今回はEarl 'Chinna' Smithのアルバム

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「Dub It!」です。

Earl 'Chinna' Smithは70年代のルーツ・
レゲエの時代から現在に至るまで、長く
活躍するレゲエを代表するギタリストです。
この人の活動歴は本当に凄くて、70年代の
ルーツ・レゲエの時代の多くのアルバムの
リード・ギターを担当しているのがこの人
で、、さらにルーツの時代はThe Soul
Syndicate、80年代にはHigh Times Band
という自信のバンドのリーダーを務めて
います。
さらに80年代からは自身のレーベルHigh
Timesで、プロデューサーもしていて、ダブ・
ポエットのMutabarukaやThe Skatalitesで
活躍したトランペット奏者のJohnny 'Dizzy'
Mooreなどアーティストのプロデュースも
しているんですね。

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Johnny 'Dizzy' Moore ‎– Something Special (Unknown)

また近年になっても自宅にミュージシャンを
招いて、アコースティックでセルフ・
カヴァーした「Inna De Yardシリーズ」を
発表しています。
音楽史の中で最も多くのレコーディングに
参加した人だと言われているのが、この
Earl 'Chinna' Smithなんですね。

アール・チナ・スミス - Wikipedia

High Times (ハイ・タイムズ)

今回のアルバムはNature Soundsという
レーベルからリリースされたEarl 'Chinna'
Smithのダブ・アルバムです。
ネットのDiscogsではこのアルバムの制作年
はUnknown(制作年不詳)となっています。
ただこの元となったアルバムバムは、82年
にEarl 'Chinna' SmithのレーベルHigh Times
からリリースされたダブ・ポエットの
Mutabarukaのファースト・アルバム「Check
It!」なんですね。

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Mutabaruka ‎– Check It! (1982)

なのでおそらく82年頃に発売されたのでは
ないかと思います。

ちなみにこのNature Soundsというレーベル
ですが、ネットの販売サイトのこのアルバム
の紹介のひとつに「ブルックリンのHIPHOP
レーベル」と書かれていました。

手に入れたのはNature Soundsからリリース
されたCDの中古盤でした。

今回のCDはゴミ取りがうまくいかなかった
のか、残念な事に曲によって気になる
ポツポツ音が入ります。

全12曲で収録時間は約46分秒。
12曲入りですが、裏ジャケットには最後の
1曲の記述がありません。
パソコンのiTuneで読み込むと「Whiteman Dub
[Alternate]」という記述が出て来ます。
4曲目に収められている「Whiteman Dub」の
別ヴァージョンが収められているようです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

〇Dub It!:
Drums: 'Drummer' Stone
Bass: Earl 'Chinna' Smith
Repeter Drum: Sydney Wolfe
〇Dub System:
Drums: Carlton Barrett
Bass: Chris Meredith
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Piano: Augustus Pablo
〇Every Time Eye Ear De Dub:
Drums: 'Specs' Bifrimbo
Bass: Earl 'Chinna' Smith, Sydney Wolfe
Fundi Drums: Sydney Wolfe
Repeter Drum: Harry-T Powell
Piano: Augustus Pablo
〇Whiteman Dub:
Drums: Carlton Barrett
Bass: Chris Meredith
Melodica: Philip Ramacon
Organ: Augustus Pablo
Background Vocals: Allalake
〇Whe Mi Dub?:
Drums: 'Drummer' Stone
Bass: 'Gibby' Morrison
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Fender Rhodes: Philip Ramacon
Melodica: Augustus Pablo
Repeter Drum: Harry-T Powell
Percussion: Sydney Wolfe
〇Hard Times [Love Theme In Dub]: High Times Players
〇Butta Pan Dub:
Drums: 'Drummer' Stone
Bass: 'Gibby' Morrison
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Fender Rhodes: Philip Ramacon
Sax: Dean Frasier
Trumpet: Bobby Ellis, David Madden
Trombone: Nambo Robinson
〇Naw Dub:
Drums: Leroy 'Horsemouth' Wallace
Bass: 'Gibby' Morrison
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Piano: Augustus Pablo
Percussion: Sydney Wolfe
〇Postpone Dub: High Times Players
〇Free Up The Dub: High Times Players
〇Whe Mi Dub? [Alternate]

