今回はThe Mighty Diamondsのアルバム

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「Stand Up To Your Judgement」です。

The Mighty Diamondsは70年代のルーツ・
レゲエの時代から80年代のダンスホールの
時代に活躍したコーラス・グループです。
リード・ヴォーカルのDonald 'Tabby' Shawを
中心にコーラスのLloyd 'Judge' Fergusonと
Fitzroy 'Bunny' Simpsonからなる3人組の
グループで、1976年にアルバム「When The
Right Time Come (I Need A Roof)」で
The Revolutionarieの攻撃的なミリタント・
ビートと美しいコーラスでデビューし、その
後も活躍を続けたコーラス・トリオとして
知られています。

アーティスト特集 Mighty Diamonds (マイティ・ダイアモンズ)

今回のアルバムは1978年にジャマイカの
Channel Oneレーベルからリリースされた、
彼らのサード・アルバムです。

76年にファースト・アルバム「When The
Right Time Come」でThe Revolutionaries
の攻撃的なミリタント・ビートをバックに
打つ尽くしいコーラス・ワークを武器に
衝撃的なデビューを飾った彼らですが、
セカンド・アルバム「Ice On Fire」は
ニューオーリンズのミュージシャンをバック
とした意欲作でしたが思うような成果が
上げられず、再び原点に戻ってChannel One
のThe Revolutionariesをバックに作り上げ
たのが今回のアルバムです。

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The Mighty Diamonds ‎– When The Right Time Come (I Need A Roof) (1976)

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Mighty Diamonds ‎– Ice On Fire (1977)

今回のアルバムでもThe Revolutionaries
メリハリの効いた演奏をバックに、彼らの
美しく強靭なコーラス・ワークは健在で、
代表作のひとつ「Back Whey」や、ソウルの
The Stylisticsのヒット曲「Country Living」
など、彼ららしいコーラス・ワークが楽し
めるアルバムに仕上がっています。
このMighty Diamondsはレゲエのコーラス・
グループの中でも特に多くのアルバムを
残しているグループですが、彼らの快進撃は
このアルバムから始まったと言えるかもしれ
ません。

手に入れたのはChannel Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Songs Composed by: F. Ferguson, D. Shaw, F. Simpson
Lead Vocals: F. Ferguson, D. Shaw
Harmonies: F. Ferguson, D. Shaw, F. Simpson

Special Thanks to Following Musicians:
Drums: Sly, Santa
Percussions: Sticky, Scully, Barnabas
Bass: Ranchie, Robby
Lead Guitar: Duggie, Chinna
Rhythm Guitar: Tony, Robby
Keyboards: Ansel Collins, Touter, Ossie
Hornes: T. McCook, Don D. Junior, Marques

Recorded at Channel One Recording Studio
Remixed at Channel One Recording Studio
Engineered by: E. Hoo Kim, L. McKenzie
Produced by: J. Hoo Kim

となっています。

作曲はF. FergusonとD. Shaw、F. Simpsonの
Mighty Diamondsの3人で、リード・ヴォーカル
はF. FergusonとD. Shaw、ハ-モニーは
F. FergusonとD. Shaw、F. Simpsonの3人で
とっています。

参加したミュージシャンはドラムにSly Dunbar
とCarlton 'Santa' Davis、パーカッションに
StickyとScully、Barnabas、ベースにRanchie
McLeanとRobbie Shakespere、リード・ギター
にDuggie BryanとEarl 'Chinna' Smith、
リズム・ギターにTony ChinとRobby (Robbie
Shakespere)、キーボードにAnsel Collinsと
Touter Harvey、Ossie Hibbert、ホーンに
Tommy McCookとDon D. Junior (Vin Gordon)、
Marquesという布陣です。
Channel Oneの録音なので、バックは当然
The Revolutionariesと考えられます。

レコーディングとリミックスはChannel One
Recording Studioで行われ、エンジニアは
Ernest Hoo KimとL. McKenzie、プロデュース
はJoseph Hoo Kimとなっています。

面白い漫画のイラストですが、残念ながら
作者の名前がありません。
イラストには機関銃を持って気勢を上げる
6人の人物が描かれていて、左上の人物
には「Death To The Capitalism(資本主義
に死を!)」、真ん中上の人物には「Death
To The English Colonialists(英国の植民地
主義者に死を!)」、右上の人物には「Death
To The Traitors(裏切り者に死を!)」、
左下の人物には「Death To Yankee
Imperialists(ヤンキーの帝国主義者に死
を!)」、真ん中下の人物には「Death To
The Madists(マッディスト《狂人?》に
死を!)」、そして右下の涙を流す人物には
「Death...(死んだ…)」というオチまで
付いています。
当時のMighty Diamondsの勢いを感じさせる
イラストで、ちょっと面白いところ。

