今回はU-Brownのアルバム

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「Raver's Party」です。

U Brownは70年代のルーツ・レゲエの時代
から活躍したディージェイです。
U Royのフォロワーとして登場した彼は、
70~80年代にかけて様々なサウンド
システムを渡り歩き、活躍した事で知られて
います。

英語のWikipediaのページには彼の経歴と
して、次のような文章が書かれています。

Huford Brown (born 8 June 1956, Kingston, Jamaica), better known by the stage name U Brown,
is a reggae deejay who released eleven albums between 1976 and 1984.
(Huford Brown《1956年6月8日
ジャマイカ、キングストン生まれ》は、
1976年から84年にかけて11枚の
アルバムを残したレゲエ・ディージェイの
U-Brownとして知られています。)

この記述からも彼U-Brownが、70年代後半
のルーツ・レゲエの時代から80年代前半の
アーリー・ダンスホールの時代に活躍した
ディージェイである事が解ります。

U Brown - Wikipedia

今回のアルバムは1982年にUKのTrojan
RecordsからリリースされたU-Brownのソロ・
アルバムです。
この82年はジャマイカはルーツから
アーリー・ダンスホールの時代に変わって
おり、ジャケットからもその空気感が感じ
られます。

手に入れたのはTrojan Recordsからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 2は5曲、Side 2は5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

All Songs Produced, Composed & Arranged by Hu Brown

Drums: Sly Drumbar, Style Rattledrum
Bass: Robert Basspear, Lloyd 'The Wizard' Parkes
Piano: Franklyn 'Bubbla' Waul, Tarzan, Gladstone Anderson
Organ: Winston 'Blue Bek' Wright, Ansel 'Fingertrick' Collins
Lead Guitar: Willie 'Pick-Any-String' Lindo, Radcliffe 'Dougie' Bryan
Rhythm Guitar: Eric 'Bingy Radics' Lamont, Ranchie McLean, Winston Bowen
Percussion: Sky Juice, Zoot 'Skully' Simms, Uriah 'Sticky' Thompson
Horne Section: Dean 'Youth Sax' Frazer, Junior 'Chico' Chin, Nambo Robinson

Recorded & Remixed: Channel One Studio & Joe Gibbs Studio, Jamaica
Engineers in Chair: Scientist, Barnabas, Oswald 'Triny' Palmer
Produced by: Hu Brown for Hit Sound Record Company. A 1982 Production

となっています。

すべての曲の作曲とアレンジ、プロデュース
はHu Brown、つまりHuford Brown(U-Brown)
本人が行っています。

ミュージシャンはドラムにSly DrumbarとStyle
Rattledrum、ベースはRobert BasspearとLloyd
Parkes、ピアノにFranklyn 'Bubbla' Waulと
Tarzan、Gladstone Anderson、オルガンに
Winston WrightとAnsel Collins、リード・
ギターにWillie LindoとRadcliffe 'Dougie'
Bryan、リズム・ギターにEric 'Bingy Bunny'
LamontとRanchie McLean、Winston Bowen、
パーカッションにSky JuiceとSkully、Sticky、
ホーン・セクションにDean FrazerとChico
Chin、Nambo Robinsonという布陣です。

レコーディングとリミックスはChannel Oneと
Joe Gibbsで行われ、エンジニアはScientistと
Barnabas、Oswald 'Triny' Palmerが担当して
います。

なかなか魅力的なジャケットですが、残念
ながらイラストの作者の名前がありません。
茶色のパンツをはいたU-Brownと思われる
髭面の人物の周りを囲むように踊る様々な
人物、黄色い袖なしTシャツにイカのよう
に広がったパンツで踊る人物や、黒い
トレーナーでポーズを決める髭面の男、
ピンクのシャツで足を組んで壁に寄り
かかる男など、巨大なスピーカーが置かれた
ダンスホールの様子が描かれています。
正直なところこのアルバムを買ったのは、
このジャケットが気に入ったからというのが
あります(笑)。

さて今回のアルバムですが、この80年代
前半のアーリー・ダンスホールの空気感を
伝えるアルバムで、内容はとても良いと
思います。

このU-Brownですが70年代後半から80年
代前半に活躍したディージェイで、彼の
アルバムで比較的手に入れ易いアルバム
としては、レゲエ・リイシュー・レーベル
Blood & Fireから出ている「Train To Zion
(1975-1978)」というアルバムがあります。

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U Brown ‎– Train To Zion (1975-1978) (1997)

こちらはタイトルからも解るように、彼の
70年代ルーツ期の活躍を集めたアルバム
です。
アルバム自体の内容はなかなか悪くないの
ですが、この時代のU-Brownの印象はマジメ
でちょっと地味なディージェイという印象
です。
個性派ぞろいのルーツ・ディージェイの中
に入ると、ちょっと個性が弱いかなという
感じが残るんですね。

