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今回は少し趣向を変えてレゲエでよく使われる
リディム(Riddim)という言葉について書い
て行こうと思います。

正直私自身リディム(Riddim)について
すごく解っているかというと、少し自信が
ありません。
だいたいアルバムについて書く時に使って
いるのは、他に元の曲があってそのリズムを
使用した曲、ぐらいの意味で使っています。

そこでネットのWikipediaで調べてみると、

〇リディム(Riddim)とはヴァージョン
(Version)という呼び方をされる事がある。
〇ドラムとベースで演奏されるレゲエの
リズム体であること。
〇英語の「リズム(Rhythm)」のパトワ語の表現
で、レゲエ特有の言い方である。
〇「ファウンデーション・リディム」や
「ダンスホール・リディム」、「コンピュー
タライズド・リディム」などの種類がある。

というような事が書かれていました。

リディム - Wikipedia

この説明でだいたい合っていると思います
が、ただダブの事をよくヴァージョン
(Version)という呼び方をするので、
ヴァージョン(Version)の方がリディム
(Riddim)という言い方よりももっと広義に
使われている印象があります。

また「ファウンデーション・リディム」や
「ダンスホール・リディム」、「コンピュー
タライズド・リディム」という区分けは、
それほど明確ではないようです。
それぞれのリディムの種類の違いは簡単に
言うと、「ファウンデーション・リディム」
はその名の通り有名リディムを指し、おもに
ロックステディやルーツ・レゲエの時代の
有名曲のリズムを指すようです。
「ダンスホール・リディム」は、80年代の
前半のアーリー・ダンスホールの時代に誕生
したリズムを主に指すようです。
「コンピュータライズド・リディム」は、
80年代半ばにKing Jammyが起こしたデジタル
のレゲエのブーム「コンピュータライズド」
以降に作られたリズムを指すようです。
ざっとこんな感じですが、ダンスホール以降
の有名曲を「ファウンデーション・リディム」
と呼んだり、デジタル以降のリディムでも
「ダンスホール・リディム」と呼んだりと、
明確に使い分けている訳ではない側面もあり
ます。

リディムを知っていると曲を聴く時に、
「あぁ、これは○○○のリディムだ!」とか
楽しめる幅が広がるんですね。


またリディム(Riddim)という呼び方は、
80年代以降のダンスホール・レゲエの時代
になって以降からされるようになった呼び方
のようですが、元の曲からカヴァー曲やダブ、
ディージェイなどのヴァージョンを作る文化
は、60年代後半のロックステディの時代頃
から始まっているようです。

それには実はジャマイカの音楽制作の、切実
な事情があったんですね。
ちょと長くなりますが、それについて書いて
みます。

もともとレゲエ発祥地ジャマイカは観光しか
資源のない極貧国のひとつだったんですね。
ところが50年代後半から60年代にかけて
ジャマイカの音楽スカがUKの若者などに
人気となり、ジャマイカで音楽産業が発展
するんですね。
そして60年代後半にレゲエの前身となった
音楽ロックステディが誕生します。

その頃になるとジャマイカには多くの歌手や
ミュージシャン、プロデューサーが登場する
ようになるんですね。
ただこの時代にスタジオまで持っていた
プロデューサーはまれで、大手のStudio One
レーベルのC.S. Dodd、そのライバルの
Treasure IsleレーベルのArthur 'Duke' Reid
ぐらいしかスタジオを持っていなかったん
ですね。
(その後70年代のルーツ・レゲエの時代に
なると、レゲエが世界的に人気になった事も
あってスタジオは増えます。)

それ以外の弱小のプロデューサーは、それら
のスタジオをレンタルし、ミュージシャンを
集め録音し、レコードをプレスしていたん
ですね。
レコーディングにはコストがかかりますから、
多くのプロデューサーにはなるべくコストを
軽減させる必要性が生まれます。
そこで一度録ったバックの音源を別の歌手に
歌わせたり、ディージェイにトースティング
させたり、音源を再加工してダブにしたりと
いう工夫がされる事になるんですね。

