今回はBunny Wailerのアルバム

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「Time Will Tell: A Tribute To Bob Marley」です。

Bunny Wailerはスカの時代からコーラス・
グループThe Wailersの一人として活躍した
のちに、ソロとしても活躍したシンガーです。

スカの時代にBob MarleyとPeter Toshと
3人組コーラス・グループThe Wailersを
結成した彼は、名門レーベルStudio Oneから
「Simmer Down」など多くのヒット曲を飛ばし、
ジャマイカで人気グループになって行くん
ですね。
このスカの時代はThe Skatalitesなどを
バックにしたコーラス・グループとして活躍
するんですが、ロックステディ→ルーツ・
レゲエと時代が進むうちにリズム隊のBarrett
兄弟なども加えたバンド形式の5人組グループ
The Wailersへと変化して行きます。
そしてメジャー・レーベルIslandと契約し、
1973年に「Catch A Fire」で念願の世界
デビューを果たすんですね。

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The Wailers - Catch A Fire (1973)

ところが2枚目のアルバム「Burnin'」を
リリースしたところで、このBunny Wailerと
Peter Toshがグループを脱退してしまうん
ですね。
その理由は世界を回るツアーの辛さの為だ
とも、Islandが「白人にも解る音楽を」と
いう要求をし二人がそれに反発した為だ
とも言われています。

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The Wailers ‎– Burnin' (1973)

残されたBob Marleyはその後Bob Marley &
The Wailersと名乗って世界を相手にバンド
活動を続け、Peter Toshはソロとしてやはり
世界を相手に活動を続けました。
そしてこのBunny Wailerはジャマイカ国内に
とどまり、時々ソロ・アルバムを出したり
ライヴを行ったりしながら、時に農業を
行ったり独自の道を歩むんですね。

アーティスト特集 Bunny Wailer (バニー・ウェイラー)

今回のアルバムは1990年にUSの
Shanachieというレーベルからリリースされ
た彼のソロ・アルバムです。
副題の「A Tribute To Bob Marley」という
タイトルからも解るように、81年に亡く
なったBob Marleyの楽曲をカヴァーした
アルバムです。
そうした仲間だったBob Marleyを偲んでの
アルバムなんですね。

The Wailers がメジャー・デビューする前
の名曲「Soul Rebel」をはじめ、ロックの
Eric Claptonが歌った事でも知られる
「I Shot The Sheriff」、泣きの名曲
「No Woman No Cry」、エチオピア皇帝
ハイレ・セラシエの演説をそのまま歌詞に
起こした「War」など、Bob Marleyの名曲を
Bunny Wailerの熱唱で聴かせるアルバムに
仕上がっています。

ちなみに87年にはPeter Toshも強盗に銃殺
されていて、この90年の時点で彼が唯一
存命の「オリジナル・ウェイラーズ」だった
んですね。

手に入れたのはShanachieからリリースされた
CDの中古盤でした。

全10曲で収録時間は約45分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Drums: S. Dunbar, A. Scott, C. Davis
Bass: R. Shakespeare, E. Holt, R. Walters
Guitar: D. Bryan, E. Lamont, F. Stewart, D. Pinkney, Sowell
Keyboards: K. Sterling, S. Johnson, T. Asher
Hornes: D. Fraser, N. Robinson, H. Bennett
Percussion: U. Thompson, Bunny Wailer
Vocals: Bunny Wailer
Backing Vocals: Psalms, Marcia Griffiths

Produced, performed, arranged & directed by: Bunny Wailer
All songs written by: Bob Marley except "War" Speech by His Imperial Majesty Haile Selassie I
Recorded & Mixed at: Harry J's & Dynamic Sounds Studios
Engineers: David & Maxi
Acconpanied by: Bunny Wailer
Edited at: Gussy's Studio
Degital Mastering by Robert Vosgien, CMS Digital, California
Front Cover Designs and Hand Lettering by Anita Karl
Front Photo of Bunny Wailer by Paul Perlow
Front Photo of Bob Marley by Anthony Brennan
Back Photo by David Corio

となっています。

ミュージシャンはドラムにS. Dunbarと
A. Scott、C. Davis、ベースにR. Shakespeare
とE. Holt、R. Walters、ギターにD. Bryanと
E. Lamont、F. Stewart、D. Pinkney、Sowell、
キーボードにK. SterlingとS. Johnson、
T. Asher、ホーンにD. FraserとN. Robinson、
H. Bennett、パーカッションにU. Thompsonと
Bunny Wailer、ヴォーカルはBunny Wailerで、
バック・ヴォーカルにPsalmsとMarcia
Griffithsという布陣です。
ミュージシャンの多さから、おそらく録音は
一度ではなく、何度かに分けて行われたもの
と思われます。

