今回はAugustus Pabloのアルバム

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「Dubbing In A Africa」です。

Augustus Pabloは70年代のルーツ・レゲエの
時代から活躍したメロディカ奏者、キーボード
奏者、プロデューサーとして知られている人
です。
それまで練習用の楽器ぐらいにしか思われて
いなかったメロディカを駆使して、レゲエに
それまでに無い新しい音楽というイメージを
プラスしたのがこの人なんですね。

数々のセッションに参加し、多くのインスト
やダブ・アルバムを残し、Hugh Mundellを
はじめとする若手のミュージシャンを育てた
彼でしたが、1999年に筋無力症のために
亡くなっています。

アーティスト特集 Augustus Pablo (オーガスタス・パブロ)

今回のアルバムはレゲエがルーツ・レゲエ
からダンスホール・レゲエの時代に切り
替わったあたりの1981年にClocktower
系列のカナダのレーベルAbrahamからリリース
された彼のダブ・アルバムです。

バックにSly & RobbieやRoots Radicsで
活躍したBingy Bunnyなどが参加したアルバム
で、ダブ処理は控えめな印象でインストに
近い印象のダブ・アルバムに仕上がって
います。

ちなみにこのLPはアーティスト名の
Augustus Pabloが、2番目の「u」の文字が
抜けた「Agustus Pablo」となっています。

手に入れたのは私がまだ20代だった初めに
レゲエを聴いていた時代で、そのAbrahamから
リリースされた「AALP 25」という品番のLP
でした。

ちなみに再びレゲエを聴き始めてから、CDも
入手しています。
ただタイトルが「Dubbing In A Africa」から
「Agustus Pablo At His Very Best」に変更
されたAbrahamからリリースされたCDでした。
ネットのDiscogsで調べると、1999年に
リリースされたCDだけこの名前でリリース
されているようです。

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Augustus Pablo ‎– Agustus Pablo At His Very Best: Agustus Dubbing and Pumping (CD)

残念ながらCDには多少気になるパリパリ音
が入っています。

LPはSide 1が5曲、Side 2が5曲の
全10曲。
CDは全10曲で収録時間は約30分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by: Augustus Pablo
Arranged by: Charles Reid
Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Rhythm Guitar: Bingy Bunny
Organ: Augustus Pablo
Piano: Melodice Gladdy
Percussion: Sticky
Lead Guitar: Dougie

Cover Design: Jeff Browne
Cover Illustration by: Tony Green

となっています。

LPにはアーティストの記載がありますが、
CDの方はアーティストの記載が削除されて
しまっています。

プロデュースはAugustus Pabloで、アレンジ
はCharles Reid。
ミュージシャンはAugustus Pabloのバンド
The Rockersという事になると思いますが、
ドラムにSly Dunbar、ベースにRobbie
Shakespeare、リズム・ギターにBingy
Bunny、オルガンにAugustus Pablo、ピアノ
にMelodice Gladdy、パーカッションに
Sticky、リード・ギターにDougieという
布陣です。
ピアノの「Melodice Gladdy」は、名ピアニ
ストのGladstone Andersonの事ではないかと
思われます。

また表記はないですが、Augustus Pabloは
もちろんメロディカを演奏。
さらにSide 2の1曲目「Everlasting Dub」
にはトロンボーン、Side 2の5曲目「Herbal
Weed Dub」にはトロンボーンとトランペット
の演奏が入ります。
表記が無いのでハッキリとは解りませんが、
トロンボーンはVin Gordon(Don D Junior)、
トランペットはBobby Ellisあたりではないか
と思われます。

味のあるイラストはJeff Browne、デザイン
はTony Greenが担当しています。

さて今回のアルバムですが、書いたように
比較的ダブ処理は抑え目で、インストに近い
ダブ・アルバムといった印象です。
Augustus Pabloのアルバムにはインストもの
とダブものの2種類がありますが、インスト
ではメロディカを前面に押し立てた演奏を
聴かせますが、ダブでは自分は一歩下がった
位置からコンダクターの役目を果たすように
メロディカも控え目といった印象のアルバム
が多いです。
ただ今回はそうしたインストとダブの中間的
なアルバムなので、比較的メロディカが前面
に出た演奏をしている印象です。
そのバランス加減がちょうど良く、すごく
聴き心地の良いアルバムに仕上がっています。
Augustus Pabloのアルバムの中でも、特に
聴いておくべきアルバムのひとつだと思い
ます。

Augustus Pabloのグルーヴ感満点のメロディカ
が前面に出た表題曲の「Dubbing In A Africa」
や、Gladstone Andersonと思われるピアノが
冴えるBurning Spearの「Marcus Garvey」の
リディムの「Mount Of Olives Dub」、Vin
Gordonと思われるトロンボーンの
「Everlasting Dub」、トロンボーンとトラン
ペットが秀逸な「Herbal Weed Dub」など、
他のアーティストも生かしながらのPabloの
名演が収められています。
特にSide 2の4曲目「King Of Kings Dub」
は、このAugustus Pabloでしか作りえない
ような独特のドラッギーな浮遊感のある
メロディカが魅力的な曲です。

やっぱりこのAugustus Pabloの曲を作る
イマジネーションには圧倒的されるものが
あります。
彼の曲は何度聴いても初めて聴くような発見
があるんですね。
その想像力の豊かさは聴く者の心を惹き
つける強い力のようなものがあり、他の
アーティストにない魅力があります。
インストなのに歌ものより饒舌なインスト、
それがこのAugustus Pabloのインストなん
ですね。

