースを軸としたフライング・
シンバルのビートに、Derrick Morganの男
らしいヴォーカルにHortense Ellisの遠く
で聴こえるようなヴォーカル…。
ユッタリとしたリズムに、ダブワイズが
うまくキマった曲です。

5曲目は「Country Boy Dub」です。
リディムはCornell Campbellの「I'm Just
A Country Boy」です。
ギターのメロディにCornell Campbellの
心地良いファルセット、フライング・
シンバルのドンシャリもうまくキマった曲
です。

6曲目は「True Believer Dub」です。
リディムはJohnny Clarkeの「True Believer
In Love」です。
いかにもフライング・シンバルといった
ドンシャリの効いたビートに、ギターの
メロディに乗せたJohnny Clarkeの
ヴォーカルが魅力的なダブです。

True Believer Dub


7曲目は「Care Free Dub」です。
リディムはMighty Diamondsの「Carefree
Girl」です。
「Bunny Lee音源」の中では珍しいMighty
Diamondsとの組み合わせですが、彼らの
ヴォーカルをうまく生かしたフライング・
シンバルのダブに仕上げています。

King Tubby & The Aggrovators - Care Free Dub


8曲目は「Rasta Train Dub」です。
リディムはDerrick Morganの「Reggae
Train」です。
蟻田の印象的なイントロから、フライング・
シンバルと重いベースのリズムを中心とした
ダブです。

9曲目は「Move Out Of Babylon Dub」です。
リディムはJohnny Clarkeの「Move Out Of
Babylon」。
フライング・シンバルの代表曲ともいえる
曲です。
印象的なギターのイントロから、踊りだし
たくなるようなフライング・シンバルの
ビート、Johnny Clarkeのヴォーカルも適度
に入ったダブです。

Move Out Of Babylon Dub


10曲目は「Give A Little Man A Great Big
Hand Dub」です。
リディムはソウル・シンガーWilliam DeVaughn
のヒット曲「Give The Little Man A Great
Big Hand」です。
もろに当時のソウルの曲なのですが、ギター
のメロディにヴォーカル、フライング・
シンバルのビートと、うまくレゲエのフォーム
にはめ込んだダブで、あまり違和感はありま
せん。

King Tubby & The Aggrovators - Give The Little Man A Great Big Hand Dub


11曲目は「Feel So Good Dub」です。
リディムはDerrick Morgan & Hortense Ellis
の「Feel So Good」です。
ピアノとギターのイントロから、Derrick
MorganやHortense Ellisのヴォーカルもうまく
使ったダブに仕上げています。

12曲目は「For The Rest Of My Life Dub」
です。
入っているヴォーカルはCornell Campbellの
ようなのですが、曲目が解りませんでした。
ギターに乗せたフライング・シンバルのダブ。

13曲目は「When Will I Find My Way Dub」
です。
リディムはOwen Grayの「When Will I Find
My Way」です。
エコーの効いたオケにOwen Grayと思われる
ヴォーカル、ドンシャリの効いたビートの
ダブ。

King Tubby & The Aggrovators - When I Will Find My Way Dub


14曲目は「I'm Leaving Dub」です。
リディムはDerrick Morgan & Hortense Ellis
の「I'm Leaving」です。
踊りだしたくなるようなリズムの、ベースの
効いたダブ。

King Tubby and The Aggrovators - Shalom Dub - 14 - I'm Leaving Dub


15曲目は「Feel Lost Dub」です。
リディムはB B Seatonの「I Feel Lost」。
ピアノとギターのメロディによく通る
ヴォーカル、ド・渋なベースのメロディを
軸としたダブです。

King Tubby & The Aggrovators - Feel Lost Dub


16曲目は「Dawn Dub」です。
こちらは原曲が解りませんでした。
数人のヴォーカルとフライング・シンバルが
印象的なダブです。

ざっと追いかけて来ましたが、比較的似た
サウンドになってしまうフライング・
シンバルのビートの曲を、うまくメリハリ
を付けて聴き心地の良いダブに仕上げて
います。
おそらくPrince Jammy(後のKing Jammy)が
中心になって作ったダブではないかと思うの
ですが、グルーヴ感重視のそのサウンドは
聴けば聴くほど惹き込まれて行くものがあり
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: King Tubby And The Aggrovators
○アルバム: Shalom Dub
○レーベル: Rhino Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○King Tubby And The Aggrovators「Shalom Dub」曲目
1. Natty Dub
2. Lee's Dub
3. Wonder Why Dub
4. I'm Gone Dub
5. Country Boy Dub
6. True Believer Dub
7. Care Free Dub
8. Rasta Train Dub
9. Move Out Of Babylon Dub
10. Give A Little Man A Great Big Hand Dub
11. Feel So Good Dub
12. For The Rest Of My Life Dub
13. When Will I Find My Way Dub
14. I'm Leaving Dub
15. Feel Lost Dub
16. Dawn Dub