Sly & RobbieやRoots Radicsのメンバーが多く
参加しています。
ドラムで「A. Scott」となっているのは
おそらくRoots RadicsのStyle Scottだと思う
のですが、彼の本名はLincoln Valentine Scott
なので、A. Scottだとおかしいんですね…。
おそらく記入間違いかな?と思います。
あとバック・コーラスで、PeterとBunnyが
抜けた後のバック・コーラスをしていた、
女性コーラス・グループI Threeのメンバー
だったMarcia Griffithsが参加しています。

プロデュースとアレンジはBunny Wailer。
録音とミックスはHarry J'sとDynamic Sounds
Studiosで行われ、エンジニアはDavidとMaxi。

さて今回のアルバムですが、このBunny Wailer
はたびたびThe WailersやBob Marleyの曲を
カヴァーしている人で、そのあたりが他の
2人に較べて「昔の名前で食べてます」と
いう感じが否めない人なんですが(笑)、
ただ今回のアルバムを聴くとその心のこもった
歌いぶりが意外とイイんですね。

特に5曲目「Redemption Song」の熱唱は、
楽曲の素晴らしさもあって涙ものの美しさ
があります。
Bob Marleyのアコースティック・ギターの
ヴァージョンも素晴らしいですが、こちらは
ピアノ(K. Sterlingあたりか?)のリリカル
なメロディに乗せたBunny Wailerのヴォーカル
が本当に良いです。
Bob Marleyの作った楽曲の素晴らしさが、
実感として解る1曲です。

他にもメジャー・デビュー前の名曲1曲目
「Soul Rebel」や、ロック・シンガーの
Eric Claptonが歌った事でも知られる「I Shot
The Sheriff」、タイトル曲にもなっている
Bob Marleyらしいソング・ライティングの
「Time Will Tell」、Marcia Griffithsと思わ
れる女性コーラスも入った「Bellyfull」、
エチオピア皇帝の演説をそのまま歌詞にした
ラスタファリズム溢れる「War」、Bob Marley
らしい不当な雇い主を糾弾する激しい歌詞の
「Crazy Bald Head」など、Bob Marleyと
盟友Bunny Wailerの2つの魂が共鳴する
アルバムになっています。

意外と見逃されているかもしれませんが、
ジャマイカの音楽史上最強のコーラス・
グループは、The Wailersなんですね。
BunnyとBob、Peterの3人は当時の人気歌手
だったJoe Higgsに育てられたコーラス・
グループで、スカ→ロックステディ→レゲエ
と常にジャマイカのトップを走り続けた
名コーラス・グループだったんですね。
メジャー・デビューする以前の時代から、
彼らは数多くのヒット曲をジャマイカで
生み出しています。

それぞれがソロになってからも活躍している
為に、The WailersというとBob Marleyの
バック・バンドと思う人が多いと思いますが、
スカの時代から偉大な足跡を残して来た
BunnyとBob、Peterの3人組のコーラス・
グループこそ本物のThe Wailersなんです
ね。
その素晴らしいハーモニーがメジャー・
デビュー後の2枚目のアルバム「Burnin'」
を最後に突然失われたのは、とても残念な
事です。

ただオリジナル・ウェイラーズ解散後も
彼らの魂はどこかで繋がっていたという
のは、ファンとしては信じたいところ。
今回のアルバムはBobとPeterが亡くなった
後のアルバムなので、BunnyがBob Marley
の歌を歌うというのはしっかりと聴いて
おきたいアルバムなんですね。
その期待に応えてシッカリと歌い込んでいる
のには、好感が持てます。

1曲目は「Soul Rebel」です。
Bob Marleyがメジャー・デビュー前に
プロデューサーのLee Perryと共演した時の
名曲です。
この曲あのJacob MillerやThe Gladiators
など多くのミュージシャンがカヴァーして
いる曲なんですね。
イントロのピアノのゾクゾクする旋律から、
かみしめるようにシッカリ歌うBunny Wailer
のヴォーカルがとても良いです。

Bunny Wailer d-_-b "Soul Rebel"


2曲目は「I Shot The Sheriff」です。
ロック・スターEric Claptonが歌ってヒット
した事でも知られる曲です。
Eric Claptonは後に「有色人種はイギリス
から出て行け!」とコンサート会場で発言
した事で、あの「ロック・アゲインスト・
レイシズム」運動が起きるきっかけを
作ったロック的に見れば「犯罪者」ですが、
この曲を広めた事だけは評価してあげま
しょう(笑)。
常に自分を目の敵にするシェリフJohn Brown
が俺が町を出て行こうとする時に銃口を向け
たので撃った、そんな貧しい若者のやりきれ
ない心情が歌われています。
熱く語るようなBunny Wailerのヴォーカルと
クールなギターのメロディの対比が印象的。

