今回はJo Jo Bennett & Mudies All Starsの
アルバム

jo_jo_bennett_01a

「Groovy Joe」です。

Jo Jo Bennettはネットの Discogsには次の
ような文章が書かれています。

Jamaican composer, arranger, musician, he began playing the drums,
then was lead trumpeter with the Jamaica Military Band after graduation
from the Alpha Boys' School in Kingston.
He went on to join Byron Lee And The Dragonaires, recording several
albums with them before staying in Canada after the groups show there
at Expo 67.
In 1970 he returned to Jamaica, released his first and only album
"Groovey Joe" while performing live and doing studio work for numerous
record companies.
He then returned to Canada in the late seventies and registered his
music label Bunjo, and is currently the leader of the Toronto based
pop-reggae band The Sattalites.

《ジャマイカの作曲家、アレンジャー、
音楽家。
キングストンにある音楽学校アルファ・
ボーイズ・スクールで初めにドラムを学び、
さらにジャマイカ軍楽隊でリード・トラン
ぺッターとして活躍。
カナダの「Expo 67」の時にByron Lee &
The Dragonairesに加入し、グループ・ショー
の合間にいくつかのアルバムの録音に参加。
70年にカナダからジャマイカに戻り、
スタジオ・ミュージシャンとして活動する
傍ら、ファースト・アルバム「Groovey Joe」
をリリース。
70年代後半に再びカナダに戻り、トロント
をベースとするポップ・レゲエ・バンド
The Sattalitesのリーダーとして、自身の
レーベルBunjoで活動。》
(ネットの自動翻訳で和訳したものを意訳
したので、多少間違ったところがあるかも
しれません。)

60年代後半のロックステディの時代に
「Lecturer」というヒット曲を持ち、
トランぺッターとしてその後のルーツ・
レゲエの時代にもMoodiscレーベルなどで
活躍したのがこのJo Jo Bennettという人
です。

さらに今回のアルバムのMoodiscレーベル
についても書いておきます。

Moodiscは「Drifter」の作曲者として知られる
Harry Modieを中心としたレーベルで、当時の
ジャマイカがプロテスト・ソングやラスタ
ファリズム一色の時代に、一貫してラヴ・
ソングなどのソフトなレゲエを作り続けた
レーベルなんですね。
一見すると硬派でなく軟派なレーベルのよう
に見えますが、実は人になびかない頑固一徹
なところのある個性的なレーベルなんですね。

レーベル特集 Moodisc (ムーディスク)

今回のアルバムはジャマイカの音楽がロック
ステディからレゲエへと変わったばかりの
1970年に、Moodisc Recordsレーベルから
リリースされたJo Jo Bennettのファースト・
アルバムで、彼にとっての唯一のソロ・
アルバムです。
ロックステディの時代のヒット曲「Lecturer」
の再演の他、「Leaving Rome」や「What's
My Colour」など、彼らしいトランペットの
ファンキーな熱演が詰まったアルバムに
仕上がっています。

手に入れたのはMoodisc Recordsレーベルから
リリースされたCDでした。
オリジナルの12曲にCDボーナス・トラック
2曲が追加された、全14曲入りのアルバム
でした。

全14曲で収録時間は約46分。
オリジナルは12曲で、残りの2曲はCD
ボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
Organ: Winston Wright, Robert Lyn
Bass: Jackie Jackson, Val Douglas
Piano: T. Beckford, Gladstone Anderson
Electric Piano: Robert Lyn
Guitar: Hucks Brown, Jeffrey Chung, Mikey Chung
Drums: Winston Grennan, Michael Richards
Tenor Sax: Val Bennett, Tommy McCook, Glen DaCosta
Trombone: Vin Gordon
Trumpet: Bobby Ellis, Jo Jo Bennett, David Madden
Flugelhorn: Jo Jo Bennett
Violin, Viola, Cello, Flute: The Englishmen
Percussion: Denzel Lang, Count Sticky