Recorded & Mixed at Tuff Gong Studios, Kingston, Jamaica
Engineered by Eroll Brown, Stephen Stewart & Chow
Mixing Engineers: Stephen Stewart, Eroll Brown
Produced by Earl 'Chinna' Smith & Mutabaruka
Tapes Compiled by Brian Jahn
Design & Photographs by Brian Jahn

となっています。

バックのミュージシャンは'Chinna' Smithの
バンドHigh Times Playersが担当しています。
メンバーの詳細は省きますが、ドラムに
The Wailersで活躍したCarlton Barrettや
Leroy 'Horsemouth' Wallace、メロディカや
ピアノ、オルガンでAugustus Pabloなどが
参加しています。
Earl 'Chinna' Smith自身も、ギターの他に
ベースも演奏しています。

レコーディングとミックスはTuff Gong Studios
で行われ、レコーディング・エンジニアは
Eroll BrownとStephen Stewart、Chow、
ミックス・エンジニアはStephen Stewartと
Eroll Brownが担当しています。
プロデュースはEarl 'Chinna' Smithと
Mutabaruka。
おそらくMutabarukaのアルバム「Check It!」
と同時に作られたと思われます。

アルバム・デザインと写真はBrian Jahnと
いう人が担当しています。

さて今回のアルバムですが、Mutabarukaの
ファースト「Check It!」を聴いた時も感じた
のですが、非常に「攻めてるなぁ!」という
印象の強いアルバムです。
おそらくダブ・ポエットという手法を始めた
のはUKのダブ・ポエットのLinton Kwesi
Johnson(プロデュースはDennis Bovell)の
方が早いんじゃないかと思いますが、それに
負けじと「ジャマイカ流のダブ・ポエット」
を模索した感じがあり、レゲエの枠を超えた
音楽に挑戦する意欲が感じられるアルバム
なんですね。
このダブ・アルバムもMutabarukaのヴォーカル
が入っていない分、よりリアルにサウンドの
自由度やタイトな緊張感が伝わるアルバムに
仕上がっています。
レゲエの枠だけでは語れない部分のある、
なかなか面白いアルバムだと思います。

1曲目は表題曲の「Dub It!」です。
Mutabarukaの「Check It!」のダブです。
Earl 'Chinna' Smithのドスの効いたベース、
'Drummer' Stoneのドラム、Sydney Wolfeの
心地良いリピーターという極めてシンプルな
組み合わせの演奏です。
それでしっかり曲が出来てしまうところが、
大したものなんですね(笑)。

2曲目は「Dub System」です。
アルバム「Check It!」に収められた「De
System」という曲のダブ。
リリカルなピアノはAugustus Pablo、ドラム
はCarlton Barrettが担当しています。
途中にMutabarukaのヴォーカルで、Bob Marley
& The Wailersの「Them Belly Full」の
フレーズがちらっと入るのもご愛敬です。

3曲目は「Every Time Eye Ear De Dub」
です。
「Check It!」に収められた「Everytime A
Ear De Soun'」という曲のダブ。
ドスの効いたベースにAugustus Pabloの
リリカルなピアノ、Mutabarukaのヴォーカル
も効果的に使われた1曲。

Earl Chinna Smith - Every Time Eye Ear de Dub


4曲目は「Whiteman Dub」です。
「Check It!」に収められた「Witeman
Country」という曲のダブ。
印象的なメロディカはAugustus Pabloでは
なくてPhilip Ramaconという人が演奏して
います。
ドスの効いたベースを軸に、様々な楽器が
タイミングよく入って来るダブ。
パリパリ音が入ります。

