今回はRanking Dreadのアルバム

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「Girls Fiesta」です。

Ranking DreadはU RoyやI Royといった
第1世代のディージェイに影響を受けた
第2世代のディージェイとして知られている
人です。

彼の活躍した70年代のジャマイカは極貧国
のひとつで、政治抗争も激しく人民国家党
(PNP)とジャマイカ労働党 (JLP)の間で、
銃撃戦も起こる程の荒れた国だったんですね。
このRanking Dreadはそのジャマイカ労働党
(JLP)の熱烈な支持者として、Tappa Zukieと
並んで知られるディージェイだったようです。
そんな彼が1978年に警官との銃撃戦に
巻き込まれ、指名手配されて逃亡先のイギリス
で出したアルバムが、今回のアルバム「Girls
Fiesta」です。

その後も80年代前半のアーリー・ダンス
ホールの時代まで順調にアルバムをリリース
したRanking Dreadでしたが、1996年に
犯罪者としてジャマイカの刑務所で亡く
なっています。

Ranking Dread - Wikipedia

今回のアルバムは1978年にUKの
Burning SoundsからリリースされたRanking
Dreadのファースト・アルバムです。
犯罪者として指名手配されたRanking Dread
が逃亡先のイギリスで録音したという、ある
意味トンでもないアルバムです(笑)。
バックの音源はLinval Thompsonのアルバム
「I Love Marijuana」や「Love Is The
Question」の音源が使われているようで、
おそらくそうした音源にトースティングを
オーヴァー・ダブしたのが今回のアルバム
です。

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Linval Thompson ‎– I Love Marijuana (1978)

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Linval Thompson ‎– Love Is The Question (1978)

この時代のLinval Thompsonは新世代の
シンガー、プロデューサーとして、それまで
のルーツ・レゲエとは一味違った、すでに
ダンスホールの匂いのする音楽をこの70年代
後半にすでに作り始めていたんですね。
そうした「新しい音楽」に乗せた、舌鋒鋭い
Ranking Dreadのトースティングが今回の
アルバムの魅力です。

手に入れたのはUKのリイシュー・レーベル
Hot MilkからリリースされたCDでした。
日本の発売元はdisk unionで、宇都木景一
さんという方の解説文が付いていました。

全10曲で収録時間は約34分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Recorded in Jamaica
Remixed at Chalk Farm Studios
Engineer: Sid Buckner

Special Thanks to Linval Thompson
who assisted me in making album a success

となっています。

録音はジャマイカとなっていますが、書いた
ようにこれは「Special Thanks」に名前の
あるLinval Thompsonのアルバム「I Love
Marijuana」や「Love Is The Question」の
事を指していると思われます。
リミックス(たぶん声入れ)はUKのChalk
Farm Studiosで、エンジニアはSid Buckner
が担当しています。

ちなみに今回のアルバムの元となったと思わ
れるLinval Thompsonの2枚のアルバム
「I Love Marijuana」と「Love Is The
Question」の参加ミュージシャンは以下です。

●Linval Thompson ‎– I Love Marijuana
Bass: Aston 'Family Man' Barrett, Robert Shakespeare
Drums: Hoss Mouth, Sly Dunbar
Guitar: Errol 'Chinna' Smith
Organ: Ossie
Piano: Ansel Collins
Arranged & produced by Linval Thompson
Recorded at Channel One Studio
Remixed at King Tubby's Studio, Kingston, Jamaica

●Linval Thompson ‎– Love Is The Question
Bass: R. Shakespeare
Guitar: Chinna
Drums: Sly Dunbar
Piano: Ossie
Recorded at Channel One and King Tubby's Studio, Kingston, Jamaica

どちらもSly & RobbieやギターのChinna Smith
など、当時のジャマイカのスタジオ・ミュージ
シャンが参加したアルバムで、録音がChannel
Oneという事を考えればThe Revolutionaries
にほぼ近いメンバーのアルバムです。
参考程度に見ておいてください。

さて今回のアルバムですが、主にRobbie
Shakespeareのベースだと思いますが、野太い
ベースのサウンドを軸とした演奏をバック
とした、Ranking Dreadのトースティングが
メチャメチャカッコいいアルバムで、内容は
とても良いです。

このRanking Dreadという人ですが、宇都木
景一という方の解説文によるとかなりメチャ
クチャな人だったようで、「Robert Blackwood、
Winston Brown、Michael Dix…様々な名前を
使い分け殺人、警察官の殺人未遂、不法銃器や
薬物、武装強盗、強姦、偽造通貨、偽造パス
ポートの罪から逃れた神秘的かつ悪名高い?!
ディージェイがRanking Dreadだ。」という
ふうに書かれています(笑)。
ジャマイカ労働党 (JLP)の支持者でもあり、
音楽的な才能もあった人のようですが、
かなりの「傾奇者(かぶきもの)」であった
人のようです。

ネットのDiscogsで調べると彼のアルバムは
78年の今回のアルバム、79年の「Kunta
Kinte Roots」、80年の「Lots Of Loving」
までぐらいで、あとは82年にダブ・アルバム
「Ranking Dread In Dub」と彼の死後に
出されたコンピュレーションが2枚あるぐらい
なんですね。

