今回はSylford Walkerのアルバム

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「Lamb's Bread」です。

Sylford Walkerは70年代のルーツ・レゲエ
の時代に「Jah Golden Pen」や「Burn
Babylon」という曲などで注目を集めた
シンガーです。
80年以降は引退状態になり、「伝説の
シンガー」と言われていましたが、02年に
再びシンガーとして復活したという変わった
経歴の持ち主です。
Augustus Pabbloの息子Addis Pabloの
デビュー・アルバム「In My Fathers House」
で「Gideon Rockers」という曲のヴォーカル
を務めるなどの活躍をしています。

Sylford Walker - Wikipedia

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Addis Pablo ‎– In My Fathers House (2014)

今回のアルバムは1988年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされた
Sylford Walkerのファースト・アルバム
です。
70年代に活躍したSylford Walkerですが、
シングル盤のリリースのみでアルバムは出して
いなかったんですね。
しかもネットのこのアルバムについての記事
を読むと、このアルバムが出た時には事実上
の引退状態だったんだとか…(苦笑)。

実際の録音は77年頃で、そのアルバムを
10年以上経ってリリースしたのが、
プロデューサーのGlen Brownだったんだ
とか。
「Slaving」や「Death In The Arena」、
「Dirty Harry」などの名リディムが使われ
ており、しかも3曲は前半が歌後半はダブと
いうディスコ・ミックス・スタイルの曲で、
ルーツ好きにとってはかなりシビレる内容の
アルバムです。

手に入れたのはClock Tower系列のShanachie
というレーベルからリリースされたCDの
中古盤でした。

全8曲で収録時間は約37分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Produced & arranged by Glen L. Brown
Recorded at King Tubby's, Harry J's, Randy's, Federal, Channel One Studios
Mixed by King Tubby at King Tubby's Studio

Drums: Carlton Barrett, Eric Clark
Bass: Errol 'Flabba' Holt, Lloyd Parkes, Jackie Jackson, Jeffrey Chung
Piano: Joe White
Organ: Aston 'Family Man' Barrett
Guitars: Glen Brown
Trombone: Trammy
Tenor Sax & Flute: Tommy McCook

となっています。

プロデュースとアレンジはGlen L. Brownで、
レコーディングはKing Tubby'sとHarry J's、
Randy's、Federal、Channel One Studiosで
行われ、ミックスはKing Tubby'sでKing Tubby
本人が行っています。

ミュージシャンはドラムにCarlton Barrettと
Eric Clark、ベースにErrol 'Flabba' Holtと
Lloyd Parkes、Jackie Jackson、Jeffrey
Chung、ピアノにJoe White、オルガンにAston
'Family Man' Barrett、ギターにGlen Brown、
トロンボーンにTrammy、アルトサックスと
フルートにTommy McCookという布陣です。
トロンボーンのTrammy(Trommie)は、
Vin Gordon(別名Don Drummond Jr.)と思わ
れます。

全体にスタジオとミュージシャンの数が多い
のは、このアルバムがシングル盤の録音を
集めたアルバムの為と思われます。

さて今回のアルバムですが、書いたように
「Slaving」や「Death In The Arena」、
「Dirty Harry」などの名リディムが使われ
ており、しかもディスコ・ミックス曲も収め
られたルーツ・レゲエ好きにはとても
シビレる内容のアルバムになっています。

このアルバムが77年のルーツ・レゲエの
時代に録音が済んでいながら、88年という
アーリー・ダンスホールからさらにデジタル
のダンスホールの時代になって発売されたの
か?その理由は解りませんが、それだけ発売
が遅れたのはちょっともったいない気がしま
した。
プロデューサーのGlen Brownは金銭面で
レコード制作にかなり苦労した人のようなの
で、そのあたりがこれだけ発売が遅れた理由
なのか?
しかしこれだけの音源が、しかもSylford
Walker本人がすでに引退状態の時に発表
されるというのは…、かなりもったいない
ですよね~(笑)。

ただそれだけ時期を逃したアルバムであって
も、ルーツ・レゲエ好きにとっては宝物の
ようなアルバムです。
その魅力は今の時代になってもけっして
色褪せる事はありません。

