今回はChaka Demus & Pliersのアルバム

chaka_demus_&_pliers_01a

「Tease Me」です。

Chaka Demus & PliersはディージェイChaka
DemusとシンガーのPliers(プライヤーズ)
のコンビです。
今回のアルバムにも収められている「Murder
She Wrote」で人気に火が付いた彼らは、
表題曲にもなっている「Tease Me」や「She
Don't Let Nobody」などで人気を博し、つい
にはIsley Brothersのヒット曲のカヴァー
「Twist And Shout」で全英チャートの1位
を獲得するんですね。
90年代にUKなどでも活躍し、世界的にも
人気を誇ったのがこのChaka Demus & Pliers
です。

アーティスト特集 Chaka Demus (チャカ・デマス)

Chaka Demus & Pliers - Wikipedia

今回のアルバムはそのChaka Demus & Pliers
がコンビとして成功した、1993年に
Island Recordsからリリースされたアルバム
です。
表題曲の「Tease Me」や英国で1位をとった
「Twist And Shout」などが収められた
アルバムで、収録されている曲のうち6曲が
イギリスの国際チャートにランクインした
という記録を作ったアルバムで、この記録
はいまだに破られていないんだとか。

チャカ・デマス(Chaka Demus)とプライヤーズ(Pliers)のアルバム「Tease Me」がイギリスに与えた衝撃

ある意味90年以降のレゲエという音楽の、
方向性を作ったアルバムのひとつと言える
かもしれません。

手に入れたのはIsland Records傘下のMango
レーベルからリリースされたCDの中古盤
でした。

全14曲で収録時間は約56分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced & Arranged by Sly & Robbie for Taxi Productions Inc.
Associate Producer: Lloyd 'Gitsy' Willis
Co-Produced by Trish Farrell
Executive Producer: Trish Farrell

Musicians:
Bass: Robbie Shakespeare
Drums: Sly Dunbar
Guitar: Lloyd 'Gitsy' Willis
Keyboards: Robbie Lyn
Backing Vocals: Brian & Tony Gold, Chevelle Franklin

Engineers: Lynford 'Fatta' Marshall, Colin 'Bulby' York,
Mervyn Williams, Junior Edwards, O'Neil Thompson
Mix Engineers: Colin 'Bulby' York, Lynford 'Fatta' Marshall
Studios: Mixing Lab, Aquarius

Photography by Zak Ové
Design by Satoru Igarashi

となっています。

プロデュースとアレンジはSly & Robbie。

ミュージシャンはベースにRobbie Shakespeare、
ドラムにSly Dunbar、ギターにLloyd 'Gitsy'
Willis、キーボードにRobbie Lyn、バック・
ヴォーカルにBrian & Tony GoldとChevelle
Franklinという布陣です。
この時代になるとデジタル化が進んだため
か、バックのメンバーもコンパクトになって
います。

レコーディング・エンジニアはLynford 'Fatta'
MarshallとColin 'Bulby' York、Mervyn
Williams、Junior Edwards、O'Neil Thompson、
ミックス・エンジニアはColin 'Bulby' Yorkと
Lynford 'Fatta' Marshallが担当しています。
スタジオはMixing LabとAquarius。

ジャケット写真はZak Ovéという人で、デザイン
はSatoru Igarashiというおそらく日本人の人
が担当しています。

さて今回のアルバムですが、さすが6曲
もヒット曲を出したアルバムだけあって、
内容はなかなか良いんですね。

Chaka Demusは若い頃はニコデマス・ジュニア
(Nico Demus Jr)と名乗っていたそうで、
Nicodemusの「デマス一門」のディージェイ
のひとりで、実力派のディージェイなんです
ね。
そのChaka Demusと歌のウマいPliersのコンビ
は、ジャマイカでは当たり前のスタイルだった
のかもしれませんが、UKでは大ウケしたん
ですね。

そうしたヒットの要因のひとつは、やはり
プロデュースしたSly & Robbieの力が大き
かったんだと思います。
例えばタイトル曲になっている1曲目の
「Tease Me」などを聴いてみても、ダンサブル
なリズムが魅力的な曲ですが細かい音作りが
されていて、サビの部分で「ピワ~ン」という
シンセ音がわずかに入っていたりして、音の
輪郭をより強調しているんですね。
そういうところは70年代からバック・
ミュージシャンとしてジャマイカの音楽レゲエ
を作り続けてきた、彼らSly & Robbieの経験
が生きている印象です。
そうした丁寧な曲作りをされた曲はどれも
完成度が高く、聴き心地の良いアルバムに
仕上がっています。
1枚のアルバムから6曲にヒット・チャート
に送り込んだというのは、けっして偶然では
ないんですね。