ただ今回のアルバムでは、そのU-Brownの
ライトな個性がうまく生きている印象です。
ディープなルーツ・レゲエの時代より、
明るいアーリー・ダンスホールの時代の
方がこの人の軽い個性に合っているんじゃ
ないかと思いました。
ある意味小器用な流れるようなトース
ティングがこの人の持ち味で、この時代の
空気に合っていて欠点になっていないん
ですね。

ScientistやBarnabas、Oswald 'Triny'
Palmerといった人達のミックスも、この時代
のワン・ドロップを生かしたライトな感覚の
ミックスで、心地良さをうまく引き出して
います。

全体に聴き心地の良い明るいアルバムに、
仕上がっています。

Side 1の1曲目は表題曲の「Ravers Party」
です。
リディムはLarry Marshalの「Throw Me Corn」。
ワン・ドロップの心地良いリズムに乗せた
U-Brownのちょっと脱力したトースティングが
魅力的な曲です。

U BROWN "Raver's Party" (1982)


リズム特集 Throw Me Corn (スロウ・ミー・コーン)

2曲目は「Me Chat You Rock」です。
リディムはSlim Smithの「Keep That Light」。
明るいホーン・セクションから、滑らかな
ラバ・ダブ・スタイルのトースティング。
もうひとり合いの手を入れるディージェイが
居るんですが、誰なんでしょう?
この時代らしい空気感がタマラない1曲。

U Brown - Me Chat You Rock


3曲目は「Out Of Hand」です。
リディムはDon Carlosの「I'm Not Getting
Crazy」。
こちらも合いの手が入るラバ・ダブ・スタイル
のトースティングです。
打ち込むようなワン・ドロップのリズムに
乗せたトースティングが魅力的な曲です。

4曲目は「Archiebella (Samfire Seller)」
です。
この曲はRiddimguideではリディムが出て
来なかったけれど、ロックステディの
Ken Bootheのヒット曲「Arte Bella」か?
滑らかなU-Brownのトースティングが冴える
曲です。

5曲目は「Reggae Non-Stop」です。
リディムはJoe Rileyの「You Should Have
Known」。
リリカルなピアノのメロディにワン・
ドロップのリズム、それに乗せたU-Brownの
歌うようなトースティングが魅力的な曲です。

Side 2の1曲目は「It's Me」です。
ギターのリズムに乗せたラバ・ダブ・スタイル
のソフトなトースティングです。
ガツンと打ち込むようなワン・ドロップの
ドラミングが印象的。

U Brown ~ It's Me ( Hold On Riddim ) Reggae DJ Bubblin Style ~ Dubwise Selecta


2曲目は「Love Life」です。
ユッタリしたワン・ドロップのリズムに、
エコーの効いたラバ・ダブ・スタイルの
トースティング。
いかにもこのアーリー・ダンスホールらしい
グルーヴ感のある曲です。

U Brown - Love Life


3曲目は「Party In Full Swing」です。
リディムはLittle Royの「Prophecy」で、
通称「Taxi」リディムとして知られる曲
です。
ユッタリしたリズムに滑らかなトース
ティング。

リズム特集 Taxi (タクシー)

4曲目は「Hugging And Kissing」です。
滑らかな口上のようなトースティングから、
徐々にワンドロップのリズムに乗せた
トースティングへと盛り上がって行く曲
です。

U Brown - Hugging and Kissing


5曲目は「Dangerous Machine」です。
リディムはLone Rangerの「M 16」。
ユッタリしたワン・ドロップのリズムに、
滑らかなラバ・ダブ・スタイルのトース
ティングが楽しい1曲です。

ざっと追いかけて来ましたが、やはりこの
U-Brownのアクの強くないライトなトース
ティングがうまく映えたアルバムだと思い
ました。
アクの強いミュージシャンが多いジャマイカ
の音楽界では、かえってこうしたライトな
個性の方が目立つという事があるのかもしれ
ません。

このアーリー・ダンスホールらしい良い
グルーヴ感のあるアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: U-Brown
○アルバム: Raver's Party
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○U-Brown「Raver's Party」曲目
Side 1
1. Ravers Party
2. Me Chat You Rock
3. Out Of Hand
4. Archiebella (Samfire Seller)
5. Reggae Non-Stop
Side 2
1. It's Me
2. Love Life
3. Party In Full Swing
4. Hugging And Kissing
5. Dangerous Machine

●今までアップしたU-Brown関連の記事
〇U Brown「Repatriation」
〇U Brown「Superstar」
〇U Brown「Train To Zion [1975-1978]」
〇U-Brown「You Can't Keep A Good Man Down」