今回はThe Techniques & Friendsのアルバム

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「Winston Riley's Rock Steady & Early
Reggae 1968-1969」です。

The Techniquesは60年代後半のロック
ステディの時代に活躍したコーラス・グループ
です。
リーダーのWinston Rileyを中心に結成
されたグループで、このロックステディ期の
スターだったSlim Smithが在籍したグループ
として知られています。
このロックステディ期はTreasure Isleと
Studio Oneの2大レーベルがジャマイカの
音楽市場を独占していて、The Techniquesは
Treasure Isleの看板グループとして活躍
したグループだったんですね。

The Techniques - Wikipedia

またリーダーだったWinston Rileyはその後
自身のレーベルTechniquesを作っています。
このTechniquesレーベルは70年代のルーツ・
レゲエの時代に徐々に勢力を拡大し、80年代
のダンスホール・レゲエの時代には、自身の
レーベルのヒット曲「Stalag」のリディムを
武器に、人気レーベルへと成長して行くん
ですね。

レーベル特集 Techniques (テクニクス)

つまりTechniquesという呼び名には、60年代
後半のロックステディの時代に活躍した
コーラス・グループのThe Techniquesと、
80年代のダンスホール・レゲエで活躍した
レーベルのTechniquesとを指す場合があり
ます。
どちらもWinston Rileyが関わっていますが、
バンド名はThe Techniquesと呼ぶ事が多い
です。

ウィンストン・ライリー - Wikipedia

今回のアルバムは2017年に日本のDub
Store Recordsからリリースされた
The Techniquesとその周辺のグループや個人
の曲を集めたアルバムです。
タイトルに「Rock Steady & Early Reggae
1968-1969」と書かれているように、ロック
ステディの時代だった1968年から初期
レゲエの時代に差し掛かる69年までの
2年間の音源を集めたコンピュレーション・
アルバムです。

アルバムに付いていた帯には、

「ウィンストン・ライリーが録音したコーラス
ワークが美しいアップテンポな’69レゲエ・
ボーカル集!
シェイズ、マッド・ラッズからお馴染みテクニ
クスまで、抜群のリードが響き渡る全15曲」

という事が書かれていました。

ロックステディが終わりかけ初期レゲエが
始まった時代の、比較的アップ・テンポな曲
が収められたアルバムのようです。

手に入れたのはDub Store Recordsから
リリースされた日本盤のCDでした。

全15曲で収録時間は約36分。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by Winston Riley
Recorded in Kingston, Jamaica

という記述があります。

収められているアーティストはThe Techniques
の他にDave Barker、The Mad Lads、The Shades
というグループと個人が収められています。

さて今回のアルバムですが、このロック
ステディから初期レゲエに変わる時代の空気
感が伝わってくるようなアルバムで、内容は
なかなか良いです。

やはり特徴は曲がアップ・テンポへと変化
しているところで、ロックステディの時代に
流行したスローなリズムが徐々に変わり始め
ている事を感じるアルバムになっています。
メロディはロックステディの甘いメロディを
残しながら、リズムだけがアップ・テンポへ
と変化して来ているんですね。

この後70年代に入ると、時代は一気に
ビターなテイストのレゲエの時代へと変わって
行く事になりますが、その時代の変化の瞬間
を捉えたのが今回のアルバムという事になり
ます。

1曲目はDave Barkerの「Your Love Is A
Game」です。
Dave BarkerはThe TechniquesやDave and
Ansell Collinsなどで活躍したシンガー
です。
雰囲気のあるホーンのアップ・テンポの
メロディに、Dave Barkerの感情のこもった
ヴォーカルがとても良い味を出している曲
です。

DAVE BARKER - Your Love is a Game [1969]


Dave Barker - Wikipedia

2曲目はThe Mad Ladsの「So Afraid」です。
ネットでThe Mad Ladsを検索すると「メン
フィス出身のヴォーカル・グループ」と出て
来ますが、それとは別のグループのようです。
ロックステディの匂いのする甘いピアノの
メロディと、ファルセットのヴォーカルと
コーラスが魅力的な曲です。

3曲目はThe Techniquesの「I Feel Alive
Again」です。
軽快なオルガンのメロディに、ちょっと
ゾクッとするようなファルセットなヴォーカル
にコーラス・ワーク。
リズミカルな演奏が魅力的な曲です。

THE TECHNIQUES - I Feel Alive Again [1969]


4曲目はThe Techniquesの「Heart Of Man」
です。
こちらもオルガンを中心とした軽快なメロディ
に、耳ざわりの良いソフトなヴォーカルの曲
です。

5曲目はThe Techniquesの「What Am I To Do」
です。
硬いドラミングからオルガンのメロディ、
ヴォーカルと入って来る感じが抜群に良い
です。
リード・ヴォーカルはPat Kellyか?
説得力のある節回しに、時折入るファルセット
がすごく魅力的な1曲。

