今回はSugar Bellyのアルバム

sugar_belly_02a

「The Return Of Sugar Belly: One Of The
Legendary Mento And Rumba Giants」です。

Sugar Bellyはジャマイカがまだスカ以前の
メントのから活躍する、自分で作った竹の
サックス、「バンブー・サックス」の演奏者
として知られている人です。

Sugar Belly - Wikipedia

ネットのYouTubeには彼がそのバンブー・
サックスについて解説している映像があり
ますが、竹に穴を開けてプラスティックや
空き缶をテープで張り付けたようなすごく
チープな楽器で、よくこれで演奏出来るなぁ
と逆に感心します。

sugar belly playing his bamboo saxophone


メント - Wikipedia

ちなみにジャマイカの伝統音楽ってカリプソ
じゃないの?と思う人も居ると思いますが、
カリプソはジャマイカの音楽ではなく隣国の
トリニダード・トバゴのカーニバルの音楽なん
ですね。

カリプソ (音楽) - Wikipedia

ジャマイカの伝統音楽はメントで、あの
ジャマイカ系アメリカ人の歌手ハリー・
ベラフォンテ(Harry Belafonte)の歌った
「バナナ・ボート(Banana Boat Song)」も
カリプソだと思われていますが、実はメント
なんですね。
この曲は1957年のヒット曲ですが、当時
はアメリカではメントという音楽があまり
知られていなかった為に、隣国でそれより
知名度があった音楽カリプソという事になって
しまったようです。
その誤解が今でも続いているんですね。

今回のアルバムはジャマイカの音楽が
デジタルのダンスホール・レゲエに変わろう
としていた1985年に、Winston Rileyの
レーベルTechniquesからリリースされた、
Sugar Bellyのソロ・アルバムです。

この時期になぜメント?と思う人も居るかと
思いますが、ジャマイカ国内ではこの時代
でもByron Lee & The Dragonairesが定期的
にアルバムを発売し続けていて、一定の人気
があったようです。
あの80年代から90年代に活躍したディー
ジェイAdmiral Baileyも、Byron Leeのショー
に出た事をきっかけに「メント歌手」として
の人気が上がり過ぎてしまって、それを嫌って
メントを歌うのをやめたというエピソードが
あるくらい、メントは隠れた人気音楽だった
んですね。

そうしたメントのちょっと変わった
バンブー・サックス奏者のSugar Bellyの
インストを集めたのが今回のアルバムで、
キーボード奏者のWinston Wrightやギターの
Boo Peeなどのレゲエ・ミュージシャンが
バックを務めています。

手に入れたのはTechniquesレーベルから
リリースされたLPの中古盤でした。

ちなみに中古盤の為か、Side1の最後の曲
「Belly Beet」で、曲の最後の方で針飛び
して同じところでグルグル回ってしまう
トラブルがありました。

Side1が5曲、Side 2が5曲の全曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by: Winston Riley
Co-Produced: Sojie

Musician: Winston Wright
Guitar: Boo Pee
Hornes Arranged: Neville Hinds

Album Design: Limonious

となっています。

プロデュースはWinston Riley、コーディネ
イト・プロデューサーとしてエンジニアの
Sojieの名前があります。

ミュージシャンはキーボード奏者のWinston
WrightとギターのBoo Peeが参加しています。

アルバム・ジャケットはこの時代に多くの
ジャケット・デザインを担当している
Limonious。

さて今回のアルバムですが、ネットのDiscogs
などを見るとSugar Bellyはこのアルバムを
含めてStudio Oneからリリースした「Sugar
Merengue」など、3枚のアルバムをリリース
している人で、実績としてはそこそこの人
なんですね。

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Sugar Belly ‎– Sugar Merengue (1973)

ただ注目はやはり手作りのバンブー・サックス
を演奏する唯一の奏者だということ。

独特の楽器を演奏する人としてはあの
Augustus Pabloのメロディカが有名ですが、
ジャマイカの音楽界には時々こういう
「異能の人」が現れるんですね。
多くのミュージシャンを育てたアルファ・
ボーイズ・スクールの先生だったLennie
Hibbartもその一人で、それまで使われる
事の無かった金管楽器ヴィブラフォンを
使って録音された「Creation」は、初期
レゲエの頃のStujio Oneが残した、印象的
なアルバムとして多くの人の心に残って
います。

