今回はU-Brownのアルバム

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「You Can't Keep A Good Man Down」です。

U-Brownは70年代のルーツ・レゲエの時代
から活躍したディージェイです。
U Royのフォロワーとして登場した彼は、
70~80年代にかけて様々なサウンド
システムを渡り歩き、活躍した事で知られて
います。

英語のWikipediaのページには彼の経歴と
して、次のような文章が書かれています。

Huford Brown (born 8 June 1956, Kingston, Jamaica), better known by the stage name U Brown,
is a reggae deejay who released eleven albums between 1976 and 1984.
(Huford Brown《1956年6月8日
ジャマイカ、キングストン生まれ》は、
1976年から84年にかけて11枚の
アルバムを残したレゲエ・ディージェイの
U-Brownとして知られています。)

この記述からも彼U-Brownが、70年代後半
のルーツ・レゲエの時代から80年代前半の
アーリー・ダンスホールの時代に活躍した
ディージェイである事が解ります。

U Brown - Wikipedia

今回のアルバムは1978年にジャマイカの
Gorgon Recordsというレーベルから「Weather
Baloon」という別タイトル、別ジャケットで
リリースされた彼のソロ・アルバムです。
その後79年にVirgin傘下のFront Lineから
リリースされる際に、今回のジャケット、
タイトルに変わったようです。

この78年にU-Brownは「Mr. Brown
Something」というアルバムをリリースして
いて、その順序はどちらが先かは解りません
が、今回のアルバムは彼の4枚目か5枚目
にあたるアルバムのようです。

書いたようにU-Brownは76~84年の
9年間に11枚ぐらいのアルバム(Discogs
の記録では10枚)と数多くのシングルを
残していて、そのあたりからもルーツ・
レゲエの後期からアーリー・ダンスホールの
時代に、いかに彼が人気のディージェイ
だったかがうかがえます。
今回のアルバムは、そうした彼のもっとも
旬だった時代のアルバムなんですね。

手に入れたのは2002年にUKのVirgin
レーベルからリリースされた、デジタル・
リマスターされたCDの中古盤でした。

全10曲で収録時間は約33分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by U-Brown
Recorded and mixed at Channel One
Engineer: Crucial Bunny, The Master of them all
Special thanks to the misicians, better known us
The Revolutionaries and We The People Band
Sleeve: Cooke Key

Percussion: Sticky Thompson, Mr. Scully, Sky Juice
Lead Guitar: Dougie Bryan
Piano: Franklyn Waul, Tarzan
Drums: Sly Dunbar, Johnnie Pretty
Bass: Lloyd Parks, Ranchie McLean
Organ: Ansel Collins, Franklyn Waul
Rhythm Guitar: Bingy Bunny, Winston 'Boopee' Bowen
Horne Section: Deadly Headley Bennett, Bobby Ellis, Vin Gordon

となっています。

プロデュースはU-Brownで、レコーディングと
ミックスはChannel Oneで行われ、エンジニア
はCrucial Bunnyで、バックはChannel Oneの
バック・バンドThe Revolutionariesと
We The People Bandが務めています。
たしかWe The People Bandは、ベースの
Lloyd Parksを中心としたバック・バンド
だった記憶があります。

そのThe RevolutionariesとWe The People
Bandのメンバーとして次のような名前があり
ます。
パーカッションにSticky Thompsonと
Mr. Scully、Sky Juice、リード・ギターに
Dougie Bryan、ピアノにFranklyn Waulと
Tarzan、ドラムにSly DunbarとJohnnie Pretty、
ベースにLloyd ParksとRanchie McLean、
オルガンにAnsel CollinsとFranklyn Waul、
リズム・ギターにBingy BunnyとWinston
'Boopee' Bowen、ホーン・セクションに
Deadly Headley BennettとBobby Ellis、
Vin Gordonという布陣です。

ジャケット・デザインは、Cooke Keyという
人?(それとも会社?)が担当しています。
このルーツ期にしてはかなりオシャレな
デザインです。

さて今回のアルバムですが、Lloyd Parks
などによる、重いベースのズシンと腹に響く
サウンドをバックにU-Brownらしい軽快な
トースティングが楽しめるアルバムで、
内容はとても良いです。

このU-Brownですがルーツ期の個性的な
ディージェイたちに較べると、その個性は
ちょっと軽めな印象のディージェイなんです
ね。
そんな彼のライトな個性はへヴィーな
ディージェイが多いルーツ期には逆に
際立っており、またノリが軽くなった
アーリー・ダンスホールでも生き生きと
輝いているんですね。