Produced & Arranged by: Harry A. Mudie
Engineers: Sid Buckner, Harry A. Mudie
Degital Transfer by: Harry Mudie at Moods Digital Lab
Album Concept: Harry A. Mudie
Cover Photography: Harry A. Mudie
Distributed by: Moods Int'l Records

となっています。

ミュージシャンはMoodiscのバンドMudies All
Starsで、オルガンにWinston WrightとRobert
Lyn、ベースにJackie JacksonとVal Douglas、
ピアノにT. BeckfordとGladstone Anderson、
エレクトリック・ピアノにRobert Lyn、ギター
にHucks BrownとJeffrey Chung、Mikey Chung、
ドラムにWinston GrennanとMichael Richards、
テナー・サックスにVal BennettとTommy
McCook、Glen DaCosta、トロンボーンに
Vin Gordon、トランペットにBobby Ellisと
Jo Jo Bennett、David Madden、フリューゲル
ホーンにJo Jo Bennett、ヴァイオリンと
ヴィオラ、チェロ、フルートにThe Englishmen、
パーカッションにDenzel LangとCount Sticky
という布陣です。
ヴァイオリンとヴィオラ、チェロ、フルート
に名前のあるThe Englishmenは、おそらく
名前の載せる事の出来ないアーティストの
別称のようです。
アーティストの記述でたまにこの
The Englishmenという記述があります。

プロデュースとアレンジは、Moodiscの主催者
Harry A. Mudie。
エンジニアはSid BucknerとHarry A. Mudie
が務めています。

アルバム・コンセプトとカヴァー写真は
Harry A. Mudie。
このジャケット写真が面白く、縞の短パンに
素肌に河のビラビラしたベスト、トランペット
を脇に抱えてミラー・グラスを甘噛みする
Jo Jo Bennettの姿がメイン。
右上には岩の後ろからミラー・グラスをかけて
トランペットを突きだすJo Jo Bennettの姿
と、トランペットを吹いているJo Jo Bennett
の姿が載っています。
ダサいんだかカッコイイんだか解りませんが、
かなりファンキーなイメージの写真が使われ
ています(笑)。

さて今回のアルバムですが、一見Moodisc
特有のHarry A. Mudieの作るムーディーな
レゲエかと思いきや、これが独特なファンキー
な香りの漂う不思議な面白さのあるアルバム
なんですね。

このアルバムの大きなポイントは、この
アルバムが作られたのがロックステディの
時代が終わりレゲエが始まった70年頃に
作られたアルバムだという事です。
この初期レゲエの時代はまだレゲエという
スタイルが固まっておらず、どこかファンキー
な不思議な音源が作られているんですね。
例えばRupie Edwardsという人が、「Ire
Feelings (Skanga)」という変なスキャット
が入ったりする不思議とファンキーな楽曲
を残していたりするんですね。

rupie_edwards_01a
Rupie Edwards & Friends ‎– Ire Feelings: Chapter & Version

そういうまだレゲエという形式が整わない、
ロックステディの匂いも残したどこか破れた
ような不思議な音楽が生まれたのがこの時代
だったんですね。
そしてその中からアフリカ回帰(アフリカ
志向)やラスタファリズムといったテーマを
持ったルーツ・レゲエが主流になって行くん
ですね。

今回のアルバムはそのルーツ・レゲエ以前の
初期レゲエの持つどこか形のない破れた空気
が残っているのが、面白いところなんですね。
Harry A. Mudieの作る音楽はムーディーな
ソフトな音楽なんですが、それだけでなく
トースティングともいえない「しゃべり」が
入っていたり、「チクッチクッ」といった
スキャットが入っていたりと、この初期
レゲエの時代らしいビミョ~に変な空気が
漂っているのが面白いところなんですね。

1曲目は「Groovy Jo Jo」です。
ギターのメロディに乗せた語りが入る、
ちょっとファンキーなノリの曲です。

2曲目は「Leaving Rome」です。
リディムはLloyd Jonesという人の「Rome」
という曲のようです。
鳥のさえずりのような効果音にストリングス、
ユッタリとしたホーンのメロディ、いかにも
Harry A. Mudieらしい楽曲ですが、かすれ
気味のホーンがちょっと妖しい空気感…。

