今回はWayne Jarrettのアルバム

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「Chip In」です。

Wayne JarrettはDiscogsなどで彼の履歴を
調べると、75年頃からシングル盤のリリース
があり、81年から84年までの間に4枚の
アルバム・リリースがあるシンガーなんです
ね。
おそらく80年だ初めのアーリー・ダンス
ホールの時代にもっとも活躍したシンガー
と思われます。
82年にWackiesからリリースしたアルバム
「Showcase Vol.1」(別名「Bubble Up」)
が有名なシンガーです。

Wayne Jarrett - Wikipedia

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Wayne Jarrett ‎– Showcase Vol.1 (1982)

今回のアルバムは1982年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされた
彼のソロ・アルバムです。
82年というと彼の代表作ともいえる
アルバム「Showcase Vol.1」が発売された
年で、おそらく彼自身がもっとも充実して
いた時期ではないかと思われます。
このらのアルバムもプロデュースはVolcano
レーベルのHenry 'Junjo' Lawes、バックは
Roots Radics、ミックスはScientistという
このアーリー・ダンスホールの音楽を作り
上げた布陣が揃った、かなり充実した内容の
アルバムになっています。

手に入れたのはGreensleeves Recordsから
リリースされたCDのでした。
オリジナル10曲にプラスして、12インチ・
エクステンデッド・ミックス4曲がCD
ボーナス・トラックとして付いた、全14曲
入りのアルバムでした。

全14曲で収録時間は約69分。
オリジナルは10曲で、残りの4曲はCD
ボーナス・トラックです。
ボーナス・トラックはすべて前半は歌後半は
ダブがディージェイの12インチ・エクステン
デッド・ミックスの曲になっています。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced by Henry 'Junjo' Lawes
Recorded at Channel One
Backed by The Roots Radics Band
Tracks mixed by Scientist at King Tubby's, Kingston, Jamaica

All tracks written by: H. Lawes, W. Jarrett
Except tack 3 written by H. Lawes, H. Brooks, D. Lewis, W. Jarrett, E. Smith, M. Collins

となっています。

プロデュースはHenry 'Junjo' Lawes、録音は
Channel Oneで、バック・バンドはThe Roots
Radics Band、ミックスはKing Tubby'sに在籍
していたScientistが担当しています。

すべての曲の作曲はH. LawesとW. Jarrett、
ただし3曲目「True Love」のみH. Lawesと
H. Brooks、D. Lewis、W. Jarrett、E. Smith、
M. Collinsの共作となっています。

カヴァー・デザインの記述はありませんが、
ネットのDiscogsではLPのデザインが
Jill OwensとTony McDermottとなってい
ました。
ただCDはデザインは微妙に変わっていて、
LPのデザインの一部を切り抜いたものに
なっています。
Jill OwensとTony McDermottのデザイン
とは、純粋に言えないところがあります。

さて今回のアルバムですが、Roots Radicsの
演奏とScientistのミックスをバックに歌う
Wayne Jarrettの陰影のあるヴォーカルは
なかなか魅力的で、内容の良いアルバムだと
思います。

実は個人的にもこのアーリー・ダンスホール
のRoots RadicsとScientistの組み合わせって
大好きなんですね(笑)。
ルーツ期の人気バンドはThe Revolutionaries
ですが、The Revolutionariesのタイトで隙の
無い演奏に較べると、このアーリー・ダンス
ホール期のRoots Radicsの演奏はスカスカ
とか隙間だらけとかよく言われます。
ただそこにこのバンドのスゴさ、レゲエと
いう音楽の美学があるんですね。
一見ユルく感じるリズムは、歌が入った時に
ビシッと決まる、意外と計算されたサウンド
なんですね。
Flabba HoltのベースとStyle Scottの叩き
出すワン・ドロップを中心としたサウンド
は、ミディアム・テンポのメローなサウンド
でありながらヘヴィーという、独特の世界観
を作り上げています。
そのヘヴィーを生み出しているScientistの
ミックスもとても魅力的です。

ルーツ・レゲエとその次に来るデジタルの
ダンスホールの挟まれて見過ごされがちです
が、このアーリー・ダンスホールの時代って
もっともレゲエが円熟した面白い時代なん
ですね。
その時代に活躍したこのRoots Radicsと
Scientistは、レゲエ好きには見過ごす事の
出来ない存在なんですね。

そうした素晴らしいバック陣を従えた
Wayne Jarrettですが、この人のヴォーカル
がまた素晴らしいんですね。
哀愁を秘めた陰影のあるヴォーカルは、
かなり魅力的。
この時代のダンスホール独特のちょっと湿った
空気感が、鮮明に感じられるヴォーカルなん
ですね。
アーリー・ダンスホール好きには、グッと
来るアルバムだと思います。

特に3曲目「True Love」の哀愁を秘めた
悲し気なファルセットのヴォーカルは、
シビレること間違いありません。
他にも「Taxi」リディムを使った表題曲
「Chip In」など、このアーリー・ダンス
ホールの空気が詰まった曲が多く収められて
います。

