今回はAugustus Pabloのアルバム

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「Born To Dub You」です。

Augustus Pabloは70年代のルーツ・レゲエ
の時代から活躍したメロディカ奏者、
キーボード奏者、プロデューサーとして知ら
れている人です。
それまで練習用の楽器ぐらいにしか思われて
いなかったメロディカを駆使して、レゲエに
それまでに無い新しい音楽というイメージを
プラスしたのがこの人なんですね。

数々のセッションに参加し、多くのインスト
やダブ・アルバムを残し、Hugh Mundellを
はじめとする若手のミュージシャンを育てた
彼でしたが、1999年に筋無力症のために
亡くなっています。

アーティスト特集 Augustus Pablo (オーガスタス・パブロ)

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Agustus Pablo ‎– King Tubbys Meets Rockers Uptown (1976)

今回のアルバムは2014年にVP Records
傘下の17 North Paradeからリリースされた
Agustus Pabloの1974年当時に
プロデューサーのAugustus 'Gussie' Clarke
の元に残した未発表音源やレア音源のダブを
集めたコンピュレーション・アルバムです。

Horace Andyの「Skylarking」の2通りの
ヴァージョンのダブや、Dawn Pennのヒット
曲「No No No」リディムのダブ「Origan
Style」、7インチと12インチの2通りの
ダブが収められた「Classical Illusion」、
こちらも2通りのダブが収められた表題曲の
「Born To Dub You」など、Augustus Pablo
が好きな人なら完全にシビレるダブ・
アルバムに仕上がっています。

手に入れたのは17 North Paradeからリリース
されたLPでした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced & Arranged by Augustus 'Gussie' Clarke

Mastered by Kevin Metcalfe at The Soundmasters, London
A&R / Project Co-ordination: Chris O'Brien
Photography: Ted Bafaloukos © 1974
Design: Tony McDermott

という記述があります。

プロデュースとアレンジはAugustus 'Gussie'
Clarkeです。
彼はこの74年当時は若手のプロデューサー
で、後の80年代のダンスホール・レゲエの
時代にはレーベルMusic Worksを主催して、
プロデューサーとして活躍した事で知られて
います。

フォトグラフィーはTed Bafaloukosで、74
年当時に取られた写真のようです。
表ジャケはおそらくアメリカのニューヨーク
あたりの高層ビルが立ち並ぶ一帯で、写真は
長時間露光で撮られたようで、真ん中の腕
組みしてサングラスをかけたAugustus Pablo
が途中でどいた為に後ろの高層ビルの明かり
が顔に写り込んだ、ちょっと面白い写真に
なっています。
ピンクのシャツの男性の後ろに抱き付いた
女性も、顔がブレブレに写っています。
アルバム・デザインはScientistの
「漫画ジャケ」シリーズなどで知られる
Tony McDermottが担当しています。

さて今回のアルバムですが、これが未発表
音源だったのが本当にもったいなかったと
思われるほど、内容の良いアルバムで、
もしもこのアルバムが70年代に発売されて
いれば、Augustus Pabloの代表作のひとつに
なってもおかしくないほどのアルバムなん
ですね。

この74年頃のAugustus Pabloというのは、
Impact All Starsのダブ・アルバム「Java
Java Java Java」などで彼のメロディカの
実力が認められ、彼がソロ・アルバム
「This Is Augustus Pablo」などを出し始め
た時期なんですね。

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Impact All Stars ‎– Java Java Java Java (1973)

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Augustus Pablo ‎– This Is Augustus Pablo (1974)

つまり今回のアルバムは、そうしたAugustus
Pabloの最初期の音源が聴けるアルバムなん
ですね。
まるで千年一日のごとく優しいメロディカの
音色を奏でているように言われるAugustus
Pabloですが、聴き較べてみると初期から
ルーツ・レゲエの時代の70年代ぐらいまで
は、かなりトンがった音のメロディカを吹い
ているんですね。
彼が変わり始めるのは80年代以降で、そこ
からは徐々にサウンドがまろやかに変化して
行きます。
特に筋無力症を患った90年以降は、すごく
優しい音色になって行くんですね。

今回のアルバムではそうした初期のちょっと
荒々しい、元気の良いAugustus Pabloの
メロディカが楽しめるアルバムになって
います。
まだ初期レゲエの匂いの残る、ガシッと硬い
バックのサウンドとPabloの荒ぶるメロディカ
の組み合わせはとても魅力的です。