さて今回のアルバムですが、Mighty Diamonds
の彼らならではのコーラス・ワークが堪能
できるアルバムで、内容は悪くないと思い
ます。

ただ初めに聴いた時には「あれっ!?」と
思うほどに抵抗なく音が入って来て、素通り
してしまうほどに手応えがないアルバムに
感じました。
それは何故か?と考えてみると、Mighty
Diamondsのソウル・グループも顔負けの
レゲエでは珍しいほどの美しく強靭な
コーラス・ワークと、ミキサーのErnest Hoo
Kimの余分なものを一切排したストイック
過ぎるほどのミックスに原因があるよう
です。
彼らの作り出すあまりに美しくストイックな
楽曲はあまりにも抵抗がなく、ともすると
耳を素通りしてしまう程なんですね。

レゲエにその垢抜けないガサッとした
コーラス・ワークで心に引っかかるコーラス・
グループというのは数多くあるけれど、彼ら
の作りだす世界はその真逆で、あくまで
美しくソウル・グループも顔負けの強靭な
コーラス・ワークが彼らの武器なんですね。
そのコーラスは必ずしもファースト・
インプレッションは強くはないけれど、
ハマれば抜け出せなくなるような強烈な魅力
があります。
彼らがセカンド・アルバムでニューオリンズ
に呼ばれたのも、ソウルの本場アメリカも
認めたほどのコーラス・ワークがあったから
なんですね。
今回のアルバムでもそのコーラス・ワークの
素晴らしさは健在で、随所に彼らならではの
魅力が感じられます。

また彼らの魅力をうまく引き出しているのが
ミキサーのErnest Hoo Kimの存在で、この
Channel One時代の楽曲がMighty Diamonds
のアルバムの中でも高く評価されるのは、
彼の余分なものは付け足さないストイックな
ミキシングの力が大きいんですね。
彼は中国系ジャマイカ人ですが、その感性は
ちょっと東洋的で、他の黒人のサービス精神
溢れるミキシングとはちょっと個性が違うん
ですね。

特に今回のアルバムはファースト・アルバム
で聴かれたようなThe Revolutionariesの
勢いのあるミリタント・ビートは若干抑え目
で、Mighty Diamondsを立てたソフトなバック
の演奏が多いんですね。
その為ファーストと較べても、インパクトが
若干弱く感じてしまうんですね。
ただそのストイック過ぎるミックスはやはり
際立っており、この70年代後半のルーツ・
レゲエの時代はやはりこのChannel Oneの時代
と言えると思います。
そのこのChannel Oneの時代を作ったグループ
のひとつが、このMighty Diamondsであった事
は、否定のしようがありません。

今回のアルバムはそうしたMighty Diamonds
とErnest Hoo Kimのコラボしたアルバムで
あり、若干ファースト・インプレッションの
弱いものの、聴き込めば聴き込むほど引き
込まれて行くアルバムになっています。

1曲目の彼ららしいコーラス・ワークの
「Ja Will Work It Out」から始まり、
ロックステディのThe Techniquesの「I'm In
The Mood For Love」リディムのヒット曲
「Just Another Man」、The Melodiansの
「Everybody Bawling 」リディムの
「Payaka」、そして硬派なメッセージの
表題曲「Stand Up To Your Judgement」、
「マフィアのクソ野郎失せろ!」と元気の
良い代表曲「Back Whey」、ソウルの人気
グループThe Chi Litesのヒット曲「Stoned
Out Of My Mind」、こちらもソウルの
The Stylisticsのヒット曲「Country Living」
など、うまく60年代後半のロックステディ
のリディムやソウルのカヴァー曲を織り交ぜ
ながら、その上に彼らの個性をうまく上書き
したアルバムで、聴けば聴くほど惹き込まれ
て行くアルバムに仕上がっています。

ちなみに今回のアルバムはシンコー・
ミュージック刊行の本「Roots Rock Reggae」
にも紹介されているアルバムで、そこには
「武田」さんという方の文章で、最後の
ソウル・カヴァーの2曲について「こういう
完璧なメロウネスもゲットー・ライフの
オアシスとして必要とされていたはず。」と
書かれています。