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Lennie Hibbert ‎– Creation (1969)

ジャマイカの音楽界にはそうした変わった
楽器を受け入れる柔軟性があるんですね。
そうした変わった楽器を演奏する「異能の人」
の、もっとも源流に居るのがこのSugar Belly
なんですね。
そうした人達がジャマイカの音楽を特別な
音楽に変えている側面は否定が出来ません。

特にこの人は楽器を手作りしてしまうという
荒ワザで、ミュージシャンになったという人
なんですね。
写真を見る限りはいかにもチープな手作り
楽器ですが、その楽器を駆使して3枚もの
アルバムを出しているのは、やはり評価
しない訳にはいきません。
優しい音色の裏に隠れている「反骨精神」
こそ、ジャマイカの音楽がずっと持ち続けて
きたものなんですね。

Side 1の1曲目は「Yellow Bird」です。
小鳥の鳴き声のエフェクトと木管楽器など
に、Sugar Bellyのバンブー・サックスの
ちょっとのどかな演奏が心地良い曲です。

2曲目は「Peel Head John Crow」です。
ホーン・セクションの演奏に混じるバンブー・
サックスの演奏が心地良い、南国気分を感じ
させる曲です。

3曲目は「Miss Mary Ann」です。
軽快なピアノの演奏に心地良いバンブー・
サックスの甲高いメロディ、こちらも軽く
ステップを踏んでしまいそうな明るい曲
です。

4曲目は「Occupation」です。
こちらは歯切れの良いピアノの演奏に、
バンブー・サックスの表情あるメロディが
良い感じの曲です。

5曲目は「Belly Beet」です。
明るいリズミカルな演奏に甲高いバンブー・
サックスの踊るようなメロディが印象深い曲
です。

Side 2の1曲目は「Hansome Gal」です。
こちらも踊りだすような軽快なメロディに
乗せた曲です。
甲高いバンブー・サックスに、合いの手の
ように入るパーカッションがグッド。

2曲目は「Pain A Back」です。
華やかなホーン、リリカルなピアノのイントロ
から、バンブー・サックスの奏でる明るい
メロディが心地良い曲です。

Sugar Belly - Pain a Back


3曲目は「Rugumbine」です。
勢いのあるピアノのメロディから、ルンバ風
の楽しいバンブー・サックスのメロディ、
心地良いノリのある曲です。

4曲目は「Fire Ina Mi Wire」です。
こちらも華やかなサックスとピアノの
メロディから、甲高いバンブー・サックス
が踊るよう激しいメロディを吹くまくる曲
です。
ちゃんとひとつの楽器として完璧な演奏を
しているのは、さすがと言うしかありま
せん。

5曲目は「Sugar Roy」です。
明るいホーンとバンブー・サックスの
掛け合いが楽しい曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、このSugar
BellyはさすがにあのAugustus Pabloほど
イメージの豊かな人ではありませんが、
ちゃんとメントというフォーマットの中で、
バンブー・サックスを、その演奏に必要な
楽器として演奏しています。
このバンブー・サックスがメントという音楽
の音色を、より豊かにした事は間違いありま
せん。

こうした「異能の人」の系譜はAugustus Pablo
という卓越な人を生み出し、その楽器
メロディカはルーツ・レゲエという音楽を
特別な音楽に変えたんですね。
さらにAugustus Pablo以降使われだした
メロディカは、Pablove BlackやDoctor Pablo、
Hughie Izachaarなどの多くの追随者を生み
出しています。
またスティール・パン奏者のPanafricanist
などにも、Augustus Pabloのメロディカの
影響が感じられるんですね。

そうした「異能の人」の系譜の初めに、この
Sugar Bellyという人が居るんですね。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Sugar Belly
○アルバム: The Return Of Sugar Belly: One Of The Legendary Mento And Rumba Giants
○レーベル: Techniques
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Sugar Belly「The Return Of Sugar Belly: One Of The Legendary
Mento And Rumba Giants」曲目
Side 1
1. Yellow Bird
2. Peel Head John Crow
3. Miss Mary Ann
4. Occupation
5. Belly Beet
Side 2
1. Hansome Gal
2. Pain A Back
3. Rugumbine
4. Fire Ina Mi Wire
5. Sugar Roy