そうした完成度の高い楽曲に乗せてChaka
Demus & Pliersは、初期レゲエの頃の
Toots & The Maytalsのヒット曲「Bam Bam」
や同じ「Bam Bam」リディムを使った「Murder
She Wrote」、Isley Brothersのヒット曲の
カヴァーでありThe Beatlesが歌った事でも
知られる「Twist And Shout」など、
ポピュラー音楽からソウルなどの要素も
取り入れた幅広い音楽性で、魅力的な歌声
を聴かせています。

また今回のアルバムの曲をYouTubeなどで
調べると、多くのMTVなどのミュージック・
ヴィデオと見られる映像が見つかりました。
あのMichael Jacksonの有名な「Thriller」の
ミュージック・ヴィデオが作られたのが80年
代前半ですが、この90年代にはレゲエも
ミュージック・ヴィデオが多く作られる時代
になっていたようです。

そのミュージック・ヴィデオではこのChaka
Demus & Pliersが歌う後ろで、腰をクネクネ
とさせて踊る女性の姿が映し出されています。
これを見ると今一番多くの人がレゲエに抱く、
腰クネクネとスラックネスのステレオ・タイプ
のイメージは、この90年代に作られている
事が解ります。
この90年代は良きも悪きもスラックネスな
ダンスホール・レゲエ=レゲエというイメージ
が、出来上がった時代だったんですね。
そのイメージ作りに貢献したのが、この
Chaka Demus & Pliersだった事は間違いあり
ません。

この音楽が多くのリスナーの心を掴んだ事
は、間違いありません。
ただあえて言えばポピュラーやソウルなど
多くの音楽の要素を取り入れた事で、レゲエ
という音楽の独自性が少し薄まった印象も
あります。
ルーツ・レゲエなどを中心に聴いている人間
からすると、あのレゲエ独特の心にゴロッ
ゴロッと引っかかる感覚が、この音楽からは
あまり感じられないんですね。

聴き心地が良く、楽しい。
内容は悪くないのですが、その事が逆に
引っかかって気になるんですね(笑)。

1曲目は表題曲の「Tease Me」です。
タイトルは直訳すると「わたしをからかって」
という事のようです。
調子の良いリズムに蕩けるようなPliersの
ヴォーカル、合間良く入るChaka Demusの
トースティングと、絵にかいたようなレゲエ・
イメージの曲です。
↓ヴィデオで見ると女の子のエロい腰振りが
楽しい曲です(笑)。

Chaka Demus & Pliers - Tease Me (Official Music Video)


2曲目は「She Don't Let Nobody」です。
こちらはソウルか何かの曲か?
爽やかなコーラスに心地良いメロディ、
合間良く入るChaka Demusのトースティング
が唯一レゲエのテイストを残しています。
ポピュラーとしても充分に通用しそうな曲
です。

Chaka Demus & Pliers - She Don't Let Nobody


3曲目は「Nuh Betta Nuh Deh」です。
こちらはユーモラスな裏声からChaka Demusの
トースティング、Pliersのヴォーカルなどが
絡み合う明かる曲です。
悩みの無さそうな空気感が楽しい1曲。

4曲目は「Bam Bam」です。
初期レゲエの頃のToots & The Maytalsの
ソング・コンテスト優勝曲として有名な曲
です。
明るいけれど妖し気な、独特の空気感の曲
に仕上げています。

Chaka Demus and Pliers, Bam Bam. (Dancehall Reggae)


リズム特集 Bam Bam/Murder She Wrote (バン・バン/マーダー・シー・ロート)

5曲目は「Friday Evening」です。
明るいパーカッションのリズムに、透き通る
ようなPliersの心地良いヴォーカル、Chaka
Demusのトースティングと畳みかける曲です。
南国イメージの楽しい曲です。

6曲目は「Let's Make It Tonight」です。
ギターの爽やかなメロディに乗せたソウル・
テイストの曲です。
Pliersの伸びのあるヴォーカルが魅力的。
このコンビはなかなか名コンビで、うまく
曲を入れ変わっています。

7曲目は「One Nation Under A Groove」
です。
こちらはファンクのようなリズムに乗せた
曲です。
独特のカッコよさのあるファンキーな1曲。