1曲目は「Love In Mi Heart」です。
緊張感を煽るような印象的なサックスに、
愁いを帯びた印象的なWayne Jarrettの
ヴォーカル。
ズシッと響くFlabba Holtのベースが、うまく
曲全体を引き締めています。
ちょっとダブワイズの入ったScientistの
重量感のあるミックスもとても良いです。

Wayne Jarrett - Love In A Mi Heart 1982


2曲目は「Skank And Come In」です。
リディムはRupie Edwardsの「Irie
Feelings」か?
Flabba Holtのベースを軸とした、ユッタリ
としたワン・ドロップに乗せた曲です。
この時代らしい「間の美学」があります。

Wayne Jarrett - Skank and Come in


3曲目は「True Love」です。
このアルバムのオリジナル曲の中で一番長い
5分18秒にも及ぶ曲です。
哀愁を帯びたWayne Jarrettのヴォーカルと、
ほぼベース1本で聴かせるミニマルなバック
がエグいほど魅力的な曲です。

Wayne Jarrett - True Love


4曲目は「Ranny And Lou」です。
こちらはホーンが合間良く入るバックに、
心地良いファルセットで歌うWayne Jarrett
が魅力的な曲です。
こちらもベースがイイ感じで効いています。
Scientistのダブワイズの効いたミックスも
素晴らしいです。

5曲目は「Got To Be Sure」です。
頭から入るヴォーカルにコーラス・ワーク、
ズシッとしたベースがうまく曲を引き締め
ている1曲。

6曲目は表題曲の「Chip In」です。
リディムはLittle Royの「Prophecy」、通称
「Taxi」リディムと呼ばれている曲です。
華やかなホーンのワン・ドロップのメロディ
に、心地良さそうなWayne Jarrettのヴォーカル
が良いグルーヴ感を醸し出している曲です。

Wayne Jarrett - Chip In


リズム特集 Taxi (タクシー)

7曲目は「Jah Jah I」です。
こちらも印象的なホーン・セクションに、
ソフトなWayne Jarrettのヴォーカルが
魅力的な曲です。

8曲目は「Why Must Babylon」です。
こちらはベースとギターの奏でるメロディに、
いきなりファルセット全開のヴォーカル。
ちょっと悲し気な表情のヴォーカルが、
グッと来る1曲。

9曲目は「Saturday Night Jamboree」です。
こちらはホーンとベースを軸とした演奏に、
哀愁を秘めたヴォーカルにファルセットな
コーラスが魅力的な曲です。

10曲目は「Money Problems」です。
ユッタリしたホーンのメロディに、丁寧に
歌うWayne Jarrettのヴォーカルが魅力的な
曲です。

Wayne Jarrett - Money Problem (Album version)


11~14曲目まではCDボーナス・トラック
で、前半は歌後半はダブかディージェイの
12インチ・エクステンデッド・ミックス
(ディスコ・ミックス)の曲が収められて
います。

11曲目は「You Were On My Mind (12" Mix)」
です。
ワン・ドロップのリズムに、丁寧なWayne
Jarrettのヴォーカルが心地良い曲です。
後半はギターベースを中心としたダブ。

12曲目は「Got To Be Sure (12" Mix)」
です。
5曲目「Got To Be Sure」のディスコ・
ミックスです。

13曲目は「Chip In (12" Mix)」です。
6曲目表題曲のエクステンデッド・ミックス。
ホーンの華やかな曲ですが、後半はそのホーン
がさらに生きたダブになっています。

14曲目は「Saturday Night Jamboree
(12" Mix)」です。
9曲目「Saturday Night Jamboree」の、
前半は歌後半はディージェイのエクステン
デッド・ミックスです。
後半のディージェイは、ネットのYouTubeなど
を見るとSilver Foxのようです。
いかにもダンスホールという湿った空気感
満載の1曲。

Wayne Jarrett & Silver Fox - Saturday Night Jamboree 12" 1980


ざっと追いかけて来ましたが、Wayne Jarrett
のヴォーカルも素晴らしく、このアーリー・
ダンスホールの時代のアルバムとしてかなり
内容の良いアルバムだと思います。

私自身Wayne Jarrettってこんなに素晴らしい
シンガーだったっけ?と思い、あらためて
彼のWackiesのアルバム「Showcase Vol.1」
を聴き直してしまったほどです。
実際に聴いてみるとこちらもWackiesの
ミニマルでタイトなサウンドに乗せた素晴ら
しいアルバムでしたが、今回のアルバムの方
がFlabba Holtのベース1本で彼のヴォーカル
を聴かせているような個所もあり、より
Wayne Jarrettのヴォーカルを引き立てている
印象です。
あらためてこの時代のRoots Radicsの演奏の
スゴさを実感しました。

このアーリー・ダンスホールの魅力が詰まった
とても魅力的なアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Wayne Jarrett
○アルバム: Chip In
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Wayne Jarrett「Chip In」曲目
1. Love In Mi Heart
2. Skank And Come In
3. True Love
4. Ranny And Lou
5. Got To Be Sure
6. Chip In
7. Jah Jah I
8. Why Must Babylon
9. Saturday Night Jamboree
10. Money Problems
(CD Bonus Tracks)
11. You Were On My Mind (12" Mix)
12. Got To Be Sure (12" Mix)
13. Chip In (12" Mix)
14. Saturday Night Jamboree (12" Mix)