今回はWayne Smithのアルバム

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「Smoker Super」です。

Wayne Smithは80年代のダンスホール・
レゲエで活躍したシンガーです。
やはり彼の曲と言えば、初のデジタルの
ダンスホール・レゲエのヒット曲「Under
Me Sleng Teng」を忘れる事は出来ません。
カシオトーンを使ったこの曲は、Prince
Jammyプロデュースによる、ジャマイカ初
のデジタル録音の大ヒット曲としてよく
知られています。
これを機にジャマイカでは一気に音楽業界
のデジタル化が進んで、プロデューサーの
Prince Jammy改めKing Jammyを中心とした
デジタル革命「コンピューター・ライズド」
の大ブームが起きるんですね。
その初めてのデジタルのヒット曲を歌った
シンガーとして、知られているのがこの
Wayne Smithというシンガーなんですね。

そうした活躍をしたWayne Smithですが、
2014年に48歳という若さで亡くなって
います。

アーティスト特集 Wayne Smith (ウェイン・スミス)

'Under mi Sleng Teng'でレゲエ史に革命を起こしたウェイン・スミス(Wayne ...

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Wayne Smith ‎– Under Me Sleng Teng (1986)

今回のアルバムは1985年にUKの
Chartboundというレーベルからリリース
された彼のソロ・アルバムです。
85年というと彼のデジタルの初のヒット
「Under Me Sleng Teng」がリリースされた
年だと思うのですが、このアルバムはその
以前にリリースされたアルバムで、まだ
生演奏のアナログ録音のアルバムです。
ただ80年代前半に流行したアーリー・
ダンスホールのスローなリズムからはだいぶ
空気が変わっている感もあり、デジタルに
移行する「前夜」のざわついた空気の匂い
のするアルバムなんですね。

歴史的な1曲を歌ったWayne Smithですが、
ネットのDiscogsの履歴を見ると、82年の
ファースト「Youthman Skanking」から、
共演盤1枚も含めてわずか5枚のアルバム
しかリリースしていないんですね。
しかも共演盤以外はすべてPrince Jammy
(King Jammy)のプロデュースのアルバム
なんですね。

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Wayne Smith ‎– Youthman Skanking (1982)

この事からも彼がPrince Jammyの子飼いの
アーティストだった事が解ります。

手に入れたのはChartboundからリリース
されたLPの中古盤でした。
中古で売られていましたが、ビニールが
未開封のほぼ新盤のアルバムで、3200円
と書かれたバーコードも入ったシールが貼ら
れていました。(実際の購入金額は千円。)

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced and arranged by Prince Jammys
Mixed at Channel 1 Studio
Distributed by Jet Star
Design & Artwork by Tony Port

という記述があります。

プロデュースとアレンジはPrince Jammys
で、ミックスはChannel 1 Studio。

バックのミュージシャンの記載はありません。

ジャケット・デザインはTony Portという人
が担当しています。
マールボロか何かのタバコのロゴを「Ganja」
と変えたデザインです。

さて今回のアルバムですが、やはり今回の
アルバムの魅力は80年代前半のアーリー・
ダンスホールからデジタルのダンスホール・
レゲエと変わる予兆が感じ取れる点にあり
ます。
このアルバムではアーリー・ダンスホール
で流行ったスローなワン・ドロップから、
明らかにリズムはテンポ・アップしている
んですね。
「Sleng Teng」以前のアルバムですが、
明らかに時代が変わり始めている事が実感
できるアルバムになっています。

ジャマイカの音楽史を見てみると60年代の
アップ・テンポのスカから、66~68年の
3年間だけスローなリズムのロックステディ
に変わり、70年代にはミディアム・テンポ
のルーツ・レゲエとなり、80年代前半の
5年間ぐらいはまたスローなワン・ドロップ
のアーリー・ダンスホールの時代となり、
85年にデジタルのダンスホール・レゲエが
登場という具合に、時代の変わり目にスロー
なの音楽ロックステディやアーリー・ダンス
ホールが数年だけ流行して、音楽が変わって
行くんですね。
今回のアルバムはそうした時代の変わり目が
記録されているところが、ひとつの面白さ
です。

このアルバムを聴くと、時代はこの頃には
明らかにアップ・テンポな音楽を求めていた
事が解るんですね。
そのアップ・テンポなリズムとデジタル
(コンピュータ)が結びついて誕生したの
が、あの「コンピューター・ライズド」
だったという訳です。
Wayne Smithと友達のNoel Daveyがカシオ・
トーンを買って、2人がキーボードをイジって
いた時に偶然発見したのがあの「Sleng Teng」
のリズムだと言われていますが、このアルバム
ではまだデジタルという発想はないものの、
リズム自体はすでに「Sleng Teng」に繋がる
要素があるんですね。

