今回はMutabarukaのアルバム

mutabaruka_01a

「Check It!」です。

Mutabarukaはジャマイカのダブ・ポエット
の詩人として知られている人です。
ネットのWikipediaなどによると、1952年
にAllan Hopeとして生まれて来た彼は電話局
に務めていた青年時代にラスタファリズムに
目覚め改宗し、80年に処女詩集「The First
Poems」を出版。
その後82年に今回のアルバム「Check It!」
を発表し、ダブ・ポエットの詩人として活動
します。
94年からジャマイカのレゲエ専門局IRIE FM
で番組「The Cutting Edge」のパーソナリティ
を務めています。
他にも98年に中国のチベット侵略に反対し、
ロック・バンドBeastie Boysの求めに応じて
チベタン・フリーダム・コンサートへ参加
するなど、積極的に言葉を発し続けているのが
このMutabarukaです。

ムタバルーカ - Wikipedia

今回のアルバムは1982年にジャマイカの
Earl 'Chinna' SmithのレーベルHigh Times
からリリースされたMutabarukaのファースト・
アルバムです。
(Wikipediaでは83年にUSのブルース専門
レーベルAlligator Recordsからとなって
いますが、High Timesの方が制作年や制作元と
いう事から見ても先のようです。)

バックをギターのEarl 'Chinna' Smithを
中心としたThe High Times Bandが務めた
アルバムで、メロディカとピアノでAugustus
Pablo、ドラムのCarlton Barrettなどが参加
したかなり力の入ったアルバムです。
レコード番号が「HTLP 0001」となっている
ところから見て、High Timesレーベルから
初めてリリースされたLPのようです。

ちなみにこのアルバムはEarl 'Chinna' Smith
のダブ・アルバム「Dub It!」の元となった
音源です。

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Earl 'Chinna' Smith ‎– Dub It!

手に入れたのはHigh Timesレーベルから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が6曲、Side 2が4曲の全10曲。
Side 1で表記されているのは5曲ですが、
LPには溝が6つあります。
ネットのDiscogsで見ると7曲になって
いて、そのうち1曲目の「Intro」(口上)
と2曲目「Check It!」はくっ付いていて、
最後の6曲目に表記されていない「Say」と
いう曲があるようです。
またSide 2はネットのDiscogsで見ると5曲
になっていて、2曲目に表記されていない
「Hard Time Loving」という曲がある事に
なっています(苦笑)。
ただLPの溝の数は4つ…。
調べたところ2曲目に「Hard Time Loving」
が入り、最後の2曲「Sit Dung Pon De
Wall」と「Naw Give Up」は、「Sit Dung
Pon De Wall」が演奏のない短い朗読で
「Naw Give Up」と繋がっているようです。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musicians:
〇Check It!:
Drums: 'Drummer' Stone
Bass: Earl 'Chinna' Smith
Retaph Drums: Sydney Wolfe
〇De System:
Drums: Carlton Barrett
Bass: Christopher Meredith
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Piano: Augustus Pablo
〇Everytime A Ear De Soun':
Drums: 'Specs' Bifirimbi
Bass: Earl 'Chinna' Smith
Bass Drum, P Fundi: Sydney Wolfe
Reptan: Harry T. Powell
Piano: Augustus Pablo
〇Witeman Country:
Drums: Carlton Barrett
Bass: Christopher Meredith
Melodica: Phillip Ramacon
Organ: Augustus Pablo
〇Whey Mi Belong?:
Drums: 'Drummer' Stone
Bass: Leebert 'Gibby' Morrison
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Fenser Rhodes Piano: Phillip Ramacon
Melodica: Augustus Pablo
Reptan Drums: Harry T. Powell
Percussion: Sydney Wolfe
〇Angola Invasion:
Drums: Carlton Barrett
Bass: Christopher Meredith
Reptan Drums: Harry T. Powell
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Piano: Earl 'Wire' Lindo
Percussion: Sydney Wolfe
〇Butta Pan Kulcha:
Drums: 'Drummer' Stone
Bass: Leebert 'Gibby' Morrison
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Fenser Rhodes Piano: Phillip Ramacon
Sax: Dean Fraser
Trumpet: Bobby Ellis, David Madden
Trombone: Nambo
〇Sit Dung Pon De Wall: Mutabaruka
〇Naw Give Up:
Drums: Leroy 'Horsemouth' Wallace
Bass: Leebert 'Gibby' Morrison
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Piano: Augustus Pablo
Percussion: Sydney Wolfe

Scream on "Everytime A Ear De Soun'": Imaw
Background Voices on "Whey Mi Belong?": Allalake
Additional Voice on "Angola Invasion": Errol Thompson
Arrangement on "Butta Pan Kulcha": Phillip Ramacon
All Other Arragements: Mutabaruka, Earl 'Chinna' Smith
Qutoes on "Angola Invasion" from Speeches by Emperor Haille Selassie I and Marcus Garvey
"Whey Mi Belong?" from book "Mutabaruka: First Poems" Published by Paul Issa Publications
All Poems Written by Mutabaruka