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Ranking Dread ‎– Lots Of Loving (1980)

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Ranking Dread ‎– Ranking Dread In Dub (1982)

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Ranking Dread / Massive Dread ‎– 2 Dread Inna Babylon (2006)

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Ranking Dread ‎– Most Wanted (2007)

残念ながらそのうちの「Kunta Kinte Roots」
は聴いていませんが、残したアルバムはかなり
内容が良いものが多い人なんですね。

ただ82年以降にアルバムのないところを
みると、ある時期から刑務所で過ごしていた
人なのかもしれません。
残した音源が素晴らしいだけに、その才能が
惜しまれます。

そうしたRanking Dreadのアルバムの中でも、
今回のアルバムは特に魅力的なアルバムだと
思います。
おそらくこの時代の最先端のレゲエ・サウンド
を使ったトースティングは、とても魅力的。
単にルーツというよりは、すでに忍び寄る
初期のダンスホール・レゲエの空気感があり
ます。
そのちょっと湿った空気感は今の時代に
聴いても、とても惹かれるものがあります。

1曲目は「God Blessed Children」です。
Linval Thompsonのアルバム「I Love
Marijuana」の「Roots Lady」という曲を
使ったトースティングです。
明るいギターのリズムにズンと来るベース、
そうしたバックにRanking Dreadの明るい
トースティングが冴えます。

Ranking Dread - God Bless Children


2曲目は「Natty Dread Is A Struggler」
です。
Linval Thompsonのアルバム「I Love
Marijuana」の「Big Big Girl」という曲
を使ったトースティングです。
こちらはズンと来るベースを中心とした
ミリタントなビートがカッコいい曲です。
バックのソリッドなサウンドに、Ranking
Dreadのトースティングが冴えます。

3曲目は「Poor Man」です。
Linval Thompsonのアルバム「Love Is The
Question」の表題曲「Love Is The Question」
を使ったトースティングです。
ド・渋のベースをバックに、余裕のある
トースティングが心地良い1曲。

Ranking Dread - Poor Man


4曲目は表題曲の「Girls Fiesta」です。
Linval Thompsonのアルバム「Love Is The
Question」の「My Girl」という曲を使った
トースティングです。
こちらもベースとギターを中心としたズシッと
来る演奏に、Ranking Dreadの表現力豊かな
トースティングです。

Ranking Dread - Girls Fiesta


5曲目は「Africa」です。
Linval Thompsonのアルバム「Love Is The
Question」の「Africa Is For Blackman」
という曲を使ったトースティングです。
ベースとドラムのリズム隊の奏でる心地良い
リズムに、滑らかなRanking Dreadのトース
ティング。

6曲目は「Natty On The Rock / Death Trap」
です。
Linval Thompsonのアルバム「Love Is The
Question」の「Dreder Than Dread」という
曲を使ったトースティングです。
こちらもズシッと来るベースを中心とした
バックに、Ranking Dreadの表情豊かなトース
ティング。

7曲目は「Sister Lorna」です。
Linval Thompsonのアルバム「Love Is The
Question」の「I The Cheater」という曲
を使ったトースティングです。
こちらもベースのズシッとしたサウンドを軸
とした演奏に、表情豊かなRanking Dreadの
トースティング。

8曲目は「Kilburn Lane」です。
リディムはSound Dimensionの「Real Rock」。
この曲はLinval Thompsonのの曲は見つかり
ませんでした。
ベースとオルガンを軸としたロックステディ
の名リディムに、Ranking Dreadのトース
ティングが冴えます。

リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

9曲目は「Marijuana Soul」です。
Linval Thompsonのアルバム「I Love
Marijuana」の表題曲「I Love Marijuana」
を使ったトースティングです。
ド・渋なベースをバックに、Ranking Dread
のストイックなトースティングが冴えます。

Ranking Dread - Marijuana Soul


10曲目は「Ranking Ting」です。
Linval Thompsonのアルバム「I Love
Marijuana」の「Don't Push Your Brother」
という曲を使ったトースティングです。
ちょっとかしげなギターとベースを中心と
したメロディに、Ranking Dreadの表情豊か
なトースティング。

ざっと追いかけて来ましたが、バックはベース
を中心としたシンプルな演奏で、そのあたり
にもダンスホール・レゲエの時代が近づいて
いる空気感があります。
そうした時代の変わり目に登場したのがこの
Ranking Dreadというちょっと傾奇者のディー
ジェイで、彼は78~80年というわずか
3年ぐらいの活躍にもかかわらずなかなか
印象的な仕事を残しているんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Ranking Dread
○アルバム: Girls Fiesta
○レーベル: Hot Milk
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Ranking Dread「Girls Fiesta」曲目
1. God Blessed Children
2. Natty Dread Is A Struggler
3. Poor Man
4. Girls Fiesta
5. Africa
6. Natty On The Rock / Death Trap
7. Sister Lorna
8. Kilburn Lane
9. Marijuana Soul
10. Ranking Ting