今回はHugh Mundellのアルバム

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「Mundell」です。

Hugh MundellはAugustus Pabloの元から
78年に「Africa Must Be Free By 1983」
で衝撃的なデビューを飾ったラスタ・
シンガーです。

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Hugh Mundell - Africa Must Be Free By 1983 + Dub

80年に「Time & Place」とLacksley Castell
とのアルバム「Jah Fire」、82年に
「Mundell」というアルバムを残しています。
またJah Leviというディージェイ名で、数枚
のシングルも残しています。

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Hugh Mundell ‎– Jah Fire (1980)

しかし83年に銃弾に倒れて、21歳で亡く
なっています。
短い生涯の夭折のシンガーながら、人々の
記憶に強く残る歌を残したのがこのHugh
Mundellというシンガーです。

天才ルーツ・シンガー、ヒュー・マンデル(Hugh Mundell)の生涯

Hugh Mundell - Wikipedia

今回のアルバムは1982年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされた
Hugh Mundellの生前最期のソロ・アルバム
です。

Augustus Pabloの教え子でルーツ・シンガー
として知られるHugh Mundellですが、今回
のアルバムではVolcanoレーベルのHenry
'Junjo' Lawesがプロデュースし、ミックス
はScientist、バックはRoots Radicsという
作品で、この80年代前半のアーリー・
ダンスホールの時代をけん引した面々が
揃ったアルバムとなっています。

Flabbaの重いベースのサウンドを中心に、
名サックス・プレイヤーDeadly Headleyの
サックスやGladstone Andersonのピアノなど
がうまく味付けをしたRoots Radicsらしい
演奏に、Hugh Mundellらしい陰影のある
ヴォーカルがうまく絡み合ったアルバムで、
まだ歌詞やサウンドに幾分ルーツの香りを
残しながらもシッカリと時代にも対応した、
Hugh Mundellの個性が光るアルバムになって
います。

手に入れたのはGreensleeves Recordsから
リリースされたCDの中古盤でした。
オリジナル8曲にプラスして、CDボーナス・
トラック4曲が追加されたアルバムです。
なお曲順もオリジナル・アルバムとはだいぶ
変わっているようです。
(最後にオリジナルの曲順も表記して
います。)

全12曲で収録時間は約53分。
オリジナルは8曲で、残りの4曲はCD
ボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All tracks written by H. Mundell / H. Lawes

Produced by: Henry 'Junjo' Lawes
Recorded at: Channel One
Mixed by: Scientist at King Tubby's
Backed by: Roots Radics
Bass: Errol 'Flabba' Holt
Drums: Lincoln Valentine 'Style' Scott
Organ: Winston Wright
Piano: Gladstone Anderson
Lead Guitar: Winston 'Bo Peep' Bowen
Rhythm Guitar: Noel 'Sowell' Bailey
Percussion: Chris 'Sky Juice' Blake, Noel 'Scully' Simms
Saxophone: Felix 'Deadly Headley' Bennett
Trombone: Ronald 'Nambo' Robinson

Photos: Roger Cracknell
Design: Tony McDermott

となっています。

すべての曲の作曲はH. MundellとH. Lawes。

プロデューサーはHenry 'Junjo' Lawesで、
録音はChannel Oneで行われ、ミックスは
King Tubby'sに在籍していたScientistが
行っており、バック・バンドはRoots Radics
が担当しています。

メンバーはベースにErrol 'Flabba' Holt、
ドラムにLincoln Valentine 'Style' Scott、
オルガンにWinston Wright、ピアノに
Gladstone Anderson、リード・ギターに
Winston 'Bo Peep' Bowen、リズム・ギター
にWinston 'Bo Peep' Bowen、パーカッション
にChris 'Sky Juice' BlakeとNoel 'Scully'
Simms、サックスにFelix 'Deadly Headley'
Bennett、トロンボーンにRonald 'Nambo'
Robinsonという布陣です。

写真撮影はRoger Cracknell、アルバムの
ジャケット・デザインはこの時代の
Greensleeves Recordsのジャケット・
デザインを多く担当しているTony McDermott
が担当しています。

注目すべきはその写真で、彼Hugh Mundell
のすごくオシャレな若者らしい姿が映し
出されています。
この容姿にはルーツの時代とは違う、明らか
なダンスホールの空気があるんですね。

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裏ジャケ

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表ジャケ裏側

さて今回のアルバムですが、Hugh Mundell
というとどうしてもAugustus Pabloの子飼い
のシンガーというイメージが強く、ルーツ・
レゲエというイメージが付きまとう人です
が、彼はJah Leviというディージェイも
やっていたりして、当時の若者らしい一面も
持ち合わせていた人なんですね。
そうした彼も当然のことながら当時流行して
いた、アーリー・ダンスホール・レゲエには
興味があったと思います。
そして作られたのが今回のアルバムで、
当時アーリー・ダンスホールをけん引して
いたVolcanoレーベルのHenry 'Junjo' Lawes
がプロデュースし、ミックスはScientist、
バックはRoots Radicsというアルバムは、
彼Hugh Mundell自身もかなり期待して制作
したアルバムではないかと思われます。

結果的に見るとまだかなりルーツ色の強い
アルバムですが、それはこのHugh Mundell
の声質が関係しているかもしれません。
ただその憂いを含んだヴォーカルは、この
アーリー・ダンスホールの湿った空気感とも
マッチして、すごく魅力的です。
Hugh Mundellの今後に賭ける意欲が感じ
られるアルバムで、内容はとても良いと思い
ます。
やはりこの1年後に彼が命を失ったのは
とても残念な事だったのだと、あらためて
思います。