Horace Andyのヒット曲「Skylarking」の
メロディカ・ヴァージョンSide 1の1曲目
「Skylarking」から始まり、Pabloがピアノ
を弾いたピアノ・ヴァージョンの2曲目
「Skylarking 2」、女性歌手Dawn Pennの
ヒット曲「No No No」リディムの3曲目
「Origan Style」、12インチ・ロング・
ヴァージョンの4曲目「Classical Illusion
(Dub Vendor 12")」、踊るようなピアノの
メロディが楽しい5曲目「Stardum」、彼
らしいメロディカが全開のSide 2の1曲目
「No Entry」、こちらもメロディカの懐か
しいようなメロディが素晴らしい表題曲の
2曲目「Born To Dub You」、さらに続いて
ストリングス・ヴァージョンの3曲目
「Born To Dub You Pt.2」、ホーンと
メロディカがコラボした4曲目「Believe A
Dub」、そして最後は再び7インチ・
ヴァージョンの「Classical Illusion
(Micron 7")」と、捨て曲ナシの素晴らしい
アルバムに仕上がっています。

特にSide 1の4曲目「Classical Illusion
(Dub Vendor 12")」は白眉の出来で、この
Augustus Pabloというアーティストで
なければ作りえない、独特のエモーショナル
な世界を生み出しています。

Side 1の1曲目は「Skylarking」です。
ご存じHorace Andyが歌ったStudio Oneが
生みだした、ルーツ・レゲエの名曲です。
ガシッと硬いドラミングにピアノ、Pabloの
メロディカが入って来るだけでゾクゾクする
1曲です。

Augustus Pablo -Skylarking (Born to Dub You LP )


2曲目は「Skylarking 2」です。
こちらはメロディカなしのピアノを中心と
したヴァージョンです。
1曲目にもピアノが入っていましたが、
おそらくピアノもAugustus Pabloと思われ
ます。
1曲目よりはメロディカが無い分ちょっと
地味ですが、それでもAugustus Pabloらしい
エモーショナルなピアノは魅力的。

3曲目は「Origan Style」です。
リディムは女性歌手Dawn Pennのヒット曲
「No No No」です。
こちらは陰影のあるメロディをうまく生か
した、彼らしいメロディカが堪能できる曲に
なっています。
途中に入るピアノ・ソロもグッド。

Augustus Pablo - Origan Style


4曲目は「Classical Illusion (Dub Vendor
12")」です。
Dub Vendorというのはレーベル名か?
おそらくそのレーベルから出た12インチ・
シングルのロング・ヴァージョンのよう
です。
メロディカに絡み付くようなユラユラとした
ヴァイオリンの不思議な音色…。
おそらくこのAugustus Pabloという人の感性
無くしては、生み出せない独特な魅力のある
曲です。

5曲目は「Stardum」です。
踊るようなリズムにピアノの楽し気な
メロディが素晴らしい優しい曲です。
他にクラヴィネットか何かも演奏している
ようです。

Side 2の1曲目は「No Entry」です。
Side 2ではこの曲が一番長い曲で、こちらも
12インチ・ロング・ヴァージョンか?
メロディカを中心に、ストリングスや
ピアノ、パーカッションなどをうまく配した
曲です。

12" Side A: Augustus Pablo - No Entry


2曲目は表題曲の「Born To Dub You」
です。
メロディカとパーカッションのポジティブな
メロディの曲です。
合いの手のように入るパーカッションが良い
味を出しています。

3曲目は「Born To Dub You Pt.2」です。
こちらはメロディカに代わりストリングスが
中心となった曲です。
合間良く入るホーン・セクションがグッド。

4曲目は「Believe A Dub」です。
ホーン・セクションの明るいメロディから、
郷愁を誘うようなメロディカとホーンの
コラボが心地良い曲です。
同じメロディカでもいろいろな表情を付け
られるのがこのAugustus Pabloの特徴で、
彼のイメージの大きさがよく解ります。

5曲目は「Classical Illusion (Micron 7")」
です。
Side 1の4曲目「Classical Illusion (Dub
Vendor 12")」と同じ曲ですが、こちらは
Micronレーベルから7インチ・ヴァージョン
のようです。
7インチの為に短めですが、12インチと
同様なメロディカやヴァイオリンなど他の
楽器がすごく際立ったヤバさ満点の楽曲に
仕上がっています。
Augustus Pabloしか作れない「ダブの快楽」
がここにあります。

ざっと追いかけて来ましたが、初期の
Augustus Pabloらしいどこかトンがった
ところのある演奏は、やはりリスナーを
ゾクゾクさせるヤバい空気感が溢れて
います。
Augustus Pabloが好きな人、ダブが好きな人
ならぜひ押さえておきたいアルバムのひとつ
ではないでしょうか。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Augustus Pablo
○アルバム: Born To Dub You
○レーベル: 17 North Parade
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 2014

○Augustus Pablo「Born To Dub You」曲目
Side 1
1. Skylarking
2. Skylarking 2
3. Origan Style
4. Classical Illusion (Dub Vendor 12")
5. Stardum
Side 2
1. No Entry
2. Born To Dub You
3. Born To Dub You Pt.2
4. Believe A Dub
5. Classical Illusion (Micron 7")