6曲目はThe Techniquesの「Where Were You」
です。
こちらはホーンの甘いメロディにリリカルな
ピアノ、ギターのフレーズが魅力的。
淡々と歌うヴォーカルにコーラス・ワーク
もすごく良い味を出しています。

The Sensations Where Were You


7曲目はThe Techniquesの「The Reason Why」
です。
ちょっと陰のあるオルガンとピアノのメロディ
に、ファルセット全開のヴォーカルがなかなか
良い味を出している曲です。

8曲目はThe Shadesの「Never Gonna Give
You Up」です。
硬いドラムを中心としたせっかちなリズム
にリリカルなピアノのメロディ。
滑らかなヴォーカルにコーラス・ワーク。

SHADES - Never Gonna Give You Up [1969]


9曲目はThe Techniquesの「Just One Smile」
です。
こちらもちょっとせっかちに感じるギターの
リズムに、出入りのウマいコーラス・ワークが
印象的な曲です。

10曲目はThe Techniquesの「Man Of My
World」です。
印象的なオルガンのメロディに、滑るよう
に滑らかなヴォーカル、それを追いかける
ように入って来る濃厚なコーラス・ワーク。
「I'm Romio」と歌っている事から、「ロミオ
とジュリエット」になぞらえて自分の恋を
歌っているようです。
とてもスウィートで魅力的な曲です。

THE TECHNIQUES - MAN OF MY WORD


11曲目はThe Mad Ladsの「Mother Nature」
です。
出だしの「ラ・ラ・ラ…」というハミングを
聴くと女性か?と思うようなファルセットな
ヴォーカルが印象的な曲です。
軽快なギターのメロディに乗せた曲です。

The Mad Lads - Mother Nature


12曲目はThe Mad Ladsの「I Never Know」
です。
オルガンとベースを中心とした歯切れの良い
メロディに、ファルセットも入ったソフトな
ヴォーカルとコーラス。
心地良いグルーヴ感のある1曲。

13曲目はThe Techniquesの「You Are My
Everything」です。
強力なホーンのメロディのイントロから、
心地良く抜けて行くようなヴォーカルに
コーラス・ワーク。
スウィートな味わいのある曲です。

14曲目はThe Techniquesの「Time Has Come」
です。
ちょっとスウィートなホーンのイントロから、
心地良いヴォーカルにコ―ラス・ワークが
とても魅力的な曲です。
こちらもヴォーカルはPat Kellyか?心地良く
抜けて行くヴォーカルが魅力的。

THE TECHNIQUES - Time Has Come [1968]


15曲目はThe Shadesの「She's Gonna Marry
Me」です。
陰影のあるちょっと悲し気なピアノのメロディ
に、コーラス・ワークが全開のヴォーカル。
早めのリズムが緊張感を演出している曲です。

SHADES - She's Gonna Marry Me [1969]


ざっと追いかけて来ましたが、どの曲も
完成度が高く、この時代のジャマイカの音楽
の質の高さがよく解るアルバムになって
います。
The Techniquesをはじめとするグループの
コーラス・ワークは、かなり完成されたもの
だったという事がよく解るアルバムになって
います。

スカ→ロックステディと進化して来た
ジャマイカの音楽は、この時代ぐらいまでは
かなりアメリカ音楽の影響が感じられますが、
その後レゲエの時代になるとアフリカ音楽の
影響を感じる音楽へと独自の進化を遂げ、
ついに世界的に認められる音楽へと大ブレイク
を果たす事になるんですね。

このアルバムにはその「前夜」の空気感が、
うまく収められています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Techniques & Friends
○アルバム: Winston Riley's Rock Steady & Early Reggae 1968-1969
○レーベル: Dub Store Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2017

○The Techniques & Friends「Winston Riley's Rock Steady & Early Reggae 1968-1969」曲目
1. Your Love Is A Game - Dave Barker
2. So Afraid - The Mad Lads
3. I Feel Alive Again - The Techniques
4. Heart Of Man - The Techniques
5. What Am I To Do - The Techniques
6. Where Were You - The Techniques
7. The Reason Why - The Techniques
8. Never Gonna Give You Up - The Shades
9. Just One Smile - The Techniques
10. Man Of My World - The Techniques
11. Mother Nature - The Mad Lads
12. I Never Know - The Mad Lads
13. You Are My Everything - The Techniques
14. Time Has Come - The Techniques
15. She's Gonna Marry Me - The Shades

●今までアップしたTechniques関連の記事
〇Techniques「Little Did You Know」
〇Techniques「Run Come Celebrate: Their Greatest Reggae Hits」
〇Techniques「Techniques In Dub」
〇Winston Riley「Concrete Jungle Dub + Meditation Dub」
〇Winston Riley「Quintessential Techniques」
〇Various「Roots Techniques」