Jo Jo Bennett - Leaving Rome


3曲目は「Lecture Me」です。
ロックステディの時代の自らのヒット曲の
セルフ・カヴァーです。
ロックステディらしい刻むようなギターを
バックに、ちょっとオフザケが入ったJo Jo
Bennettのトランペットが冴える曲です。
終わりの方には語りと「チクチッチクチッ」
というスキャットなども入ります。
このアルバムで一番長い6分18秒に及ぶ曲
です。

リズム特集 Lecture (レクチャー)

4曲目は「Me And You」です。
ちょっと忙しないギターの刻むリズムに、
Jo Jo Bennettの明るいトランペットの
メロディが心地良い曲です。

Jo Jo Bennett-Me & You (Jamaican Serenades Vol.4)


5曲目は「Calling You」です。
こちらもギターのとホーンのメロディによる
明るいナンバーです。

6曲目は「Mother's Love」です。
こちらはギターとピアノをバックにした
Jo Jo Bennettの表情豊かなトランペット
が印象的な曲です。

7曲目は「What's My Colour」です。
こちらは明るいホーン・セクションのイントロ
から、Jo Jo Bennettのトランペットが冴え
渡る曲です。

8曲目は「10 Steps To Soul」です。
ちょっと変な空気感の語りから、ホーンと
オルガンのメロディ、ストリングスが活躍
する曲です。
複雑に絡み合うホーンのメロディが面白い
1曲。

Ten Steps To Soul - Jo Jo Bennett (Moodisc)


9曲目は「Velvet Mood」です。
いかにもMoodiscらしいストリングスとピアノ
のソフトな楽曲に、Jo Jo Bennettの伸びやか
なトランペットのメロディが絡む曲です。

JO JO BENNETT - Velvet mood (1971 Moodisc pre release)


10曲目は「In The Nude」です。
オルガンのイントロから、心地良さそうな
Jo Jo Bennettのトランペットが良い味を
出している曲です。

11曲目は「Let Me Tell You Boy」です。
リディムはEbony Sistersの同名曲です。
ロックステディの匂いを残す楽曲に、
Jo Jo Bennettを中心としたホーン・
セクションがボリュームのある魅力を
プラスしている1曲。

Jojo Bennett - Let me tell you boy


12曲目は「Sweet V」です。
ギターとオルガンのメロディのイントロ
から、切れ味のあるトランペットのメロディ
が心地良い曲です。

REGGAE~JO JO BENNETT - Sweet V


残りの2曲はCDボーナス・トラックです。

13曲目は「Going Home」です。
女性の伸びのある歌声と男性のソウルフルな
ヴォーカルのバラード・ナンバー。

14曲目は「Cantaloupe Rock」です。
ギターとホーン・セクションによる、
ムーディーなナンバーです。

ざっと追いかけて来ましたが、特にロック
ステディの時代の彼自身のヒット曲
「Lecture Me」のセルフ・カヴァーなどは
かなり遊びの要素が見られ、このアルバムが
ただのムーディーなインスト・アルバムでは
ない事がよく解ります。
まだ形には完全にはならないモヤっとした
初期レゲエ特有の空気感があるのが、この
アルバムの面白さなんですね。

主役であるJo Jo Bennettも、タイトル通り
グルーヴィーでちょっとイカレた雰囲気が
あるのも面白いところです。
メローでありながらちょっとファンキーと
いう、ちょっと面白いインスト・アルバムが
今回のアルバムなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Jo Jo Bennett & Mudies All Stars
○アルバム: Groovy Joe
○レーベル: Moodisc Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1970

○Jo Jo Bennett & Mudies All Stars「Groovy Joe」曲目
1. Groovy Jo Jo
2. Leaving Rome
3. Lecture Me
4. Me And You
5. Calling You
6. Mother's Love
7. What's My Colour
8. 10 Steps To Soul
9. Velvet Mood
10. In The Nude
11. Let Me Tell You Boy
12. Sweet V
(Bonus Tracks)
13. Going Home
14. Cantaloupe Rock