また当時は歌手やミュージシャンは基本的に
日雇いで地位が低く、儲けや著作権は事実上
お金を出したプロデューサーのものになって
いたんですね。
そうしたミュージシャン<プロデューサーと
いう状況は、70年代のルーツ・レゲエの頃
まで続きます。

実際に作曲した人の著作権が無視されると
いうのはけっして良い事ではありませんが、
反面自由に使えることでダブのようなかなり
実験的な音楽が誕生したり、ディージェイ
という今まで音楽史に無かった曲の中で
しゃべるという技法が誕生したり、元の曲に
さらに新しいリリックを足して別の曲が誕生
したりと、ジャマイカの音楽はそういう
自由さで発展してきたという側面もあります。

当時のシンガーには、原曲にさらに新しい
リリックを乗せていく能力が求められたん
ですね。

ただこれはあくまでもジャマイカ国内の
ローカル・ルールで、国際的には著作権は
守られるべき権利なんですね。
その国際ルールを守らなかった為に、訴え
られて破産した人も居ます。
80年代にプロデューサーのJoe Gibbsは、
女性歌手J.C. Lodgeの歌う「Someone Loves
You Honey」をUKチャートなどで大ヒット
させますが、作曲者であるカントリー歌手
Charley Prideに著作権料を払わず訴えられ、
多額の賠償金を支払えずに倒産してしまい
ます。

ジョー・ギブス - Wikipedia

このあたりは当時「コピー大国」だった
ジャマイカへの、大国アメリカの制裁的な
意味があったのかもしれません。
このあたりから徐々にジャマイカ国内での
コピーも減って来るんですね。

ただコピーしても良いという線引きが
ロックステディの時代までのようで、この
80年代には60年代後半のロックステディ
の時代の曲が、リディムとしてよく使われ
ているんですね。
その状況は80年代いっぱいぐらいまで続き
ます。


それではにどんなリディムがあるのか?
思いつくままに、時代ごとに見て行きたいと
思います。

○「Shank I Sheck」
まずは50年代後半から60年代にかけての
スカの時代の有名リディムとして思い浮かぶ
のが、Baba Brooksの「Shank I Sheck」です。

Baba Brooks - Shank I Shek (King Edwards)


Baba Brooksはトロンボーン奏者で、スカの
時代の人気バンドThe Skatalitesのサブ・
メンバーとしてプレイしていた事で知られて
います。
この曲はBaba Brooksの代表曲で、バックには
The Skatalitesも参加しています。
もっとも古いリディムのひとつで、その後も
長く愛され続けたリディムなんですね。
タイトルは当時の中国の国民的指導者、蒋介石
の名前をもじったものです。

リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)

次にロックステディ(1966~68年)
の頃の有名なリディムを、いくつか書いて
みたいと思います。
実はこのわずか3年しかないロックステディ
の時代が、リディムの宝庫と言えるくらいに
素晴らしいリディムが残っている時代なん
ですね。

○「Hypocrite」
まずは「Hypocrite」。
これはジャマイカの音楽界がまだロック
ステディの時代だった60年代後半の
The Wailersのヒット・リディムです。
The WailersというとBob Marleyのバック・
バンドと思っている人もいるかもしれません
が、もともとはスカからレゲエの時代に
かけて活躍した、Bob MarleyとPeter Tosh、
Bunny Livingston(Wailer)の3人組の
ヴォーカル・トリオだったんですね。
その3人を称して「オリジナル・ウェイ
ラーズ」と呼ぶ事もあります。
そうした彼らのロックステディの時代の
ヒット曲がこの「Hypocrite」なんですね。

Bob Marley & The Wailers - Hypocrites


リズム特集:Hypocrite(ヒポクリッツ)

○「Real Rock」
このロックステディの時代はThe Skatalites
のキーボード奏者だったJackie Mittooの
全盛期とも言える時代で、Studio Oneの
C.S. Dodd元にたくさんの名曲、名リディム
を残しています。
この曲はJackie Mittooが率いるStudio Oneの
バック・バンドSoul Vendersが演奏した名曲
です。