82年の彼のアルバム「Raver's Party」
は、その彼らしい軽い個性がとてもよく
ハマったアルバムだと思います。

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U-Brown ‎– Raver's Party (1982)

78年の今回のアルバムは、バックの
The RevolutionariesとWe The People Band
の作りだす重いベースを中心としたシンプル
な演奏に、彼らしい軽快なトースティング
が乗った曲が収められたアルバムで、その
聴き心地は重過ぎず軽過ぎずといった印象
で、とても心地良いグルーヴ感を感じる
アルバムに仕上がっています。

1曲目は「Weather Balloon」です。
軽快なホーンとズシンと重いベースの
メロディから、U-Brownの滑らかなトース
ティングが冴える曲です。

U Brown- Weather Balloon


2曲目は「Tie And Dye」です。
リディムはGregory Isaacsの「Storm」と
して知られる曲で、オリジナルはTappa Zukie
の「Oh Lord」。
こちらもホーンセクションの賑やかな
メロディにズンと響くベース、U-Brownの
明るいトースティングが魅力の曲です。

リズム特集 Storm (ストーム)

3曲目は「Step It Inna Freedom Street」
です。
ユラユラとしたピアノと重いベースの
メロディに、U-Brownの語るようなトース
ティング。
こちらもベースが、ガシッと心に食い込む
ような曲です。

U Brown - 1978 - Weather Baloon A3 step inna freedom street


4曲目は「Wicked Have To Run」です。
ギターとベースを中心としたメロディに、
U-Brownの滑らかなトースティングという、
文字通りウィキッドな1曲。

5曲目は「Hiding Place」です。
リディムはKen Parkerの「I Can't Hide」。
こちらもベースとピアノのメロディに、
U-Brownらしい滑らかなトースティングと
いう組み合わせ。
ダブワイズもほど良く効いています。

U Brown - 1978 - Weather Baloon A5 hiding place


6曲目は「Step It Inna Greenwich Farm」
です。
こちらもベースを中心とした心地良いリズム
に、流れるように流ちょうなU-Brownの
トースティングという曲です。

7曲目は「Blow Brother Joe」です。
リディムはジャズのDave Brubeckの名曲
「Take Five」です。
こちらもズシッとしたベースを軸に、
サックス(Deadly Headleyか?)の心地良い
響きに乗せたU-Brownのトースティングが
すごく魅力的。
重過ぎず軽過ぎずの彼のトースティングが
生きた、このアルバムの中でも白眉な1曲
です。

U Brown - 1978 - Weather Baloon B2 blow brother joe


8曲目は「Row Mr. Fisherman」です。
こちらはギターとベースのメロディを中心
に、U-Brownのトースティングが冴える曲
です。

U Brown - Row Fisherman Row


9曲目は表題曲の「Can't Keep A Good Man
Down」です。
こちらもベースとギターのメロディに、
流れるように滑らかなU-Brownのトース
ティングが見事な曲です。

U Brown - 1978 - Weather Baloon B4 cant keep a good man down


10曲目は「Trad Along Jah」です。
オルガンとベース、ギターのメロディに、
ちょっとトボケた味わいのU-Brownの
トースティングが良い味を出しています。

ざっと追いかけて来ましたが、ベースを軸と
したバックの演奏はうまくこのディージェイ
のライトな個性を引き立てています。
それに応えるようなU-Brownのトース
ティングも見事で、地味になりがちな演奏に
明るくひと華を添えており、結果すごく
渋くてカッコいいアルバムに仕上げていま
す。

すごくタイトで微妙なヴァランスの上に
成り立っている今回のアルバムですが、
このあたりはエンジニアのCrucial Bunny
の力も大きいのかもしれません。
このシッカリした音作りは、一聴の価値あり
です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: U-Brown
○アルバム: You Can't Keep A Good Man Down
○レーベル: Virgin
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○U-Brown「You Can't Keep A Good Man Down」曲目
1. Weather Balloon
2. Tie And Dye
3. Step It Inna Freedom Street
4. Wicked Have To Run
5. Hiding Place
6. Step It Inna Greenwich Farm
7. Blow Brother Joe
8. Row Mr. Fisherman
9. Can't Keep A Good Man Down
10. Trad Along Jah

●今までアップしたU-Brown関連の記事
〇U Brown「Repatriation」
〇U Brown「Superstar」
〇U Brown「Train To Zion [1975-1978]」
〇U-Brown「Raver's Party」