今回はTiken Jah Fakolyのアルバム

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「African Revolution」です。

Tiken Jah Fakolyはアフリカのコート・
ジボワール出身のレゲエ・シンガーです。
歌で歴史や伝承を伝える「グリオー」という
家系に生まれた彼は、圧制に苦しむ人々の為
に歌い続け、人気のアフリカン・レゲエ・
シンガーとなるんですね。
ただその為に命を狙われ国外に逃亡し、今は
フランスを拠点に活動を続けています。

Tiken Jah Fakoly - Wikipedia

今回のアルバムは2010年にBarclayと
いうレーベルからリリースされた彼のソロ・
アルバムです。
2002年のアルバム「Françafrique」で
人気を不動のものとした彼ですが、その後も
順調にキャリアを重ね、ネットのDiscogsの
履歴を見るとこのアルバムが11枚目の
アルバムになっています。

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Tiken Jah Fakoly ‎– Françafrique (2002)

アルバムに付いていた帯には次のような文章
が書かれています。

「いまや本場ジャマイカを凌ぐほどの大きな
シーンを形成している西アフリカのレゲエ・
シーンにおいて、その王者 の座に君臨し続け
る男がコート・ディヴォワール出身のティケン・
ジャー・ファコリー。2002年発表の『フランサ
フリック』以降ここ日本でも高い知名度を
獲得し、幅広いファン層から支持される彼が
3年ぶりにリリースした作がこれだ。西アフ
リカの伝統楽器をこれまで以上に取り入れ、
よりアフリカ色を強めた アレンジをバック
に、インテリジェンス溢れる歌詞と力強い
歌声で人々の社会意識を覚醒する。ナイジェ
リアの人気シンガー・ソングライター、
アシャがデュエットで参加。」

書かれているように様々な「西アフリカの
伝統楽器」が使用されているようで、豊かな
音色にTiken Jah Fakolyの歌声が冴える
アルバムになっています。
さらに3曲目「Political War」ではナイジェ
リアの人気シンガー・ソングライターAsaが
参加するなど、彩り豊かな彼の集大成とも
いえるアルバムに仕上がっています。

手に入れたの乃は日本のライス・レコード
(発売元Wrasse Records)というレーベル
からリリースされたCDでした。

全12曲で収録時間は約42分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by Kevin Bacon & Jonathan Quarmby
A&R: Sylvan Taillet
Recorded at Tuff Gong Studios, Kingston by Rohan Dwyer and
at H. Camara Studios, Bamako by Kevin Bacon
Additional vocal recordings at Soyouz Studio, Paris by Bruno Dejarnac
Mix and additional recordings by Kevin Bacon at Rak Studios, London

Kingston Sessions:
Drums [1,2,5,7,8,10,12]: Shawn Mark Dawson
Bass [1,2,4,6,8,9,10,11,12]: Glen Browne
Electric Guitar [1,2,8], Acoustic Guitar [9]: Mickey Chung
Percussion [1,2,8,9,10,12]: Sticky

Bamako Sessions:
Ngoni [1,2,3,5,6,7,10]: Andra Kouyaté
Balafon [1,3,7,8,10,12]: Lassana Diabaté
Kora [4,7,10,11]: Madou Sidiki Diabaté
Electric 'Mandingo' Guitar [1,6,8]: Petit Condé
Soukou [1,3]: Zoumana Tereta
Tama [8,10,11]: Baba Cissoko
Yabara [8,11]: Mokta Kouyaté
Backing Vocals: Jocelyne Sozaya, Espérance Dion, Victoire Dion

Paris & London Sessions:
Vocals [3]: Asa
Acoustic Guitar, Backing Vocals [2]: Féfé
Backing Vocals [1,3,7,12]: Michel Pinheiro
Percussion [4,5,6,12]: Rhani Krija
Melodica [9], Banjo [10], Ukulele [12]: Jonathan Quarmbly
Bass [2,7]: Kevin Bacon

Photos: Phillippe Bordas
Artwork: Mathilde Damour / Thomas Delepiére

となっています。

プロデュースはKevin BaconとJonathan
Quarmby。
レコーディングはジャマイカのキングストン
にあるTuff Gong Studios(エンジニアはRohan
Dwyer)と、アフリカのマリ共和国の首都
バマコにあるH. Camara Studios(エンジニア
Kevin Bacon)、さらに声入れなどがパリに
あるSoyouz Studio(エンジニアBruno
Dejarnac)で行われています。

バマコ - Wikipedia

さらにミックスとレコーディングがロンドン
のRak Studios(エンジニアKevin Bacon)で
行われています。
ジャマイカとマリ、フランス、UKという
かなり大掛かりなレコーディングのアルバム
なんですね。