Recorded and Mixed at: Tuff Gong Studios in Kingston, Jamaica
Engineered by: Errol Brown, Stephen Stewart, Chow
Mixing Engineers: Stephen Stewart, Errol Brown
Album Illusyration / Photography: Donna Cline
Produced by: Earl 'Chinna' Smith, Mutabaruka

となっています。

曲ごとにミュージシャンが書かれています。
今回はミュージシャンが多いので細かい
ミュージシャンについては書きませんが、
何曲かでAugustus Pabloがメロディカとピアノ、
オルガンを演奏しています。
またThe Wailersにも参加したドラマーの
Carlton Barrettが参加していて、Bob Marley
& The Wailersになったのちの曲「Them Belly
Full」を演奏したりしています。

バンドはHigh Timesレーベルでの録音なので、
アーリー・ダンスホールの時代に活躍した
The High Times Bandという事になるようです。

レコーディングとミックスはTuff Gongで、
レコーディング・エンジニアはErrol Brownと
Stephen Stewart、Chow、ミキシング・エンジ
ニアはStephen StewartとErrol Brownが担当
しています。
プロデュースはEarl 'Chinna' Smithと
Mutabaruka本人。
アルバム・ジャケットのイラストはDonna Cline
という人が担当しています。

さて今回のアルバムですが、どう書いて良い
か?…正直迷いました。
こうしたダブ・ポエットという形態は、音楽
というよりは詩に重点が置かれているので、
単に音の聴き心地だけでは書く事が出来ない
部分があるんですね。
正直私は英語が堪能ではないので、彼の
しゃべっている言葉は解らないところが多い
です。
ただこうしたMutabarukaやLinton Kwesi
Johnson(LKJ)のようなダブ・ポエットの
アーティストにとっては、その言葉(詩)
こそがもっとも重要なんですね。

そのため今回はアルバムを聴くだけでなく、
YouTubeでそのMutabarukaやLKJのパフォー
マンス映像を何度も見ました。
それを見るとイギリスのLKJのパフォーマンス
はステージの真ん中に立ってしゃべっている
感じですが、Mutabarukaのパフォーマンスは
上半身裸で手鎖を付け、途中から民族衣装を
付けた女性が蜘蛛のようなスタイルで踊ったり
してかなり刺激的です。
おそらく奴隷として連れて来られた自分たち
黒人を表現しているものと思われます。

そうした映像を見て印象的だったのは、
見ている聴衆の中に居る白人の表情がかなり
曇っていた事です。
おそらく彼らの語る言葉の中にはかなり
政治的で厳しい言葉があり、それがこうした
白人の聴衆の表情を曇らせていたものと思わ
れます。
私たち日本人はポエット(詩)と聴くと
メルヘンチックなものを想像しますが、彼ら
の使う詩という表現はそういうものではなく、
かなり攻撃的で政治的なものなんですね。

ただこうした言葉で世界を変えようとした
のはこのMutabarukaやLKJだけに限らず、
あのBob Marleyをはじめとするルーツ・
レゲエのアーティストは、ラスタファリズム
という宗教を基盤としてそれまでの白人優位
の世界を変えようというメッセージを発し
続けたんですね。
未だにBob Marleyが多くの人々の支持を
受けるのは、そうしたプロテスト・ソングの
メッセージを発し続けたアーティストだった
からです。

このMutabarukaもそうした血筋を引く
アーティストで、このデビュー盤を皮切りに
今に至るまで活動を続けているんですね。
YouTubeで彼Mutabarukaの名前を打ち込むと
レゲエ専門局IRIE FMの番組「The Cutting
Edge」の彼の話した事が多くアップされて
いるんですね。
その中にはあのアメリカ大統領になった
トランプ氏の写真が貼られているものも
あったので、おそらく彼の差別発言などを
批判しているものと思われます。
書いたように98年に中国のチベット侵略に
反対し、ロック・バンドBeastie Boysの求め
に応じてチベタン・フリーダム・コンサート
へ参加するなど、常にアクティブに発言し
続けてきたのが、このMutabarukaという人
のようです。
その姿勢はやはり評価しなければなりません。

今回はその彼のファースト・アルバムです
が、正直なところ他の音楽アルバムと較べる
と聴き終わった後に何かスッキリしないもの
が残るアルバムです。
ただそのスッキリしない「苦さ」こそが、
ある意味ダブ・ポエットらしさと言えるかも
しれません。
使われている曲はRas Michaelの「Zion Land」
やBob Marley & The Wailersの「Them Belly
Full」、またレゲエ以外ではポピュラーの
インスト・ナンバーPaul Mauriatの「恋は
水色」として知られる「Love Is Blue」など、
知られている曲をうまく配したメッセージ色
の強いアルバムになっています。

