今回はPhillip Frazerのアルバム

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「Come Ethiopians」です。

Phillip Frazer(Phillip Fraser)は70年代
のルーツ・レゲエの時代から80年代の
ダンスホール・レゲエの時代にかけて活躍
したシンガーであり、プロデューサーでも
ある人です。
自身のレーベルRazer Soundsや、Errol 'Don'
Maisの率いるレーベルRoots Traditionなど、
主にジャマイカ国内の小さなレーベルから
アルバムを出している人なんですね。
ルーツからダンスホールの時代にかけて、
ジャマイカ国内ではかなり目覚ましい活躍を
しています。

今回のアルバムはネットのDiscogsでは
1984年のHigh Timesのアルバムとなって
いるんですが、他の販売サイトの記述などを
見ると1978年となっています。
たださらによく調べてみると、Discogsの
High Timesのアルバムは「Japan」となって
いて日本で売られていたアルバムなんですね。
日本が最初というのはちょっとおかしいなぁ
と思って見ると、Freedom Soundsのアルバム
で「Unknown(制作年不詳)」のアルバムが
あるんですね。
さらに彼のシングル盤を見ると、表題曲の
「Come Ethiopians」が78年の曲、他に
「2000 Years」が77年にシングルとして
発売されている曲なんですね。

そういう事を考えると、今回のアルバムは
ハッキリと78年とは言い切れないけれど、
おそらく78年頃にFreedom Soundsから発売
されたアルバムだと思われます。
またこのアルバムが78年ぐらいに出された
アルバムだとすると、82年の「Blood Of
The Saint」より時期が早く、おそらくこの
アルバムが彼のファースト・ソロ・アルバム
だという事になります。

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Phillip Fraser ‎– Blood Of The Saint (1982)

バックは70年代という事を考えるとThe High
Times Bandではなく、Soul Syndicateが担当
しているのではないかと思います。
のちにHigh Timesからアルバムが出ているの
は、Soul Syndicateがバックを務めたという
関係からなのか?

Side 1の1曲目「John Saw Them Coming」と
Side 2の最後の曲目「Troubles」が前半が歌
で後半がダブというディスコ・ミックス・
スタイルのロング・ヴァージョンの2曲に
挟まれた全8曲入りのアルバムです。

手に入れたのはHigh Timesからリリース
されたLPの中古盤でした。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians Credit:
Bass: G. Fullwood
Drums: M. Asher, Santa
Guitar: Earl Chinna Smith, Toney Chin
Organ: Jah McKaya
Piano: Gladstone Anderson
Percussion: Skully

Photography: John
Art Concept and Design: Phillip Fraser
Produced by: Freedom Sounds Inter.
Recorded at: Channel One, Randy's Studio
Mixed at: King Tubby's, Scientist & Prince Jammie

となっています。

ミュージシャンはベースにGeorge Fullwood、
ドラムにM. AsherとCarlton 'Santa' Davis、
ギターにEarl Chinna SmithとToney Chin、
オルガンにJah McKaya、ピアノにGladstone
Anderson、パーカッションにSkullyという
布陣です。
書いたように録音がまだ70年代なので、
同じChinna SmithのバンドでもThe High
Times Bandではなく、Soul Syndicateの
ようです。

写真はJohn、アート・コンセプトとデザイン
はPhillip Fraser本人が担当しています。
裸足で白衣を羽織った聖者のような格好の
Phillip Fraserの姿が彼のアイディアのよう
です。

プロデュースはFreedom Sounds Inter.と
なっていて、具体的な人の名前がありません。
レコーディングはChannel OneとRandy's
Studioで行われ、ミックスはKing Tubby'sで
行われ、エンジニアはScientistとPrince
Jammieが担当しています。
ミックスがKing Tubby'sのScientistと
Prince Jammieが担当している事を考える
と、アルバム制作が80年代の初めぐらい
でもおかしくないのですが…、どうなんで
しょうね…。

書いたように77年と78年のシングル盤
などの曲も入っているので、おそらく一度に
行われた録音ではなく、シングル盤などを
まとめたアルバムと思われます。
書かれていないミュージシャンやスタジオも
あるのかもしれません。

さて今回のアルバムですが、Phillip Frazer
のアルバムの中でももっともルーツ色の強い
内容のアルバムで、なかなか良いです。

このPhillip Frazerという人ですが、個人的
にもお気に入りのアーティストのひとりで、
彼のアルバムは比較的買っている方なんです
ね。
彼はルーツ・レゲエの時代から活躍する人
ですが、アルバムはこの80年代にリリース
が多く特に私の好きな80年代前半のアー
リー・ダンスホール期にけっこうアルバムを
残しているんですね。
82年の「Blood Of The Saint」をはじめ、
同じく82年にはラヴ・ソングを集めた
「Loving You」、おそらく83年頃と思わ
れる「I Who Have Nothing」など、いかにも
アーリー・ダンスホールらしい心地良い
曲が集められたアルバムを残しています。

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Phil Fraser ‎– Loving You (1982)

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Phillip Frazer ‎– I Who Have Nothing (1983)

また92年には彼の代表作のひとつとも
いえる「Never Let Go」という、こちらも
ダンスホールらしい空気感満載の素晴らしい
アルバムも残しています。

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Mr. Phillip Frazer ‎– Never Let Go (1992)