Soul Vendors - Real Rock


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

Jackie Mittooは他にもThe Beatlesの
「ノルウェーの森」主旋律をパクったと
言われる(笑)「Darker Shade Of Black」
や、同じくSoul Vendersの「Drum Song」、
Sound Dimensionの「Full Up」や「Heavy
Rock」、「Rockfort Rock」、「Hot Milk」
など、数多くの名リディムを残しています。

リズム特集 Darker Shade Of Black (ダーカー・シェイド・オブ・ブラック)
リズム特集 Drum Song (ドラム・ソング)
リズム特集 Full Up (フル・アップ)
リズム特集 Heavy Rock (へヴィー・ロック)
リズム特集 Hot Milk/Murderer (ホット・ミルク/マーダラー)

○「Party Time」
またこのロックステディではStudio Oneの
人気コーラス・グループThe Heptonesが
大活躍した時代で、このグループからも
「Party Time」や「Love Me Always」、
「Heptones Gonna Fight」、「Prety Looks」
など、多くの名リディムを生み出しています。

Del compilado Studio One Rocksteady


リズム特集 Party Time (パーティー・タイム)
リズム特集 Love Me Always (ラブ・ミー・オールウェイズ)
リズム特集 Heptones Gonna Fight (ヘップトーンズ・ゴナ・ファイト)

このStudio Oneは他にもCarlton & The Shoes
のヒット曲「Love Me Forever」や、Cornell
Campbell & The Eternalsの「Stars」と
「Queen Of The Minstrels」など、歴史に
残る名曲、名リディムを数多く残している
レーベルなんですね。
このレーベルが「レゲエのモータウン」と
呼ばれたのは、ダテではないんですね。

リズム特集 Love Me Forever (ラブ・ミー・フォーエバー)
リズム特集 Stars (スターズ)

○「Queen Majesty」
一方のロックステディの時代の大レーベル
Treasure Isleにはコーラス・グループの
The Techniquesが数多くの名リディムを
残しています。
このThe Techniquesはあの名シンガーである
Slim Smithが所属した事で知られるグループ
で、「Queen Majesty」や「Love Is Not A
Gamble」、「Mood For Love」などの素晴ら
しい名曲、名リディムを残しています。

The Techniques - queen majesty


リズム特集 Queen Majesty (クイーン・マジェスティ)
リズム特集 Love Is Not A Gamble (ラブ・イズ・ノット・ア・ギャンブル)
リズム特集 Mood For Love (ムード・フォー・ラブ)

このSlim Smithはこのロックステディの
大スターで、他にもThe Uniquesの時代の
ヒット曲「My Conversation」や、Studio One
に残した「Never Let Go」が「Answer」
リディムとして知られていたり、Bunny Lee
の元でヒットした「Rougher Yet」などの
名曲、名リディムを数多く残している人なん
ですね。

リズム特集 My Conversation (マイ・カンバセーション)
リズム特集 Answer (アンサー)
リズム特集 Rougher Yet (ラファー・イェット)

またTreasure IsleではJohn Holtが所属した
事で知られるThe Paragonsの「Tide Is High」
や、女性シンガーの「Don't Stay Away」や
「Perfidia」、こちらも女性シンガーJoya
Landisの「Moonlight Lover」など、数多く
の名リディムがこのレーベルから誕生して
います。

リズム特集 Tide Is High (タイド・イズ・ハイ)
リズム特集 Don't Stay Away (ドント・ステイ・アウェイ)
リズム特集 Perfidia (パーフィディア)
リズム特集 Moonlight Lover (ムーンライト・ラバー)

○「Stop That Train」
このロックステディの時代には他にも
Derrick HarriottのレーベルCrystalから
Keith & Texが「Stop That Train」や
「Tonight」などのヒットを放ち、それが
名リディムとして残っています。

KEITH & TEX - Stop That Train [1967]


リズム特集 Stop That Train (ストップ・ザット・トレイン)
リズム特集 Tonight/Lots Of Sign (トゥナイト/ロッツ・オブ・サイン)

