今回はDillingerのアルバム

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「Ready Natty Dreadie」です。

Dillingerはルーツ・レゲエの時代から活躍
するディージェイです。
ディージェイを始めた当初は「ヤング・
アルカポーン」と名乗るほど、当時の人気
ディージェイDenis Alcaponeに憧れていた彼
でしたが、プロデューサーのLee Perryに
「お前はヤング・アルカポーンじゃない!
Dillingerだ!」と言われ改名しています。
その後も「Cocaine In My Brain」などの
数々のヒットを飛ばし、独特のステッパーズ・
スタイルのトースティングで人気を博した
のが、このDillingerというディージェイ
です。

アーティスト特集 Dillinger (ディリンジャー)

今回のアルバムは1975年にStudio One
レーベルからリリースされたDillingerの
ファースト・アルバムです。

スカ→ロックステディ→レゲエとジャマイカ
の音楽界をリードしてきたStudio Oneですが、
70年代も半ばを過ぎるとChannel Oneなど
他のレーベルの台頭によって、その勢いにも
陰りが見え始めます。
その要因のひとつが主催者C.S. Doddの金払い
の悪さだと言われています。
スカ→ロックステディ→初期レゲエの頃まで
は、ジャマイカではこのStudio OneとDuke
Reidの主催するTrssure Isleが2大レーベル
として君臨していて、歌手としてデビュー
するにはその2つしか選択肢がなかったん
ですね。
ところがレゲエが世界的に認められてくると、
他のレーベルも力を付けて競争が激しくなる
んですね。
そういう状況で金払いの悪いStudio Oneは、
徐々にミュージシャンから見限られて行く
んですね。
70年代半ば以降はそうした状況にC.S. Dodd
も情熱を失って、エンジニアのSylvan Morris
(Dub Specialist)にほとんどの仕事を任せて
いたと言われています。

ただ「レゲエのモータウン」とまで言われた
Studio Oneには、それまでに録り貯めした
たくさんの素晴らしい音源があったんですね。
Sylvan Morrisはその音源を使ってDub
Specialist名で素晴らしいダブを作ったり、
多くのミュージシャンのプロデュースをして
いるんですね。
(プロデューサー名はC.S. Doddになって
いても、実際にはSylvan Morrisがプロ
デュースをしていたようです。)

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムもそうしたStudio Oneの
ロックステディの時代などの過去の豊富な
音源を使ったアルバムで、古い名曲の音源と
当時旬だったDillingerのルーディな
トースティングが楽しめるアルバムになって
います。

初期レゲエの頃のThe Madladsのヒット曲
「Ten To One」を使った「Natty Ten To
One」や、The Heptonesのロックステディの
ヒット曲「Pretty Looks Isn't All」、
Roy Richardsの「Freedom Blues」リディム
の表題曲「Ready Natty Dradie」、Sound
Dimensionの「Real Rock」リディムの
「Fountain On The Mountain」、同じく
Sound Dimensionの「Full Up」リディムの
「Jamaican Collie」など、おそらくこの
時代でもちょっと懐かしいリディムに、若く
荒々しいDillingerののトースティングと
いう組み合わせがなかなか魅力的なアルバム
です。

手に入れたのはStudio Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。
ジャケットは擦れて汚れてしまっていて、
レコード盤の跡がハッキリと残っている
ようなアルバムでした。

ちなみに曲順の表記が裏ジャケに書かれて
いるものとレコード盤に書かれているもの
とで違っています。
裏ジャケで書かれているSide 1の曲目が
LPの盤面ではそっくりSide 2の曲目に
なっていて、裏ジャケのSide 2の曲目が
盤面ではそっくりSide 1の曲目の曲目に
なっています。
要するにSide 1とSide 2が逆になっている
んですね。
どちらが正しいかは解りませんが、ここでは
販売サイトなどの表記に合わせて、裏ジャケ
の表記で話を進めます。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

All Songs Published by Jamrec Music
Recorded at Jamaica Recording & Publishing Studio Ltd.
Produced by C.S. Dodd
Manufuctured by Jamaica Recording Mfg. Co. Ltd.

という記述があります。

さて今回のアルバムですが、Studio Oneの
過去の名リディムをバックに聴かせる
Dillingerのルーディなトースティングは
若いエネルギーを感じさせ、なかなか魅力
的です。
この時点で彼らしいステッパーズ・スタイル
はまだ完成していない印象ですが、むしろ
その完成していないラフさがかえって魅力的
に感じてしまうんですね。

またこのStudio Oneの古い音源を使った
70年代後半の作品群は、古く懐かしい音源
でありながらどこか新しい、不思議な魅力が
あるサウンドなんですね。

初期レゲエの時代のThe Madladsの「Ten To
One」のリディムを使った「Natty Ten To
One」から始まり、ロックステディの時代の
The Heptonesのヒット曲「Pretty Looks
Isn't All」リディムの「Babylon Bridge」、
Sugar Minottの「Vanity」リディムとして
知られる「Dub Them Rasta」、Horace Andyの
「Fever」リディムの「Babylon Fever」、
Roy Richardsの「Freedom Blues」リディム
の表題曲「Ready Natty Dradie」、Sound
Dimensionのロックステディの名リディム
「Real Rock」を使った「Fountain On The
Mountain」、Stranger Cole & Lester
Sterlingの「Bangarang」リディムを使った
「Leave The Area」、Sound Dimensionの
「Mojo Rock Steady」リディムの「Set Jah
Jah Children Free」、こちらもSound
Dimensionの名リディム「Full Up」を使った
「Jamaican Collie」、そして再びRoy
Richardsの「Freedom Blues」リディムの
「Killer Man Jaro'」と、昔濃厚なグルーヴ
感を持ったリディムに、キリっとした
Dillingerのトースティングがすごく似合って
います。