そんな彼のインストを聴いていると、大きな
グルーヴ感に包まれているような幸福感を
感じます。
彼の音楽を聴いていると、嫌な事も全部吹き
飛んでしまって無になれるんですね。
私は正直なところルーツの時代に流行った
ラスタファリズムも信じていないし、
そもそも神だなんだという事があまり解ら
ない人間なんですね。
けれど彼の音楽、彼の言葉なら信じて良い
気がします。
彼の音楽の向き合い方はいつも誠実で、嘘の
ない気がするんですね。

レゲエでこのAugustus Pabloの音楽を聴く事
は、他の音楽では味わう事の出来ないひとつ
の大きな喜びなんですね。

Side 1の1曲目は「Dubbing In A Africa」
です。
Augustus Pabloのメロディカが入って来た
途端に、明るい空気がスリリングに空気に
一瞬で変わる曲です。
どこか懐かしいメロディカのメロディが
魅力的。

Dubbing Inna Africa - Augustus Pablo


2曲目は「Nigerian Love Dub」です。
優しく懐かしいメロディカの奏でるメロディ
が、たまらない魅力の曲です。
Augustus Pabloのエモーショナルな演奏力が
生きた曲です。

augustus pablo - nigerian love dub


3曲目は「Mount Of Olives Dub」です。
リディムはBurning Spearのルーツの名曲
「Marcus Garvey」です。
こちらはGladstone Andersonと思われる
ピアノが白眉な1曲。
リリカルなピアノがメチャクチャカッコいい
です。
今回はこうしたサポート・メンバーが随所で
活躍して、アルバムを引き立てています。

BURNING SPEAR;AUGUSTUS PABLO - Mount Of Olives Dub


4曲目は「Dub In Ethiopia」です。
こちらはAugustus Pabloの奏でる高音な
メロディカのメロディが、アダルトな雰囲気
を醸し出している1曲。

5曲目は「I And I Dub」です。
こちらもピアノのメロディが際立った曲
です。
オルガンとパーカッションがうまく曲に
色付けをしています。

Side 2の1曲目は「Everlasting Dub」です。
リディムはKen Bootheの「Your Feeling
And Mine」。
こちらは茫洋としたトロンボーンの伸びの
あるサウンドが魅力的な曲です。
クレジットが無いので解りませんが、この
トロンボーンはあのVin Gordonか?
Augustus Pabloが主役ではないけれど、
とても魅力的な曲です。

Everlasting Dub - Augustus Pablo


2曲目は「Trench Town Dub」です。
Augustus Pabloのメロディカの、哀愁のある
メロディが全開といった感じの曲です。
様々な表情のあるメロディカを吹き分けられ
るのが、この人の強みです。

Augustus Pablo - Trench Town Dub


3曲目は「Universal Love」です。
リディムはKen Bootheの「Everything I
Own」。
こちらもAugustus Pabloのメロディカが
メインの曲で、哀愁の中にちょっとポジティヴ
なニュアンスを感じる1曲。
2曲目とのメロディカの表情の違いが面白い
ところ。

4曲目は「King Of Kings Dub」です。
今回のアルバムの中でも特に面白いのが
この曲です。
まるで水面がユラユラ揺らめくような、浮遊
感のあるメロディカの響きがすごく面白い曲
です。
こういうちょっと不思議で面白い曲を作れる
Augustus Pabloの感性の豊かさは、他の
アーティストと較べても群を抜いています。

Augustus Pablo - king of kings dub


5曲目は「Herbal Weed Dub」です。
こちらは茫洋としたトロンボーンとパッパッ
とキレの良いトランペットが主役の曲です。
表記が無いので解りませんが、トロンボーン
はVin Gordonで、トランペットはBobby Ellis
か?
グルーヴ感満点の曲です。

なおYouTubeで曲を調べていて気付いたのです
が、今回のアルバムはAugustus Pabloの
75年のアルバム「Thriller」(別タイトル
「Pablo Nuh Jester」)と曲が同じのよう
です。
そのアルバムのダブなのか、それともその
アルバムを再演したものなのか、あるいは
同じ内容のアルバムなのかは、残念ながら
そのアルバムを持っていないので解りません。
Discogsの情報を見て解ったのは、曲の
タイトルはまったく違う事と、ミュージシャン
の記述も違うようだという事だけです。

ざっと追いかけて来ましたが、Augustus Pablo
というアーティストの想像力の大きさを感じる
アルバムで、内容はとても良いと思います。

このAugustus Pabloはその後も亡くなるまで
コンスタントにアルバムをリリースしています
が、比較的アルバムの出来不出来の無い人なん
ですね。
ただその中でも70年代のデビューから80年
代前半ぐらいまでの作品は特に魅力的です。

今回のアルバムもバック・アップしてくれる
仲間のミュージシャンを立てながらも、大きな
イマジネーションの翼を広げている彼の姿が
見えるようなアルバムで、内容はとても良い
と思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Augustus Pablo
○アルバム: Dubbing In A Africa
○レーベル: Abraham
○フォーマット: LP (CD)
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Augustus Pablo「Dubbing In A Africa」曲目
Side 1
1. Dubbing In A Africa
2. Nigerian Love Dub
3. Mount Of Olives Dub
4. Dub In Ethiopia
5. I And I Dub
Side 2
1. Everlasting Dub
2. Trench Town Dub
3. Universal Love
4. King Of Kings Dub
5. Herbal Weed Dub