今回ネットのアルバム評などを見ると、この
Phillip Frazerはルーツ・シンガーという
評価が多いようですが、私のイメージでは
ルーツでもラヴ・ソングでもこなせる、良い
意味でのジャマイカのローカル・タレントと
いった印象です。
小器用というのではなく、ジャマイカの人々
の心に寄り添った、親しみのある歌を歌える
人なんですね。
そのあたりが彼の歌をついつい聴いてしまう、
理由でもあります。

そんな彼のアルバムの中でもプロフィールの
初めの方に来るのが、今回のアルバムなん
ですね。
さすがにルーツ期の録音が集められた
アルバムなので、彼のアルバムの中でも
もっともルーツ色の強いアルバムなんです
ね。

ただこの初めの頃のアルバムでも彼の丁寧な
ヴォーカルは健在で、力強く優しくルーツの
楽曲を紡いでいくんですね。
彼の持つヴォーカル力が、曲をより魅力的に
しているのは間違いありません。

また一番初めのSide 1の1曲目「John Saw
Them Coming」と一番最後のSide 2の4曲目
「Troubles」が前半が歌で後半がダブというデ
ィスコ・ミックス・スタイルのロング・ヴァー
ジョンの曲にしているという構成もちょっと
面白いところです。
通して聴くとアルバムが、よりボリューム・
アップして感じられるんですね。

特にSide 1の1曲目「John Saw Them Coming
(In Disco Style)」は今回のアルバムの中でも
出色の1曲で、彼のルーツの世界観にグッと
引き込まれてしまいます。
他にもThe Heptonesの「Give Me The Right」
のリディムを使った表題曲の「Come
Ethiopians」や、Phillip Frazerの心地良い
ヴォーカルが冴える「2000 Years」や
「Africa」、ディスコ・ミックスの
「Troubles (In Disco Style)」と、曲数は
少ないながら魅力的な曲が多いアルバムに
仕上がっています。

Side 1の1曲目は「John Saw Them Coming
(In Disco Style)」です。
この曲は78年に12インチ・シングルと
して発売された曲のようです。
華々しいホーン・セクションのメロディに、
ソフトで力強いPhillip Frazerのヴォーカル
が冴える魅力的な曲です。
後半はホーンとパーカッションを中心とした
ダブの、ディスコ・ミックス・スタイルの曲
です。

Phillip Frazer 1978 Come Ethiopians 01 john saw them coming disco style


2曲目は「Great Pain We Feel」です。
こちらは明るいギターを中心としたリズミカル
なメロディに、Phillip Frazerのヴォーカル
がさらに魅力をプラスしている1曲。

3曲目は「Children Of God」です。
ギターのちょっと悲し気なメロディに、表情
のあるPhillip Frazerのヴォーカルが良い味
を出している曲です。

Phillip Frazer 1978 Come Ethiopians 03 children of god


4曲目は表題曲の「Come Ethiopians」です。
リディムはThe Heptonesの「Give Me The
Right」。
こちらも78年にシングとしてリリースされ
ている曲です。
ギターの陰影のあるメロディに、Phillip
Frazerの表情のあるヴォーカルがすごく
魅力的な曲です。

Phillip Frazer - Come Ethiopian - HQ High Quality Audio - Reggae Music


Side 2の1曲目は「Righteous Works」です。
ギター・ワークのメロディに、被るように
入って来るPhillip Frazerの緊迫感のある
ヴォーカルがなかなか良いです。

2曲目は「2000 Years」です。
書いたように77年のシングル曲です。
ギターのメロディから、語るようなPhillip
Frazerの優しいヴォーカル…。
「Oh! Jah Jah…」という言葉などから見る
と、ラスタファリズムの神(Jah)への愛を
歌った歌のようです。
優しいヴォーカルがグッと来る1曲。

PHILLIP FRAZER - 2000 years + version (1977 Freedom sounds)


3曲目は「Africa」です。
こちらもアフリカの望郷を歌った曲のようで、
優しいヴォーカルが印象的な曲です。

4曲目は「Troubles (In Disco Style)」
です。
こちらは「John Saw Them Coming (In
Disco Style)」のB面に収められていた曲
のようで、12インチ・ディスコ・ミックス
の曲です。
リリカルなピアノメロディに、表情のある
Phillip Frazerのヴォーカル。
後半はクールなピアノを中心としたダブ。

Phillip Frazer 1978 Come Ethiopians 08 troubles disco style


ざっと追いかけて来ましたが、やはりルーツ
の時代の楽曲なので、Phillip Frazerの
アルバムの中でも特にルーツ色の強いアルバム
に仕上がっています。
おそらくこのアルバムや「Blood Of The
Saint」の影響で、彼をルーツ・シンガーと
思う人が多いのではないかと思います。
ただある意味それだけ印象に強く残るアルバム
なんですね。
ルーツのアルバムとして見ても、Phillip
Frazerのアルバムとして見ても、悪くない
内容のアルバムだと思います。

ただあえて言えば、彼はその後のダンス
ホール・レゲエでも活躍しているシンガー
で、ダンスホールらしいちょっと湿り気を
帯びたラヴ・ソングなどを歌わせても、
とても魅力的なシンガーなんですね。
彼に興味を持った方には、そうしたダンス
ホール物もぜひ聴いてみてもらいたいと
思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Phillip Frazer
○アルバム: Come Ethiopians
○レーベル: High Times
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: (1978)

○Phillip Frazer「Come Ethiopians」曲目
Side 1
1. John Saw Them Coming (In Disco Style)
2. Great Pain We Feel
3. Children Of God
4. Come Ethiopians
Side 2
1. Righteous Works
2. 2000 Years
3. Africa
4. Troubles (In Disco Style)