3曲目は表題曲の「Time Will Tell」です。
こちらはピアノのメロディに乗せた、Bunny
Wailerの丁寧なヴォーカルが印象的な曲です。

4曲目は「Bellyfull」です。
Bob Marleyの2人gだった後のアルバムに
収められていた「Them Belly Full (But We
Hungry)」です。
俺たちは腹ペコなのに奴らは満腹でブクブク
太っている、そうした階級差別を糾弾した曲
です。

Bunny Wailer - Belly Full


5曲目は「Redemption Song」です。
Bob Marleyのオリジナルはアコースティック・
ギターで聴かせる曲ですが、こちらはピアノ
のリリカルなメロディで聴かせる曲に仕上げて
います。
Bunny Wailerの心のこもったヴォーカル…
落涙ものの1曲です…。

Bunny Wailer - Redemption Song


6曲目は「No Woman No Cry」です。
こちらもBob Marleyの大人気曲です。
こちらはラヴ・ソングと思っている人が多い
ようですが、実は「明日俺は旅立つけれど
泣かないで」と歌っている曲なんですね。
「官邸前で夜通し騒いでコーン・ミル粥を
食べた」という歌詞があるので、どうやら
ジャマイカが独立した日の物語のようです。
「戦士」としての旅立ちを歌った歌という
のが正しいようです。
実はBob Marleyはラヴ・ソングが非常に
少ない人で、メジャー・デビュー後に完全に
ラヴ・ソングと呼べるのは「Is This Love」
や「Turn Your Light Down Low」など数曲
しかないんですね。
浮遊感のあるシンセにピアノのメロディ、
噛みしめるようなBunny Wailerのヴォーカル
がとても魅力的な曲です。

Bunny Wailer - No Woman No Cry


7曲目は「Slave Driver」です。
The Wailersのメジャー・アルバム「Catch A
Fire」に収められた曲で、「Catch A Fire」
というタイトルはこの曲の歌詞から取られて
いるんですね。
おそらくBunny Wailerにとっても、思い出の
1曲なんだと思います。
感情の入ったヴォーカルを聴かせています。

Slave Driver, Bunny Wailer


8曲目は「War」です。
この曲はラスタの神エチオピア皇帝ハイレ・
セラシエの演説をそのまま歌詞にした曲です。
「差別が無くならない限り戦いは終わらない」
そういうラスタファリズムのメッセージが
歌われています。

9曲目は「Crazy Bald Head」です。
自分達貧しい黒人から搾取する「キチガイ・
ハゲ頭」を激しく糾弾する歌です。
こちらは重いベースとギターのメロディに
乗せた曲です。

10曲目は「Rebel Music」です。
自分たちの作る音楽は「犯行の音楽」だと
宣言した歌です。
Bob Marleyは常に黒人の立場から、それまで
の白人優位の社会に反発し続け、言葉で世界
を変えようとした人なんですね。
Bunny Wailerがその心強い同士のひとり
だった事は間違いありません。
緊迫感のある演奏に女性コーラス、Bunny
WailerのヴォーカルはBob Marleyが甦った
ようです。

ざっと追いかけて来ましたが、やはりBob
MarleyやBunny Wailerに惹かれてレゲエと
いう音楽を聴き始めた人間にとっては、
このアルバムは何とも言えない思いがある
アルバムなんですね。

もうこの頃はデジタルのダンスホール・
レゲエが全盛の時代の時代で、このアルバム
自体は時代遅れのアルバムだったのかもしれ
ません。
ただレゲエという音楽の始まりには、こう
いう精神があったという事は忘れたくない
ものです。

言葉で世界を変える。
それを行ったからこそレゲエは、初めて
第3世界からの音楽で世界に認められる
音楽になったんですね。
そしてBob Marleyは今でも世界で認められる
ヒーローのひとりです。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Bunny Wailer
○アルバム: Time Will Tell: A Tribute To Bob Marley
○レーベル: Shanachie
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1990

○Bunny Wailer「Time Will Tell: A Tribute To Bob Marley」曲目
1. Soul Rebel
2. I Shot The Sheriff
3. Time Will Tell
4. Bellyfull
5. Redemption Song
6. No Woman No Cry
7. Slave Driver
8. War
9. Crazy Bald Head
10. Rebel Music