アルバムの記録によるとKingston Sessionsと
Bamako Sessions、Paris & London Sessionsに
分かれていて、書斎なミュージシャンについて
は省略しますが、Kingstonではパーカッション
奏者のSticky、Paris & London Sessionsでは
ナイジェリアのシンガー・ソング・ライター
のなどが参加しています。

特に面白いのがマリのバコマで行われた
セッションで、「Ngoni」や「Balafon」、
「Kora」、「Electric 'Mandingo' Guitar」、
「Soukou」、「Tama」、「Yabara」など
あまり耳馴染みのない民族楽器による
セッションが行われています。
ネットで調べると初めの3つぐらいまでは
楽器が出て来て、「Ngoni」は弦楽器、
「Balafon」は木琴のようで、「Kora」は
リュート型撥弦楽器という事が解りました。

Ngoni (instrument) - Wikipedia

Balafon - Wikipedia

コラ (楽器) - Wikipedia

ちなみにアルバムに付いていた田中昌さんと
いう方の解説文を見ると、「ンゴーニ
(バンジョウに構造が似た小型弦楽器)、
コラ(アフリカ式ハーブ)、ソク(一弦
ヴァイオリン)、バラフォン(アフリカ式
木琴)、といったグリオーの伝統楽器」と
いう記述があります。
Tiken Jah Fakolyはグリオーの一族の出身と
いう事なので、彼にとって馴染みのある楽器
なのかもしれません。
それらの民族楽器がこのアルバムのサウンド
に、独特のニュアンスと厚みを付けている事
は間違いありません。

さて今回のアルバムですが、これがすごく
聴き易く内容の良いアルバムなんですね。

Tiken Jah Fakolyをはじめ、同じコートジ
ボワール出身のAlpha Blondyや南アフリカ
のLucky Dubeなどアフリカン・レゲエの
アーティストはプロテスト・ソングが多く
内容は悪くないんですが、サウンド的には
アフリカ色が強く出過ぎてちょっとワールド・
ミュージックっぽい傾向があるんですね。
ところが今回のアルバムは多くの民族楽器を
使っているのに、かえって耳馴染みの良い
サウンドに仕上がっているところがあります。

もともとレゲエという音楽はジャマイカの
黒人層のミュージシャンがそれまでのアメリカ
音楽への憧れを捨て、自分の原点である
アフリカへの原点回帰を目指した音楽だった
んですね。
そのアフリカ志向の音楽ルーツ・レゲエで
使われたのが、それまでは練習用の楽器と
しか思われていなかったメロディカだったん
ですね。
Augustus Pabloなどが演奏するエモーショ
ナルなメロディカの演奏は、それまでにない
ジャマイカ独特の音楽として多くの人々の
心を捉える事になります。

今回のアルバムで使われている多くの民族
楽器には、そのメロディカと同様の西洋音楽
と違う独創性があり、それがアフリカ回帰を
目指したルーツ・レゲエと同じニュアンスを
感じさせる効果があるんですね。
アフリカの楽器を使った事で逆にルーツ・
レゲエを感じさせる、そのあたりがこの
アルバムの面白いところです。

またこのTiken Jah Fakolyの自信に満ちた
歌声は、あのBob Marleyを彷彿とさせる
ようなプロテスト・ソングでありとても
魅力的です。
教育の大切さを歌った表題曲の「African
Revolution」をはじめ、Asaも参加した
「Political War」などメッセージ性の
強い歌詞が並びますが、Tiken Jah Fakoly
は淡々と語るように歌っており、それが
かえって心の奥まで沁み込んで来ます。
1曲1曲にかなりの手ごたえのある、
アフリカン・レゲエ・アーティストのアルバム
の中でも特に魅力的なアルバムなんですね。

1曲目は表題曲の「Africain Révolution」
です。
解説文によると「教育こそ我々の社会を変える
重要な糧である」という事を歌っているそう
です。
イントロや間奏で入る縦笛(?)が、うまく
曲にニュアンスを付加しています。

Tiken Jah Fakoly - 01 - African Révolution - 2010


2曲目は「Je Dis Non!」です。
邦題として「わたしはノンと言う」という
タイトルが付けられています。
こちらはフランス語で歌っています。
軽快なギターのメロディに重厚なコーラス・
ワーク、伸びのあるTiken Jah Fakolyの
ヴォーカルが魅力。

Tiken Jah Fakoly - Je dis non (clip officiel)