このアルバムとレゲエ・サンスプラッシュ
での衝撃的なパフォーマンスで、彼が世界的
に知られる存在になったようです。
そういう意味ではこの「Check It!」は彼の
記念碑的アルバムと言えるかもしれません。

Side 1の1曲目は「Intro / Check It」です。
初めに短い「Intro」のメッセージが入り、
そこからパーカッションを中心とした
メッセージ「Check It」になります。

Mutabaruka - Check It
↓こちらは「Check It」のみです。


2曲目は「De System」です。
ギターのメロディに乗せたトースティング
ともいえる朗読です。
そのあたりはイギリスのLKJと較べてもだいぶ
メロディアスなのが、この人の特徴のよう
です。
ピアノでAugustus Pabloが参加しており、
リズミカルなピアノを披露しています。
途中にBob Marley & The Wailersの「Them
Belly Full」のフレーズが入ったり、
ちょっとショー・アップを考えた構成です。

mutabaruka - de system - reggae - HQ.wmv


3曲目は「Everytime A Ear De Soun'」です。
銃撃のエフェクトから叫び声、ピアノの
メロディに乗せたダブ・ポエットです。
こちらもAugustus Pabloのリリカルなピアノ
が良い感じで効いている1曲。

4曲目は「Witeman Country」です。
Mutabarukaの滑らかな語りに、追いかける
ようなメロディカの曲です。
印象的なメロディカが入りますが、奏者は
Augustus PabloではなくてPhillip Ramacon。
Pabloはそれをフォローするようなオルガン
を弾いています。

Mutabaruka - Whiteman Country


5曲目は「Whey Mi Belong?」です。
思いシンセのメロディに女性コーラス、それ
をバックにしたMutabarukaの語りが素晴らしい
曲です。
使われている曲はRas Michael & The Sons Of
Negusの「Zion Land」。
オルガンにパーカッションの響きが、奥深い
密林に誘うような1曲。
最後にこのライヴ映像を載せておきましたが、
両手に手鎖を付けて朗読するMutabarukaの
映像は、かなり強烈なものがあります。

6曲目は「Say」です。
アルバムにクレジットされていない曲で、
パーカッションをバックにした短い朗読
です。

Side 2の1曲目は「Angola Invasion」です。
「アンゴラ侵入」というタイトルのように、
アフリカのアンゴラに対するメッセージを
朗読した曲のようです。

2曲目は「Hard Time Loving」です。
ここにアルバムには表記されていない曲が
入っているようです。
使われている曲はMauriatの「Love Is
Blue」です。
ポピュラーの有名なインスト・ナンバーに
乗せた、ちょっとユーモラスな朗読です。

Mutabaruka - Hard Time Loving


3曲目は「Butta Pan Kulcha」です。
こちらはホーン・セクションも入ったバック
に乗せた朗読です。

MUTABARUKA/ BUTTAH PAN KULCHA


4曲目は「Sit Dung Pon De Wall / Naw Give
Up」です。
前半の「Sit Dung Pon De Wall」は演奏のない
短い朗読で、後半の「Naw Give Up」と繋がって
います。
「Naw Give Up」はピアノのメロディを中心と
したバックに、歌うような朗読の1曲。

ざっと追いかけて来ましたが、このアルバム
で衝撃を与えたMutabarukaがその後も言葉を
発し続け、多くの人々に影響を与え続けた事
は事実だと思います。
こうした政治的な発言をする事は日本では
あまり肯定的に捉えられない側面があります
が、言葉で世界を変えようとする事はもっとも
平和的な解決法なんですね。
ある意味黙っていて世の中が悪くなるくらい
ならたとえ微力でも発言し続ける、そうした
努力も必要なんですね。

日本でも「日本、死ね!」という働けない
ママの発言が話題になりましたが、そういう
発言を抑え込もうとする人も居ますが、それ
に負けずに国会前に行ったママたちの行動は
とても大切な事なんですね。
私は素晴らしい事だと思います。
少しずつこの日本も変わり始めているのかも
しれません。

話がそれましたが、今回のアルバムは詩人
Mutabarukaのファーストで、その言葉の痛さ
も含めてちょっと面白いアルバムだと思い
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Mutabaruka - Whey Mi Belang?



○アーティスト: Mutabaruka
○アルバム: Check It!
○レーベル: High Times
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Mutabaruka「Check It!」曲目
Side 1
1. Intro / Check It
2. De System
3. Everytime A Ear De Soun'
4. Witeman Country
5. Whey Mi Belong?
6. (Say)
Side 2
1. Angola Invasion
2. (Hard Time Loving)
3. Butta Pan Kulcha
4. Sit Dung Pon De Wall / Naw Give Up