特に「Stop That Train」は、ルーツの時代に
The Wailersのメジャー・デビュー・アルバム
「Catch A Fire」でPeter Toshが歌い、80年
代前半のアーリー・ダンスホールの時代には
ディージェイ・コンビClint Eastwood &
General Saintがリメイクしてヒットさせた事
でも知られる曲です。

またDerrick Harriottはこの時代に
「Solomon」というリディムも残しています。

他にも書き切れないくらいこのロックステ
ディの時代はわずか3年という短い期間にも
関わらず、たくさんの有名リディムがあるん
ですね。

○「Satta Massa Ganna」
さてキリが無いので、70年代のルーツ・
レゲエの時代のリディムに移ります。
この時代はジャマイカではロックステディに
代わってレゲエという音楽が誕生し、それ
までのアメリカ志向の音楽からアフリカ志向
の音楽へと、ジャマイカの音楽が大きく舵を
切った時代だったんですね。
それによりジャマイカの音楽レゲエは、
世界的なブレイクを果たす事になります。

そのアフリカ志向の音楽の代表曲とも言える
のが、The Abyssiniansの代表曲「Satta
Massa Ganna」です。
ラスタファリズムという思想と結びついた
この曲は、レゲエの象徴として愛され続けて
行くんですね。

The Abyssinians - Satta Massagana (Satta Massagana)


リズム特集 Satta Massa Ganna (サタ・マサ・ガナ)

またThe Abyssiniansのもうひとつのヒット曲
「Declaration of Rights」も、多くの人が
カヴァーするリディムとなっています。

○「Java」
またこのルーツ・レゲエの時代にダブという
実験的な音楽が誕生していますが、73年に
Impact All Starsのアルバム「Java Java Java
Java」に収められた「Java」は、メロディカ
奏者Augustus Pabloの代表曲となった1曲
です。

Augustus Pablo - Java


こちらもルーツ・レゲエならではという、
特徴的なリディムです。

リズム特集 Java (ジャバ)

○「Stalag」
またダンスホール・レゲエの3大リディムと
言われた「Stalag」が誕生したのも、実は
このルーツ・レゲエの時代なんですね。
Winston Riley率いるTechniquesレーベルの
ヒット・リディムですが、オリジナルは
ルーツの時代のキーボード奏者Ansel Collins
のインスト・ナンバー「Stalag 17」です。
Techniquesレーベルはまだルーツの時代は
弱小レーベルで、このリディムを武器に
Tenor Sawの「Ring The Alarm」などヒット曲
を連発して、ダンスホール・レゲエの人気
レーベルへと成長して行くんですね。

Tenor Saw - Ring The Alarm b/w Version (Techniques)


古いリディムを再生して使い倒す、それは
古くから行われていたジャマイカの音楽界の
手法ですが、このTechniquesレーベルの成功
で、よりそうした手法が取られるように
なった事は間違いがありません。

リズム特集 Stalag (スタラグ)

○「Drifter」
このアフリカ志向の強かったルーツ・レゲエ
の時代に、ひときわ異彩を放ったレーベルが
Harry Mudieが率いるMoodiscレーベルです。
このレーベルは当時流行したラスタファリズム
には目もくれず、ひたすらラヴ・ソング中心
のソフトな曲を作り続けたレーベルなんです
ね。
そのMoodiscの代表曲がDennis Walksの歌う
名曲「Drifter」です。
この曲も多くの人に愛される名リディムと
なって行くんですね。

Dennis Walks - The Drifter (1969) Moodisc


リズム特集 Drifter (ドリフター)

○「Taxi」
またダンスホールの時代にSly & Robbieの
「Taxi」リディムとして人気となる曲も、
オリジナルはこの時代のLittle Royの名曲
「Prophecy」なんですね。
この曲もダンスホールの時代に、再利用・
再発見されたリディムと言えそうです。

リズム特集 Taxi (タクシー)

他にもEric Donaldsonの色レゲエの名曲
「Cherry Oh Baby」や、Barry Brownの名曲
「Far East」、初期レゲエのThe Tennorsの
ヒット曲「Pressure & Slide」などが、この
ルーツ・レゲエの時代に作られています。