3曲目は「Political War」です。
日本語のタイトルは「政治上の戦争」と
なっています。
書いたようにナイジェリアのシンガー・
ソング・ライターAsaが参加した曲です。
アコースティック・ギターを中心とした曲で、
穏やかで淡々としたTiken Jah FakolyとAsa
のヴォーカルが素晴らしい曲です。
こちらも中盤以降の間奏に入る笛の音色が
魅力。

Tiken Jah Fakoly Feat. Asa - Political War


4曲目は「Marley Foly」です。
どうもBob Marleyについて歌っている曲
のようで、こちらもフランス語です。
独特のアコースティックな弦楽器のサウンド
が混ざっていますが、とても効果的。
分厚い男性コーラスをバックにしたTiken Jah
Fakolyのヴォーカルも素晴らしいです。

5曲目は「Il Faut Se Lever」です。
邦題は「それは上がるのに必要だ」となって
います。
こちらはギターのメロディに乗せた、
フランス語で歌われる曲です。
分厚いコーラスバックに、力みのない
ヴォーカルがすごく魅力的。

Il Faut Se Lever


6曲目は「Sinimory」です。
邦題は「シニモリ」(名前か?)。
アコースティックなギターのメロディに、
感情を込めたヴォーカルの曲です。

7曲目は「Vieux Père」です。
邦題は「老いた父」。
こちらもギターのメロディに乗せた曲です。

Tiken Jah Fakoly Vieux père


8曲目は「Sors De Ma Télé」です。
邦題は「わたしのテレビから出てこい」。
こちらも木琴やドラのような民族楽器が
印象的な曲です。
分厚いコーラスに乗せたTiken Jah Fakoly
のヴォーカルも力強く魅力的。

9曲目は「Votez」です。
邦題は「投票」となっています。
軽快なアコースティック・ギターのサウンド
に乗せた曲です。
時折入るメロディカも、普通とはちょっと
違う使い方で面白いところ。
投票に行く事を呼びかけた曲か?

10曲目は「Je Ne Veux Pas Ton Pouvoir」
です。
邦題は「あなたの力はいらない」。
こちらもギターのメロディに乗せた、Tiken
Jah Fakolyのヴォーカルがすごく魅力的な曲
です。

11曲目は「Initié」です。
邦題は「ありがとう」。
こちらもアコースティックなギターに乗せた
曲で、Tiken Jah Fakolyの表現豊かな
ヴォーカルが魅力的。
サビからグッと盛り上がって来る構成も
グッド。

12曲目は「Laisse-Moi M' Exprimer」
です。
邦題は「わたしに言わせて」。
こちらはアコースティック・ギターの軽快な
メロディに、笛の音が絡む曲です。
ノビノビと歌うTiken Jah Fakolyのヴォーカル
も、とても良いです。

Tiken Jah Fakoly - 12 - Laisse Moi M'Exprimer - 2010


ざっと追いかけて来ましたが、このTiken Jah
Fakolyのアルバムからは、若い頃に聴いた
あのBob Maleyの曲の感動を思い出せるもの
があります。
そのプロテストを続ける姿は、あのルーツ・
レゲエの時代にあったBob Maleyをはじめと
するミュージシャンの魂の叫びに通ずるもの
があるんですね。
正直なところ私はフランス語も解らないし、
英語も堪能ではないので、彼の言葉はよく
解らないけれど、あのBob Maleyに感じた感動
がこのTiken Jah Fakolyにもあるんですね。
私が大好きなレゲエがここにはあります。

このTiken Jah Fakolyは暗殺に来た警察官が
彼のファンだった為に命を助けられ、国外へ
脱出したという逸話があるほど、国の権力や
不正と言葉で戦っている人のようです。
その暴力でなく言葉で戦うという姿勢こそ、
もっとも平和に世の中を変える手段であり、
その命をさらしても闘う姿勢で多くの人々を
勇気づける、彼は英雄です。

今回のアルバムはそんな彼の、アフリカ人の
血と、レゲエという音楽が見事に結び付いた
素晴らしいアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Tiken Jah Fakoly Political War



○アーティスト: Tiken Jah Fakoly
○アルバム: African Revolution
○レーベル: Rice Records / Wrasse Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2010

○Tiken Jah Fakoly「African Revolution」曲目
1. Africain Révolution
2. Je Dis Non!
3. Political War feat. Asa
4. Marley Foly
5. Il Faut Se Lever
6. Sinimory
7. Vieux Père
8. Sors De Ma Télé
9. Votez
10. Je Ne Veux Pas Ton Pouvoir
11. Initié
12. Laisse-Moi M' Exprimer