Felix 'Deadly Headley' Bennettの「泣き
のサックス」と絡み合うHugh Mundellの
ヴォーカルが見事な1曲目「Rasta Have The
Handle」から始まり、Roots Radicsらしい
Flabba Holtの重いベースとDeadly Headley
のサックスがヴォーカルを盛り上げる2曲目
「Tell I A Lie」、伸びのあるヴォーカルが
印象的な4曲目「Red Gold & Green」、
華やかなホーンのワン・ドロップに乗せた
6曲目「Jah Music」、ホーンとベースの
メロディに乗せた7曲目「Jacqueline」
など、ベースとするルーツの香りを残し
ながらも、新しいダンスホールという音楽
に挑戦しようという意欲を感じさせる
アルバムに仕上がっています。

ちなみにこのアルバムはシンコー・ミュー
ジック刊行の本「Roots Rock Reggae」にも
紹介されているアルバムで、そこには「林」
さんという方の文章で、「タイトにおちる
ワン・ドロップ・スタイルに乗って歌う
『Red Gold & Green』等々バックは変われど
メッセージは一つ、そんな好盤。」と書かれ
てます。

1曲目は「Rasta Have The Handle」です。
名サックス・プレイヤーDeadly Headleyの
味のあるサックスに、絡みつくような
Hugh Mundellのヴォーカルがすごく魅力的
です。
この時代らしいワン・ドロップのリズムも、
難なく乗りこなしています。

Hugh Mundell- Rasta Have The Handle-


2曲目は「Tell I A Lie」です。
こちらも勢いのあるサックスノントロから、
重いFlabbaのベースとサックスの作りだす
ダンスホールらしいメロディに、Hugh Mundell
の憂いを秘めたヴォーカルがさらに魅力を
プラスしています。

Hugh Mundell-Tell I A Lie


3曲目は「24 Hours A Day」です。
ベースとキーボードを軸としたシブい演奏に、
Hugh Mundellらしい伸びのあるヴォーカルが
魅力的な曲です。

4曲目は「Red Gold & Green」です。
ピアノとホーンの奏でるワンドロップの
メロディに、Hugh Mundellの落ち着いた
伸びのあるヴォーカルが魅力的。

Hugh Mundell - Red Gold And Green


5曲目は「Going Places」です。
Roots Radicsらしいベースとドラムを中心
としたワン・ドロップに、スッと入って来る
Hugh Mundellのヴォーカルがすごく良い
です。
ヘヴィー目のミックスはいかにもScientist
らしいところ。

6曲目は「Jah Music」です。
華やかなホーン・セクションのイントロ
から、Hugh Mundellの明るい表情の
ヴォーカルが魅力の曲です。

Hugh Mundell - Jah music


7曲目は「Jacqueline」です。
ユッタリとしたホーンのワン・ドロップに、
Hugh Mundellらしい憂いを含んだヴォーカル
が魅力的。

Hugh Mundell - Jacqueline (Disco Mundell 1982)


8曲目は「Your Face Is Familiar」です。
デジタルな効果音のイントロから、ベースと
ギターを軸とした演奏に、Hugh Mundellの
語るようなヴォーカルが魅力的。
彼らしいリリックを感じる曲です。

hugh mundell - your face is familiar (1982)


残りの4曲はオリジナルにはない、CD
ボーナス・トラックです。
7曲目「Jacqueline」のダブ11曲目
「Jacqueline Dub」や、1曲目「Rasta Have
The Handle」のダブ12曲目「Rasta Have
The Handle Dub」など、このアルバムのダブ
が2曲収められているのが嬉しいところ。
特に12曲目「Rasta Have The Handle Dub」
は、'Deadly Headley' Bennettのサックスの
素晴らしさが解る楽曲で、おススメです。
ここでは1曲1曲の説明は割愛します。

ざっと追いかけて来ましたが、Hugh Mundell
の生前最期のアルバムですが、内容は悪く
ないと思います。

彼がこのまま生き続ければ、もっとビッグな
シンガーになっていたかもしれません。
それを思うとまだ21歳というとても若い
年齢で亡くなってしまったのが、とても惜し
まれます。
ただ彼が残した3枚と半分のオリジナル・
アルバムは、今も宝石のようにキラキラと
輝いているんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Hugh Mundell
○アルバム: Mundell
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Hugh Mundell「Mundell」曲目
1. Rasta Have The Handle
2. Tell I A Lie
3. 24 Hours A Day
4. Red Gold & Green
5. Going Places
6. Jah Music
7. Jacqueline
8. Your Face Is Familiar
(CD Bonus Tracks)
9. Walk With Jah
10. Can't Pop No Style
11. Jacqueline Dub
12. Rasta Have The Handle Dub

(オリジナル・アルバム曲順)
Side 1
1. Jacqueline
2. Rasta Have The Handle
3. Going Places
4. Red Gold And Green
Side 2
1. Tell I A Lie
2. 24 Hours A Day
3. Jah Music
4. Your Face Is Familiar

●今までアップしたHugh Mundell関連の記事
〇Hugh Mundell Featuring Lasky Castel & Augustus Pablo「Jah Fire」
〇Hugh Mundell, Augustus Pablo「Africa Must Be Free By 1983 / Africa Must Be Free By 1983 Dub」
〇Hugh Mundell「Arise」
〇Hugh Mundell「The Blessed Youth」
〇Hugh Mundell「Time And Place」