リズム特集 Cherry Oh Baby (チェリー・オー・ベイビー)
リズム特集 Far East/Jah Sharkey (ファー・イースト/ジャー・シャーキー)
リズム特集 Pressure & Slide (プレッシャー・アンド・スライド)

○「Here I Come」
80年代になるとルーツ・レゲエに代わり
ダンスホール・レゲエが台頭します。
それから85年にはすぐにデジタルのダンス
ホール・レゲエへとすぐに変わってしまうの
ですが、この80~85年間をアーリー・
ダンスホールの時代と呼びます。
この時代に流行ったのがスローなワン・
ドロップのリズムで、Henry 'Junjo' Lawes
のVolcanoレーベルなどがダンスホールで
人気でした。
そのVolcanoレーベルの人気シンガーが
Barrington Levyで、独特のカナリア・
ヴォイスで歌われた名曲が「Here I Come」
です。

Barrington Levy - Here I Come | 80's Reggae Dancehall Classic


この曲にはさらにオリジナルがあり、それが
Dennis Brownの「Revolution」です。

リズム特集 Revolution/Here I Come (レヴォリューション/ヒア・アイ・カム)

このアーリー・ダンスホールの時代には、
他にもMichael Prophetの「Gunman」や、
John Holtの「Police In Helicopter」、
Anthony Johnsonの「Gun Shot」などのヒット・
リディムがあります。

リズム特集 Gunman (ガンマン)
リズム特集 Police In Helicopter (ポリス・イン・へリコプター)
リズム特集 Gun Shot (ガン・ショット)

○「Sleng Teng」
80年代半ばになると時代は大きく動きます。
85年にWayne Smithの「Under Mi Sleng Teng」
という曲が大ヒットするんですね。
これはWayne Smithと友人のNoel Daveyという
2人の青年が、1台のカシオ・キーボードを
イジっていて見つけたフレーズから作られた曲
だったんですね。
これは初めてのデジタル・サウンドによる
大ヒットでした。
これによりジャマイカ全土に、プロデューサー
のKing Jammyを中心とした、デジタルのダンス
ホール・レゲエの大ブーム「コンピューター・
ライズド」が起こるんですね。
その大ブームをけん引したリディムのひとつ
が、この「Sleng Teng」です。

Wayne Smith - Under Me Sleng Teng - 12inch / Greensleeves


リズム特集 Sleng Teng (スレンテン)

○「Tempo」
そのKing JammyのレーベルJammysに対抗して
King TubbyのレーベルFirehouseが放った
ヒット曲がAnthony Red Roseの「Tempo」
です。
この曲は一時師弟関係にあったKing Jammy
に対する、師匠King Tubbyのアンサー・
ソングだと言われています。
ドライな「Sleng Teng」に対して、独特な
ダンスホールの湿った空気感がタマラない
1曲です。

Anthony Red Rose Tempo


リズム特集 Tempo (テンポ)

この「Sleng Teng」と「Tempo」、そして
ルーツ・レゲエの時代に作られた「Stalag」
が、ダンスホールの3大リディムと呼ばれて
います。

他にもJammysの元でAdmiral Baileyが歌った
「Punnany」や、同じくJammysでRed Dragonが
歌った「Duck」など、デジタルらしいリディム
が生まれたのがこの時代でした。

リズム特集 Punanny (プナニー)
リズム特集 Duck (ダック)

実際にこうした人の曲に自分のリリックを
乗せて上書きして行くという手法は、ある
意味パクリとも言える手法ですが(笑)、
ジャマイカの音楽はそうした次々と曲を
上書きする事で発展してきたとも言えます。
そうしたリリックの上書きの先に、さらに
新しいリディムが生まれる事があるんです
ね。
そうした楽しみ方がウマいのが、この
ジャマイカの音楽レゲエなんですね。


このレゲエという音楽では、ひとつのリディム
だけを収めたアルバム「ワン・ウェイ・
アルバム」がけっこう沢山作られています。
そのいくつかを紹介してみたいと思います。

○Congos & Friends「Fisherman Style」

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Congos & Friends「Fisherman Style」 : つれづれげえ日記

