今回はEarl 'Chinna' Smith & Idrensの
アルバム

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「Inna De Yard」です。

Earl 'Chinna' Smithは70年代のルーツ・
レゲエの時代から現在に至るまで、長く
活躍するレゲエを代表するギタリストです。
この人の活動歴は本当に凄くて、70年代の
ルーツ・レゲエの時代の多くのアルバムの
リード・ギターを担当しているのがこの人
で、、さらにルーツの時代はThe Soul
Syndicate、80年代にはHigh Times Band
という自身のバンドのリーダーを務めて
います。
さらに80年代からは自らのレーベルHigh
Timesで、プロデューサーもしていて、ダブ・
ポエットのMutabarukaやThe Skatalitesで
活躍したトランペット奏者のJohnny 'Dizzy'
Mooreなどアーティストのプロデュースも
しているんですね。

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Johnny 'Dizzy' Moore ‎– Something Special (Unknown)

また近年になっても自宅にミュージシャンを
招いて、アコースティックでセルフ・
カヴァーした「Inna De Yardシリーズ」を
発表しています。
音楽史の中で最も多くのレコーディングに
参加した人だと言われているのが、この
Earl 'Chinna' Smithなんですね。

アール・チナ・スミス - Wikipedia

今回のアルバムは2004年にInna De Yard
レーベルからリリースされたEarl 'Chinna'
Smithとその仲間の昔の楽曲を、Chinna Smith
の自宅の庭でアコースティックで再演した
アルバムです。

これは今は無くなってしまったフランスの
レゲエ・リイシュー・レーベルMakasoundの
企画で、レゲエ・アーティストの名曲を
Chinna Smithの自宅の庭でアコースティック
で再演する「Inna De Yard」シリーズの中の
1枚です。
これは「Inna De Yard」シリーズの最初の
1枚です。

Chinna Smithの代表曲「Home Grown」や
「Mariwana」の他、彼の仲間のRas Michael
JuniorやKen Bobの楽曲がアコースティック
で再演されているのが、今回のアルバムなん
ですね。

手に入れたのはInna De Yardからリリース
されたCDの中古盤でした。
全13曲のCDの他にChinna Smithの
インタビューとChinna Smithの自宅の庭での
録音の模様が収められたDVDが付いた
アルバムでした。

ちなみにこのEarl 'Chinna' Smith & Idrens
は、第2集が2008年にリリースされて
います。

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Earl "Chinna" Smith & Various ‎– Inna De Yard Vol. 2 (2008)

全13曲で収録時間は約66分。
CDの他にChinna Smithのインタビュー
(17分48秒)とChinna Smithの自宅の庭
での録音の模様(43分37秒)が収められ
たボーナスDVDが付いていました。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Recorded at Cinna's yard, Kingston 10, mid-august 2004,
by Clive 'Dub King' Geffrey & Earl Smith Jr 1.
Produced by Earl 'Chinna' Smith
Exective Producer: Baghir Soundicate
Mixed at Bunny Lee Studio by Clive 'Dub King' Geffrey
Mastered at Dubwise Factory by Serial P

Coodination project: Winston McAnuff & Baghir
Photos & films: Nicolas 'Kousou' Manet
Artwork & editing: Nicolas 'Kousou' Manet
Guitars: Earl Smith, for themselves The Maestro, Ken Bob, Emmanuel I, Michael Enkrumah
Percussions: Jah Youth, Ken Bob, Emmanuel I, Earl Smith, Kevin, Kiddus I
Faraway drums: Kush McAnuff

となっています。

録音は2004年の8月の中頃にキングストン
にあるChinna Smithの自宅に庭で行われ、
録音を担当したのはClive 'Dub King' Geffrey
とEarl Smith Jr 1。
プロデューサーはEarl 'Chinna' Smithで、
エグゼクティヴ・プロデューサーはBaghir
Soundicate。
ミックスはBunny Lee Studioで行われ、
ミキシング・エンジニアはClive 'Dub King'
Geffrey。

ミュージシャンはギターにEarl Smithと
The Maestro、Ken Bob、Emmanuel I、
Michael Enkrumah、パーカッションに
Jah YouthとKen Bob、Emmanuel I、
Earl Smith、Kevin, Kiddus I、「Faraway
drums」にKush McAnuffという布陣です。

写真とフィルム(録画)、アルバム・デザイン
はNicolas 'Kousou' Manet。

裏ジャケには曲目とアーティスト名が載って
いますが、そこに乗っているアーティストは
Earl Flute、Darajah(別名Jah Youth)、
Israel Voice、Ade Culture、Ras Michael
Junior、Chinna、Emmanuel I、Ken Bob、
The Maestroという名前があります。
そのうち「Earl Flute」と「Chinna」は、
Earl 'Chinna' Smithの事のようです。
パソコンのiTunesで読み込むと、どちらも
Earl 'Chinna' Smithとアーティストが表示
されます。

Ras Michael JuniorはあのSons Of Negusで
活躍したRas Michael本人ではなく、その
息子のようです。
今回のアルバムにも収められた「Medecine
Man」を含むアルバムが、「Inna De Yard」
シリーズの1枚として発売されています。