8曲目は「Tracy」です。
こちらもファンキーなリズムに乗せた曲
です。

9曲目は「Sunshine Day」です。
心地良いパーカッションにシンセ(?)の
メロディ、ヴォーカルとトースティングが
うまく入れ替わる、いかにもダンスホール
というテイストの曲です。

Chaka Demus & Pliers - Sunshine Day


10曲目は「Murder She Wrote」です。
彼らの代表曲のひとつと言える曲で、こちら
も4曲目と同じ「Bam Bam」のリディムが
使われています。
ギターのセクシィなリズムに乗せて、Pliers
のヴォーカルとChaka Demusのトースティング
が冴える曲です。
↓このミュージック・ヴィデオもキンキラな
セクシーな衣装を着た女性が踊っていたり、
その浮かれブリがとても楽しい仕上がり
です(笑)。

Chaka Demus & Pliers - Murder She Wrote


11曲目は「Roadrunner」です。
こちらもダンサブルなリズムに、Pliersの
ヴォーカルとChaka Demusのトースティング
が盛り上げる1曲。

12曲目は「I Wanna Be Your Man」です。
セク椎名女性コーラスに、ノビのあるPliers
のヴォーカルが魅力的な曲です。

13曲目は「Twist And Shout」です。
書いたようにChaka Demus & Pliersはこの曲
で英国チャートの1位に輝いています。
オリジナルは60年だ初期のIsley Brothers
のヒット曲で、あのThe Beatlesがカヴァー
した事で世界的に知られている曲なんですね。
心地良いギターのメロディに乗せた、レゲエ・
テイストの曲にうまく仕上げています。
悩みが吹っ飛ぶような1曲です。

Chaka Demus Pliers - Twist and Shout Feat. Jack Radics.flv


14曲目は「Gal Wine」です。
リディムはDennis Brownの「Sitting And
Watching」。
こちらはChaka Demusのトースティングが、
冴えを見せる曲です。

Chaka Demus and Pliers Gal wine


ざっと追いかけて来ましたが、この時代の
Chaka Demus & Pliersの勢いを感じさせる
アルバムで、内容は悪くないと思います。

この90年代になるとレゲエという音楽も
当初のルーツ・レゲエとは様変わりして来る
んですね。
ルーツ・レゲエの時代にあったようなラスタ
ファリズムによるアフリカ回帰や黒人の人権
といったプロテスト・ソングとしてのレゲエ
の色彩は失われ、代わりにスラックネス(下
ネタ)中心の世界になり、女や金、ガン・
トークといった快楽的な音楽へと変わって行く
んですね。
時にルーツへの回帰を訴えるようなコンシャス
(真面目)なテーマを持ったアーティストも
出現しますが、主流は今もスラックネスの
ままです。
その変貌ぶりはバビロニアン(堕落した人々)
にアーティスト自身がなってしまったような、
ルーツ・レゲエの方向性とはまるで真逆の
変わりようなんですね。
ただ結果的にはこうした音楽がルーツ以上に
支持されたのも、また事実だと思います。

このChaka Demus & Pliersもそうした今日の
レゲエのイメージを作ったユニットのひとつ
と言えるかもしれません。
彼らの音楽を聴くと、今日流れている
ポピュラー音楽とかなり同じグルーヴを
持っている事に驚かされます。
例えばSoft BankのCMで流れるJustin Bieber
の曲と似たような感覚があるんですね。
今の時代はそうした音楽もレゲエのグルーヴ
を取り入れて来て、音楽の種類による違いが
あまり無くなって来ている気がしました。
ちょっと言い過ぎかな…(笑)。

良くも悪くも今日のレゲエ・イメージを体現
しているアルバム、それか今回のアルバム
です。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Chaka Demus & Pliers
○アルバム: Tease Me
○レーベル: Mango
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1993

○Chaka Demus & Pliers「Tease Me」曲目
1. Tease Me
2. She Don't Let Nobody
3. Nuh Betta Nuh Deh
4. Bam Bam
5. Friday Evening
6. Let's Make It Tonight
7. One Nation Under A Groove
8. Tracy
9. Sunshine Day
10. Murder She Wrote
11. Roadrunner
12. I Wanna Be Your Man
13. Twist And Shout
14. Gal Wine

●今までアップしたChaka Demus & Pliers関連の記事
〇Chaka Demus「Gal Wine」
〇Pinchers, Pliers「Pinchers With Pliers」