名前がありませんがこうしたサウンドを
作ったエンジニアのSylvan Morris(Dub
Specialist)の存在は、やはり高く評価
しなければなりません。
このアルバムが後期のStudio Oneを飾る
素晴らしいアルバムである事は否定が出来ま
せん。

ちなみにこのアルバムはシンコー・ミュー
ジック刊行の本「Roots Rock Reggae」にも
紹介されているアルバムで、そこには「武田」
さんという方の文章で、「『Real Rock』や
『Freedom Blues』『Full Up』とさすがの
クラシック・リディム連発で色彩も豊か。
肩肘張らない都市のラスタ、それが
ロッカーズ。」と書かれています。

Side 1の1曲目は「Natty Ten To One」
です。
リディムは初期レゲエの頃のThe Madladsの
ヒット曲「Ten To One」。
Studio Oneらしい濃厚なホーンのメロディ
に、Dillingerらしいルーズなトースティング
が魅力的な曲です。

Ranking Dillinger - Natty Ten to One (10 to 1)


2曲目は「Babylon Bridge」です。
リディムはロックステディの時代の
The Heptonesのヒット曲「Pretty Looks
Isn't All」です。
こちらも濃厚なホーンのメロディに、勢いの
あるDillingerのトースティングが良い味を
出している曲です。

Dillinger - Babylon Bridge


3曲目は「Dub Them Rasta」です。
リディムはSugar Minottの「Vanity」
リディムとして知られている曲で、
オリジナルはAlton Ellisの「I'm Just A
Guy」です。
ユッタリしたリズムに乗せた、Dillinger
の余裕のあるルーディ―なトースティング
が素晴らしい曲です。

Dillinger - Dub Them Rasta


リズム特集 I'm Just A Guy (アイム・ジャスト・ア・ガイ)

4曲目は「Babylon Fever」です。
リディムはHorace Andyの「Fever」。
ジャマイカの熱気を感じさせるようなギター
の忙しないリズムに、ノリの良いDillinger
のトースティングが心地良い1曲。

5曲目は表題曲の「Ready Natty Dreadie」
です。
リディムはRoy Richardsの「Freedom
Blues」。
ノリの良いリズムに浮遊感のあるオルガン
のメロディ、たたみかけるようなDillinger
のトースティングの曲です。

Dillinger - Ready Natty Dreadie - 08 - Natty Kung Fu


リズム特集 Freedom Blues (フリーダム・ブルース)

Side 2の1曲目は「Fountain On The
Mountain」です。
リディムはSound Dimensionのロック
ステディのヒット曲「Real Rock」です。
心地良いリズムにホーンの濃厚なメロディ、
合間良く入るオルガン、良い雰囲気の
Dillingerのルーズなトースティングが
うまくハマっています。

Dillinger ♬ Fountain On The Mountain (1975)


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

2曲目は「Leave The Area」です。
リディムはStranger Cole & Lester
Sterlingの「Bangarang」。
明るいホーンを中心としたメロディに、
落ち着いたDillingerのトースティング。

3曲目は「Set Jah Jah Children Free」
です。
リディムはSound Dimensionの「Mojo Rock
Steady」。
こちらも心地良いリズムに乗せたホーンの
濃厚なメロディ。
自由度のあるDillingerのトースティング
がこの曲をより魅力的にしています。

Dillinger - Set Jah Jah Children Free (1975)


4曲目は「Jamaican Collie」です。
リディムはJackie Mittoo & Sound Dimension
の「Full Up」。
心地よいギターのメロディからオルガン、
ホーンと、ボリューム・アップして行く
メロディに、「吸引音」も入れたDillinger
のリラックスしたトースティング。

Dillinger - Jamaican Collie


リズム特集 Full Up (フル・アップ)

5曲目は「Killer Man Jaro'」です。
こちらも表題曲と同じ、Roy Richardsの
「Freedom Blues」リディムの曲のよう
です。
刻むようなリズムに乗せた、Dillingerの
余裕のある楽し気なトースティングが
印象的。

ざっと追いかけて来ましたが、だいぶ勢い
を失っていたとはいえ、やはりStudio One
の豊富な音源は、ミュージシャン、特に
ディージェイには魅力的なものがあったと
思います。
Dillingerにとってこのデビュー・アルバム
は、やはり恵まれたスタートだったと言える
でしょう。
彼はこの後もステップ・アップしていきます
が、このデビュー・アルバムに溢れる
初々しい空気感はやはりとても魅力的です。

初めの頃のルーツ・ディージェイのトース
ティングがタフでウィキッドだったとする
と、それを追う彼のトースティングはとても
ソリッドでルーディ、つまり一言で言えば
とてもカッコいいんですね。
彼の作り出す世界が、ディージェイという
音楽をさらに魅力的にした事は間違いあり
ません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Dillinger
○アルバム: Ready Natty Dreadie
○レーベル: Studio One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○Dillinger「Ready Natty Dreadie」曲目
Side 1
1. Natty Ten To One
2. Babylon Bridge
3. Dub Them Rasta
4. Babylon Fever
5. Ready Natty Dreadie
Side 2
1. Fountain On The Mountain
2. Leave The Area
3. Set Jah Jah Children Free
4. Jamaican Collie
5. Killer Man Jaro'