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Ras Michael Junior ‎– Medicine Man (2007)

ネットのDiscogsのリリースを見る限りでは、
アルバム・リリースはこの1枚のみのよう
です。

ちなみにパソコンのiTunesで読み込むと
Ken Bobの名前が「Ken And Bob」と表示され
ますが、これは明らかな間違いでKen Bobと
いう名前のアーティストなんですね(笑)。

さて今回のアルバムですが、この「Inna De
Yard」シリーズは昔の曲をアコースティック
で再演するというそれだけのシリーズなん
ですが、これが本当に良いシリーズなんです
ね。
おそらくそれはレゲエ・ミュージシャンと
して歳を重ねて来た彼らの、まだけっして
衰える事の無い音楽への情熱が垣間見える
からなんですね。

アコースティックで昔の歌を歌いながら、
自分の人生を振り返る、そこには彼らの
アーティストとしての様々な思いがあると
思います。
けれど信念を持って生きて来た彼らの生き
ざまは、やはりカッコいいんですね。
年老いてもなお衰えない情熱、清く正しい
魂。
そこには信念を持って生きて来た彼らだから
こその、同志への共感があります。

Earl 'Chinna' Smithのアコースティック・
ギターを中心とした演奏で歌われる楽曲は、
魂が震えるほど美しく、同時に力強いんです
ね。

1曲目はEarl Fluteの「Home Grown」です。
Earl 'Chinna' Smithのアルバム・タイトル
にもなった、彼の代表曲のひとつです。
アコースティックで演奏される曲には独特の
美しさがあります。
この曲はボーナスDVDにもその録音風景が
写されています。
録音されたのは夜で、曲の初めにフー、フー
という息を吹きかける音が入っていますが、
マリファナを吸う喫煙具(チャリス)の火
起こしをしている音なんですね。
(もちろんマリファナは吸ってはいけ
ません!)
リラックスした空気が伝わって来る1曲です。

Earl ''Chinna'' Smith & Idrens Inna De Yard 2004 01 Homegrown Chinna


2曲目はDarajah a.k.a Jah Youthの
「Well Ah O」です。
リズムを取るようなギターのフレーズに
乗せたトースティングです。
こうしてアコースティックな演奏で聴くと、
トースティングもずいぶんイメージが違って
聴こえるのが面白いところ。

Earl ''Chinna'' Smith & Idrens Inna De Yard 2004 02 Well Ah Oh Jah Youth


3曲目はIsrael Voiceの「All With Life」
です。
こちらもギターのリズムに乗せたトース
ティングです。
パーカッションとギターがあればすぐに
パフォーマンスを発揮できる、DVDなど
を見るとChinna Smithの元に集うアーティスト
はそのくらいのスキルをみんな持っているん
ですね。
自分の出番になるとすぐにそのスキルを発揮
する、リラックスした中にそうした緊張した
空気も同時に混在しているのが面白いところ。

Earl Chinna Smith & Idrens Inna de yard - Israel Voice - All With Life - Ade Culture - Jugdement


4曲目はAde Cultureの「Judgement」です。
こちらも生ギターに乗せたトースティングの
曲です。
表情豊かな語りが印象的。

5曲目はEarl Fluteの「We Got Love」です。
こちらもボーナスDVDに録音風景が収められ
ている曲で、夜の録音だったようです。
ブルージーなギターの演奏に、Chinna Smith
の味のあるヴォーカルも魅力的。
ギタリストとして知られる彼ですが、声も悪く
ないし、歌わせてもちゃんと聴かせるヴォー
カルを取れるんですね。

Earl ''Chinna'' Smith & Idrens Inna De Yard 2004 05 We Got Love Chinna


6曲目はRas Michael Juniorの「Medecine
Man」です。
書いたように2007年に彼の唯一のソロ・
アルバムが、この「Inna De Yard」シリーズ
から発売されています。
彼やKiddas Iなど、それまで日の当たら
なかったアーティストに光を当てたのも、
この「Inna De Yard」シリーズの功績なん
ですね。
浮遊感のあるギターが心地良い1曲。

7曲目はChinnaの「Satan Side」です。
こちらもChinnaがヴォーカルの曲です。
心地良いアコースティック・ギターに、一言
一言丁寧に歌うヴォーカルが良い味を出して
います。

8曲目はEmmanuel Iの「Grow Spiritualy」
です。
こちらもボーナスDVDに収められている
1曲です。
映像を見ると録音されたのは夜だった模様。
語りかけるような感情の入ったヴォーカル
に、アコースティック・ギターの音色が
とても魅力的。

Earl ''Chinna'' Smith & Idrens Inna De Yard 2004 08 Grow Spiritually Emmanuel I


9曲目はChinnaの「Mariwana」です。
こちらはChinnaのもっとも知られている
代表曲です。
タイトルがタイトルなのでYouTubeを探して
もなかなか載っていませんが(笑)、ギター
1本の演奏でもやっぱり良い曲なんですね。