Sylford Walkerのちょっと武骨さを感じさせる
ヴォーカルは、このルーツのメロディにとても
合っています。
また長さが短めだったためかディスコ・
ミックスの曲が3曲入っているのも、ルーツ
の時代を感じさせて良い味わいになって
います。
特に最後の8曲目「Africa Homeland」は、
後半のダブはTrammyことVin Gordonの
トロンボーンが冴えわたっており、あの
Lee Perryのダブ・アルバム「Musical Bones」
での彼のトロンボーンでの熱演を彷彿と
させる内容で、このアルバムの目玉曲の
ひとつになっています。

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Lee Perry & The Upsetters ‎– Musical Bones (1975)

時代はすでにデジタルのダンスホールですが、
このアルバムにはこれぞルーツ!という魅力
があります。

ちなみにこのアルバムは2002年刊行の本
「Roots Rock Reggae」にも紹介されている
アルバムで、そこには「林」さんという方の
文章で「超重量級ダブ・チャンピオン、
キング・タビーのミキシングを堪能する事が
出来る傑作。」と絶賛されているアルバム
です。

やはりこのKing Tubbyのミックスは、本当
に魅力的で素晴らしいです。

1曲目は「Lamb's Bread」です。
リディムはJah Glenの「Save Our Nation」。
ちょっと武骨な印象のSylford Walkerの
ヴォーカルがグッと来る1曲です。
硬めのパーカッションもグッド。

Sylford Walker & Welton Irie Lamb's Bread International 1977 78 03 Sylford Walker Lambs Bre


2曲目は「Chant Down Babylon」です。
リディムはLloyd Parksの「Slaving」。
Lloyd Parksの名曲をうまく自分の曲に作り
変えています。

Sylford Walker - Chant down Babylon.


3曲目は「Prophecies Fulfilling」です。
リディムはRoland Alphonso & Soul Vendors
の「Death In The Arena」。
こちらは後半がダブのディスコ・ミックス曲
になっていて、このアルバムで一番長い
7分20秒の曲です。
エコーの効いた心地良いリズムに乗せた、
Sylford Walkerのヴォーカルが冴える曲です。

リズム特集 Arena (アリーナ)

4曲目は「Give Thanks And Praise To Jah」
です。
リディムはTommy McCook & Richard Hallの
「Dirty Harry」。
Glen Brownのヒット・リディムのひとつです。
独特の味わいのあるメロディに、Sylford
Walkerのヴォーカルがマッチした1曲。

SYLFORD WALKER Give Thanks And Praise To JAH


5曲目は「Cleanliness Is Godliness」です。
華々しいホーンのイントロから、感情を抑えた
Sylford Walkerの丁寧なヴォーカルが印象的。
合間良く入って来るTommy McCookのサックス
がとても魅力的。

6曲目は「Babylonians」です。
こちらも5曲目と同じ「Cleanliness Is
Godliness」のメロディが使われています。
Glen Brownの音源でhこうした「使い回し」
が非常に多いんですね。
ノビのあるSylford Walkerのヴォーカルが、
うまく味わいを変えています。

7曲目は「Eternal Days」です。
リディムはGlen Brownの「Forward The Good」
です。
イントロのフルート使いなど、音使いのウマさ
が際立つ曲です。
こちらもディスコ・ミックスで、このアルバム
で2番目に長い7分14秒の曲です。
後半はそのフルートが際立ったダブになって
います。

Sylford Walker - Eternal Day b/w Dub Universal (Ja South East Music)


8曲目は「Africa Homeland」です。
イントロのVin Gordonのトロンボーンから、
完全にヤラレちゃう曲です(笑)。
茫洋としたトロンボーンの調べに、エコーの
効いたSylford Walkerのヴォーカル…。
ルーツ・レゲエで無ければ作れない世界が
ここにはあります。
後半のダブも強烈な1曲です。

Sylford Walker - Africa Homeland + Dub


ざっと追いかけて来ましたが、やはりこの
ドップリと濃いルーツ色はとても魅力的です。
無いものねだりですが、もしもこのアルバム
がルーツ期に発売されていたら…そんな事を
ちょっと思てしまうほど良い内容のアルバム
なんですね。

ただだいぶ後だったとしても、このSylford
Walkerが再評価された事の方を喜ぶべきなの
かもしれません。
内容は本当に文句なしだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Sylford Walker
○アルバム: Lamb's Bread
○レーベル: Shanachie
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1988

○Sylford Walker「Lamb's Bread」曲目
1. Lamb's Bread
2. Chant Down Babylon
3. Prophecies Fulfilling
4. Give Thanks And Praise To Jah
5. Cleanliness Is Godliness
6. Babylonians
7. Eternal Days
8. Africa Homeland