Side 1の1曲目は「Ja Will Work It Out」
です。
ホーンのイントロからいきなりスッと入る
ヴォーカル、追いかけるようなコーラスと、
彼ららしいコーラス・ワークが楽しめる曲
です。
ドラムを中心とした切れ味のあるバックも
グッド。

The Mighty Diamonds - Jah Will Work It Out (1978)


2曲目は「Just Another Man」です。
リディムはThe Techniquesのロックステディ
のヒット曲「I'm In The Mood For Love」
です。
印象的な高音を生かしたシンセ(?)に、
Mighty Diamondsらしいコーラス・ワークが
うまく絡んだ曲です。
こうしたロックステディの曲のさばき方の
ウマさも、彼らの特徴のひとつ。

Mighty Diamonds ~ Just Another Man


リズム特集 Mood For Love (ムード・フォー・ラブ)

3曲目は「Payaka」です。
リディムはThe Melodiansのロックステディ
のヒット曲「Everybody Bawling」です。
こちらもキーボードの奏でるロックステディ
のメロディを、彼ららしいコーラス・ワーク
でうまくさばいています。

4曲目は「Cho Me Brethren」です。
明るいキーボードのメロディに、彼ららしい
ヴォーカルとコーラス・ワーク。
疾走感と切れ味のある演奏が、曲をうまく
盛り上げています。

5曲目は表題曲の「Stand Up To Your
Judgement」です。
ホーンに乗せたソフトなコーラスに、彼ら
らしい反骨のメッセージを盛り込んでいる
のもこの時代の特徴です。
一見癒しの曲のようにメロウでありながら
それでいて鋼鉄のようにハード、それがこの
時代の彼らの魅力なんですね。

Mighty Diamonds - Stand Up To Your Judgement


Side 2の1曲目は「I Want To Know」です。
こちらは陰影のあるピアノのメロディから、
ファルセットなコーラスからヴォーカルと、
彼ららしいスキルを生かしたリリカルな曲
です。
ちょっと悲し気なメロディに乗せるコーラス
は、彼らにしか出せない魅力があります。

The Mighty Diamonds - I Want To Know - (Stand Up To Your Judgment)


2曲目は「Fools Rush In」です。
こちらもリリカルなピアノにファルセット
を生かしたコーラス・ワーク。
リード・ヴォーカルのファルセットも魅力的。

3曲目は「Back Whey」です。
この時代の彼らの代表曲のひとつです。
切れ味のある演奏に、「マフィアのクソ野郎!
失せやがれ!」と美しいコーラス・ワークで
歌うところが面白い、彼らの心意気が伝わる
1曲です。

Back Weh Mighty Diamonds


4曲目は「Stoned Out Of My Mind」です。
ソウル・グループThe Chi Litesの名曲の
カヴァーです。
レゲエらしい切れ味とグルーヴ感のある演奏
に、ソウル顔負けの濃厚なヴォーカルと
コーラス・ワークが冴える曲です。

Stoned Out Of My Mind


5曲目は「Country Living」です。
こちらもソウル・グループThe Stylisticsの
名曲のカヴァーです。
こちらも完全に「自分の曲」として昇華して
いて、もはや持ち歌としか聞こえない完璧な
出来の曲です。
バックのギターの期レアjのあるメロディ
に、シッカリと感情を乗せたヴォーカルと
コーラス・ワークがとても素晴らしい曲
です。

The Mighty Diamonds--Country Living


ざっと追いかけて来ましたが、一見サラッと
聴けちゃうアルバムなんですが、その裏に
ある彼らMighty Diamondsのスゴ過ぎる
スキルが見えてくると、まったく別の
アルバムに感じてしまうアルバムなんです
ね。
とても聴き流すにはもったいないアルバム
で、彼らのスゴさが解るまで何回でも何回
でも聴き直してもらいたい、そんなアルバム
です。

レゲエのコーラス・グループの中でもこの
Mighty Diamondsと、オリジナルのThe Wailers
は別格のコーラス・グループなんですね。
そこが解るとレゲエの楽しさが、また増し
ます(笑)。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Mighty Diamonds
○アルバム: Stand Up To Your Judgement
○レーベル: Channel One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○The Mighty Diamonds「Stand Up To Your Judgement」曲目
Side 1
1. Ja Will Work It Out
2. Just Another Man
3. Payaka
4. Cho Me Brethren
5. Stand Up To Your Judgement
Side 2
1. I Want To Know
2. Fools Rush In
3. Back Whey
4. Stoned Out Of My Mind
5. Country Living