10曲目はKen Bobの「A Chapter A Day」
です。
メロディを刻むアコースティック・ギター
に、Ken Bobの陰影のあるヴォーカルが
魅力的な曲です。

Earl ''Chinna'' Smith & Idrens Inna De Yard 2004 10 A Chapter A Day Ken Bob


11曲目はChinnaの「Humble Servant」
です。
心地良い生ギターのメロディに、Chinna Smith
のちょっとしゃがれたヴォーカルが魅力的。

12曲目はThe Maestroの「Are You Ready」
です。
生ギターに乗せたThe Maestroのちょっと
突き抜けたような通るヴォーカルが魅力的
な曲です。

Earl ''Chinna'' Smith & Idrens Inna De Yard 2004 12 Are You Ready The Maestro


13曲目はEarl Fluteの「Daniel」です。
こちらも生ギターにChnnaの感情の入った
ヴォーカルが良い味を出している曲です。

ボーナスDVDについてもちょっと書いて
おきます。
内容はEarl 'Chinna' Smithの17分46秒
に及ぶインタビューと、「Inna De Yard」の
セッションの模様を録画したビデオとに分か
れています。
チャプターごとの構成は以下の通りです。

(Chapter 1) Intro
(Chapter 2) Home Grown - Chnna
(Chapter 3) We Got Love - Chinna
(Chapter 4) Island In The Sun - Ken Bob
(Chapter 5) Grow Spiritualy - Emmanuel I
(Chapter 6) Dog Is Man's Best Friend - Ras Michael Jr
(Chapter 7) King Of King - Jah Youth
(Chapter 8) Bonus 1
(Chapter 9) Bonus 2
(Chapter 10) Bonus 3
(Chapter 11) Credits

タイトル表示からChnnaの録画風景が写され、
「Home Grown」と「We Got Love」の演奏の
模様が収められているんですね。
時間帯は夜で、けっこう薄暗い状態で演奏
しています。

続いてKen Bobのアルバムには収められて
いない曲「Island In The Sun」の演奏。
こちらも夜の演奏で、Ken Bobの生ギターに
ヴォーカルの演奏はなかなかカッコいいです。

次にEmmanuel Iの「Grow Spiritualy」の演奏
と続きます。

次にRas Michael Jrのアルバムに収められて
いない曲「Dog Is Man's Best Friend」の
演奏風景。
こちらは昼間の録音で、周りの人も笑顔。
おそらくちょっとふざけた曲なんでしょう。
そのリラックスした雰囲気がとてもイイ
です。

次にJah Youthの「King Of King」という曲
の演奏でこちらも昼間。
Jah Youthは頭に葵ターバンを巻いて、手に
タンバリン、網のランニングTシャツという
ラフなスタイル。
こちらもリラックスしたセッションの空気が
あります。
「Bonus 1」となっているのはその続きで、
いつの間にかChinnaがエレクトリック・
ベースで演奏に参加しています。

「Bonus 2」はかなりハイになったミュージ
シャンたちの様子が写っています。
一人のアコースティック・ギターに乗せ、
若い子から年配者までは手を振り回して踊り
ながら歌う、楽しそうな姿が映し出されて
います。
最後にChinnaとKiddus Iがチャリスを回して
吸っているところも。

「Bonus 3」はKiddus Iのヴォーカルの姿と、
Chinnaが短パンで足を投げ出し、ギターを
弾いているシーンが写っています。
最後にエンド・ロールとしてミュージシャン
の名前が流れます。

実際の録音風景が収められているのも貴重
ですが、年輩のミュージシャンがハイに
なって手を振り回してはしゃいでいる姿は
とても印象的です。

ざっと追いかけて来ましたが、この後この
「Inna De Yard」シリーズは大人気の
シリーズとなりますが、このアルバムはその
原点のアルバムなんですね。

こうしたアルバムがMakasoundが無くなって
しまった為に手に入りにくくなっている現状
は、非常に残念です。

たとえいくら歳をとっていても集う仲間が
居れば彼らはまたミュージシャンに戻り、
昔と変わらぬ情熱で演奏をする力がある。
このアルバムはそうした彼らの実力を
あらためて証明したアルバムで、レゲエ好き
にとってはタマラないアルバムなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Earl 'Chinna' Smith & Idrens
○アルバム: Inna De Yard
○レーベル: Inna De Yard
○フォーマット: CD+DVD
○オリジナル・アルバム制作年: 2004

○Earl 'Chinna' Smith & Idrens「Inna De Yard」曲目
Disc 1 (CD Audio)
1. Home Grown - Earl Flute
2. Well Ah O - Darajah a.k.a Jah Youth
3. All With Life - Israel Voice
4. Judgement - Ade Culture
5. We Got Love - Earl Flute
6. Medecine Man - Ras Michael Junior
7. Satan Side - Chinna
8. Grow Spiritualy - Emmanuel I
9. Mariwana - Chinna
10. A Chapter A Day - Ken Bob
11. Humble Servant - Chinna
12. Are You Ready - The Maestro
13. Daniel - Earl Flute
Disc 2 (DVD Bonus)
1. Interview - Earl 'Chinna' Smith
2. Acoustic Session Inna De Yard