今回はWelton Irieのアルバム

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「Reprobate」です。

Welton Irieは80年だ前半のアーリー・
ダンスホール・レゲエの時代に活躍した
ディージェイです。
ネットのWikipediaの彼のページには、次の
ような紹介文が書かれています。

Welton Irie (born Welton Dobson, 1961 in Jamaica),
sometimes credited simply as Welton, is a Jamaican
reggae deejay, best known for his work in the late
1970s and early 1980s.

《Welton Irie(本名Welton Dobson。
1981年ジャマイカ生まれ。)は時に
シンプルにWeltonとクレジットされる事の
ある、70年代後期から80年代初期に活躍
したジャマイカのレゲエ・ディージェイ
です。》

Welton Irie - Wikipedia

ネットのDiscogsで彼の履歴を調べてみると、
その言葉通り彼のリリースした7枚のアルバム
のうち6枚が80~83年までにリリース
したアルバムなんですね。
(残りの1枚は95年に発表された、General
Ploughという人と曲が半々入ったクラッシュ
盤です。)
シングル盤は77年から58枚もリリース
しているので、かなりの人気ディージェイで
あったと思われますが、アーリー・ダンス
ホール以降はパッタリと活躍が途絶えている
のがこのWelton Irieです。

今回はアーリー・ダンスホール期に入った
1982年にChannel One傘下のレーベル
Hit BoundからリリースされたWelton Irie
のソロ・アルバムです。
プロデュースはNiney Holmesとなっていて、
あのWinston 'Niney The Observer' Holness
と思われます。
演奏はRadics(Roots Radics)で、ミックス
はScientistという、このアーリー・ダンス
ホールで大活躍した面々が揃ったアルバム
です。

手に入れたのはHit Boundからリリースされた
LPの中古盤でした。
かなり年季の入ったジャケットで(笑)、
ジャケット左側は濡れたシミ、少し底抜け
しているジャケットでした。

Side 1は5曲、Side 2は4曲の全9曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Players: Radics
Drums: Style
Bass: Flabba
Guitar: Bingy Bunny, Dwight Pickney
Keyboards: Steele
Percussion: Sky Juice
Hornes: Eradication Squad

Produced by Niney Holmes
Executive Producer: Joseph Hoo Kim
Track Laid by Soljie
Mixed by Scientist
Rhythm Track Recorded at Channel One Recording Studio
Mixed at Channel One Recording Studio, Kingston, Jamaica

となっています。

演奏はRadics(Roots Radics)で、ドラムに
Style Scott、ベースにFlabba Holt、ギター
にBingy BunnyとDwight Pickney、キーボード
にSteele、パーカッションにSky Juice、
ホーン・セクションにEradication Squadと
いう布陣です。

プロデュースはNiney The Observerで、
エグゼクティブ・プロデューサーにJoseph
Hoo Kim、レコーディング・エンジニアに
Soljie、ミックス・エンジニアにScientist。
リズム・トラックのレコーディングと
ミックスはChannel One Recording Studioで
行われています。

さて今回のアルバムですが、このWelton Irie
という人、独特の節回しを持った個性的な
ディージェイでなかなか良いんですね。

実はこの人ちょっと前からマークしていた
ディージェイなんですね。
理由は単純でBlood & Fireレーベルから
2001年にリリースされた、レゲエの
ソウル・カヴァーの楽曲を集めたアルバム
「Darker Than Blue: Soul From Jamdown
1973-1980」にこの人の曲が入っていたから
なんですね。

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Various ‎– Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973-1980 (2001)

ソウルとレゲエの深い関わりを見つめたBlood
& Fireレーベルのアルバムの中でも特に素晴ら
しいアルバムですが、その全18曲の一番
最後の曲がWelton Irieの「Hotter Reggae
Music」なんですね。
この曲は17曲目のThe Tamlinsの
「Baltimore」のディージェイ・ヴァージョン
で、全体に暗い沈んだ曲調の中にWelton Irie
の力強いトースティングがとても印象に残る
曲です。
それ以来このWelton Irieというディージェイ
が、とても気になる存在になっていた訳です。

ちなみにBlood & FireレーベルのSteve Barrow
氏はこのWelton Irieがお気に入りのようで、
Sylford Walkerの「Lamb's Bread」と、
「Lamb's Bread」のディージェイ・ヴァー
ジョンのWelton Irieのアルバム「Ghetto Man
Corner」をひとつにまとめた「Lamb's Bread
International」というアルバムもBlood &
Fireからリリースしています。

さらに今回調べたところでは、このアーリー・
ダンスホールの時代のディージェイのライヴ
を集めたアルバム「A Dee-Jay Explosion Inna
Dance Hall Style」にも、このWelton Irieの
「Herb Man Trafficking」という曲が1曲
入っていました。