Side 1の1曲目のアップ・テンポなピアノの
メロディに乗せた「Crazy Eyes」や、5曲目
Sound Dimensionの「Real Rock」のリディム
を使った「Run Up And Down」、Side 2の
4曲目「Double Wrong」などからはその後の
デジタルのダンスホール・レゲエに繋がる
ニュアンスが、確かに感じられるんですね。
そうしたWayne Smithの素質を見抜いて重用
したPrince Jammyという人のプロデュース
力も、やはり大したものなんですね。

どうしてもその後のデジタルのダンスホール・
レゲエの印象が強烈すぎて見過ごされがち
ですが、このあたりの音源もレゲエ好き
としては押さえておきたいところだと思い
ます。

Side 1の1曲目は「Crazy Eyes」です。
アップ・テンポなピアノとギターのメロディ
に乗せた、Wayne Smithのちょっとしゃがれた
ヴォーカルが印象的な曲です。
スローなアーリー・ダンスホールとは
ちょっと違う空気感が心に残ります。

Wayne Smith - Crazy Eyes (Smoker Super - 1985)


2曲目は「Nowadays Style」です。
こちらは印象的なホーンのメロディと、伸び
やかなWayne Smithのヴォーカルが印象的な
曲です。

3曲目は「Trid Out, Trid In」です。
こちらはピアノのメロディに乗せたワン・
ドロップの曲です。
この曲にはまだアーリー・ダンスホールの
匂いがあります。
感情を乗せたWayne Smithのヴォーカルと、
淡々としたピアノが魅力的。

4曲目は「When You're Young」です。
明るいギターのメロディに乗せた曲です。
ワン・ドロップのリズムに、ちょっとエコー
の入ったWayne Smithのヴォーカルが心地
良い曲です。

Wayne Smith - When You're Young (Smoker Super - 1985)


5曲目は「Run Up And Down」です。
リディムはSound Dimensionのロックステディ
のヒット曲「Real Rock」。
定番リディムのひとつですが、アップ・
テンポの中にうまく新しい空気を盛り込んで
います。

Wayne Smith - Run Up And Down (Smoker Super - 1985)


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

Side 2の1曲目は「Too Dam Craven」です。
ギターを中心としたワン・ドロップのメロディ
に、表情豊かなWayne Smithのヴォーカル。
こちらはアーリー・ダンスホールの湿った
空気感を感じる1曲です。

2曲目は表題曲の「Smoker Super」です。
アーリー・ダンスホールの匂いも残した、
ギターをシンセを中心としたガンジャ・
アンセムです。
エコーのかかったWayne Smithのヴォーカル
に、ノリの良いシンセのメロディがグッド。

Wayne Smith - Smoker Super


3曲目は「Trod It On」です。
ギターのユラユラとしたメロディに、Wayne
Smithの丁寧に歌う表情豊かなヴォーカル、
シッカリと刻むワン・ドロップのリズムが
心地良い曲です。

Wayne Smith - Trod It On


4曲目は「Double Wrong」です。
勢いのあるWayne Smithのヴォーカルに
コーラス・ワーク、テンポ・アップしたノリ
の良いピアノのメロディのワン・ドロップ
に乗せた曲です。

Wayne Smith - Double Wrong


5曲目は「Cheating Woman」です。
リリカルなピアノのメロディに乗せた、Wayne
Smithのヴォーカルが魅力的な曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、Wayne Smith
の曲には独特のノリのようなものがあり、
このアーティストの才能を感じます。
その彼自身のリリックと、コンピューターの
リズムが出会ってブレイクしたのが、あの
「Under Me Sleng Teng」という曲だったん
ですね。

このWayne Smithはあのデジタルの「Sleng
Teng」ばかりが注目されてしまうアーティスト
ですが、そのリリース枚数は少ないですが、
今回のアルバムやファーストの「Youthman
Skanking」など、なかなか面白いアルバムを
残している才能のある人なんですね。
今回のアルバムなどを見ても、この時代の
空気や予兆をうまく詰め込んだアルバムに
仕上がっています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Wayne Smith
○アルバム: Smoker Super
○レーベル: Chartbound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Wayne Smith「Smoker Super」曲目
Side 1
1. Crazy Eyes
2. Nowadays Style
3. Trid Out, Trid In
4. When You're Young
5. Run Up And Down
Side 2
1. Too Dam Craven
2. Smoker Super
3. Trod It On
4. Double Wrong
5. Cheating Woman