これはThe Congosの名曲「Fisherman」の
リディムのみを集めたアルバムです。
レゲエ・リイシュー・レーベルBlood & Fire
の力作でThe Congosの「Fisherman」は
もちろんの事、Big YouthやHorace Andy、
U Roy、Sugar Minott、Gregory Isaacsと
いった有名アーティストから、Lucianoや
Lutan Fyahといった近年まで活躍する
アーティストまで集めた、CD2枚組の
力作アルバムです。
Blood & Fireらしい、良いものは良いと
いう視点で集められた1枚です。

○Various「Tree Of Satta Volume 1: The Abyssinians & Friends」

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Various「Tree Of Satta Volume 1: The Abyssinians & Friends」 : つれづれげえ日記

こちらはルーツ・レゲエの名曲「Satta Massa
Ganna」を集めた、Blood & Fireのアルバム
です。
こちらもレゲエ・リイシュー・レーベル
Blood & Fireらしい選曲ですが、原曲の
ヘヴィーさもあり、聴き終わるとかなり
グッタリと疲れる1枚(笑)。
The Abyssiniansの「Satta Massa Gana」を
はじめ、Big Youthの「I Pray Thee」や
Natural Blackの「It's A Joy」、Capleton
の「Dislocate」まで全20曲が収められて
います。
この重さもBlood & Fireらしいところかも
しれません。

○Various「Tempo Explosion」

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Various「Tempo Explosion」 : つれづれげえ日記

こちらはデジタルのダンスホール・レゲエの
名リディム「Tempo」を収めた1枚です。
こちらはニューヨークのWackies系列の
レーベルBlack Victoryからリリースされた
アルバムで、当時USに渡っていたSugar
MinottやWackiesのサックス奏者Jerry Johnson
のサックス・プレイなどが楽しめるアルバム
です。
この「Tempo」という原曲の良さが、あらた
めてよく解るアルバムです。
ちなみに当時は激レア・アルバムだった
らしいです。

○Various「Original Stalag 17-18 And 19」

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Various「Original Stalag 17-18 And 19」 : つれづれげえ日記

こちらはデジタルのダンスホール・レゲエで
大ヒットしたTechniquesレーベルの名リディム
「Stalag」を集めた1枚です。
「Stalag」といえば絶対に聴き逃せない
Tenor Sawの「Ring The Alarm」をはじめ、
Lloyd Hemmingsの「Ragamufin Soldier」や
Brigadier Jerryの「What Kind Of World」と
いったちょっとコアなもの、さらには
オリジナルのAnsel Collins(アルバム表記
ではTechniques All Stars)の「Stalag 17」
まで網羅した、「Stalag」の決定盤と言える
アルバムです。

○Glen Brown & Friends「Rhythm Master Volume One」

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Glen Brown & Friends「Rhythm Master Volume One」 : つれづれげえ日記

このアルバムはワン・ウェイ・アルバムでは
ありません。
ただ全17曲中9曲までが、サックス奏者の
Richard 'Dirty Harry' Hallが作ったと言わ
れる「Dirty Harry」のリズムの曲です。
このアルバムはプロデューサーのGlen Brown
のアンソロジーですが、弱小のプロデューサー
であった彼は曲を再利用する必要性が他の人
以上にあったという事が解る1枚です。
初めの9曲がすべて「Dirty Harry」の
リディムで、彼の切ないほどの音楽への情熱
と努力が伝わって来るアルバムです。


今回はリディムという事をテーマに、書いて
みました。
ある意味パクリといえばパクリで、それも
けっして間違いではありません。
ただその裏には何とか良い音楽を作ろう、
何とか成功しようという、ジャマイカの
ミュージシャンの歯噛みするような努力の跡
が見えるんですね。
そうしてその努力がジャマイカの音楽を進歩
させ、第三世界で初めて世界的な音楽にまで
なったという事実は否定が出来ません。

今回はリディムという考え方について書いて
みました。
自分の知りうる限りの事は書いたつもりです
が、もしも間違った事を書いていたら、
ご容赦ください。