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Various ‎– A Dee-Jay Explosion Inna Dance Hall Style (1982)

今はあまり知られていない人かもしれません
が、80年代前半のアーリー・ダンスホール
の時代には確かに活躍していたディージェイ、
それが今回のWelton Irieという人なんです
ね。

実際にアルバムを聴いてみると、この人の
独特のトースティングが魅力的。
すごくトースティングがウマいという人では
ないんですが、独特の味のある節回しに惹き
付けられるものがあります。
このトースティングはちょっと好き嫌いが
分かれるところがあるかもしれませんが、
ハマるとかなり好きになりそうなトース
ティングで、そのあたりがあのSteve Barrow
氏がBlood & Fireでたびたび取り上げた要因
なんじゃないかと思います。

彼の個性が出た1曲目「Obeah Man」や、
Sound Dimensionの「Real Rock」のリディム
の2曲目「Mr. Irie」、「Taxi」リディムの
4曲目「Guns Out A Hand」、かえって
グズグズのトースティングが意外とイケてる
5曲目「Chalice」など彼らしい個性がよく
出たアルバムで、なかなか面白いアルバム
なんですね。
もちろん彼らしいトースティングをうまく
引き立てている、バックのRoots Radicsと
ミックスのScientistの仕事ぶりも見逃せ
ません。
こうしたサウンドはこのアーリー・ダンス
ホールの時代だからこそ出来た、唯一無二の
サウンドなんですね。

Side 1の1曲目は「Obeah Man」です。
Welton Irieらしい独特の節回しを持った
トースティングが、魅力的な曲です。
彼のトースティングを支えるようにバックで
流れるピアノのメロディが、良い味を出して
います。

Welton Irie - Obeah Man


2曲目は「Mr. Irie」です。
リディムはSound Dimensionの「Real Rock」。
ロックステディの時代のピアノの名リディム
に乗せたトースティングです。
ドラムの効いたワン・ドロップのリズムに、
ピアノのリリカルなメロディが良い味を出し
ている1曲。

リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

3曲目は表題曲の「Reprobate」です。
こちらもワン・ドロップのリズムに、出過ぎ
ないピアノのメロディが効いた演奏。
Welton Irieの滑らかなトースティングも
魅力的。

4曲目は「Guns Out A Hand」です。
こちらは「Taxi」リディムとして知られる曲
で、オリジナルはLittle Royの「Prophecy」。
ルーツ期の名リディムに、Welton Irieらしい
味わい深いトースティングを聴かせています。

Welton Irie - Guns Out A Hand


リズム特集 Taxi (タクシー)

5曲目は「Chalice」です。
リディムはSound Dimensionsの「Full Up」の
ようです。
ロックステディの名リディムですが、あえて
ハズしたようなちょっとルーズなトース
ティングが面白い曲です。

リズム特集 Full Up (フル・アップ)

Side 2の1曲目は「The Almighty」です。
ピアノのリリカルなメロディに、ガシッと
硬いドラミングが耳に残るバックに、Welton
Irieの流れるようなトースティングが印象的
な曲です。
硬質なサウンドにエコーと、Scientist
らしいミックスが印象的。

Welton Irie - The Almighty


2曲目は「Come Me Just A Come」です。
こちらはリリカルなピアノとド渋なベースを
中心とした、いかにもRoots Radicsらしい
演奏の曲です。
そうしたいかにものワン・ドロップに、
Welton Irieの滑らかなトースティングと
いう組み合わせの曲です。

3曲目は「DJ Connection」です。
こちらもユッタリとしたワン・ドロップの
リズムに、Welton Irieのエコーの効いた
トースティングが冴える曲です。

Welton Irie - Dj Connection


4曲目は「You I Love」です。
こちらはピアノとシンセのメロディにホーン・
セクション、Welton Irieのユーモアさえ
感じさせるオールド・スクールのトース
ティングが魅力的な曲です。

Welton Irie - You I Love


ざっと追いかけて来ましたが、Welton Irie
は多少一本調子なところがあるものの、独特
な個性を持った節回しはなかなか魅力的。
その彼らしいトースティングとRoots Radics
の演奏、Scientistのミックスという組み
合わせは、まさにこのアーリー・ダンス
ホールでしか聴けない、アーリー・ダンス
ホールならではの魅力があります。
この80年代前半のアーリー・ダンスホール
が好きな人には、まさにツボのアルバムだと
思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Welton Irie
○アルバム: Reprobate
○レーベル: Hit Bound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Welton Irie「Reprobate」曲目
Side 1
1. Obeah Man
2. Mr. Irie
3. Reprobate
4. Guns Out A Hand
5. Chalice
Side 2
1. The Almighty
2. Come Me Just A Come
3. DJ Connection
4. You I Love