5曲目は「Whe Mi Dub?」です。
「Check It!」に収められた「Whey Mi
Belong?」という曲のダブ。
重苦しいシンセのメロディに、こちらは
Augustus Pabloのメロディカが面白い感じ
で入って来ます。
使われている曲はRas Michael & The Sons Of
Negusの「Zion Land」。

6曲目は「Hard Times [Love Theme In Dub]」
です。
「Check It!」に収められた「Hard Time
Loving」という曲のダブ。
ホーン・セクションとJazzyなギターが絡み
合う、大人のテイストの曲です。

7曲目は「Butta Pan Dub」です。
「Check It!」に収められた「Butta Pan
Kulcha」という曲のダブ。
使われているリディムはThe Heptonesの
「Pretty Looks Isn't All」。
ドスの効いた'Gibby' Morrisonのベースに、
'Chinna' Smithの浮遊感のあるギター・ワーク
がカッコいい曲です。

8曲目は「Naw Dub」です。
'Chinna' SmithのギターとAugustus Pablo
の奏でるユッタリしたピアノのメロディが
心地良い曲です。
こちらもちょっとパリパリ音が…。

9曲目は「Postpone Dub」です。
野太いベースのサウンドを軸にピアノなどが
タイミングよく入って来るダブ。

10曲目は「Free Up The Dub」です。
こちらはギターパーカッション、オルガンに
ピアノなどがタイミングよく入って来るダブ。

11曲目は「Whe Mi Dub? [Alternate]」
です。
5曲目「Whe Mi Dub?」の別ヴァージョンです。

12曲目は「Whiteman Dub [Alternate]」
です。
書いたように裏ジャケには曲名が記載されて
いない曲で、4曲目「Whiteman Dub」の別
ヴァージョンのようです。

ざっと追いかけて来ましたが、タイトで
緊張感のある演奏はなかなか魅力的です。
この録音がされた82年頃というのはレゲエ
がルーツ・レゲエからダンスホール・レゲエ
へと切り替わった直後ぐらいの時期で、
ミュージシャンとしてのEarl 'Chinna' Smith
もある種の危機感を感じていたのかもしれ
ません。
自分のレーベルHigh Timesで、それまでに
無い「音」を作り上げようという意欲が感じ
られます。

ある意味Mutabarukaというダブ・ポエットの
アーティストの成功も、こうした意欲的な
バックの音源という事もあったのかもしれ
ません。
Mutabarukaの「Check It!」というアルバム
を知っていると、今回のアルバムの良さが
よりよく解るんですね。

このEarl 'Chinna' Smithはソロ・アルバムは
それほど多くないアーティストですが、
その後もジャズのフュージョンの影響を感じ
させる「Home Grown」を発表するなど、
少ないながらも意欲的なアルバムを発表する、
自由度の高い音楽の作れる人なんですね。

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Earl Chinna Smith ‎– Home Grown (1991)

そうした類まれな才能を持っている人だから
こそ、ディープなナイヤビンギからダンス
ホール・レゲエまでありとあらゆる音楽を
こなせ、常にジャマイカの音楽シーンの中心
に居られ続けたんですね。

そうした彼の持つひとつの側面が解るのが、
今回のアルバムなんですね。
それは彼の全てではありませんが、だからこそ
より魅力的なんですね。
「Inna De Yard」も彼ですが、今回のアルバム
の彼もまたEarl 'Chinna' Smithです。
それでいて何でも出来る小器用なだけの人
ではない、そこにレゲエを作って来たこの人
の本当の魅力と凄さがあります。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Earl 'Chinna' Smith
○アルバム: Dub It!
○レーベル: Nature Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: (1982)

○Earl 'Chinna' Smith「Dub It!」曲目
1. Dub It!
2. Dub System
3. Every Time Eye Ear De Dub
4. Whiteman Dub
5. Whe Mi Dub?
6. Hard Times [Love Theme In Dub]
7. Butta Pan Dub
8. Naw Dub
9. Postpone Dub
10. Free Up The Dub
11. Whe Mi Dub? [Alternate]
12. Whiteman Dub [Alternate]